2025/07/23
【精神障害者保健福祉手帳 Q&A】申請・更新手続き、等級の基準、割引等のメリット
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精神障害者保健福祉手帳とは、精神疾患が原因で日常生活や仕事に支障を来している人を対象とする障害者手帳です。精神障害者保健福祉手帳の基本情報、申請・更新の手続き、割引等のメリットなどを、Q&Aでお答えします。
もくじ
精神障害者保健福祉手帳の交付対象者・申請方法・更新の手続き
精神障害者保健福祉手帳とは何ですか?交付対象者は誰ですか?
精神障害者保健福祉手帳(精神障害者手帳)とは、精神疾患などを理由に障害が生じている人に交付される障害者手帳です。
対象となる精神疾患には、統合失調症、双極性障害、うつ病、てんかんのほか、高次脳機能障害、発達障害などが含まれます。
障害の重さによって、1級・2級・3級という3つの等級があります。1級が最も障害の重い等級です。
【関連コラム】
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- 精神障害者保健福祉手帳の2級と3級の違い
発達障害(ADHD・ASD・学習障害など)でも精神障害者保健福祉手帳の取得はできますか?
ADHDやASD、学習障害といった発達障害も、精神障害者保健福祉手帳の交付対象です。
ただし、医師から発達障害の確定診断を受けていなければなりません。インターネット上のセルフチェックや自己判断のみでの申請、「グレーゾーン」である場合は、手帳の審査に通過することはできません。
医師から発達障害の確定診断を受け、初診日から6カ月以上経っている人が、交付対象です。
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適応障害、不安障害(パニック障害など)でも精神障害者保健福祉手帳の取得はできますか?
適応障害や不安障害(パニック障害など)も、精神障害者保健福祉手帳の交付対象です。
ただし、手帳交付の審査には「初診日から6カ月以上」という条件があります。そのため、例えば「適応障害と診断されて2カ月の休職が決まったから、精神障害者保健福祉手帳を申請したい」と考えても、手帳の交付を受けられないかもしれません。
- 医師から診断を受けている
- 初診日から6カ月以上経っている
- 適応障害や不安障害で日常生活・仕事に実際に支障が出ている
この3つの要件を満たす場合は、手帳の交付を受けられる可能性が高くなります。
【関連コラム】
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精神障害者保健福祉手帳の申請手続きはどこで行いますか?医師の診断書は必要ですか?
精神障害者保健福祉手帳の申請は、区市町村の担当窓口で行います。原則として窓口での書類提出が必要です。審査に通過して手帳の交付を受ける場合も、原則として窓口で受け取ります。申請には、医師の診断書か障害年金証書が必要です。
【精神障害者保健福祉手帳の申請に必要な主な書類】
- 所定の申請書
- 医師による精神障害者保健福祉手帳用の診断書(または障害年金証書)
- 所定の同意書(必要に応じて提出)
- 本人の写真(基本的に縦4cm×横3cm)
- 本人確認書類(マイナンバーカードや個人番号の通知カード、運転免許証など)
区市町村によっては、郵送での申請・交付に対応している場合もあります。申請書を公式Webサイトからダウンロードできるかどうかも、区市町村によって異なります。郵送を希望する場合は、まず電話またはメールで問い合わせましょう。「○○市 精神障害者保健福祉手帳」などで検索すると、問い合わせ先を見つけやすくなります。
手帳の申請から実際の交付までの期間は、2〜3カ月です。
【関連コラム】
- 精神障害者手帳の申請方法と更新手続き、等級の変更申請
精神障害者保健福祉手帳と療育手帳の違いは何ですか?
精神障害者保健福祉手帳と療育手帳の違いは、交付対象です。精神障害者保健福祉手帳は精神障害のある人が交付対象であり、療育手帳は知的障害のある人が交付対象となります。
知的障害の場合、多くは小学校入学前、主に3歳児健診までにわかります。気づかれるのが遅れた場合でも18歳未満で療育手帳を申請・取得する人が多い点が特徴です。18歳以上で申請する場合、書類提出時の面談など、より慎重な手続きが行われることがあります。
他方、精神障害者保健福祉手帳では、大人になってから交付されるケースは珍しくありません。それまでの生活で障害がなかった人でも、職場や私生活でつらいことが続いたり、事故などで高次脳機能障害になったりするなどの事情で障害が生じることがあるからです。
【関連コラム】
- 簡単に知る知的障害者福祉法、知的障害者更生相談所と療育手帳
知的障害者も精神障害者保健福祉手帳の交付を受けることはできますか?
知的障害のある人が精神障害者保健福祉手帳を取得できるかどうかは、区市町村によって異なります。
例えば、横浜市では「知的障害は愛の手帳があるため、精神障害者保健福祉手帳の対象にはなりません」と明記されています。※
一方で、東京都では療育手帳(愛の手帳)を持つ人も精神障害者保健福祉手帳を持つことができます。
※出典:精神障害者保健福祉手帳の交付|横浜市(2025年5月14日閲覧)
【関連コラム】
- 分かりやすい大人の発達障害と知的障害の違い
精神障害者保健福祉手帳の等級(1級・2級・3級)
精神障害者保健福祉手帳の等級(1級・2級・3級)の判定基準は?
精神障害者保健福祉手帳の判定基準は、厚生労働省および各都道府県から公表されています。東京都福祉局の公式Webページによれば、1級・2級・3級の判定基準の概要は、下表の通りです。
【精神障害者保健福祉手帳の等級判定基準】※
1級 | 精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの |
※出典:【判定基準】精神障害者保健福祉手帳の障害等級判定基準|東京都福祉局
各等級の詳しい基準や生活イメージを以下の関連コラムでご紹介しています。あわせてご覧ください。
【関連コラム】
- 精神障害者保健福祉手帳の2級と3級の違い
- 精神障害者保健福祉手帳と障害年金の等級判定基準
精神障害者保健福祉手帳の等級変更はできますか?
精神障害者保健福祉手帳の等級変更は、所定の窓口へ申請し、審査を通過することで可能です。手帳の有効期限内であれば、いつでも申請できます。
等級変更の申請に必要な書類は、新規申請と同様の書類と、現在持っている精神障害者保健福祉手帳のコピーです。そのため、医師による新しい診断書も必要です。
【精神障害者保健福祉手帳の等級変更申請に必要な主な書類】
- 所定の申請書
- 医師による精神障害者保健福祉手帳用の診断書(または障害年金証書)
- 所定の同意書(必要に応じて提出)
- 現在所持している精神障害者保健福祉手帳のコピー(原本も持参する)
- 本人の写真(基本的に縦4cm×横3cm)
- 本人確認書類(マイナンバーカードや個人番号の通知カード、運転免許証など)
詳しくは、新規申請と同じ区市町村の担当窓口にお問い合わせください。
【関連コラム】
- 精神障害者手帳の申請方法と更新手続き、等級の変更申請
精神障害者保健福祉手帳を持つメリット(JRなど電車での割引、税金の控除など)
精神障害者保健福祉手帳があると、電車・バス・タクシーで割引を受けられると聞きました。割引の条件はありますか?
精神障害者保健福祉手帳の提示により、電車・バス・タクシーの運賃割引を受けられることがあります。
電車の場合、JRや大手私鉄で精神障害者を対象とする運賃割引を2024年から2025年にかけて始めました。主な条件は、手帳の等級と同乗する介護者の有無です。
手帳1級の場合は、介護者ありなら多くの場合で半額となり、介護者なしの単独乗車でも距離制限付きで割引を受けられます。2級・3級の場合は、単独乗車で100kmを超えて利用する場合に、運賃が半額となります(鉄道会社によって細かな違いがあります)。
なお、東京都に住民票がある障害者手帳所持者には、「都営交通無料乗車券」が発行されます。これを提示することで、都営の電車・バスの運賃が無料になります。
民営のバスの場合は、事業者によって条件や割引率が異なります。割引がある場合、通常運賃の半額となるケースが多いようです。タクシーでは1割引とする事業者が多く見られます。いずれも障害者手帳の提示が必要です(障害者手帳原本の提示以外に、「ミライロID」というスマホアプリを通じた提示でも可能とする事業者もあります)。
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精神障害者保健福祉手帳を持っていると、住民税や自動車税の控除があるのですか?
精神障害者保健福祉手帳を持っていると、様々な税制上の優遇措置を受けられます。これには、所得税、相続税、住民税、自動車税・自動車取得税の障害者控除があります。
【税金に関する主な障害者控除】※
税金の種類 | 控除の概要 |
所得税 | 所得金額から、級に応じた金額を控除(1級は40万円、2級・3級は27万円) |
相続税 | 障害者が相続人である場合、85歳に達するまでの年数1年につき、級に応じた金額を控除(1級は20万円、2級・3級は10万円) |
住民税 | 所得金額から、級に応じた金額を控除(1級は30万円、2級・3級は26万円) |
自動車税・ 自動車取得税など |
1級で自立支援医療(精神通院医療)の支給認定を受けている人が対象。自動車税種別割の減免上限額は4万5,000円など |
※出典:
障害者と税|国税庁(2025年5月14日閲覧)
精神障害者保健福祉手帳|東京都福祉局(2025年5月14日閲覧)
自動車税環境性能割・自動車税種別割の減免制度のご案内|東京都主税局
詳しくは、所得税や相続税については税務署へ、住民税については区市町村の担当窓口へ、自動車税等については自動車税事務所へお問い合わせください。
【関連コラム】
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精神障害者保健福祉手帳に関して、他にどのようなメリットがありますか?
運賃の割引や税制上の優遇措置以外では、携帯電話の料金やNHK受信料が安くなるというメリットがあります。
映画館や博物館、美術館、公園などでも障害者割引を受けられることがあります。多くの自治体では、公的施設の利用料も免除されることが多く、それまでお金の問題で避けていた施設を利用しやすくなるでしょう。
また、精神障害がある人の場合、保険に入りにくかったり、保険に入れても補償を受けられなかったりするケースが珍しくありません。そうした際に、精神障害者保健福祉手帳があれば、障害者を対象とする保険に加入しやすくなります。
そして、何よりも、障害福祉サービスを受けられることや障害者枠での就労が可能になることが大きなメリットです。どのような障害福祉サービスを受けられるかは、ご自身の希望・障害の状況などによって異なります。就職を目指して仕事に必要な訓練や採用面接への支援スタッフの同行を希望する場合は就労移行支援、就職後も安定して働き続けたい場合は就労定着支援といったサービスがあります。
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精神障害者保健福祉手帳と障害年金の受給
精神障害者保健福祉手帳を取得すると、自動的に障害年金を受給できますか?
精神障害者保健福祉手帳を所持していても、自動的に障害年金をもらえるわけではありません。手帳の審査と障害年金の審査は、別に行われるからです。そして、障害年金の審査は、手帳の審査よりも厳しいとされています。
特に対象疾患については、精神障害者保健福祉手帳の対象となる適応障害やパニック障害は、障害年金では原則として対象外です。障害の状態以外に、保険料の納付状況もチェックされます。
反対に、障害年金を受給しているのであれば、自動的に障害者保健福祉手帳の交付対象となります。
詳しい判定基準や違いについては、以下の関連コラムをご覧ください。
【関連コラム】
- 精神障害者保健福祉手帳と障害年金の等級判定基準
障害者保健福祉手帳の更新手続き・住所変更手続き
精神障害者保健福祉手帳の有効期限は?更新手続きに必要なものは何ですか?
精神障害者保健福祉手帳の有効期限は、交付日から2年後の申請月の末日です。更新手続をしないと手帳が失効となり、精神障害者保健福祉手帳を所持していない状態になります。
精神障害者保健福祉手帳を更新したい場合は、手帳に記載されている有効期限より前の3カ月間に更新手続を行いましょう。自治体によっては更新のお知らせが届きますが、そうしたお知らせを出していない所もあります。必ず手帳に記載されている有効期限をご自身で確認してください。
必要な書類は、新規の申請と同じ書類と手帳のコピーです。
【精神障害者保健福祉手帳の申請に必要な主な書類】
- 所定の申請書
- 医師による精神障害者保健福祉手帳用の診断書(または障害年金証書)
- 所定の同意書(必要に応じて提出)
- 本人の写真(基本的に縦4cm×横3cm)
- 本人確認書類(マイナンバーカードや個人番号の通知カード、運転免許証など)
- 現在持っている精神障害者保健福祉手帳のコピー(原本も持参)
区市町村の申請窓口に書類を提出し、審査を通過すれば手帳が交付されます。交付までには、2〜3カ月かかります。
【関連コラム】
- 精神障害者手帳の申請方法と更新手続き、等級の変更申請
引っ越しで住所変更がありました。精神障害者保健福祉手帳でどのような手続きが必要ですか?
引っ越しなどで住所が変更となった場合、住所変更の手続きが必要です。
引っ越し先の区市町村の担当窓口で「障害者手帳に記載されている住所を変更したい」と伝えると、変更に必要な申請書をもらえます(東京都では「記載事項変更届」です)。所定用紙に記入し、現在持っている精神障害者保健福祉手帳の原本およびコピーと一緒に、区市町村の担当窓口に提出してください。
また、本人の写真が必要な場合もあります。例えば、「A市からB市に引っ越した」など、新しい住所の区市町村外から引っ越してきた場合です。写真のサイズは、基本的に縦4cm×横3cmです。
最新の情報や詳しい手続きは、各担当窓口でご確認ください。担当窓口がどこかわからない場合は、「○○市 精神障害者保健福祉手帳」などで検索すると、区市町村の公式Webページを見つけられます。そのWebページ内に「申請場所」や「窓口」といった情報がありますので、記載されている所へお問い合わせください。
【参考リンク(外部)】
