大人のASD(自閉スペクトラム症)の特性・苦手なことを考慮した仕事の工夫


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発達障害の1つであるASD(自閉スペクトラム症)。大人のASD当事者が仕事を続けやすくするには、職場での合理的配慮を受けられる環境で働くことが重要です。

そこで今回は、ご本人の生活から職場環境の調整、ソーシャルスキルトレーニングまで、仕事を続けやすくするポイントをご紹介します。


Graphs / PIXTA(ピクスタ)

家庭・職場などでの環境調整

安定した職業生活を送るには、まず生活リズムをつくり習慣化する必要があります。具体的には、

  • 起きる時間
  • 食事・歯磨き
  • 仕事の準備
  • 帰宅後の過ごし方
  • 入浴
  • 寝る準備

といったルーティンをつくり、実践していきましょう。デスクワークで働く人の場合、自分に合う運動もおすすめです。

職場での工夫では、「急な変更があると混乱しやすい」というASDの特性を考慮し、事前に見通しを共有してもらう必要があります。あらかじめ上司やチームの同僚に依頼しておくとよいでしょう。

感覚過敏がある人の場合は、以下のようなツールの活用や座席位置の調整を試してみてください。

【感覚過敏がある場合の対処例】

種類 対処例
聴覚過敏
  • 静かな場所に座席を設定する(ドアの近くや電話が鳴りやすい場所を避ける)
  • イヤーマフや耳栓の使用を認めてもらう
  • 話しかけるときは大きな声にならないよう配慮してもらう(遠い座席からの呼び出しにはチャットを使ってもらうなど)
視覚過敏
  • 照明が明るすぎない位置に座席を設定する
  • 人の動きが目に入りにくい場所に座席を設定する
  • パーティションで座席を区切ってもらう
  • 光を軽減するカラーレンズのメガネの使用を認めてもらう
  • 気が散る物を片付けたり、棚にしまって見えなくしたりする
触覚・嗅覚などの過敏
  • 身体に近づきすぎたり、触れたりしないようにお願いする
  • 香水や化粧品、柔軟剤、制汗剤などの香りが強い場所から離れた位置に座席を設定してもらう

職場の環境調整が難しい場合は、在宅勤務とする方法もあります。

コミュニケーションや情報管理の工夫

遅刻や約束を忘れやすいなどの特性があるなら、手帳・カレンダーを積極的に活用しましょう。絶対に守らなければならない時刻は場所・会う人などを必ずメモし、いつでも確認できるようにしてください。スマートフォンのアラーム機能や、ルーティンを登録できるアプリも便利です。

タスクの抜け漏れを防ぐにも、やはりメモを取ることが重要です。具体的なメモの取り方については、以下の関連コラムで詳しく解説していますので、ぜひご活用ください。

(関連コラム)
メモ書きの基本ポイントと速く書くコツ 「メモの取り方が下手」と悩む障害者のために

書くことが苦手なら、スマートフォンなどのカメラ機能を使って、覚えておきたいものを撮影する方法でも構いません。

なお、ASD当事者には、音声・会話でのコミュニケーションが苦手な人もいます。その場合は、

  • テキスト(メモ・メール・チャット)を使って業務連絡を行う
  • 口頭で指示を受ける場合は、必ずその場でメモを取り、メモの内容を指示者に確認する
  • 相手からの許可があれば、録音機能を使って音声メモとして残す

といった方法が使えます。

職域・業務内容の工夫

集団での業務が苦手な場合、1人または少人数で進められる業務が向いています。急な変更が苦手なら、ルーティン業務を担当するのもよいでしょう。

1人で責任を負うと働きにくくなる場合は、2〜3人のチーム制がおすすめです。チーム制なら、誰かが急な体調不良で早退・欠勤しても、ほかのメンバーが業務をサポートできます。大きな進捗の遅れを防ぎながら、体調管理しやすくなる点が大きなメリットです。

また、業務手順を覚えにくい場合は、

  • 写真や図を使った手順書・マニュアルを作成する
  • 実際に、上司や同僚が本人の前で、お手本を示す

などの方法が有効です。手順書やマニュアルは、実際の業務フローに従って1つずつ工程を確認できる形で作成し、使いながら改善していきましょう。

意識的な健康管理・ストレスチェック

ASDと併存する精神疾患や二次障害で薬物療法を行う場合は、服薬管理も重要です。医師に指示された通りに薬を服用し、勝手にやめたり増やしたりしないようにしましょう。勝手に断薬すると症状が悪化し、欠勤せざるを得ない状況になる可能性があります。薬の変更をしたい場合は、必ず医師・薬剤師に相談してください。

また、発達障害の当事者は、周囲への適応や情報処理に大きなエネルギーを使います。そのため、障害のない人たちよりも疲れやすく、一般的な“1回の昼休憩だけ”では、疲労から回復しきれないケースが多く見られます。こうした状況の改善には、こまめな休憩をとれるような体制が必要です。

障害者雇用の現場では、疲れやすさに応じて「1時間に1回」や、昼休憩以外に「午前1回、午後1回」といった小休憩の時間が設定されている例があります。

日々のストレスチェックもおすすめです。「まだ頑張れる」と思っても、自覚のないまま疲れやストレスが溜まっていることは珍しくありません。一定の基準で定期的にチェックすることで、ストレスの変化を見える化しましょう。

もし疲れやストレスが溜まっていそうなら、産業医や専門のカウンセラー、主治医などに相談してください。

本人のソーシャルスキル・トレーニング

以上のような仕事と健康に関する対策以外に、ASD当事者自身がソーシャルスキルを高めるトレーニングも行うとよいでしょう。

ソーシャルスキルとは、人間関係の構築や社会生活に必要な対人スキル全般を意味します。

【ソーシャルスキルの例】

  • あいさつの仕方
  • 声のかけ方
  • 話の聴き方
  • 会話でのアイコンタクトや相づちのやり方
  • 言葉の選び方
  • 話し方
  • 頼まれたときの断り方
  • 怒りを感じたときの対処法

トレーニングは、職場や支援機関、病院などで受けることができます。困り事の内容に合わせて「どうすればよいか」を一緒に考えながら、少しずつ伸ばしていきましょう。

困ったときは専門家・支援機関に相談を

ASDで見られる主な特性は、対人関係・コミュニケーション・社会生活における振る舞いといった場面で困り事につながりやすく、感覚過敏なども日常生活に支障をきたす要因となります。

大切なのは、困ったときは専門家や支援機関など、ASDの特性に理解がある人に相談し、解決に向けた支援を受けることです。

ASDの当事者が相談できる専門家や機関としては

  • 精神科や心療内科の医師
  • 職場の産業医やカウンセラー
  • 発達障害者支援センター(公的な相談・支援窓口)

などがあります。

就職を目指しているなら、就労移行支援事業所でも特性に合わせた訓練ができます。

(関連リンク・コラム)

発達障害の相談先「発達障害者支援センター」とは?対象者と相談できること

これらの相談先・支援機関を上手に活用しながら、働きやすい環境・生活習慣づくりを進めていきましょう。

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