【令和4年障害者雇用状況】民間企業・市町村は法定雇用率達成まであと一歩!教育委員会は都道府県ごとに大差


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令和4年における障害者雇用状況の集計結果が厚生労働省から発表されました。民間企業では、雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新するも、全体として法定雇用率達成には至りませんでした。公的機関では、全体として障害者雇用数、実雇用率が前年を上回る一方、依然として市町村および教育委員会の状況に課題が残っています。

令和4年 民間企業の障害者雇用状況

常用雇用労働者数43.5人以上45人未満の企業にも障害者雇用が義務づけられて2年目となる今回。民間企業では、雇用障害者数と実雇用率の両方で過去最高を更新しました。

なお、今回の集計結果から企業規模の区分がやや変更されています。前年は43.5人以上45.5人未満の区分がありましたが、今回の企業規模は、もっとも小さい区分は43.5人以上100人未満となっています。

雇用障害者数および実雇用率は過去最高を更新

2022年における民間企業の障害者雇用数は、全体で61万3,958.0人、実雇用率は2.25%で、いずれも過去最高を更新しました。ただ、法定雇用率が2.3%に引き上げられた前年に引き続き、民間企業全体での法定雇用率達成には至りませんでした。

では、民間企業の雇用障害者数を障害種別で見てみましょう。最も多いのは身体障害者で、35万7,767.5人が雇用されています。次が知的障害者の14万6,426人。精神障害者は、10万9,764.5人でした。

前年と比較すると、知的障害者は5,000人以上、精神障害者は1万人以上増えた一方で、身体障害者は1,300人減少。近年の傾向のように、精神障害者の雇用数が大きく伸びています。

企業規模別に実雇用率を見ると、前年同様に企業規模が小さくなるほど実雇用率も低い傾向が見られます。企業規模として法定雇用率を達成したのは1,000人以上の大企業のみでした。しかし1,000人未満の企業でも、それぞれの実雇用率がわずかながら前年を上回っています。

企業規模別で障害種別の雇用人数を見ると、300人以上500人未満の企業では雇用障害者数の6割超を身体障害者が占め、他の企業規模よりも大きな割合となりました。知的障害者については、43.5人以上100人未満の企業と1,000人以上の企業でそれぞれ24.6%、24.8%を占め、他の企業規模より多くなっています。精神障害者は、43.5人以上100人未満の企業における割合が最も大きく、19.8%でした。

企業規模別の雇用障害者数の合計では、最も多いのが1,000人以上の企業における30万8,552.0人、次が100人以上300人未満の企業の11万7,790.0人です。

法定雇用率達成企業の割合

法定雇用率達成企業の割合は、民間企業全体で48.3%となっており、前年より1.3ポイント上昇しました。これを企業規模別に見ると、下表のようになります。

前年同様、半数が法定雇用率を達成したのは、100人以上300人未満の企業と1,000人以上の企業のみでした。

1,000人以上の企業では、前年55.9%から大きく増えて62.1%が法定雇用率を達成しています。また、500人以上1000人未満の企業でも割合を4.3ポイント伸ばし、47.2%となりました。障害者雇用の積極的な取り組みがうかがえます。

一方、43.5人以上100人未満の企業と300人以上500人未満の企業では、わずかに増えるにとどまりました。43.5人以上100人未満の企業では、あと0.5人から1人を雇用することで未達成企業の9割が法定雇用率を達成できます。

300人以上500人未満の企業の場合は、0.5人以上9人以下と企業によって差が見られるため、自社の状況を分析しつつ何らかの施策を講じる必要があるでしょう。

民間企業における障害者雇用をさらに進めるには、よりいっそう知的障害や精神障害に対する理解、さまざまな合理的配慮に関する知識を深めていくとともに、従来のやり方だけでなく、障害者雇用におけるイノベーションの活用も視野に入れたいところです。たとえば、重度の障害をもつ方が分身ロボットを用いてリモートワークを行うなど、新しい働き方が生まれています。

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公的機関や独立行政法人などの障害者雇用状況

公的機関では、国、都道府県、市町村、教育委員会のいずれにおいても、雇用障害者数および実雇用率が前年を上回りました。ただ、市町村と教育委員会は、前年と同様に法定雇用率達成には至りませんでした。

独立行政法人等では、雇用障害者数と実雇用率のいずれも前年を上回り、全体として法定雇用率も引き続き達成しています。

公的機関と独立行政法人などの実雇用率

国、都道府県、市町村などの公的機関と独立行政法人等の法定雇用率は2.6%、教育委員会は2.5%です。今回、国、都道府県、独立行政法人などは法定雇用率を達成したものの、市町村と教育委員会は前年に引き続いて未達成となりました。実雇用率では、両者とも前年からわずかに向上しています。

雇用障害者の障害種別の割合と雇用障害者数

公的機関、独立行政法人等の法定雇用率達成の割合を見ると、国では100.0%、都道府県では93.3%でした。次に達成の割合が高いのは独立行政法人等の80.0%です。

あと少しで全体として法定雇用率を達成できる市町村では、全体の75.0%が法定雇用率を達成しています。一方、全体としての達成に大きな課題を抱える教育委員会の場合、達成機関の割合は61.1%にとどまりました。

<公的機関・独立行政法人等の達成機関の割合と障害種別の割合>

達成機関 障害種別 雇用障害者数

(人)

障害種別

割合

合計

(人)

100.0% 身体  5,837.5  60.2%    9,703.0
知的  292.5  3.0%
精神  3,573.0  36.8%
都道府県    93.3%  身体  8,483.5  81.5%    10,409.0
 知的  262.5  2.5%
 精神  1,663.0  16.0%
市町村    75.0%  身体  27,537.0  79.7%    34,535.5
 知的  1,432.5  4.1%
 精神  5,566.0  16.1%
教育委員会    61.1%  身体  12,397.5  75.1%    16,501.0
 知的  869.5  5.3%
 精神  3,234.0  19.6%
独立行政法人等    80.0%  身体  7,977.5  64.2%    12,420.5
 知的  1,782.0  14.3%
 精神  2,661.0  21.4%

雇用している障害者の障害種別では、それぞれで異なった傾向が見られます。

身体障害者の割合が最も大きかったのは都道府県で、81.5%を占めました。都道府県における知的障害者の割合は他と比較してもっとも小さい2.5%です。次に身体障害者の割合が大きいのは市町村や教育委員会で、75.1~79.7%でした。

知的障害者の割合が大きいのは、独立行政法人等です。他の公的機関や教育委員会では10%未満であるのに対して、独立行政法人等では14.3%を占めています。

精神障害者の割合が最も大きいのは国の機関で、36.8%でした。次に大きいのは、独立行政法人等の21.4%です。教育委員会では19.6%、都道府県と市町村における精神障害者の割合は16%前後となっています。

教育委員会における障害者雇用の推移

教育委員会での実雇用率は、これまでも大きな課題となってきました。2021年の障害者雇用状況の集計結果では、2019年以降に実雇用率が上がり、ようやく2017年の法定雇用率の水準となりました。しかし、今回は伸びがやや鈍り、0.06ポイントの増加にとどまっています。

ただし、実雇用率は都道府県ごとに大きなばらつきが見られることには注意が必要です。たとえば、教育委員会で法定雇用率を達成して不足数0人となっているところが26県ある一方で、不足数が100名を超えるところが6都府県あります。障害者の実雇用率と雇用人数が大きく不足している都府県は以下のとおりです。

<都道府県教育委員会 実雇用率 ワースト10>

都府県名 実雇用率(%) 不足数(人)
愛知県 1.44 344.5
兵庫県 1.61 225.0
京都府 1.74 76.0
沖縄県 1.78 84.5
奈良県 1.81 55.0
静岡県 1.83 107.0
福岡県 1.83 120.5
東京都 1.84 322.5
福島県 1.89 75.5
大阪府 2.03 149.5

こうした都府県の教育委員会では、障害特性や合理的配慮に関する理解の促進、働きやすい職場づくり、「障害を持つ方と一緒に働く」という意識のさらなる醸成が望まれます。

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なお、教育委員会における新規雇用障害者数を見ると、2018年から2021年までは雇用人数を伸ばしてきたものの、今回の2022年は減少に転じました。

算定の基礎となる職員数と雇用されている障害者の人数は、2021年と2022年で下表のようになっています。

<教育委員会の算定の基礎となる職員数と障害者の数>

  2021年 2022年 人数の増減
算定の基礎となる

職員数

729,403.5人 726,284.5人 -3,119.0人
障害者の人数 16,106.5人 16,501.0人 +394.5人

算定の基礎となる職員数が減少したことで、新規に雇用する障害者の数が減っても障害者の実雇用率が上がったという状況のようです。

障害者雇用促進では、他の障害種別にも注目を

障害者雇用を進める事業所などでは、特定の障害種別を中心に雇用しているケースが見られます。業務内容と障害特性の相性によっては、やむを得ずそうした偏りが生じることもあるでしょう。また、職場づくりや合理的配慮の提供にあたって「選択と集中」をすることで効率的に実施しようという方針もあるかもしれません。

ただ、特定の障害種別を選んで雇用を続ける事業所や機関が増えると、それ以外の障害をもつ方々の就労機会が大きく減ってしまうという懸念があります。事業所や機関にとって、法定雇用率達成の壁にもなってしまうでしょう。

大切なのは、障害特性はそれぞれの人で異なることを前提に、「その人に合った職域とやり方」を探ることです。障害者雇用の好事例には、
「実際に仕事をお願いしてみると、とても熱心に取り組んでくれた。これなら任せられると思った」
「今までの指示の出し方では、実際のところきちんと指示を出せていないのだと分かった。支援機関に指示の出し方を教えてもらい実践したところ、非常に効率よく業務を進めてくれた」
といった経験が語られることが多くあります。

障害の有無にかかわらず共に働ける社会づくりに向け、より多角的な視点で体制づくりや環境整備を進めていきましょう。

【参考】
令和4年 障害者雇用状況の集計結果|厚生労働省

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