【令和3年障害者雇用状況】民間企業で過去最高の実雇用率、中小企業・教育委員会に課題


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2021年12月、令和3年の障害者雇用状況の調査結果が公表されました。法定雇用率が民間企業2.3%、公的機関2.6%(教育委員会2.5%)となってから初めての調査結果です。民間企業では雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新したものの、依然として中小企業や教育委員会に大きな課題が見られます。

民間企業における令和3年の障害者雇用状況

民間企業の法定雇用率が2.3%に引き上げられてから最初の調査結果となる2021年は、雇用障害者数と実雇用率が前年を上回るものの、法定雇用率を達成した企業の割合が低下するという結果になりました。

民間企業の雇用障害者数および実雇用率

2021年の民間企業全体における雇用障害者数と実雇用率は、過去最高を更新する59万7,786人、2.2%でした。しかし、民間企業の法定雇用率が引き上げられたため、全体としての法定雇用率達成には至りませんでした。

障害種別での雇用障害者数を見ると、身体障害者が最も多い35万9,067.5人、次いで多いのが知的障害者の14万665人、そして精神障害者は9万8,053.5人となっています。

障害種別で見ると、精神障害者の雇用数が身体障害者や知的障害者の雇用数よりも大きく上昇していることがわかるでしょう。

障害者の実雇用率を企業規模別に見ると、法定雇用率を達成した企業規模は1,000人以上の企業規模のみ。今回から雇用義務のある企業規模に43.5人以上45.5人未満の企業が加わりましたが、実雇用率は最も低い1.77%となっています。

企業規模別にどのような障害種別の障害者を雇用しているかを見ると、100人以上の企業規模では他の企業規模よりやや身体障害者の割合が高いことがわかります(59.8〜61.9%)。一方で、45.5人以上100人未満の企業規模では精神障害者の割合(18.8%)が他の企業規模よりも高く、43.5人以上45.5人未満では知的障害者の割合(29.5%)が比較的高くなりました。

法定雇用率以上の障害者の雇用率を達成するには、各社で主に採用してきた障害種別とは異なる障害種別での採用も視野に入れる必要があるでしょう。

法定雇用率達成企業の割合

法定雇用率を達成した企業規模は従業員数1,000人以上の大企業のみでした。では、各企業規模で法定雇用率を達成した企業はどのくらいあるのでしょうか。

企業規模別に法定雇用率達成企業の割合を示したのが下図です。

半数以上が法定雇用率を達成したのは、100人以上300人未満の企業規模および1,000人以上の企業規模のみ。達成企業の割合が最も低いのは、今回から雇用義務の対象となった43.5人以上45.5人未満(35.1%)で、次に低いのが300人以上500人未満の企業(41.7%)となっています。

法定雇用率が引き上げられたことが達成企業の割合の低下に影響しているものの、依然として積極的な障害者雇用の取り組みが求められる状況です。

中小企業に求められる“あと1人”の障害者雇用

法定雇用率達成企業の割合が低い企業規模では、「あと1人か2人雇用すれば法定雇用率を達成できる」というケースが少なくありません。

特に、企業規模が43.5人以上100人未満の企業では、全く障害者を雇用していない企業が全体の9割以上を占めています。もしこうした企業で「あと1人」の障害者を雇用できれば、43.5人以上100人未満の企業規模全体が高い障害者雇用率を達成できる計算です。

43.5人以上45.5人未満の企業にとっては初めての障害者雇用を行うことになるため、ハードルが高く感じられるかもしれません。しかし、各地域の障害者雇用支援機関や就労移行支援事業所などと連携すれば、障害をもつ方の採用から職場定着までサポートを受けられるとともに、要件を満たせば職場環境の整備等の助成金も受給可能です。

「障がい者としごとマガジン」編集部がある就労移行支援事業所ルミノーゾでも障害をもつ方の就労支援や事業所での定着支援を行っています。「今、障害者雇用に課題を抱えている」という方だけでなく「障害者雇用ってどうすればいいか分からない」という事業主の方も、まずはお気軽にお問合せください。

障害によってどのようなことが困難になるか、障害をもつ方がどのように働いているのか、どういった支援があれば働きやすくなるのかなどについては、以下の関連記事でもご紹介しています。

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国、都道府県、教育委員会、独立行政法人などの障害者雇用状況

2021年、公的機関や独立行政法人を対象とする法定雇用率も引き上げられました。国や都道府県、市町村の機関、独立行政法人の法定雇用率は2.6%、都道府県などの教育委員会は2.5%となっています。

ここからは、こうした公的機関や独立行政法人などでの障害者雇用状況を見ていきましょう。

公的機関と独立行政法人などにおける実雇用率

公的機関や独立行政法人などにおける雇用障害者数は、いずれも前年より増加し、実雇用率は教育委員会を除いて法定雇用率を達成しました。

最も実雇用率が高いのは国の機関(2.83%)です。2019年の調査結果における実雇用率は2.31%でしたが、そこから大きく伸びています。以前は司法機関での障害者雇用率の低さが目立ったものの、2020年から全ての機関で法定雇用率を上回る実雇用率となりました。

一方、教育委員会の実雇用率は、なかなか法定雇用率に届かない状況です。2019年の実雇用率(1.89%)や2020年の実雇用率(2.05%)と比べれば大きく伸びてきましたが、依然として課題は大きいといえます。

公的機関と独立行政法人などにおける雇用障害者数

公的機関や独立行政法人などにおける法定雇用率達成機関の割合は、国の機関が100%、都道府県や市町村の機関、独立行政法人などが7〜8割。教育委員会では、達成した機関と未達成の機関がそれぞれ約半数となっています。

<法定雇用率を達成した公的機関・独立行政法人などの割合と障害者雇用数>

  達成機関

の割合

障害

種別

雇用障害者数
100.0% 身体 5,831.5人
知的 270.0人
精神 3,503.5人
都道府県 89.4% 身体 8,464.0人
知的 240.5人
精神 1,439.0人
市町村 71.2% 身体 27,273.0人
知的 1,323.5人
精神 4,773.0人
教育委員会 50.5% 身体 12,429.0人
知的 808.0人
精神 2,869.5人
独立行政法人等 78.0% 身体 8,126.5人
知的 1,734.0人
精神 2,384.0人

障害種別の割合で見ると、都道府県や市町村の機関では身体障害者の割合が80%以上と大きいのが特徴です。教育委員会でも、雇用する障害者のうち約77%が身体障害者で、次に多いのが約18%を占める精神障害者でした。

国の機関では、身体障害者の割合は約61%にとどまり、精神障害者の割合が約37%で他の公的機関(約14〜20%)より大きいという結果になっています。

これに対して、知的障害者の割合が最も高いのは独立行政法人などです。公的機関での知的障害者の割合が約2〜5%であるのに対して、独立行政法人などでは約14%。特に国立大学法人などで知的障害者の雇用数が多いという結果でした。

教育委員会における障害者雇用推進施策

教育委員会における障害者雇用は、以前から課題とされてきました。教育委員会における実雇用率アップ実現に向けて、国も新たな取り組みを進めています。

教育委員会とは

まず、教育委員会がどのような組織なのか大まかに確認しておきましょう。


出典:教育委員会制度について|文部科学省

教育委員会は、政治的に中立で安定して継続的な教育を行うとともに、地域住民の意向を反映させて生涯学習・教育・文化・スポーツ等に関する施策を展開する機関です。主に以下のような業務を行っています。

<教育委員会が担う業務(例)>

  • 学校の設置管理・施設等の整備
  • 教職員の人事・研修
  • 生涯学習・社会教育事業の実施
  • 公民館、図書館、各部付かん党の設置管理
  • 文化財の保存・活用
  • スポーツ指導者の育成・確保
  • スポーツ事業の実施

よって、公立の学校で働く先生や職員も教育委員会が採用選考しています。

都道府県教育委員会における障害者雇用の推移

では、都道府県教育委員会における新規雇用障害者数を見てみましょう。

下のグラフから、身体障害者と知的障害者の雇用数が2018年まで減少傾向にあったことがわかります。2019年以降はいずれの障害種別でも新規雇用の数を増やし、特に身体障害者と精神障害者の雇用数が大きく増加しました。

次に、2015年から2021年までの都道府県教育委員会における実雇用率の変化を見てみよう。

2017年までの法定雇用率は2.2%で、2018年に引き上げられる前に一度法定雇用率を達成したものの、2018年に大きく下降。法定雇用率を追いかける形で実雇用率を伸ばしてきましたが、2021年の2.21%は2017年の法定雇用率の水準です。

国による取り組み

教育委員会でなかなか法定雇用率達成に至らないのはなぜなのでしょうか。現場の実態と課題の洗い出しを行うため、国は2019年に「教育委員会における障害者雇用に関する実態調査 国立教員養成大学・学部における障害のある学生の支援に関する実態調査」を行いました。

同調査によれば、教育委員会の事務職員では7.39%という高い実雇用率であるものの、教育職員の実雇用率は1.27%と低くなっています。その中でも、小学校や中学校の教育職員の実雇用率はそれぞれ0.69%、1.00%と低い水準です。

実態把握や具体的な取り組み内容については今後も調査・検討が必要であるとしながらも、まずは教育委員会における取り組み事例の共有や、教育委員会から教員養成大学・学部への情報提供を強化するとしました。

具体的な施策としては、

  • 教員採用選考試験における取り組み事例の収集・発信
  • 障害のある教師が働きやすい学校施設整備支援・学校のICT環境整備の推進
  • 障害のある教職員が教育現場で活躍している全国の事例の共有
  • 勤務体制・職務内容の工夫などの合理的配慮の在り方などの共有

などが検討されています。

多様性のある社会に向けて

教育の現場で障害者雇用が推進されることは、教育に携わる仕事をしたいと考える障害者の道が開けるだけでなく、多くの子ども達が多様性の中で育つ機会にもつながります。障害をもつ子どもたちにとっても、同じ障害特性をもつ大人が身近なところで働く姿は将来のロールモデルになるでしょう。

さまざまな特性や能力をもった人々が、それぞれの個性を生かしながら活躍する社会の実現に向けて、より多くの機関や企業で法定雇用率の達成が望まれます。

(関連記事)
令和2年は民間企業で過去最高の実雇用率、公的機関も前年を上回る雇用障害者数|障害者雇用状況報告書集計結果

【参考】
令和3年 障害者雇用状況の集計結果|厚生労働省
令和元年 障害者雇用状況の集計結果|厚生労働省
平成29年 障害者雇用状況の集計結果|厚生労働省
平成27年 障害者雇用状況の集計結果|厚生労働省
教育委員会における障害者雇用に関する実態調査 国立教員養成大学・学部における障害のある学生の支援に関する実態調査|文部科学省
都道府県教育委員会における障害者雇用好事例集(R3 .10 .12作成版)|厚生労働省

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