2022/11/09
アビリンピック過去問題|第40回(2020)パソコン操作とパソコンデータ入力
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視覚障害者限定の「パソコン操作」と知的障害者限定の「パソコンデータ入力」。障害を持つ方には「難しいのでは?」と思われやすい分野ですが、選手たちの入力・操作の正確さや速さを見れば十分実務をこなせることが分かります。今回は、2020年全国アビリンピックの「パソコン操作」「パソコンデータ入力」の競技内容を見ていきましょう。
もくじ
視覚障害者対象の競技種目「パソコン操作」と2020年大会の特徴
アビリンピック競技種目「パソコン操作」は、視覚障害者のみが参加できる競技です。主にMicrosoftのExcelを使ったデータの処理やインターネット検索などを行う技能を競います。
パソコンの操作にあたって「読み上げソフト」や「拡大ソフト」を用いるのが本競技種目の大きな特徴。パソコン画面を目で確認することが難しいためです。データの領域や関数入力に関するヒントを見ながらの操作が困難ですので、選手はデータ領域を調べるショートカットキーや関数を記憶して操作を行います。
2020年全国大会の「パソコン操作」では、従来のデータ入力・処理やインターネットでの情報検索に加え、Microsoft Wordを使った差し込み印刷も出題されました。これまではWordの操作は求められませんでしたので、課題レベルがやや難化したと言えるでしょう。
コロナ禍で行われた2020年大会には6名が参加。金賞なし、銀賞、銅賞、努力賞が1名ずつという結果でした。
課題内容については、当日課題の事前公開はないものの、その練習となる競技課題Aが大会前に公表されます。競技課題Aに出てくる関数や操作は本番でも使えるものですので、繰り返し練習して使いこなせるようになっておくことが重要です。
大会後の講評では、選手たちが競技課題Aをよく勉強して本番に臨んでいたことを評価していました。その上で、より実務に対応できる技能を習得できるよう、Excelの基本的な関数の理解、Wordの操作力、インターネット検索力のさらなる向上を求めています。
「パソコン操作」の制限時間と評価ポイント
「パソコン操作」の制限時間は100分です。2020年は11:00~12:40の時間帯で競技が行われました。
主な評価ポイントは、以下の5点です。
<パソコン操作の評価ポイント>
- データ領域を調べるショートカットキーや関数の利用方法を暗記して操作できているか
- 列タイトルやセル書式などからデータの詳細を理解できているか
- 目的に合わせて関数やグラフを組み合わせることができているか
- ネットでの検索結果を適切に入力できるか
- Word文書を指示通りに操作できているか
- 指示通りに文書を保存できているか
細かな指示を見落とさず、効果的に関数を用いて課題をこなせるよう工夫しつつ練習を重ねましょう。
「パソコン操作」の課題概要
2020年全国大会の「パソコン操作」では、大きく分けて4つの課題が出題されました。1つめから3つめの課題はExcelを用いたデータの入力・処理に関する問題、4つめはインターネット検索問題です。
データの入力・処理に関する問題では、Excelの基本的な関数を使いながら、勤務時間の計算やテーブルの書式設定、グラフ作成とグラフの視覚的要素の修正などの操作が求められました。さらに、今大会ではWord文書を使った差し込み印刷の設定も出題されました。
一方、インターネット検索問題では、指定のWebサイトから指定されたExcelファイルをダウンロードしてシートの末尾にコピーし、「整理番号」と「順位」を使ってデータを扱う内容が出題されています。
4つの課題の概要は、以下のとおりです。
<課題1の概要>勤務時間
求められる作業 | 必要とされる主な操作 |
データを区切る | 「データ」タブの「区切り位置」を使って列に分割する |
勤務時間を計算する | CEILING.MATH関数で15分単位で切り上げる
FLOOR.MATH関数で15分単位で切り下げる 15分を0.25時間とする小数として合計する セル書式を「数値」で小数点以下1桁とする |
データをテーブルにする | 作成したデータを「ホーム」タブの「テーブルとして書式設定」でテーブルにする |
勤務時間等の集計を算出する | 「デザイン」タブの「集計行」で計算する |
<課題2の概要>顧客名簿
求められる作業 | 必要とされる主な操作 |
文書の発行日を挿入する(Word) | 西暦の年月日が表示される形式にする
ファイルを開いた日付が自動的に更新されるようにする |
文書の修正(Word) | 指定の文字を半角に統一する
文書内のコメントを参照し修正する 文字の均等割り付けを行う |
顧客の年齢を入力する | 指定されたシートに記載されている顧客の年齢を指定されたセルに記入する
年齢のあとに「歳」が表示されるようにする |
顧客の性別によって商品を変える | 顧客の性別を参照し、性別に応じたおすすめ商品を入力する |
名簿の重複の処理 | 重複記載されている顧客に「重複」と表示されるようにする
シートをコピーして指定の位置に挿入し名前を変更する 重複している顧客を削除する |
差し込み印刷の設定(Word) | 宛名の「姓名」の文字列を差し込みフィールドを挿入して置き換える
本文と記書きにある「お勧め」の文字列を差し込みフィールド「お勧め商品名」を挿入して置き換える |
ファイルの保存(Word) | 差し込み印刷を設定して結果のプレビューの状態で、最後のレコードのみをPDFファイルとして保存する
保存の際は、コメントを非表示にして保存する |
<課題3の概要>売上一覧
求められる作業 | 必要とされる主な操作 |
2つの表から各月の売上金額を出す | VLOOKUP関数を用いて各月の売上金額を出す
指定の表に名前の定義を設定して関数の中で使用する |
上期、下期、総合計を出す | SUBTOTAL単数を用いて上期合計、下期合計、総合計を求める |
罫線の種類の設定等 | 表の指定部分の線を二重線に設定する
数値を3桁区切りにする 集計表の数値に通貨記号¥を表示する |
グラフ作成 | マーカー付き折れ線グラフを作成する
グラフタイトルを変更する 数値軸の最大値と最小値を設定する 凡例を「右」に表示する グラフエリアの横幅を20cmに設定する 年間販売個数が最も多い商品のグラフの線の色と太さを設定する 年間販売個数が最も多い商品の中で販売個数が最も多い月のデータラベル「値」を表示する |
商品別の売上金額を比較できるグラフの作成 | 年間売上金額の多い順に並べる
千円未満の桁数をカットして表示する 数値軸の軸ラベルを設定する グラフの左上角が指定セルになるよう移動する |
<課題4の概要>インターネット検索
求められる作業 | 必要とされる主な操作 |
検索とダウンロード | 指定のサイトから指定された条件に該当するファイルをダウンロードする |
シートのコピーと入力 | ダウンロードしたファイル内のシートを課題ファイルのシートの末尾にコピーする
連続データで整理番号を入力する 指定された列に順位を入力する |
順位と対応する文字列の表示 | 指定のセルに順位を入力するとそれに対応する文字列(市町村名)が表示されるようにする
指定のセルに文字列(市町村名)を入力すると対応する順位が表示されるようにする |
知的障害者対象の競技種目「パソコンデータ入力」と2020年大会の特徴
知的障害者のみを対象とする競技種目「パソコンデータ入力」は、指定された内容をいかに素早く、正確に入力できるかが重要な競技です。
課題は大きく分けて3つ。1つめの「アンケート入力」では、回答が書き込まれたアンケート用紙の内容を入力ルールに従ってMicrosoft Accessの画面に入力します。2つめの「ワープロ修正」では、提供されたWord文書にある間違いを見つけ、入力ルールに基づいて修正。3つめの「帳票等作成」では、Excelを使って見本通りの帳票等を作成します。
2020年大会はほぼ従来通りの出題内容となりましたが、「ワープロ修正」に使われる課題文書の量が増えたことで、やや難化しました。また、「帳票等作成」では日付の指定が和暦から西暦に変更されています。
今大会での参加者数は21名で、金賞なし、銀賞1名、銅賞2名、努力賞1名でした。
「パソコンデータ入力」で好成績を収めるには、選手自身の集中力・持続力、正確なタッチタイピングのスキルがポイントです。さらに、課題ごとに指定される入力ルールやファイルの保存に関する指示も、しっかり守らなければなりません。特に「ワープロ修正」や「帳票等作成」では、時間内に課題を終わらせるだけでなく、見直しの時間も確保してミスがないか十分にチェックしましょう。
「パソコンデータ入力」の制限時間と評価ポイント
「パソコンデータ入力」の制限時間は、1課題あたり30分です。「アンケート入力」と「ワープロ修正」が終わると10分間の休憩時間があります。
2020年大会では、13:45ー16:15の時間帯で競技が実施されました。
「パソコンデータ入力」の評価ポイントは、主に5つあります。課題ごとにポイントが少し異なりますので、本番に向けた練習でもこうした点を意識しながら取り組むとよいでしょう。
<パソコンデータ入力の評価ポイント>
- データ入力の速さ
- データ入力の正確さ
- いかにミスなく多くのアンケートを入力できるか(アンケート入力)
- いかに早くミスを発見して正確に修正できるか(ワープロ修正)
- 文字・数字の入力だけでなく数式や書式設定も使い、体裁の整った帳票作成ができるか(帳票等作成)
「パソコンデータ入力」の課題概要
「パソコンデータ入力」に事前課題はありません。ただ、本番前に公開される競技課題Aには、アンケートと入力フォームの例、ワープロ修正の例、作成する帳票の例などが掲載されています。それらの見本や例のどおりに入力できるよう、事前に練習をしておきましょう。
大会当日は、筆記用具とメモ用紙の持ち込みが可能です。会場にも、修正のメモ書き等で使えるボールペン(赤・黒)や定規類が用意されます。ペンでの書き込みやメモをうまく使い、効率的に進めていきましょう。
3つの課題の概要は、以下のとおりです。
課題 | 必要とされる主な操作 |
アンケート入力 | アンケートの回答が記入されたものが配布され、それを見ながら入力フォームに入力する
入力する文字の種類・半角全角等の指定に従って入力を進める |
ワープロ修正 | A4で5枚分の文書をチェックして修正する
英字・数字も含めて全て全角文字で修正する ローマ数字は全角の算用数字に修正する |
帳票等作成 | 請求書を作成する
見本どおりの位置に文字列や数字・記号を入力する 必要な箇所に罫線の種類を設定する データの最後に不要なスペースがないか確認する 英数字、記号は半角で入力する ひらがな、カタカナは全角で入力する 指定のセルに計算式を入力する |
まずは正確に入力・修正できること、次に速度を上げることといったように、段階的に練習をレベルアップさせつつ、自分に合った作業の進め方やチェックの仕方を工夫してみるとよいでしょう。
【参考】
アビリンピック 公式サイト
全国障害者技能競技大会(全国アビリンピック)|JEED