【障害者の在宅ワーク】データ入力(1)必要な設備・制度【職域と事例】


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障害者の在宅ワークで多く見られるデータ入力。初心者でも始めやすい仕事であるものの、速さや正確性も求められる職域です。どのような設備・制度があれば、より効率的にデータ入力を進められるのでしょうか。障害者が在宅ワークを行っている事例とともに、具体的な取り組みをご紹介します。

「データ入力」とは

在宅ワークで多く目にする「データ入力」とは、企業情報、顧客情報、アンケートの解答、議事録など、さまざまな情報をパソコンの指定のフォームやファイルに入力していく業務です。

実際に入力される書類の例としては

  • 会員申込書
  • 応募ハガキ
  • 登録用紙
  • 企業情報
  • 顧客情報
  • アンケートの回答
  • 求人広告の内容
  • エクセルデータをデータベースに登録
  • 誤字脱字チェック

などがあります。

指定された項目をフォーマットに沿って入力していくというシンプルなものが多く、リズムをつかめればどんどん進められるでしょう。

在宅ワーク初心者でも取り組みやすい

データ入力で入力するのは日本語の文字列、数字、記号、アルファベットなどです。タイピングスキルがありWordやExcelといった基本的なアプリケーションを使える方なら、未経験や初心者でも仕事を始めやすいのが大きな特徴です。

データ入力は、慣れてしまえば1人で黙々と作業を進められる業務。他の人とのコミュニケーションを必須とする業務が苦手な方や、長期プロジェクトでは体調が心配という方にも取り組みやすい職域です。

ただし、入力するのは発注元である企業にとって重要な情報となります。たとえば顧客情報一覧を入力する場合、電話番号なら数字が1つ違うだけ、入力するセルが1つずれるだけで、顧客への連絡がとれなくなったりクレームにつながったりすることも。アンケートの回答も、発注元企業にとっては将来の事業戦略や商品開発に関わる大切なデータですので、決しておろそかにはできません。

データ入力業務を担うメンバーには、発注元企業が必要とするデータを素早く、かつ間違いなく入力できるよう常にスキルアップが求められます。

データ入力に必要な設備や機器

データ入力の在宅ワークに必須の設備や機器は、パソコンとインターネット接続環境です。この2つに加えて、会社によってはWebカメラやヘッドセット、サブモニターの貸与、社内ネットワークへのアクセス環境などを用意するところもあります。

多くの企業では、在宅ワークを行うメンバーが使う機器類は会社から貸与されるようです。

<データ入力で使われる設備・機器>

設備・機器 会社からの支援 備考
パソコン一式 原則的に貸与 自分のパソコンを使う場合はセキュリティ保証が必要
Webカメラ 多くで貸与
ヘッドセット 多くで貸与
サブモニター 多くは無し 一部の企業ではサブモニターの貸与あり
自宅のインターネットの接続環境 一時金支給 支援がない場合あり
社内ネットワークへのアクセス環境 会社側で整備 またはグループウェア等を利用

自宅のインターネット環境整備や電気代に関する支援では、実施している会社もあればそうでないところもあるといった状況です。電気代を支援している会社では「稼働1日あたり100円を支給」という例がありました。

データ入力を行う企業が導入した実際の制度

在宅ワークのデータ入力は未経験者にも始めやすい業務ですが、「放っておいてもスキルアップできる」というものではありません。

実際に在宅ワークでデータ入力業務を担う企業では、本番の業務に入る前にテスト入力や研修を行ったり、より仕事がしやすい環境を整えるための一時金を支給する制度を導入したりするところがあります。

また、同僚や上司、支援者と直接顔を合わせる機会が大きく減少する在宅ワークだからこそ、リアルタイムに対応できる体制、産業医・精神保健福祉士とのオンライン面談体制、定期的な訪問制度を整備した企業も見られます。

<データ入力を担う企業で運用されている制度>

  • 同僚・上司と直接対面する研修制度
    • チームビルディング
    • 仲間との一体感
    • 人柄を知ることによるディスコミュニケーションの軽減など
    • 出社を伴う場合は会社が移動にかかる必要を負担
    • 遠隔地の在宅勤務者はエリアごとの会場で研修を実施
  • 会社の基本を知る研修制度
    • 会社の基本的な情報を知る
    • 社内の連絡メールの仕方
    • データのやりとり方法
    • 就労生活リズムに慣れる
  • スキルアップ研修・OJT
    • メンター制度で「何度でもきける」環境
    • 実践的な入力練習
  • 新規プロジェクト始動前のテスト入力
    • 案件ごとの入力方法のチェック
    • 入力ミスに対するフィードバックと練習
  • オンラインでの健康管理体制
    • 業務日報に健康管理に関する項目を記載
    • 産業医や精神保健福祉士とのオンライン面談
  • 質問・相談へのリアルタイム対応体制
    • 在宅勤務者からの質問・相談にいつでも応じられるよう担当者を配置
  • 定期的な面談
    • オンライン面談b
    • 在宅勤務者の自宅を訪問しての面談

この中で特に重要なのは、研修制度や健康管理に関する制度でしょう。いつでも適切な相手に相談できる環境は、それだけで業務の効率アップや健康管理をしやすくなるからです。

もちろん、データ入力の在宅ワークに上記すべての制度が必要というわけではありません。ただ、「なかなか業務が進まない」「仕事の相談しにくい」といった課題がもしあるなら、こうしたさまざまな制度が解決の糸口になる可能性があります。

職場の状況やプロジェクト内容などに合わせて、役立ちそうな制度を検討・導入していきましょう。

データ入力の在宅ワーク事例

障害をもつ方が在宅ワークでデータ入力を担う事例は比較的多く見られます。今回ご紹介するのは、在宅社員数300名以上を抱える株式会社スタッフサービス・クラウドワークと、データ入力のために独自システムを開発した株式会社ディーソルの取り組みです。それぞれ異なる方向性の取り組みですが、いずれもデータ入力業務で効果を発揮しています。

スタッフサービス・クラウドワークの取り組み

スタッフサービス・クラウドワークは、人材総合サービス会社であるスタッフサービスグループの障害者雇用を担当する企業です。在宅ワークでの就労に特化した障害者雇用を進めており、東北から沖縄まで、通勤困難な重度身体障害者や難病の方などを含む300名超が在宅ワークの社員として働いています。

同社が担う業務は、データ入力・登録、登録済みの情報の更新・修正、インターネットを利用した情報収集や調査など。勤務スケジュールはそれぞれの生活スタイルや体力に合わせて設定可能で、原則として残業はありません。

在宅社員同士のコミュニケーションや一体感、円滑な業務の遂行のために、さまざまな制度を整えています。

<スタッフサービス・クラウドワークの取り組み>

設備・機器の整備 パソコン一式(貸与)

Webカメラとヘッドセット(貸与)

障害に応じた入力機器(応相談)

入社式 オフィスに集合(交通費支給)

チームビルディングが目的

自分の思いや考えを共有

ペアを組んで自己紹介・他己紹介

新人研修(入社から半年間) 会社のことを知る

就労生活に慣れる

同期同士の関係性を深める

1か月以降から配属先チームに入る

Web会議システムを使ってOJT

フォローアップ研修(入社から半年後) オンラインで実施

同期を集めて振り返りを実施

成長の実感

エリアミーティング 年1回実施

エリアごとに社員が集まる

一緒に働く仲間との一体感を得る

業務 担当業務ごとにチーム制で取り組む

1人あたりのノルマは無し

「教える」「手伝う」が容易な環境

健康管理 体調に応じた作業内容を日々調整する

1日3回のMTGで体調確認

コミュニケーション Web会議システム、メールを利用

MTG時に雑談タイムを設定

在宅ワークでは社員の勤務状況を把握しにくいという点から、1人あたりのノルマを決めたいと感じることもあるでしょう。

しかし、障害をもつ方には体調が急変しやすい、疲れやすい、特定の業務が苦手など、それぞれの特性があります。そうした変化に柔軟に対応するには、1人ひとりにノルマや業務目標を設定するよりもチーム制で取り組むほうが、負担が少なく効率的に進められるかもしれません。

データ入力業務は一人で黙々と進められる作業が多いもの。だからこそ、定期的な情報共有や雑談、ときに実際に仲間に会って話す機会やお互いに協力できる体制などがいっそう大切になります。

株式会社ディーソルの取り組み

IT関連事業を手がけるディーソルでは、独自に開発した地域分散入力システム「VE21」によるデータ入力を行っています。最大の特徴は、個人情報保護に対応した安全でスピーディな入力を可能とするVE21の仕組みです。

VE21を用いたデータ入力の流れは、主に以下のようになっています。

<VE21を用いたデータ入力の流れ>

  1. 入力原票をイメージデータ化する
  2. 設定された項目ごとにイメージデータを切り出す
  3. 全国の在宅クルーが専用システムの画面を見ながら入力業務を実施(分散入力)
  4. 1つのデータを2人の在宅クルーが別々に入力し、一致しないデータをスタッフが確認し修正
  5. 分散入力されたデータをシステムで1件のデータに結合する


出典:データ入力サービス|株式会社ディーソル

切り出されたイメージデータは、たとえば「郵便番号だけ」「氏名だけ」といった形になります。そのため、在宅ワークで業務を遂行するメンバーの手元で「特定の氏名の人の住所」になることがありません。また、イメージデータとして切り出すことで入力原票を移動させる必要もなく、移動に伴う原票の紛失、情報漏洩を防ぐことも可能なシステムとなっています。

さらに、ディーソルではVE21とともに次のような仕組みも整えています。

<ディーソルの取り組み>

マニュアル作成 案件ごとに入力ルールを作成
事前テスト実施 事前に当該案件のための入力テスト実施

入力間違いについて教育を実施

VE21 独自開発した入力システム

個人情報保護に対応

全国の在宅クルーがそれぞれのスケジュールで稼働

同一項目の連続入力で高効率

24時間いつでも入力要員がいる体制

納期管理 入力センターが担う

必要に応じてセンターに出社するクルーが業務遂行のヘルプに入る

また、入力業務を担える人数に余裕があるなら、同じ原票を2人が別々に入力したものが一致しないものを中心に原票と照合し修正していくというやり方は、とても合理的です。同一項目を連続入力する方法も「漢字が苦手な場合は数字のみの項目を任せる」といった切り分けがしやすく、作業効率アップに役立つでしょう。

設備や制度の整備でデータ入力を効率的に

在宅ワークが初めての方でも取り組みやすいデータ入力は、入力すべきデータを渡して納期を設定すれば簡単に業務を進められると考えられるかもしれません。しかし、企業から大切なデータを預かって入力していくため、速さと正確さの両方が必要です。

入力ルールの周知、入力練習、より入力を進めやすい設備・体制などを整えることで、より効率的で精度の高い入力業務が可能になるでしょう。

会議や面談等に必要なWeb会議システムは、データ入力の研修や業務上の相談・連携でも大活躍します。「分からないことをすぐに相談できる」「すぐに手伝える」という体制は、在宅ワークの従業員にとって安心できる環境づくり、適切な業務管理や体調管理につながります。

データ入力業務を始めようという方や始めたばかりの方は、今回ご紹介した取り組みを参考に、ご自身の事業所や作業環境に必要な仕組みを検討してみてください。

【参考】
株式会社スタッフサービス・クラウドワーク 公式サイト
株式会社スタッフサービス・ビジネスサポート|チャレンジ ホームオフィス
障害者支援|株式会社ディーソル

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