2020/09/21
アビリンピック過去問題|第37回全国(2017)家具と木工
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木材を加工して作品製作を行うアビリンピック競技「家具」と「木工」。「家具」の競技課題には原寸図の作成が加わり、「木工」では選手自身による長さ決めが必要となるなど、求められる加工や組立の技術も上がってきています。また、5時間〜6時間という長丁場の種目なので、選手の体力・集中力・時間管理能力も問われます。
実際にどのような競技課題が出されたのか、早速2017年開催の第37回全国アビリンピックで出題された課題を見てみましょう。
もくじ
競技種目「家具」とは? 2級家具製作と同レベルの出題
アビリンピック競技種目「家具」は、支給された材料で指定の家具を製作する種目です。2017年の全国アビリンピックでは、花台の製作が出題されました。
身体障害者・知的障害者・精神障害者が参加できます。
2017年全国大会の課題内容に新しく加わったのは、花台を製作する際に原寸図(脚部の側面図)を作成すること。そのため、技能検定「2級家具製作(家具手加工作業)」課題と同レベルの技術が問われるようになりました。
家具製作最大のポイントは、制限時間内に作品を完成させられるかどうかです。特に花台の脚部は、左右の側面が同じ形状・正面から見て左右対称という2点を満たさなければならず、仮組みした側面を原寸図に置いて「形状が合っているか」「ねじれがないか」等を細かく確認する必要があります。板同士の接合や角材同士の接合の仕口加工も評価対象です。
講評によれば、2017年全国大会で評価を分けたポイントは主に3つありました。
- 形状をきちんと把握し、正確な寸法になっているか
- 原寸図を活用して、各部材の位置関係や仮組時の形状等を適宜確認しているか
- 昼休みの1時間を接着硬化時間として活用するなど、時間管理がうまくできているか
競技種目「家具」では、正確な寸法で時間内に作品を完成させるスキルが求められています。
「家具」で支給されるもの・持参するもの
材料の他に多くの設備・機械を使う家具製作。必要な物の多くは、競技会場に用意されていますが、選手自身が持参しなければならない工具類もたくさんあります。
まず、花台の製作の材料として、以下のものが支給されます。
<支給材料>
- 甲板1(1枚):610×301×20.5
- 甲板2(1枚):120×301×20.5
- 前脚(2本):500×46×28.5
- 後脚(2本):490×46×28.5
- 幕板(側)(2枚):200×46×22.5
- 幕板(前)(1枚):460×47×22.5
- 幕板(後)(1枚):460×46×22.5
- 脚貫(2本):250×31×22.5
- つなぎ貫(1本):500×46×20.5
- 原寸図作図板(1枚):600×300×4
- 木ねじ(8本):45(呼び径4.5)
- 接着剤:酢酸ビニル樹脂エマルジョン
材料に過不足や不備がある場合は、競技委員に申し出ましょう。
作業中のミスで材料が足りなくなった場合も材料は再支給されます。ただし、評価の際に減点対象となるため、なるべく再支給を受けずに完成させましょう。
材料以外で会場に用意されている設備・機械・用具などは以下の物です。
<会場に準備されているもの>
- 立式作業台、座式作業台、折りたたみ椅子
- 摺り台
- のこびき台
- 角のみ盤、電動ドリル、卓上ボール盤
- 機械側置
- マグネットベース
- 隙間ゲージ
- 手許照明
- コンセント
- ボンド刷毛
- バケツ
- プラスチック・パレット
- 草ほうき・ちりとり・ウエス
多くの工具類は選手が大会当日に持参します。持参できるのは以下のものだけなので注意しましょう。
<選手が持参するもの>
- 両刃のこぎり、胴付のこぎり、ほぞびきのこぎり
- 平(手)かんな、小かんな、きわかんな、長台かんな
- 追(大)入れのみ、向持ちのみ、薄(突き)のみ、かき出しのみ
- ものさし、さしがね、ノギス、直角定規(スコヤ)、斜め定規、挽き当て定規
- 白書き
- 筋けびき、ほぞ(のみ)けびき、長さおけびき
- 玄のう
- 端金
- 平行クランプ
- ドリル(木ねじ下穴用とだぼ穴用)
- ドライバ(プラス:呼び径4.5用)
- だぼ(φ10mm)
- 角のみ盤用治具
- 鉛筆、消しゴム
- 座布団、毛布等の敷物など
- のりべら
- 打ちあて
- といし
- 油つぼ
- 作業服、作業帽、作業靴
- 防塵メガネ
- 飲料
ただし、競技課題専用に位置決めされたけびきや加工された治具・工具は使用できません。競技中の用具類の貸し借りは不可です。
持ち込みが認められている上記の物は、同種の物であれば3個以内に限り予備を持って行けますので、忘れ物がないようにしっかり準備しましょう。
「家具」の制限時間と課題概要
アビリンピック競技「家具」は、5時間半(最大6時間)という競技時間の大変長い種目です。体力だけでなく、各部材を正確に加工する集中力や技術も不可欠。注意事項や仕様に従いながら、完成度の高い作品を作りましょう。
「家具」の制限時間
競技種目「家具」の標準時間は5時間30分。原則として標準時間内に作品を完成させます。標準時間を過ぎると、過ぎた時間分だけ減点されてしまいます。
競技開始から6時間経っても完成させられない場合、作業はそこで打ち切り。打ち切りになると、標準時間を過ぎた分の減点と未完成であることの減点があるため、評価は大きく下がってしまうでしょう。
標準時間ぎりぎりまで作品の完成度を高め、打ち切り時間に入らないうちに競技終了を競技委員に申し出ることで、減点を減らせます。
「家具」の課題概要
2017年全国大会の課題作品は、花台の製作。脚部が特徴で、以下の条件を満たす必要がありました。
<花台脚部の特徴・条件>
- 左右の側面が対象
- 正面から見て左右対象
- 正面から見ると脚が平行に見える
- 側面から見ると脚は平行ではない
こうした脚部を正確に作れるかどうかが、大きな評価ポイントです。
競技に際しては、まず注意事項を確認しましょう。作業の安全性や競技の公平性に関する取り決めです。
<競技種目「家具」の注意事項>
- 家具製作作業に適した作業服、作業靴、作業帽を着用する
- 卓上ボール盤、角のみ盤、電動ドリルを使う時は必ず防塵メガネを着用する
- 卓上ボール盤、角のみ盤を使う場合は、競技委員の指示に従って使用する
- 角のみ盤を使う場合は、テーブル傾斜をせず治具を使用して作業する
- 競技作業が終了したら、作業が終了したことを競技委員に申し出て、作品と原寸図を提出する
- 競技中、試験問題以外の紙に書いたメモや参考書などの参照は禁止
- 競技中、携帯電話(電卓機能の使用も含む)などの使用は禁止
次に、花台製作の仕様です。作業の手順や内容、接合の仕方などが決められています。仕様を守れないと減点対象。常に確認しながら作業を進めましょう。
<競技種目「家具」の仕様>
- 作品製作は、必ず原寸図を描いた後にとりかかる
- 甲板1と甲板2の接合は、5枚組接ぎ(上端留め)
- 前後の脚と幕板の接合は、小根付きほぞ接ぎ
- 前後の脚と貫の接合は、二方胴付き
- ほぞ穴加工には、角のみ盤を使用してよいが、ほぞの加工は手加工に限る
- 左右の脚と幕板の接合は、前後とも、だぼ接合(φ10mm)
- 脚貫とつなぎ貫の接合は、片胴付きほぞ
- 甲板と脚部の取り付けは、木ねじ締め
- 木ねじの下穴加工には、卓上ボール盤または電動ドリルを使用
- 仕上げは、かんな仕上げ(サンドペーパーはダメ)
- 各部材は、課題図に示した面をとる(それ以外の箇所は糸面)
- 脚については、採点の関係上「脚先面」を取らない
- 甲板1と甲板2、脚部の穴部材とほぞ部材(幕板・脚貫)は、加工および仮組み調整が完了したら、検査を受けてから組み立てに着手する
- 組み立てには、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤を用いる
実際の競技では、接合部分の穴とほぞの加工が正確にできたかどうかが、評価の分かれ目となりました。
競技種目「木工」とは? 知的障害者による小箱製作競技
アビリンピック競技種目「木工」は、のこぎり・のみ・かんななどを使って課題作品を製作する種目です。2017年全国アビリンピックでは、例年通り蓋付き小箱の製作が出題されました。ただし、2016年大会からは一部の支給材料が仕上がり寸法より10mm長くなっています。選手自身が長さ決めをしなければならないため、同じ箱の製作でも作業量が増え、少し難しくなりました。
木工には、知的障害者のみが参加できます。
競技の評価ポイントは、加工精度・できばえ・作業時間・作業態度の4点です。加工精度やできばえでは、支給された材料をきちんと仕上がり寸法に加工する、蓋材の留め加工と組立をきちんと正確に行う、本体の三枚接ぎの長手材の加工を正確に行うといった点に注意。作業時間については、本体よりも先に蓋を加工して組み立て、蓋の硬化時間中に本体の作業を進めるといった工夫が求められます。
2017年大会で金賞を受賞した選手も、課題製作の練習段階では直角をうまく出したり三枚接ぎを隙間なく仕上げたりすることに苦戦したとか。何度も練習を重ねることが、完成度の高い作品製作のコツと語っています。
「木工」で支給されるもの・持参するもの
競技種目「木工」も、「家具」と同様に材料や設備・機械等が会場に用意されています。また、多くの工具類は選手が当日持参します。
まず、蓋付き小箱の支給材料は以下の通りです。
<支給材料>
- 天蓋枠 2本:370×27.5×15.3
- 天蓋枠 2本:270×27.5×15.3
- 箱側板 2枚:360×75.5×12.3
- 箱側板 2枚:260×75.5×12.3
- 天蓋裏桟材 2本:250×10.3×6.3
- 天蓋はめ板 1枚:314×214×5.5
- 箱底板 1枚:341×241×4
- 鉄釘 12本:25
- 鉄釘 16本:15
- 真鍮釘 6本:15
- ダボ 2本:100(φ6) ・接着剤:酢酸ビニル樹脂エマルジョン
材料は異常がない限り、原則として再支給・交換はできません。作業中にミスがあり、再支給されないと作品が完成しない場合には、材料の再支給・交換ができます。ただし減点対象になってしまうので注意してください。
次に、会場に用意されている設備・機械などを見てみましょう。
<会場に準備されているもの>
- 立式作業台、座式作業台、折りたたみ椅子
- 摺り台
- L型クランプ
- 面取り用ジグ
- 卓上ボール盤
- ボンド刷毛、ボンド用洗いおけ
- ハンドルータ・平ひも
- バケツ
- ウエスまたは綿タオル
- 移動集塵機
- 電気スタンド
会場に準備されているもののうち、摺り台、面取り用ジグ、平ひもについては、使い慣れたものを選手が持参してもOK。それ以外で選手が持参できるものは、以下の通りです。
<選手が持参するもの>
- 両刃のこぎり、胴付のこぎり、ほぞびきのこぎり
- 平(手)かんな、切り面かんな
- 追(大)入れのみ、突きのみ
- ものさし、スコヤ、留定規、挽き当て定規
- 白書き
- 筋けびき
- 直角木口台、留め木口台
- 玄のう
- 釘締め、釘抜き
- 打ちあて
- 端金
- きり(手もみ)
- 鉛筆、消しゴム
- 座布団
- のりべら
- といし
- 作業に適した服装
これらのもので同種のものは、予備として3個まで持ち込めます。競技時間中の工具類の貸し借りはできませんので、忘れ物がないようにしましょう。
「木工」の制限時間と課題概要
競技種目「木工」も「家具」と同様長丁場の種目。標準時間は30分ほど短くなっています。仕様や課題図に従い、正確な寸法で作品を完成させましょう。
「木工」の制限時間
競技種目「木工」の制限時間にも、標準時間と打ち切り時間の2種類があります。標準時間は5時間、打ち切り時間は6時間です。
標準時間を過ぎると、超過時間に応じて減点されます。6時間経っても完成させられない場合は作業打ち切りとなり、未完成であることの減点も加わります。
なるべく5時間以内にしっかり完成させられるように、作業速度を上げたり効率的な作業の手順を練習したりしましょう。
「木工」の課題概要
木工では、どのような材料で小箱を製作するかが課題図とともに事前公開されます。何を作るのか、どのように作るのか、何をする必要があるのか等が記載されていますので、よく確認してください。
2017年大会の仕様には、以下のような内容が記載されていました。
<競技種目「木工」の仕様>
- 会場に準備されたものや持参が許可されたもの以外の型板、ジグ類は使用できない
- 箱側板部材の長さ決めは、選手が行う
- 三枚組接ぎで、ダボ埋め用の穴あけは、競技者自身が卓上ボール盤を使用して行う
- 底板部分の段欠きは、競技委員がハンドルータを使用して行い、角さらいは競技者自身が行う
- 指定された面取り以外は、すべて糸面取りとする
- 天蓋枠留の組立、天蓋裏桟取り付け、箱部分の三枚組接ぎの組立、ダボ埋め込みには接着剤を用いる
事前公開される課題図には平面図・側面図・底板取り付け図・断面図があります。
基本的には毎年同じ課題内容ですが、2016年からは支給材料の長さ決めも必須に。課題図と支給された材料の寸法をよく確認してから作業を始めましょう。
木工は参加する選手のスキルが毎年上がっているため、高い完成度で仕上げる必要があります。