2018/05/26
「耳が聞こえない」から持てる視点を活かして生きる
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聴覚に障害を持つ松山健也さんが、路線バスの運転手になったことは報道でも大きく取り上げられました。
日本初の「ろう者」のバス運転士がデビューし活躍中!丨日本バス協会
いま、障害があるからこそ持てる視点を活用した社会参加はさまざまな方面に広がっています。
中でも今回は、聴覚に障害のある方の社会進出を取り上げてみます。
聴覚障害を持つバス運転手
先に上げた松山健也さんは、感音性難聴(細かい会話の内容などが聞こえにくい難聴)で補聴器を付けて生活しています。
運転の仕事はまず、運送トラックからキャリアをスタートさせました。ここで実績を築き、会社にも取引先にも実力を認められ、また、他の聴覚障害者ドライバーを指導し、業界の人材不足にも貢献してきました。
そして、小学生の頃からの夢だったバスの運転手へ転職。
当初は聴覚障害者がバス業界で就職する上での情報不足や、聴者とのコミュニケーションの壁に行き当たり、また採用されても同僚の理解を得られなかったりと苦労が続きます。
しかし、バス運転手としての技術を磨き、また機器を使ったコミュニケーション方法を提示するなど夢を諦めず努力を続けることで、理解者を増やしていきました。
このことには2016年4月の法改正も影響しています。
運転免許制度が改正され、聴覚障害者も補聴器をつけ一定以上の音が聞こえれば二種免許の取得が可能になったのです。
聴覚に障害があってもタクシーやバス運転手への道が開かれたのです。
松山さんの次の夢は、観光バスの運転手になって、聴覚障害者の旅行をプロデュースすることです。
聴覚障害の方がコミュニケーションのストレスなく旅ができる日も近づいていますね。
聴覚障害者=無言語コミュニケーションのエキスパート
株式会社サイレントボイスは、聴覚障害者のコミュニケーション能力に注目した研修を行っています。
言葉を介さないコミュニケーション=「無言語コミュニケーション」研修プログラム「DENSHIN」です。
「DENSHIN」の講師はみな聴覚障害の方です。
人は概念や感情を言葉で切り取って伝えています。実は言葉が先にあるのではなく「伝えたいこと」が先にあるのです。
研修では耳栓をして、言葉が聞こえない状態にします。
手話も禁止です。
ジェスチャーや表情、仕草で自分の伝えたいこと表現するのです。
スキルではなく「伝えようとする姿勢」「伝わるまで伝えようとする忍耐力」を養うことで、関係性が強まり前向きなコミュニケーションが育つのです。
また、このプログラムでは言葉を使わないので、外国の方も参加ができます。
無言語コミュニケーションは国をも超えてしまいます。
また、このサイレントボイスでは聴覚障害や難聴の就学児にむけたアカデミーを開催し、トップリーダーを育てる活動をしています。
この模様はNHK Eテレハートネットでも取り上げられました。
(参考)
株式会社サイレントボイス
DENSHIN(デンシン)丨サイレントボイス
ろうを生きる 難聴を生きる「夢に向かって勉強しよう~ある学習塾の挑戦」丨NHKハートネット
音楽もバリアフリーの時代へ「耳で聴かない音楽会」
また音楽に対してもバリアフリーという考えが生まれています。
「耳で聴かない音楽会」は、日本屈指の老舗プロオーケストラ、日本フィルハーモニー交響楽団と、メディアアーティスト落合陽一氏によるプロジェクトです。
ORCHESTRA JACKETやSOUND HUGといった音楽を体感するディバイスや視覚効果を使って、オーケストラの響きを身体で感じる音楽会です。
「音楽は耳が聞こえる人だけのものではない」という考え方は、今まであったでしょうか?
耳の聞こえに関わらず「楽しい」を共有できる。
第2回は2018年8月27日にオペラシティで開催予定となっています。
(参考)
耳で聴かない音楽会 落合陽一×日本フィルプロジェクト VOL.1丨日本フィルハーモニー交響楽団
障害があることで得られる視点が強みになる時代
耳が聞こえない人は、耳が聞こえる人たちの中にあって、「どうしたら伝わるか」独自の方法を磨いてきました。この「努力する力」、「伝えようとする力」は、社会のあらゆるシーンで求められています。
支援される側ではなく、社会を導く力になれるのです。
2018年4月、障害者雇用促進法が改正され、法定雇用率が引き上げられました。
法定雇用率の引き上げ(2018年4月)
事業主区分 | 従来 | 2018年4月1日以降 |
民間企業 | 2.0% | 2.2% |
国・地方公共団体 | 2.3% | 2.5% |
都道府県等の教育委員会 | 2.2% | 2.4% |
法改正について詳しくはこちらの記事で解説しています。
障害者雇用に関する法律 平成30年4月の改正点をまとめてみました
こうした制度の改革や、科学技術の向上が障害を持つ人の社会参加を後押ししています。
いま、障害があることで得られる視点が、新しい強みになる時代が来ています。