2020/01/21
障害者枠で就職した人の給料は?|平均月収と障害者枠のメリット
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一般枠で就職するか障害者枠で就職するか迷っていませんか?
障害者枠で就職する場合に一番気になるのが給料。
厚生労働省が5年に1度行う「障害者雇用実態調査」の結果から、障害者枠で就職した場合の給料について具体的に見てみましょう。また、障害者枠で就職するメリットも解説します。
厚生労働省の「障害者雇用実態調査」
厚生労働省は5年に1度、「障害者雇用実態調査」を行っています。
最新版の2018年度版では、これまでの身体障害者、知的障害者、精神障害者に加え、発達障害者についての調査も行われました。
調査対象は、全国の常用労働者数5人以上である民間事業所。無作為に約9,200事業所を抽出し、6,181事業所から回答を得ました。
主な調査項目は、
障害別の雇用実態(雇用者数・事業所規模・職業・賃金など)
障害者雇用場の課題と配慮
今後の障害者雇用の方針
となっています。
【参考】厚生労働省「平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表します」
障害別の平均月収と職業トップ3(2018年度)
障害者の雇用実態は、障害別に集計されています。対象は、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者の4者。重複して障害をもつケースについては、重複して計上しています。では、それぞれについて、平均月収、支払い形態、職業トップ3を見ていきましょう。
身体障害者
身体障害者の場合、半数以上が月給制で働き、身体障害者全体の平均月収は4者の中で最も高い21万5,000円となっています。
職業は事務職が最も多く、次に多いのが生産工程に関わる職業。専門的、技術的な職業に就いている人も少なくありません。
知的障害者
知的障害者は7割以上が時給制で働き、知的障害者全体の平均月収は4者の中で最も低い11万7,000円となっています。
職業については、生産工程に関わる職業やサービス業に就いている人が多く見られます。
精神障害者
精神障害者も約7割が時給制で働き、精神障害者全体の平均月収は12万5,000円。
サービス関係の仕事や事務、販売の仕事をしている人が多く見られます。
発達障害者
発達障害者全体の平均月収は精神障害者とほぼ同じ12万7,000円。ただし、週30時間以上で働く人の月収は精神障害者よりも高くなっています。
販売や事務仕事の他、専門的、技術的職業に就いている人が比較的多いのも特徴です。
一般枠の平均年収と平均月収
一般枠で就職した場合の平均年収は440万7,000円。2018年度の平均賞与は夏季が38万3,879円、冬季が38万654円であることを考慮すると、賞与を除く平均月収は約30万円になります。
つまり、収入の平均で見れば障害者枠のほうが一般枠より給料が安いのです。実際、一般枠から障害者枠へ変更になった人々からは「給料が下がった」という声が聞かれます。
【参考】
厚生労働省「平成30年分民間給与実態統計調査結果について」
厚生労働省「毎月勤労統計調査-平成30年9月分結果速報等」
厚生労働省「毎月勤労統計調査 平成30年2月分結果速報等」
障害者の平均月収が低くなる要因
なぜ障害者枠だと月収が低くなってしまうのでしょうか。主な要因は4つ考えられます。
1つめは、フルタイムの勤務ではないこと。非正規や週30時間未満で働く人が多く、月給制ではなく時給制で働く人が多いのも月収が下がる原因の1つです。
2つめは、給与の低い事業所で働いていること。障害者の場合、6割以上(精神障害者や発達障害者の場合は8割以上)が常用労働者100人未満の事業所で雇用されています。しかも30人未満の事業所で働く場合が最も多いようです。給与は企業によって異なりますが、全体の傾向として100人未満の事業所の平均給与は、100人以上の事業所の平均給与より低い傾向にあります。
3つめは、障害者枠で就職した人の場合、昇給や昇進がほとんどないことです。障害があるという理由だけで昇給や昇進がないのは障害者差別。しかし、差別でない場合でも、担当している業務の幅が狭かったり、勤続年数が短かったりするために昇給・昇進がない場合があります。
障害者は障害特性との関係でできる仕事が限られるケースは多く、高い賃金が支払われる職業に就きにくい場合があるのです。勤続年数については、新卒(大学)と比べ、障害者の職場定着率が相対的に低いことが関係しています。結果として勤続年数が短く、昇進につながりにくくなっていると考えられます。
【参考】
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(平成27年3月卒業者の状況)を公表します」
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者の就業状況等に関する調査研究(調査研究報告書No.137)サマリー」
4つめは、最低賃金の減額特例許可制度の適用です。障害があるという理由だけで最低賃金未満の賃金で雇用することは禁じられています。しかし、障害特性のために著しく労働能率が低い場合は、減額が許可されます。知的障害者の平均月収が他の障害者に比べて少ないのは、知的障害者の賃金が最低賃金未満に設定されているケースが多いことも関係しているのです。
障害者枠で就職するメリットと企業側のメリット
賃金を見ると、障害者枠で働くことには収入が低くなるというデメリットがあります。一方、企業にとっても障害者雇用にあたって、どのような配慮をすればよいか分からないという問題があります。
しかし、障害者枠での雇用は実は双方にとってそれ以上のメリットがあります。
障害者枠で就職するメリット
障害者枠で就職する場合、障害者にとってのメリットは、障害を開示することで配慮を得られ、法的にも保護されるということです。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の調査研究報告書(2017年)によると、就職から1年後の時点で障害者求人で就職した人の定着率は70.4%、一般求人(障害非開示)で就職した人の定着率は30.8%。障害を開示せずに就職するより、開示して就職する人の方が職場定着率は高いことが分かりました。
また、障害を開示していれば、必要な支援を得たり、施設・設備を設置・整備してもらったりすることも比較的容易になります。住宅手当などで通常より多い手当がもらえる可能性もありますし、障害者は解雇要件がとても厳しいため、解雇されにくいといったメリットもあります。職場定着が容易になれば勤続年数も増え、昇給・昇進の可能性が高まります。
企業が障害者枠で雇用するメリット
障害者を一般枠ではなく障害者枠で雇用することは、事業主にとっても4つのメリットがあります。
1つめのメリットは、法で定められた障害者雇用義務を達成できること。常用雇用労働者数45.5人以上の事業主には障害者雇用義務があります。常用雇用労働者数100人を超える事業主は、法定雇用障害者数以上の障害者を雇用しないと納付金も納めなければなりません。障害者枠で障害者を雇用できれば法定雇用障害者数の達成につながり、それによって調整金や報奨金を受け取ることができます。
2つめのメリットは、障害者雇用に関わる助成金を受け取れること。障害者枠で雇用した障害者は、助成金の対象になります。当該障害者が業務遂行するにあたって必要な施設や設備の設置・整備にかかる負担を軽減でき、支援者の配置も容易になるため、障害者を一般枠で雇用するよりも支援体制を整えやすくなるのです。
3つめのメリットは、企業全体のイメージアップにつながること。日本ではダイバーシティが推進されており、その中で障害者に活躍の場がある職場は、社会で高く評価されます。企業全体のイメージが良くなるとともに、入札などでも有利になる可能性があります。
4つめのメリットは、職場の環境改善につながること。障害特性に合わせて指示の出し方、マニュアルの作り方、事業所内のレイアウト、勤務時間への配慮といった措置は、柔軟な働き方や個人の特性に合わせた働き方の素地をつくります。障害者にとって働きやすい職場は、障害のない労働者にとっても働きやすい職場になるのです。
障害者雇用に関する相談窓口を活用しよう
障害者が一般企業で継続して働くには、企業側の経験不足などの理由から、まだ多くの課題が残っています。そのため、障害者側も企業側も、困ったときの相談窓口を知っておくと便利です。
障害者や企業が相談できる代表的な窓口は、ハローワークや地域障害者職業センター。障害者が仕事と生活全般について相談したい場合は、障害者職業・生活支援センターに相談するとよいでしょう。就労移行支援事業所を利用した人なら、就職後も職場定着についてのサポートを受けられます。
障害者雇用の相談先については「【障害者編】まずは理解しておきたい!分かりやすい障害者雇用促進法」でも紹介しています。