障害者雇用向け「サテライトオフィス」の特徴は? 事例・導入マニュアル


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2020年からのコロナ禍で導入が進んできたテレワーク。在宅勤務が多く見られる中で、第三の場所として注目されているのがサテライトオフィスです。障害者雇用向けサテライトオフィスの特徴は、業務サポートや定着支援を受けられるものが多いこと。障害者雇用でのサテライトオフィスサービスを4つの事例とともに紹介します。

サテライトオフィスとは?

サテライトオフィスとは、本社・支社・支店といった事業所とは別に設置されたオフィスのこと。「社員が必要に応じて仕事ができる場所」という性格のオフィスで、“本拠を中心としてみた時に衛生(サテライト)のように存在するオフィス”という意味で「サテライトオフィス」と呼ばれています。

サテライトオフィスの一般的な特徴は、通常の支社や支店とは異なり、数人程度の利用が想定された小規模なオフィスが多いこと。各社が独自に設置する場合もあれば、数社が共同で活用する場合もあります。自社で設置する場合は支店の一画をサテライトオフィスにするケースや社外に専用の場所を設けるケースがあり、共同利用の場合はサテライトオフィスサービス事業者を活用する例が多く見られます。

サテライトオフィスでは「常に同じ人が一定の時間在籍している」という前提がありません。また、インターネットを使って書類の受け渡しやコミュニケーションを行います。そのため、セキュリティが高く速い通信環境や機器を備えているのも大きな特徴です。

障害者雇用向けサテライトオフィスの特徴

サテライトオフィスは障害のないかた向けのところが多いものの、障害者向けに設置されているところもいくつかあります。

障害者雇用でサテライトオフィスが注目される理由は、主の2つ。1つは、働き方改革の一環として進められるテレワークの一形態として進められること。もう1つは、自社の障害者雇用で合理的配慮を十分に提供できないため、専門スタッフが常駐するサテライトオフィスを活用して障害者雇用を進めたいという理由です。

そのため、障害者の利用を前提としたサテライトオフィスでは、施設・設備のバリアフリー化がされていたり、利用者の業務やコミュニケーションのサポートを行っていたりするところが多く見られます。

一般雇用向けのサテライトオフィスは場所や機器の貸出、受付などはあるものの、利用者自身が仕事の段取りをつけたりコミュニケーションをとったりして仕事を進めていくのが基本で、業務サポートはありません。一方、障害者雇用向けサテライトオフィスでは、業務の進め方やコミュニケーションにまで関与してくれる場合があります。

こうした障害者雇用を前提としたサテライトオフィスの活用には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

<障害者雇用におけるサテライトオフィスのメリット>

  • 障害者にとって通いやすい
  • 就労の負担を軽減できるため、職場定着につながる
  • 障害者向けサテライトオフィスなら、バリアフリー化・合理的配慮がある
  • 共同利用の障害者向けサテライトオフィスなら、会社を越えた障害者同士の交流が生まれることもある

<障害者雇用におけるサテライトオフィスのデメリット>

  • 事業所とのコミュニケーションがとりにくい場合がある
  • セキュリティ問題が発生することがある
  • 障害者向けではないサテライトオフィスの場合、合理的配慮を提供しにくい
  • サテライトオフィスの利用者がその障害者のみだと、必要なサポートを受けられず働きにくくなってしまう

いずれのメリット・デメリットも、障害者雇用を支援するスタッフがサテライトオフィスに常駐しているかどうかがポイントです。支援スタッフからのサポートをいつも受けられるサテライトオフィスであれば、障害者雇用におけるサテライトオフィス活用のメリットは大きく、デメリットの多くを解決できるでしょう。

なお、就労移行支援事業所や就労継続支援事業所を運営するところでは、障害者の採用からサポートしているサテライトオフィスサービスもあります。

意外にある! 障害者雇用向けサテライトオフィス事例4選

障害者雇用向けのサテライトオフィスは、一般雇用向けのものよりも設置数が少ないのが現状です。しかし、優れたサービスが評価されているサテライトオフィスもあります。4つの事例を見ていきましょう。

スタートラインのサテライトオフィスサービス


出典:障がい者向けサテライトオフィスサービス|Startline

スタートラインのサテライトオフィスサービスは、東京・埼玉・神奈川で展開されています。施設内は完全バリアフリーで、あらゆる障害種別のかたに対応。サテライトオフィス内には障害者雇用支援の専門スタッフが常駐し、利用者一人ひとりに合わせた支援設計のもと、定期的な面談・カウンセリングも実施されます。

「これから採用したい」「採用した障害をもつ社員に合った職域を開拓したい」といった事業者の要望にも応えてくれるのが特徴です。

サテライトオフィス内には各社専用ブースが用意され、セキュリティは万全。一方で、休憩室は共同利用となっており、会社の枠を越えた障害者同士のコミュニケーションが可能です。

同社のサテライトオフィス利用で障害をもつかたの1年後の定着率は約80%を達成したとのこと。サービスを利用する企業にはAOKIやKING JIM、RIZAPといった有名企業の名前が多く見られ、信頼性の高いサービスを展開していることが分かります。

セルフ・エーのサテライトオフィスサービス


出典:セルフ・エーならでは!障がい者雇用で生産性向上ができる3つの理由|self-A

セルフ・エーのサテライトオフィスサービスは、就労継続支援A型事業所と結びついたサービス。全国に約1500名の障害者雇用ネットワークを持っているため、障害者を雇用したい企業とセルフ・エーのA型事業所で就労経験をもつ障害者とをマッチングできます。

企業に採用された障害者は、セルフ・エーのサテライトオフィスに転籍するというのが、他のサテライトオフィスサービスとは異なるポイントです。

働く障害者にとっては職場環境を変えずに働くことが可能で、企業にとっては障害特性に合った職場環境の準備や業務サポートについて、セルフ・エーといつでも連携できるというメリットがあるでしょう。

サテライトオフィスには常駐スタッフが配置されているとともに、各社専用の執務ブースが用意されているのでセキュリティ面でも安心です。

Kaienのサテライトオフィスサービス


出典:精神・発達障害に特化したサテライトオフィス|Kaien

Kaienは精神障害・発達障害をもつかたに特化したサテライトオフィスサービスを提供しています。これまでの職場で障害に対する理解があまりなかった、働ける自信がないといったかたの就労を常駐支援スタッフがサポート。それぞれの特性に合わせてスモールステップでの成長を支援し、成長につなげていきます。

サテライトオフィス内の執務スペースは、各社専用スペースが用意されます。同時に、スキルアップやキャリアアップにも注力。スキルアップ後は、サテライトオフィス勤務から本社勤務へ移るための支援も可能です。

大手コンサルティング会社であるアクセンチュアや、大手ゲームデバッグ会社の特例子会社デジタルハーツプラスによる利用実績があります。

チャレジョブのサテライトオフィスサービス


出典:サテライトオフィスサービス|challe-job

チャレジョブは、埼玉県と宮城県でサテライトオフィスを提供しています。ビル内にはサテライトオフィス用フロアの他、求人紹介・就労相談ができる「キャリアサポートセンター」、技能・資格取得や職業訓練ができる「チャレジョブセンター」もあり、採用から定着まで一貫した支援が可能です。

障害者の就労支援だけでなく、セキュリティサポートスタッフの常駐、余暇活動の支援などがあるのも大きな特徴です。

サテライトオフィスサービスの利用検討・決断から2か月で安定した雇用を提供できるスピーディーな対応と障害者施設等で実務経験をもつスタッフによるサポートにより、数十社のサテライト実績あり。従業員200名〜2万名の企業のサポートに対応しています。

障害者雇用でのサテライトオフィス導入マニュアル

実際に障害者雇用でサテライトオフィス導入を検討する手順や配慮に関しては、厚生労働省委託事業で作成されたパーソルチャレンジの「障害者のサテライトオフィス雇用推進マニュアル 2019」があります。

このマニュアルは、障害者の職場定着率を向上させるため、障害特性に配慮した職場の1つの選択肢としてサテライトオフィス導入を推進するために作成されました。

内容は、以下のような構成となっています。

<「障害者のサテライトオフィス雇用推進マニュアル 2019」目次>

  • はじめに マニュアル制作の概要
  • 序章
  • 第1章 サテライトオフィス勤務を利用した雇用方法
  • 第2章 サテライトオフィスを選択する理由
  • 第3章 サテライトオフィスの設置理由と求人情報の作り方
  • 第4章 サテライトオフィス雇用で従事してもらう業務の設計
  • 第5章 サテライトオフィス雇用の進め方
  • 第6章 サテライトオフィスでの雇用管理と業務管理方法
  • 第7章 サテライトオフィス雇用における人事制度
  • 第8章 サテライトオフィス雇用における定着支援
  • モデル企業
    • 株式会社テクノプロ・スマイル
    • インプラス株式会社
    • スタンデックス エレクトロニクス ジャパン株式会社

障害者雇用におけるサテライトオフィス導入の理由・求人、実際の職域創出や雇用管理、定着支援といった幅広い内容で構成されているのが分かります。

サテライトオフィス導入の全体像をつかむ際に役立つとともに、実際に導入して「あれ、ここはどうするんだっけ…?」というときにも便利なマニュアル。障害者雇用でサテライトオフィスの導入・拡充を検討する際は、ぜひご覧ください。

【参考】
パーソルチャレンジ「障害者のサテライトオフィス雇用推進マニュアル 2019」|厚生労働省

「障がい者としごとマガジン」でも、以下の関連記事でテレワーク導入と継続のポイントを解説しています。

(関連記事)
障害者のためのテレワークの導入と継続のポイント

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