2021/01/22
【合理的配慮好事例・第4回】精神障害者雇用でもキャリアアップ!テレワーク・単純作業から管理職に昇進しモチベーション向上も
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キャリアアップが難しいと言われる障害者雇用。勤続年数が短い、職域を広げられない、健康上の問題で管理職が難しいなど、さまざまな理由があります。
しかし、障害者を雇用する企業の中にはこれらの問題を克服し、障害をもつ従業員のキャリアアップやモチベーションアップに成功した例も。合理的配慮好事例シリーズ第4回は、精神障害者のキャリアアップに取り組んだ好事例を紹介・解説します。
もくじ
在宅勤務から管理職へ!障害者でもキャリアパスが見えやすい昇進制度 —合同会社DMM.com
合同会社DMM.comは平成30年度の障害者雇用職場改善好事例で優秀賞を受賞。評価された取り組みの1つに、能力に応じたキャリアアップの推進があります。
同社では、出社のある勤務が難しい従業員向けに在宅勤務制度を導入しています。
日々の連絡や定期面談では、障害をもって働く社員にとって無理のない目標を本人と一緒に決定。現在担当している業務内容が合っていない場合は、業務内容を本人に合った分野に変更します。
在宅勤務者には、作業を担当する「オペレーター」とオペレーターの作業内容を確認する「検品者」がいます。オペレーターとして働いて経験を重ね、高レベルの作業ができるようになると検品者になれる仕組みです。
キャリアアップのポイントは、本人に合った業務を担当することで自信を取り戻し、作業水準を上げていくこと。検品者になったあとも、経験を重ねつつ「事業所での勤務ができる」など一定の条件を満たすことで、管理者に昇進することも可能です。
管理者の業務内容は、在宅勤務をする社員の教育・指導・勤怠管理・サポート。障害や在宅勤務経験があるので、部下である在宅勤務者の立場にたったアドバイスができる管理職になれます。
障害をもって働く場合、離職や転職を繰り返すことが原因で昇進できなかったり、スキルアップのチャンスがなく業務内容が広がらなかったりという悩みが多いもの。
しかし、会社側に昇進制度がきちんと整備されていれば、「○○ができるようになったら△△への道が開ける」というキャリアパスが見えやすくなるでしょう。目標や目的地を具体的にイメージできるので、仕事へのモチベーションも上げやすくなります。
【参考】
精神障害・発達障害のある方の雇用促進・キャリアアップに取り組んだ職場改善好事例集(平成30年度)|機構
合同会社DMM.com 公式サイト
「働き続ける力」を身につけてトレーナーやリーダーへ —シダックスオフィスパートナー株式会社
平成28年度の障害者雇用職場改善好事例で最優秀賞を受賞したシダックスオフィスパートナー株式会社は、シダックスグループの特例子会社です。新宿・調布・渋谷に事業所があり、パソコンスキルをもつ障害者を中心に雇用を進めてきました。
受賞の2016年度時点で従業員89名中50名以上が精神障害者。42名が勤続年数3年以上となっており、定着率が高いのも特徴です。
同社の取り組みの1つは、精神障害者それぞれの特性に配慮しながら積極的にキャリアアップを図っていること。障害者雇用が社風に自然に溶け込むよう、「教育して今の業務に定着してもらう」「将来的には職責者に」の2つの観点から人事制度を設計しました。
“働き続ける力を身につける”ことを通して職場定着へ
キャリアアップには「働き続ける力」が必要です。同社では、従業員が“働き続ける力を身につける”ことを次のように定義しています。
<シダックスオフィスパートナー “働き続ける力を身につける”>
- 体調不良にならないための日常の生活力を身につける
- 仕事の専門性を高め仕事を完結できる責任感を身につける
- 仕事を通じて相互に信頼を高められる連帯感を身につける
- お互いを理解し協力しあうためのコミュニケーション能力を身につける
- 仕事を進めるためのマインドを高く持ち仕事に対するプライドを持つ
- 仕事やルール等を丁寧に分かりやすく説明できる教えられる力を身につける
(出典:中小企業等における精神障害者や発達障害者の職場改善好事例集(平成28年度)シダックスオフィスパートナー株式会社|機構)
毎日の健康チェック、休憩時間の細分化、外部カウンセラーによるカウンセリング環境の整備など、障害をもつ従業員が働き続けるための職場改善が、従業員の職場定着につながっているようです。
「トレーナー及びリーダー制度」と「キャリア推進室」でキャリアアップをサポート
障害者雇用というと「任せられるのは単純作業だけ」という先入観があるかもしれません。しかし、障害特性によっては作業遂行能力が高いにもかかわらず簡単な業務しか割り振られず、モチベーションが低下してしまうことがあります。
そこで、同社では「トレーナー及びリーダー制度」を導入し、高い能力を持ちながらモチベーションが低くなっていた従業員をトレーナーに選任。さらに、本人が考えた「改善好事例報告書」を提出してもらうことにしました。
他の従業員の例では、やはり単純作業でモチベーションを失っていたところをリーダーに選任。チームメンバーをまとめたり業務の割り振りを行ったり、最終確認を行ったりするのが仕事です。リーダーによるスタッフ面談(ピアサポート)も行います。
これらの改善により、従業員がやる気を取り戻したり責任感が向上したりするという効果が得られました。
トレーナーやリーダーに選任された従業員からは
「努力しただけ評価され、毎日会社に行くのが楽しい」
「『こういう形でやりたい』と提案すると受け入れてくれる土壌があって、窮屈でなくのびのびと仕事ができています」
などの声が聞かれています。
【参考】
中小企業等における精神障害者や発達障害者の職場改善好事例集(平成28年度)|機構
シダックスオフィスパートナー株式会社
精神障害者のキャリアアップに関する配慮ポイント
精神障害者のキャリアアップでDMM.comとシダックスオフィスパートナーに共通するのは、健康管理を重視し本人の特性や能力に合った業務を担当してもらうこと。
障害のない社員には簡単なことでも障害があると難しいことがあり、障害をもって働く方々は仕事で怒られる経験を多く重ねている傾向があります。ストレスが溜まりやすかったり疲れやすかったりもするので、他の人より意識的な健康管理も必要です。
両社はキャリアアップのために安定して勤務できることを大切にしてきました。安定して勤務するには、シダックスオフィスパートナーの「働き続ける力」のように、多様なスキルが求められます。
多くのスキルを身につけなければならないため「大変そうだ」と感じるかもしれません。しかし、少しずつでも身につけていけば職場定着につながります。本人に合った業務を担当してもらうことで、小さな成功体験を積み重ねて自信を取り戻すきっかけにもなるでしょう。
もう1つの両社の特徴は、障害者雇用における昇進制度を導入し、能力の高い社員を実際に管理職に選任していることです。こうした事例は「障害者雇用でも、こうすればキャリアアップできる!」という希望になりますし、実際に障害者雇用の中で管理職になる人が現れればロールモデルにもなります。
今回ご紹介した事例は、「障害者雇用だから・・・」と理由で昇進のない単純作業を設定するのではなく、それぞれの障害特性に合った業務や役職を任せることで会社全体に良い影響を与えられるというもの。障害のない従業員の方々と同じように、ぜひ実績や能力に合わせてキャリアアップできる制度を導入・活用してみてください。