2021/07/23
【合理的配慮好事例第17回】健康管理と強みを活かした仕事で成長を実感! JEED好事例で何回も受賞する会社の企業風土
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障害者雇用における合理的配慮の取り組みをテーマ別に紹介してきた本シリーズ。第17回と第18回では、積極的に障害者雇用に取り組みJEED(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)の好事例で複数回受賞している企業にどのような風土があるのかを見ていきましょう。
合理的配慮好事例解説シリーズ第17回でご紹介するのは、ソニー・太陽株式会社と大東コーポレートサービス株式会社です。
ソニー・太陽株式会社の受賞歴・企業理念・企業風土
ソニー・太陽株式会社(大分県)は、ソニー株式会社の特例子会社。「高品質なものづくりと障害者雇用」を掲げる、ソニーグループのマイクロホン基幹工場です。
同社では、マイクロホンの設計・製造からサービスまで担っていますが、他にもグループ各社の技術データ情報・環境情報の一元管理やWebサイト業務なども担当しています。
主な受賞歴
- 2003年 平成15年度 障害者雇用職場改善好事例 優秀賞 受賞
- 2008年 平成20年度 障害者雇用職場改善好事例 優秀賞 受賞
- 2010年 平成22年度 障害者雇用職場改善好事例 優秀賞 受賞
- 2012年 平成24年度 障害者雇用職場改善好事例 優秀賞 受賞
- 2014年 障害者雇用推進・就労支援を国際的に展開するコンサルティング会社であるSPRIGBOARD社(本社:米国)主催「2014年ディサビリティーマターズ&アワード(アジア太平洋地域)」Workplace部門(職場の設備や配慮) 受賞
- 2015年 平成27年度 障害者雇用優良事業所等 厚生労働大臣表彰 受賞
- 2018年 平成30年度「障害者の生涯学習支援活動」に係る文部科学大臣賞 受賞
【参考】
ソニー・太陽株式会社 沿革
企業理念
ソニー・太陽の方針には2つのベースとなる理念があります。1つは初代社長である中村裕博士の言葉、もう1つはソニー株式会社ファウンダーである井深大氏の言葉です。
「世に身心障がい者はあっても、仕事に障害はありえない、身障者に保護より働く機会を」
(社会福祉法人太陽の家 創設者 故 中村裕 博士)「障がい者だからという特権なしの厳しさで健丈者の仕事よりも優れたものを、という信念を持って」
(ソニー株式会社 ファウンダー 故 井深 大)
2つの理念に基づいて同社が目指す姿は、「様々な個性のある社員が、責任と真心をもったものづくりとサービスのプロ集団となり、付加価値創造を継続することで、ソニー・太陽だからこそできる理想工場を実現する」というものです。
設備や制度
ソニー・太陽は「健康経営宣言」「健康ファースト」を掲げ、「社員ひとりひとりが心身ともに健康でいきいきと働き続けることができる環境づくり」を目指しています。
大きな取り組みは4つあり、障害の有無にかかわらず働きやすい職場づくりに取り組んでいます。
<4つの取り組み方針>
- 社員の自律した健康管理を積極的に支援
- ハラスメントを許さない安心・安全な快適職場の醸成
- 組織の活性化と個の成長力促進
- 敷地内全面禁煙の実施
運動の重要性・やり方を伝えるセミナー、筋力測定、健康診断前後の数値への着目など、社員自身が自分の健康を意識し、管理できるスキル育成やイベントを実施。運動に取り組み始める社員が年々増加しています。2018年には、大分県優良健康経営事業所として大分県県知事顕彰を受賞しました。
2020年からは「ソニー・太陽体操」も導入。座ったままでもできるのが特徴で、ストレッチとヨガの要素も取り入れた3分間の体操です。午後の休憩後に社内放送で流れるので、それに従って体操を行います。
他にも、同社では以下のような対策を行ってきました。
<設備等整備の取り組み>
- 車いすで入っても検査が可能な無響室
- 一人ひとりの障害特性に合わせた作業机、治工具の自社開発
- 社屋出入り口に車いすタイヤ拭き用の設備を設置
- ユニバーサルデザイントイレ
- 車いすタイヤの空気入れを設置
- 半球型カーブミラーを天井に設置、死角となる通路の安全確保
- お知らせTVを壁の設置し、社内情報を発信
- 視覚的に災害発生を知らせるフリッカーランプの設置
- 車いす使用者や背の低い方でも使いやすい高さのトレー置きがある食堂
- 製造の現場で培った身体への負担軽減・健康維持のノウハウをデスクワーク中心の社員にも応用
<制度導入・支援などの取り組み>
- 産業医のアドバイスを受けながらの話し合い
- 食堂でのコンシェルジュによるサポート
- CHM推進室(CHM:Career & Health Management)の設置
- 運動の習慣化による重度化予防・抑制
- 生活習慣病の改善に関する施策
- 適宜、産業医や臨床心理士・公認心理師による面談の実施
- 「自分のキャリアは自分で築く」と「組織で人を育てる」の2軸によるキャリア形成
- 毎年期初の目標設定と半期ごとの自己レビュー・面談を実施で人材育成
- 各種研修の実施(階層別必須研修、基幹人材研修、語学研修、技術研修)
社員同士の交流
ソニー・太陽の社員は、社内のさまざまなイベント、スポーツ、技能競技、ボトムアップ活動などについて自分で発信できるイントラサイトを活用し、交流しています。イントラサイトがあることで、普段一緒に働く同僚だけでなく、他の部署の社員との交流も可能です。
会社組織から独立した社員会「ひまわり会」の存在も大きなものです。ひまわり会では社員旅行や各種イベントを企画・実行。さまざまなアイデアが活かされたイベントが行われ、社員の楽しみの1つとなっています。
【参考】
ソニー・太陽株式会社
大東コーポレートサービス株式会社の受賞歴・企業理念・企業風土
大東コーポレートサービス株式会社(東京都)は、大東建託株式会社の特例子会社です。障害の有無にかかわらず一緒に働く喜びを共有できる職場環境を重視し、グループ各社から請け負ったバックオフィス業務の集約と効率化に貢献しています。
多様な人材がそれぞれの個性や能力を発揮できる職場環境づくりと質の高いサービスの提供、同社で蓄積したさまざまなノウハウを社会に還元することなどに取り組んできました。
主な受賞歴
- 2007年 平成19年度 障害者雇用職場改善好事例 最優優秀賞 受賞
- 2009年 平成21年度 障害者雇用職場改善好事例 優秀賞 受賞
- 2010年 平成22年度 障害者雇用職場改善好事例 優秀賞 受賞
- 2011年 平成23年度 障害者雇用職場改善好事例 優秀賞 受賞
- 2012年 平成24年度 障害者雇用職場改善好事例 奨励賞 受賞
- 2013年 平成25年度 障害者雇用職場改善好事例 優秀賞 受賞
- 2017年 平成29年度 障害者雇用職場改善好事例 優秀賞 受賞
- 2019年 東京都『障害者雇用エクセレントカンパニー賞 産業労働局長賞』受賞
- 2020年 令和2年度 障害者雇用職場改善好事例 奨励賞 受賞
企業理念
大東コーポレートサービスの企業理念は、働くことの楽しさを実感できる会社をつくり、将来の夢を託せる企業をめざすこと。同社公式サイトの企業理念には、以下の4つが掲げられています。
<大東コーポレートサービスの企業理念>
- 私たちは、多様な人財と企業が共に成長することで、豊かな人生を送りながら社会に貢献できる会社を目指します。
- 一人一人の多様な個性と能力を活かし、新たな活躍の場を創造します。
- グループ会社のシェアード化を推進し、企業としての役割・価値を高めます。
- 全ての社員が、お互い尊重しあえるような環境を醸成します。
障害の有無にかかわらず社員みんなが一つとなり、同じ目標に向かって日々の仕事に取り組んでいます。
設備や制度
大東建託グループは、グループ全体で「従業員一人ひとりの心と体の健康と幸せを財産とし、いきいきと働くことができる職場環境を実現します」という健康宣言を出しています。
<大東建託グループ健康宣言における主な取り組み>
- 心と体の自主健康管理活動の推進
- 就労にともなう健康障害の未然防止
- 健康職場風土づくりの推進
具体的には、
- 産業保険スタッフと社員の直接面談
- 定期健康診断による病気の早期発見や重症化予防
- ストレスチェック
- 健康教育
- 過重労働対象者に対する健康管理
- メンタルヘルス不調者に対する対応
- 衛生管理体制の確立
などを実施しています。
他に、設備等の整備や制度・支援では以下のような施策もあります。
<設備等整備の取り組み>
- 多目的トイレなど、広めの動線を確保
- 文書等の仕分けがしやすいラベルの表示
- 自分で区別できない文書を入れる「わからないボックス」の設置
- 作業手順を書いた「作業カード」の活用
- 段ボール箱の回収方法(段ボール箱の乗せ方)を台車本体に掲示
- 作業がおわるごとにマグネットを1つ貼り、数えやすくする
<制度導入・支援などの取り組み>
- フレックスタイム制の導入(コアタイム 11:00-15:00)
- 手話通訳者2名を中心に、手話を活用した職場環境づくり
- オリジナル手話手帳の作成と配布(業務内容に特化した手話の導入と普及)
- 障害に関する基礎知識や配慮・対応をまとめたハンドブックの配布(言葉遣い・表情・声量・手話表現・リフレーミングなども掲載)
- 聴覚障害をもつ社員のためにUDトークなどの就労支援機器を活用
- 聴覚障害会議の取り組み
- 障害特性は参考程度に考え、個人の強みを把握する
- 見本・マニュアル作成・繰り返しによって業務習得を行う
- 支店名に仮名をふるとともに、「支店名カルタ」を作成して映像的に覚えられるようにする
- 優先順位や作業内容、目標数などを掲示
- 本人と話し合って目標を設定し、定期的(日・週・月)に面談実施
- ジョブスキルズトレーニング(JST)や社員研修の実施
- スキルアップ支援制度で資格取得を支援
- 一方的な指導ではなく、社員からの意見を取り入れる
- 作業工程に「ミスを発見する」「チェックする」仕組みを必ず盛り込む
- マナーやコミュニケーションスキルの向上などはSSTを実施
こうした取り組みは、社員から「シングルタスクで開発に集中できる」「各自やチームの開発状況が見える化されているので、目標にむけて協力し合って業務に取り組んでいます」「安心して仕事をおこなっています」など評価され、働きやすさにつながっているようです。
社員同士の交流や社会貢献
同社の日常業務では、年齢や性別、経歴、障害の有無にかかわらずお互いを尊重し協力できる文化があります。同時に、お互いに切磋琢磨して成長できる環境も整っています。
社員とそのご家族の親睦や信頼関係強化を目的とした家族連絡会、著名人を招いて交流する社内イベント、勉強会などでも、多くの社員やご家族が参加し交流しているようです。
また、同社では社会貢献として4つの活動も実施してきました。
- 職場体験実習の受入
- 職場見学会
- 講演活動
- 障害者スポーツの支援
職場体験実習の受け入れでは、就労を目指す障害者やその支援者だけでなく、多様性を学ぶ学生も受け入れており、職場見学会では行政や企業なども含めて年間1000名の方が来社。地域の特別支援学校、就労支援機関、ジョブコーチ研修、障害者雇用企業、大学などで講演も行っています。
障害者スポーツ支援では、IBSAブラインドサッカーワールドグランプリ2020のホームタウンスポンサーをつとめました。
【参考】
大東コーポレートサービス株式会社
大東コーポレートサービスに学ぶ、知的障害者の職場改善|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
好事例で多数受賞する会社における企業風土の共通点
好事例などで多数受賞しているソニー・太陽と大東コーポレートサービスのそれぞれの企業風土には、以下のようないくつかの共通点が見られました。
<企業風土の共通点>
- 身体に障害のある社員でも移動・利用しやすい動線・設備を整備する
- 障害をもつ社員が自分で健康管理できるよう研修・セミナー・社内イベントを開催する
- 健康管理やキャリアアップをサポートする組織・体制がある
- 一人ひとりの障害特性・強みを活かして業務を行う
- 質の高い製品やサービスの提供を目指す
- 障害の有無にかかわらず一緒に働く喜びがある
- 個別面談などで目標を定め、定期的に振り返りを行って成長を実感できるようにする
- 個別の支援例やノウハウを他の社員や障害者の就労にも活用する
設備面では、障害特性に応じた動線や施設、作業場を整備していること。制度や支援では、障害特性を考慮して目標を定め、定期的なフィードバックを行うとともに、健康管理やキャリアアップを支援する体制があることが特徴です。
また、両社は障害がある社員を多く雇用する企業として、質の高い製品やサービスを提供するという信念を掲げていました。
障害のある社員も障害のない社員も一丸となって取り組める仕組みと文化が、障害者雇用における職場改善の成功につながっているといえそうです。