パニック障害とは? 症状とつきあいながら仕事をするには


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精神障害をもちながら働く人の中でも珍しくないパニック障害。パニック障害があると「また発作が起きるのでは」という不安から、生活の質(QOL)がかなり低下してしまいます。対応の仕方が分からない周囲の人からの視線に傷つくこともあるでしょう。

しかし、パニック障害とはどのような病気で、発作時にどうすればいのか、仕事選びにどのようなポイントがあるのかを知れば、パニック障害とつきあいながら生活の質の低下をなるべく抑えることができます。

パニック障害の基礎知識:初期症状と発作

100人に1人がかかると言われているパニック障害。2002年度〜2006年度の厚労省による調査では、男性より女性のほうが患者数が多いという結果も出ています。

パニック障害とはどのような精神障害で、どんな症状が出るのでしょうか。

パニック障害の初期症状は、繰り返すパニック発作

「急に胸が苦しくなって病院に行ったが、体に異常は見当たらない・・・」

パニック障害を発症すると、特にこれといった直接的な理由があるわけでもないのに、強い不安に襲われて動けなくなったり、また不安に襲われたらどうしようと考えて日常生活に支障を来したりするようになります。

パニック障害には、大きく分けて2つの特徴があります。

1つめの特徴は、理由もなく突然不安になること。具体的には、動悸・めまい・発汗・窒息感・吐き気・手足の震えなどが出て、仕事や生活に支障を来します。このような「死にそうな苦しさ」を感じる状態が突然現れることを「パニック発作」と呼びます。しばらくすると、その苦しさがまるで嘘だったかのように消えてしまうのもポイントです。

2つめの特徴は、「また発作が起きたらどうしよう」と不安になり、特定の環境を避けたり外出できなくなってしまったりする「予期不安」。特に満員電車やエレベータといった「逃げられない」と不安になる場所などを避ける人が多く見られます。こうした不安になる場所を避けることを「広場恐怖」と呼びます。

パニック障害の初期症状は、パニック発作が起きることです。初期の段階では予期不安はなく、状況に関係なく起きる発作が繰り返されます。

何度もパニック発作を起こしていると、やがて「また発作が起きたらどうしよう」という予期不安へ。予期不安とは、発作がない時でも常に発作のことを恐れている状態です。仕事を辞めたり、外出できなくなったりする人が出てきます。

また、症状が重くなると、うつ病やうつ状態になることもあります。

発作が起きると迷惑になる? 発作時の対処法

パニック障害の発作は、何のきっかけも見当たらないような状況で起きます。本人にも予測できません。発作を起こしている本人は「このまま死んでしまうのではないか」「自分ではどうにもできない」という強い不安や恐怖を感じ、周囲の人もどうしてよいか分からず慌ててしまうでしょう。重大な病気かもしれないと救急車で運ばれる人も多くいます。

発作の頻度には個人差があり、毎日発作を起こす人もいれば数カ月に1回の人もいます。発作の持続時間も、数分から数日などさまざま。多くの場合は、30分〜1時間でおさまります。

大騒ぎで病院に運ばれたのに、検査をしても異常はなく、やがてけろっとした表情に戻る・・・。

そのようなことを繰り返すうちに、周囲の人は「またか」「大げさだ」といった態度を見せるようになってくるかもしれません。こうした態度が、また本人の予期不安を強めてしまいます。

大切なのは、体に異常のないパニック発作であるなら、その発作自体で死ぬことはないと理解すること。そして、周囲の人も慌てずに対処することです。

発作が起きたら、まずは本人が楽な体勢になりましょう。どういう姿勢が楽なのか分からない場合は、腹ばいになったり前屈みに座ったりするのがよいといわれています。もし呼吸が浅く速くなっていたら、ゆっくりと腹式呼吸を。ベルトや襟元などを緩め、呼吸しやすくするのも重要です。車内や室内にいるときは、窓を開けて外の空気を入れましょう。日の当たる場所にいるときは、日陰に移動することも有効です。

周囲の人は、「大丈夫だよ、少ししたらおさまるよ」などと優しく声かけをしてください。体をさするなどして、本人が落ち着くまで、そばについていましょう。

もし周囲にそうした人がいない場合は、事情を知る親しい人に電話などして、「じきにおさまるよ、大丈夫だよ」と声をかけてもらうと効果的です。

寝不足やカフェイン・アルコールの摂取は、発作を起こしやすくしてしまいます。規則正しい生活を心がけ、コーヒー・紅茶・お酒などをたくさん飲まないようにすることも、発作をコントロールする大切なポイントです。

パニック障害の原因と治療、行くべき病院

パニック障害の原因には、身体的要因・心理的要因・社会的要因があると言われます。特に身体的要因については、脳の一部の過剰な活動が注目されています。

パニック障害の治療の中心は、薬物療法と認知行動療法。信頼できる医師に継続的に診てもらいましょう。

パニック障害の原因と代表的な治療

パニック障害の原因は、まだ十分には分かっていません。また、身体的要因・心理的要因・社会的要因が関わってくるため、どれか1つに絞り込めるものでもありません。実際、パニック障害を発症した人の状況を見ていくと、周囲からの期待や圧力によるストレス、本人の真面目さや完璧主義、恐怖心の強さなどが折り重なっているケースが多く見られます。

パニック障害の3種類の要因について、現段階で有力視されているのは、以下のような見方です。

<パニック障害の身体的要因>

  • 大脳辺縁系にある扁桃体を中心とした「恐怖神経回路」の過剰な活動が発症の原因
  • 周囲の状況や自分の体から感じるさまざまな刺激によって扁桃体で恐怖が引き起こされると、それが扁桃体周辺にも伝えられ、体がすくんだり動悸がしたりといったパニック発作のいろいろな症状を引き起こす

<パニック障害の心理的要因>

  • 過去に何らかのきっかけがあった
  • 発症前1年間にストレスが多かった
  • 子どもの頃、親との別離体験がある、など

<パニック障害の社会的要因>

  • 本人が属する文化における価値観や慣習

パニック障害の主な治療では、薬で不安を抑えつつ苦手なことに少しずつ慣れていく認知行動療法を行います。

薬物療法では、パニック発作をするに抑える薬と、少ない副作用で長期間かけて発作を抑えていく薬を併用するのが主なパターン。認知行動療法では、苦手な状況に少しずつ慣れる練習をしたり、本人の思考のクセ(認知の歪み)を見つけて修正していったりします。認知行動療法を行う際は、本人と医師で話し合い、治療計画を立ててから実施します。

パニック障害を診てくれる病院はどこ?

苦しい・冷や汗が出る・震えるといった症状で病院に行ったものの、検査で体に異常が見当たらないと「自律神経失調症」「不安愁訴」などで診断が止まってしまい、適切な治療を受けられないことがあります。

もし「パニック障害かも」と思ったら、精神科や心療内科を受診しましょう。予期しないパニック発作を繰り返していて体に異常がなく、発作から1カ月以上続く予期不安がある場合は、パニック障害と診断される可能性があります。

診てもらう医師は、世間で評判の医師でなくても構いません。大切なのは、自分と相性が良い医師であること。信頼関係を築き、長く診てもらうことが、継続的な治療と発作のコントロールにつながります。

パニック障害とつきあうためのポイントは、パニック障害がどのような障害なのかをしっかり理解すること、精神科や心療内科を受診し、正しい診断と適切な治療を受けることです。そして何より、早く良くなろうとして焦らないこと。家族や友人、職場の人も、決して本人を急かさず、ゆっくり見守りましょう。

症状とつきあいながら仕事をするには

パニック障害があると、やりたいこと・できることに制限がかかります。仕事もそのひとつです。

しかし、パニック障害がっても、職場や仕事内容、雇用枠を選ぶことで、就職・転職を成功させたり、仕事を続けたりすることはできます。パニック障害とつきあいながら仕事をするには、職場環境や勤務制度、仕事の内容、精神疾患をもつ人への配慮や支援があるかどうかがポイントです。

自宅から近い職場か在宅勤務・テレワークを選ぶ

広場恐怖で交通機関や車を利用した通勤が難しい場合は、電車や人混みを避けられる仕事、徒歩や自転車で行ける職場が便利です。在宅勤務・テレワークが可能な職場も、不安を和らげてくれるでしょう。

2020年、日本では新型コロナウイルス感染症の流行により、時差出勤や在宅勤務・テレワークなどの柔軟な働き方がしやすくなりなりました。柔軟な働き方が難しい職種もあるので、全ての職場で可能というわけではありませんが、以前より選択肢が広がったことは確かです。

仕事を探す際は、「時差出勤」「フレックス制」「在宅勤務」「テレワーク」といったキーワードがないか見てみましょう。

不安になりにくい環境で働ける職場を選ぶ

不安になりにくい環境(出入り口付近など)でできる職場や、エレベータを使わずに済む職場を選ぶと、広場恐怖を和らげることができます。

広場恐怖の対象は人それぞれですが、たとえば以下のような状況が対象になりやすいと言われています。

<広場恐怖の対象となりやすい状況>

  • 交通機関の中(電車・満員電車・飛行機・高速道路)
  • 閉じられた空間(映画館・劇場・エレベータ・トンネル)
  • 広い場所(大駐車場・市場・橋)
  • 行列や人混みの中
  • 会議への出席
  • 1人での外出や留守番

上記の中で「自分もこれは不安だ!」と感じるものがあるなら、なるべくそうした状況にならずに済む職場や仕事を選ぶとよいでしょう。

苦手ではない業務内容ができる仕事を選ぶ

パニック障害か否かにかかわらず、誰しも得意・不得意があります。不得意な仕事を避けることが、仕事によるストレスの緩和につながります。

業務内容は、大きく分けると作業系とパソコン系があります。作業系の典型は、製造やパッキング、シール貼りなど。対して、パソコン系の典型はWordやExcelを使った文書作成やデータ入力・処理などです。

この分類に当てはまらない仕事、たとえば保育や学童、医療・福祉系などでも、パニック障害とつきあいながら働いている人たちがいます。

自分が好きな状況や動作を考えながら、苦手ではない業務ができる仕事を探してみましょう。

障害者雇用枠での募集がある仕事を選ぶ

障害者雇用枠がある仕事から選ぶことも、パニック障害とつきあいながら仕事をするには有効です。

企業の求人には、障害への配慮を前提としない一般雇用枠と、障害への配慮を前提とする障害者雇用枠があります。障害者雇用枠への応募自体は障害者手帳がなくても可能です(ただし、障害者雇用率制度との関係で手帳を所持していることが望ましいとする企業は多くあります)。

障害者雇用枠で就職するメリットは、事業主に障害を開示した状態で働けること。薬の服用や通院、欠勤、勤務体制等で配慮を受けやすくなります。

障害者手帳や障害への配慮・支援については、以下の関連記事で解説しています。

(関連記事)
精神障害者保健福祉手帳と障害年金の等級判定基準
【障害者編】まずは理解しておきたい!分かりやすい障害者雇用促進法

パニック障害は完治するのか?

パニック障害は、治療せずに放っておいたままで完治する可能性は基本的にないと考えられています。そのため、パニック障害を治すには何らかの治療が必要です。治療の開始が早期であるほど、完治の可能性も高まります。

ただ、パニック障害の治療には長い時間がかかるのも事実です。発症から診断まで、早くても1カ月ほどかかるでしょうし、認知行動療法は半年〜1年かかるのが通常です。しかも、「じゃあ、1年で治さなければ」と焦ってしまうと症状が悪化する可能性があるため、とにかく「焦らない」「ゆっくり」「継続的に」治療を進めることが肝心です。

症状が重い時は、無理して仕事をせずに、しっかり休養をとりましょう。真面目な性格や責任感の強い人が多いので休職することに罪悪感を感じるかもしれません。しかし、頑張り続けた自分に対する休養期間、充電期間だと思って治療に専念しましょう。症状が和らいで医師からOKが出れば、復帰や就職・転職も可能になります。

また、後回しにしがちな自分の疲労・ストレスをきちんと把握するために、折に触れてセルフチェックするのもよいでしょう。厚労省によるメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」がリンク集を提供していますので、まずはそのリンクから選んでみてください。

【参考】
チェックリストなどのツール(働く方へ/ご家族の方へ)|こころの耳

「こころの耳」には、実際にパニック障害になって休職し、復職した方の事例なども紹介されています。

まずは無理せず、病気と長くつきあいながら完治を目指しましょう。

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