2023年の最低賃金はいつ上がる?賃金アップに「業務改善助成金」


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従業員の賃金は最低賃金額以上になっていますか? 最低賃金よりも少ない賃金で従業員を働かせていると、最低賃金額との差額を支払わなければなりません。地域や産業別の最低賃金を調べるには、厚生労働省のポータルサイトが便利です。今回は、最低賃金の基本とともに、賃金アップに取り組む事業者への支援をご紹介します。

厚生労働省が賃金アップ特設サイト開設!最低賃金とは?

厚生労働省は民間企業の賃金アップに向けて「賃金引き上げ特設ページ」を開設しました。最低賃金額、賃金アップに向けた事例、企業が受けられる支援といった情報を簡単にチェック、検索できるものです。同省による最低賃金ポータルサイトの中に設置されています。

ここで、まずは「そもそも最低賃金とは?」という基本から見ていきましょう。

最低賃金とは

最低賃金とは、「最低賃金制度」で定められた1時間あたりの最低の賃金額のこと。最低賃金法に基づいて定められたもので、使用者は、最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければなりません。

最低賃金には、2種類あります。「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」です。

「地域別最低賃金」は、産業や職種に関係なく、各都道府県で定められた最低賃金。その都道府県にある事業所で働く全ての労働者と使用者に対して適用されます。

一方、「特定(産業別)最低賃金」は、特定の産業について定められた最低賃金です。「地域別最低賃金」よりも金額水準の高い最低賃金を定める必要がある産業で設定されています。2022年3月31日時点で、鉄鋼業など全国で227件が定められています。

もし、特定(産業別)最低賃金よりも地域別最低賃金のほうが高い場合は、地域別最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。

最低賃金全般について詳しく知るには、厚生労働省による最低賃金ポータルサイトが便利です。都道府県ごとの最低賃金をワンクリックで確認できますし、都道府県別の詳しいページに行けば、特定(産業別)最低賃金の一覧も確認できます。

最低賃金を守らないとどうなる? チェック方法は?

では、最低賃金よりも低い賃金で支払う場合、どうなるのでしょうか。

結論から言えば、使用者は、最低賃金との差額を労働者に支払う必要があります。つまり、正当な理由なく最低賃金より低い賃金で働かせると、たとえ労働者と使用者の間に合意があっても無効となるのです。

自社の賃金が最低賃金以上になっているかは、給与を時間給に換算することでチェックできます。

<最低賃金以上かどうかをチェックする計算式>

  • 日給の場合は、日給の金額÷1日の所定労働時間
  • 月給の場合は、月給の金額÷1カ月の平均所定労働時間
  • 出来高制やその他の請負制の場合は、賃金の総額÷その業務のために労働した時間の合計

この計算結果が最低賃金以上でない場合は、最低賃金で計算される金額との差額を労働者に支払う必要があります。支払わない場合、労働基準監督署によってしかるべき措置がとられます。

なお、障害者雇用における虐待事例の1つの分類が、主に賃金の支払いや財産の不正な取扱いである「経済的虐待」です。経済的虐待では、最低賃金法違反事例がとても多く見られます。最低賃金制度には、一定の要件を満たせば特例許可として最低賃金額未満での支払いが認められることがあります。しかし、この特例許可を受けるには、合理的な根拠と客観的な証拠を示さなければなりません。「なんとなく、仕事ができないから」という理由だけで、勝手に最低賃金額未満の賃金を支払って済ませることはできないのです。

(関連記事)
あなたの職場は大丈夫? 2020年度「使用者による障害者虐待の状況」障害者虐待の傾向と最低賃金改定

最低賃金はいくら? いつから上がる? 東京都・神奈川県の5年間の推移

最低賃金額は、厚生労働省の中央最低賃金審議会で答申が取りまとめられ、都道府県労働局長が決定しています。答申の取りまとめと結果の公表は、例年7月から8月。その後、10月頃から最低賃金の引き上げが行われます。

今回は2023年1月現在の東京都、神奈川県における最低賃金と、過去5年間の推移を見てみましょう。

現在、東京都の地域別最低賃金は1,072円、神奈川県では1,071円です。2021年10月から適用されていた最低賃金よりも、それぞれ31円引き上げられました。いずれも特定(産業別)最低賃金よりも地域別最低賃金が高いため、東京都と神奈川県では、全ての産業で地域別最低賃金額以上の賃金を支払う必要があります。

東京都と神奈川県における近年の最低賃金の推移は、下のグラフのようになっています。

東京都と神奈川県は全国平均よりも高い水準で設定されており、東京都の最低賃金のほうが神奈川県よりも1~2円高いという状況が続いています。

賃金アップに取り組む企業に「業務改善助成金」

全ての使用者と労働者は、最低賃金法を守らなければなりません。しかし、変化の激しい昨今、設備投資などで大きなコストが発生し、賃金アップになかなかつなげられない中小企業もあるでしょう。厚生労働省では、そうした中小企業・小規模事業者のために「業務改善助成金」を支給しています。

「業務改善助成金」とは

「業務改善助成金」は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引き上げを支援する制度。生産性向上のために機械設備やPOSシステムなどを導入し、さらに事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するものです。

通常コースと特例コースがあり、特例コースでは、生産性向上に役立つ設備投資等を行う取り組みに関連した費用とともに、それに関連した業務改善計画で計上された経費も含めることができます。

通常コースの支給対象者・支給要件・助成額

通常コースの支給対象者は、全国の中小企業・小規模事業者です。支給要件は、以下のようになっています。

  1. 賃金引上計画を策定し、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる(就業規則等に規定)
  2. 引上げ後の賃金額を支払う
  3. 生産性向上に資する機器・設備やコンサルティングの導入、人材育成・教育訓練を実施することにより業務改善を行い、その費用を支払う
    ※除外される経費
    ① 単なる経費削減のための経費
    ② 職場環境を改善するための経費
    ③ 通常の事業活動に伴う経費
  4. 解雇、賃金引き下げ等の不交付自由がないこと など

通常コースの助成額は、下表のとおりです(2023年1月現在)。

コース区分 引上額/人 助成上限額 助成率
30円コース 30円以上 120万円 事業場内最低賃金が900円未満の場合、4/5

※生産性要件を満たす場合、9/10

 

事業場内最低賃金が900円以上の場合、3/4

※生産性要件を満たす場合、4/5

45円コース 45円以上 180万円
60円コース 60円以上 300万円
90円コース 90円以上 600万円

特例コースの支給対象者・支給要件・助成額

特例コースの支給対象者は、中小企業や小規模事業者のうち、新型コロナウイルス感染症の影響や原材料高騰の影響で、一定程度以上の売上高や利益の減少があった事業者です。さらに詳しい要件がありますので、次項で紹介する相談窓口にてご確認ください。

主な支給要件は、通常コースと同様。ただし、生産性向上のために設備投資等を行う取り組みに関連する費用として、業務改善計画に計上された「関連する経費」を含める場合は、その費用も支払う必要があります。

助成額は、生産性向上のための設備投資等にかかった費用の3/4(事業場内最低賃金額が920円未満の事業場では4/5)。引き上げる労働者数に応じて変化し、最大100万円(引き上げる労働者数7人以上)となっています。

業務改善助成金の無料相談窓口

業務改善助成金には、全国に無料の相談窓口「働き方改革推進支援センター」があります。中小企業の最低賃金の引上げや生産性向上を支援しています。

また、業務改善助成金に特化した相談窓口として、「業務改善助成金コールセンター」も設置されました。平日朝から夕方までが受付時間で、助成金の要件確認や申請方法、助成額の確認、事業主がこれからやるべきことなど、気になる点を相談できます。

  • 業務改善助成金コールセンター
    電話番号 0120-366-440
    受付時間 平日8:30~17:15

賃金アップに「事例集」の活用を

賃金アップは事業主の方にとって重要な課題。十分な利益が出ていれば従業員の賃金アップを実施しやすいものの、感染症流行や原材料の高騰などで利益の減少やコストの増加がある場合、なかなか実現しにくいかもしれません。

どのようにすれば、賃金アップにつなげられるのでしょうか。このヒントを広く共有するため、厚生労働省の賃金アップ特設サイトでは多くの事例集を掲載しています。業務改善助成金の受給に向けた生産性向上の工夫が多く紹介されていますので、ぜひ一度ご覧ください。

業務改善助成金の他にも、賃金引き上げを支援する複数の施策が行われています。施策内容や相談窓口は、賃金引き上げ特設ページで確認できます。

従業員が安定した生活を送り、その能力を十分に発揮できるよう、賃金アップの取り組みを進めましょう。

【参考】
最低賃金ポータルサイト|厚生労働省
賃金引き上げ特設ページ

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