2023/04/05
青森県「みちのく銀行」障害者雇用の取組みで厚生労働大臣表彰を受賞
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青森県のみちのく銀行が、2022年度障害者雇用優良事業所等厚生労働大臣表彰を受賞しました。2014年から障害者雇用促進の取り組みを続けているみちのく銀行。職場環境づくりのポイント、支援機関との連携強化によるメリットをご紹介します。
もくじ
青森県「みちのく銀行」 障害者雇用優良事業所として厚生労働大臣表彰受賞
株式会社みちのく銀行(青森県青森市)が、2022年度の障害者雇用優良事業所等の表彰において、企業として厚生労働大臣表彰を受賞しました。青森県内の金融機関として初めての受賞です。
同行は「家庭の銀行」として市民のためのサービスを提供し続けるとともに、2014年からは障害者雇用にも積極的に取り組んできました。2022年6月1日における障害者雇用率は、法定雇用率を大きく超える2.79%となっています。
2016年度や2017年度にも、全国的に同行のダイバーシティ経営や障害者雇用施策が注目されており、2019年には県知事表彰も受賞しました。
さまざまな取り組みの中で特に評価されているのは、働きやすい職場環境づくりや生活環境サポートも含めた支援です。障害者の活躍に向けたチーム「Pastel(パステル)」は障害者の職場定着や職域拡大を果たし、今や同行の縁の下の力持ちに。手がける業務も、当初の清掃業務に加えてデータ入力、研修会場の設営、マッサージ、発送物の封入、その他事務業務など多岐にわたります。
次項から、その具体的な内容を見ていきましょう。
みちのく銀行の働きやすい職場環境づくり
みちのく銀行が障害者にとって働きやすい職場をつくるために取り組んでいるポイントは、主に3つあります。
ポイント1:障害種別にとらわれない
1つめは、身体障害・知的障害・精神障害といった障害種別にとらわれない業務の割り振りや配慮の提供です。
障害種別によって特性に多少の傾向はあるものの、具体的にどのような特性があるかは人によって異なります。そこで、それぞれの社員の得意な点と不得意な点を踏まえた作業マニュアルを作成しました。
さらに、割り振られた作業の組み立ては、基本的に障害をもつ社員同士で検討する体制をとっているのも特徴です。同時に、誰が休暇をとっているのか、1日の目標は何かなど、情報の見える化も行われました。本人や周囲の社員が何をどれだけすべきか把握しやすく、業務の効率化につながっています。
指導者と障害者の関係においても、一方的にやり方を教えるのではなく、指導者は「アドバイスする」という立ち位置を保っているとのこと。これは「I(アイ、私)メッセージ」という方法で、「私は〜だと思うよ」などの形をとるものです。
こうした姿勢が、障害をもつ社員の協調性と自主性の向上につながり、お互いに助け合うという風土づくりに貢献してきました。
ポイント2:生き生きと働ける雰囲気づくり
2つめは、生き生きと働ける雰囲気づくりです。
同行の取り組みで特に注目されているものの一つに、作業を依頼した行員と作業を担当した障害者をつなぐコミュニケーションツールがあります。これは、ボードに張り出されたメッセージカードで、1枚1枚にそれぞれの作業依頼者から励ましやお礼、気づきが得られるメッセージなどが記載されたものです。
作業を担当した社員にとっては「自分の仕事が評価された」「やってよかった」という思いにつながり、「次はこうしよう」というモチベーションの維持向上にもなります。行員と障害をもつ社員との信頼関係を深め、職場定着率もアップしたそうです。
加えて、2020年からフレックスタイム勤務制度やテレワーク制度も導入しました。それぞれの社員が自主的に始業時刻・終業時刻・就業時間を決定できるため、体調や生活スタイルに合わせた勤務が可能です。
ポイント3:変化に気づける相互のコミュニケーション
3つめは、障害者本人が自分で気づいていない変化にも気づけるような相互のコミュニケーションです。
2014年から始まった同行の本格的な障害者雇用の取り組みで導入されたものの一つに、全ての障害者一人ひとりに「サポート担当者」を配置するという制度があります。
サポート担当者の役割は、サポート対象となる社員の適応状況を把握し、相談にのること。日々接して密接なコミュニケーションをしているからこそ、障害をもつ社員本人が気づいていないちょっとした変化にも気づくことができます。
サポート担当者の育成と管理は、人事部が担っています。サポート担当者は障害特性や雇用管理に関する研修会、見学会等へ参加し、人事部の管理者(ジョブコーチ経験者)はサポート担当者との定期面談を実施。障害をもつ社員とどのように接すればいいか、困りごとにどう対応したらよいかなどを学び、相談することが可能です。
支援機関との連携強化による5つのメリット
みちのく銀行は、障害者雇用の促進・定着に取り組む中で、職場における業務以外のサポートにも着目してきました。それが、障害をもつ社員の生活面でのサポート、障害者の家族との連絡調整や関係づくりなどです。
とはいえ、業務以外のことまで事業所がサポートするのは容易ではありません。そこで、障害をもつ社員の生活環境をサポートするため、障害者就業・生活支援センターと連携してきました。新しく採用された障害者にも積極的に登録を促しています。
業務自体のサポートについても、障害者職業センターと連携を強化。雇用する障害者が抱える困りごとへの対応方法を相談し、効果的なサポートやスキルアップ、職場定着へつなげています。
こうした連携強化は、職場に大きな効果をもたらしました。特に同行が挙げるメリットは、以下の5つ。実際に支援機関と連携している事業主の方にとっても、頷くところが多いでしょう。
<支援機関との連携強化のメリット>
- 就労支援と生活面の支援を両方行える
- 障害をもつ社員にとって相談先が複数できる
- 現場で支援を行うサポート担当者の支援スキルがアップする
- 障害をもつ社員が就労中に体調不良になった際、その原因を共有することで早期解決を図れる
- 障害をもつ社員にとっても、周囲の社員にとっても、安心感につながる
コミュニケーションをとおして支え合う職場づくりへ
みちのく銀行の取り組みでは、コミュニケーションをとりやすい仕組みと支え合う環境づくりが特徴でした。
同じ職場で働く障害をもつ社員同士が検討しながら業務を進める、サポート担当者が日常的にコミュニケーションをとって小さな変化に気づく、そのサポート担当者と人事部もコミュニケーションをとって一緒に検討していくといったように、コミュニケーションをとおしてお互いに支援していく仕組みがあります。
サポートやアドバイスだけでなく、作業を依頼した社員と作業を行った社員の間にもコミュニケーション手段があり、自分の仕事が誰に喜ばれているのかもわかります。
障害者雇用は、障害をもつ社員はサポートされる側、周囲の社員は指導・サポートする側という一方的な関係で捉えられやすいかもしれません。しかし実際の現場では、業務とコミュニケーションをとおして、障害をもつ社員同士、障害をもつ社員ともたない社員の間の信頼関係を深めることができます。
みちのく銀行の取り組みは、障害をもつ社員も事業所の大切な一員であることを仕組みの面でも反映した事例といえるでしょう。
【参考】
みちのく銀行 公式サイト
「障害者雇用優良事業所等厚生労働大臣表彰」の受賞について|株式会社みちのく銀行
チャレンジ ~障害者と共に~(みちのく銀行)|障害者雇用事例リファレンスサービス
JEED『働く広場』職場ルポ「清掃から事務へ、業務を拡大中 —株式会社みちのく銀行—」(2017年6月)
青森労働局長が障害者雇用事業所を視察しました|青森労働局