共生社会実現に向けた新資格「インクルーシブ・コミュニケーター」とは


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障害者雇用率の引き上げ、事業者による合理的配慮提供の義務化など、多様な人々が共に生きられる共生社会の実現に向けた動きが加速しています。こうした状況で、公益財団法人日本ケアフィット共育機構(以下、日本ケアフィット共育機構)から新資格「インクルーシブ・コミュニケーター」の開講が発表されました。資格の取得方法や受講費のほか、現在推進されている「インクルージョン」の概要をお伝えします。

新資格「インクルーシブ・コミュニケーター」とは


画像提供:日本ケアフィット共育機構(PR TIMES)
画像編集:編集部

日本ケアフィット共育機構が新たに発表した資格「インクルーシブ・コミュニケーター」は、「多様な違いの強みを生み出す革新的なチーム・組織となるために必要な、コミュニケーション、チーム作り、環境変革を学ぶ資格」です。

インクルーシブ・コミュニケーターは、従来の考え方や暗黙の了解などに縛られず、多様な人々がそれぞれの力を活かせる価値観をもったチーム作りを行うという役割を担います。

日本ケアフィット共育機構は、「独自の価値観を持ちながら多様な力を活かすことができる“チーム”と“人”」の要素として、次の5つ(インクルーシブ・トランスフォーメーション要素、IX要素)をあげました。

【日本ケアフィット共育機構による5つのIX要素 

1 パーパスの浸透・共感
2 多様性を活かし合う風土
3 アンコンシャス・バイアスへの気づき
4 心理的安全性の確保
5 ビロンギング(帰属意識)の醸成

 

これらの要素に関わる内容を講座で学び、実践していくのがインクルーシブ・コミュニケーターです。

講座内容は、東京大学先端科学技術研究センターの近藤武夫教授(心理学博士)が監修しています。近藤教授は、障害のある人を対象とする教育・雇用での支援に役立つテクノロジー活用や合理的配慮、修学・雇用制度の設計、地域実装の研究者です。

「インクルーシブ・コミュニケーター」の対象者は、

  • 組織開発・人材育成に悩む人事担当者、管理職
  • 多様な人材とともに働く社員
  • 障害者雇用を進めたい企業の担当者

など。資格を取得するには、オンラインで講座を受講し、検定試験に合格する必要があります。

主な内容、受講期間、受講費は下表のとおりです。

【「インク ルーシブ・コミュニケーター」の学習内容・受講期間・受講費】

学習内容
  • パーパスの設定方法
  • ビロンギングを高める方法
  • マイクロアグレッションへの対応方法
  • 多様な人とのコミュニケーション方法
  • 心理的安全性を高める方法
  • チームを束ねるストーリー作り
  • アンコンシャス・バイアスへの対応方法
受講期間 最大2か月間
(テキスト内容は約6時間分)
受講費 2万2,000円(消費税10%込)
検定試験と認定状発行
  • 学習終了後、オンラインで受検
  • 不合格の場合は再受検可能
  • 合格後、オンラインで認定状を発行

学習内容には、人口減少や障害者・高齢者の働き方など社会的課題の現状、障害の社会モデル、共生社会の実現に関わる法的制度、インクルーシブな組織・チーム作りに必要なコミュニケーションや環境整備に関するノウハウも含まれています。

PCの他、スマートフォンやタブレットでも受講可能で、テキスト・動画・ワークシートを活用して学習を進めます。

日本ケアフィット共育機構とは


画像出典:日本ケアフィット共育機構 公式サイト

日本ケアフィット共育機構(東京都千代田区)は、超高齢社会の到来をふまえ、誰もが安心して暮らせる共生社会を目指し、さまざまな事業を展開する公益財団法人です。同機構が認定する民間資格「サービス介助士」の普及、パラスポーツ大会での介助ボランティアの活動推進などを手がけています。

「サービス介助士」の詳細は、以下の関連記事でご紹介しています。

(関連記事)
「サービス介助士」とは? 全国に約19万人!大手企業でも取得実績

「サービス介助士」以外にも、民間資格「防災介助士」「認知症介助士」を認定。資格取得者の交流の場や活躍の機会の創出なども行ってきました。

インクルーシブとは

インクルーシブ・コミュニケーターは、多様な人材の多様な力を活かした組織づくりを通じて、共生社会の実現に貢献します。ここで、あらためて「インクルーシブ」の意味を確認しておきましょう。

「インクルーシブ」とは、辞書的には「すべてを含んでいるさま」「包括的」を意味します。文部科学省による「インクルーシブ教育システム」の説明では、多様な人々が自由に参加できる社会の実現を目的として、「人間の多様性の尊重等の強化」や障害者の「精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ」ること、そして「障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組み」とされています。

よって、簡単にいえば、「それぞれの多様性を尊重し、各人が自身の能力を発揮して社会に参加しながら共に生きること」となるでしょう。

なお、「インクルージョン」との違いは品詞であり、意味は同じです。英語の「インクルーシブ」は形容詞、「インクルージョン」は名詞となります。

障害の有無にかかわらず誰もが参加し共生する社会や組織を作るには、各人の特性を活かす施策と苦手を補う施策の両方が必要になります。2024年4月1日からは、障害者雇用以外の場面でも、事業者による障害者への合理的配慮の提供が義務化されました。

どのような課題があり、それらの課題にどのような解決策があるのかを知ることは、インクルーシブな社会に欠かせません。

インクルージョンの実践例

インクルージョンがどのようなものかは、実践例を見ていくとわかりやすいでしょう。今回は、

  • インクルーシブ教育
  • インクルーシブデザイン
  • 企業におけるインクルージョン

の3つをご紹介します。

インクルーシブ教育の事例

国が中心となって進めているインクルーシブ教育は、障害のある子どもと障害のない子どもが共に学べるよう、必要な支援を行う教育体制です。効果的な実現には、障害特性に関する専門知識と技術が現場の教育者や支援者に求められます。

具体例を2つ見てみましょう。

1つめは、自閉的傾向がある幼児が周囲の子どもたちと一緒に活動しやすいよう支援した事例です。一人で遊ぶことが多く、集団活動の中では行動が遅れるため馴染みにくいという課題が見られました。行動が遅れる理由は、姿勢保持の難しさや体の運動機能の発達です。

そこで、体幹を鍛えたり運動能力を高めたりするため、自由遊びに「はいはい競争」やトランポリンなどを導入。同時に、他の子どもたちと関わる楽しさを知るために、分かりやすいルールがあるトランプやカルタなどを使って、自然に一緒に遊べる機会づくりも行いました。

2つめの事例は、小学校に通う発達障害のある児童の例です。それまでの経験から集団に馴染めず、自尊感情も低いことが課題となっていました。学年が変わると同時に担任の変更もあり、より不安定になったといいます。

課題解決のために行った支援は、特別支援教育コーディネーターが関わる個別教育支援です。特別支援教育支援員とも連携して別室で学習支援や相談などを実施。新しい担任とも別室で個別に関係を構築していきました。

支援対象となっている児童は、少しずつ教室での学習や行事に参加するようになり、これが成功体験となって、自尊感情や学習意欲も向上していったそうです。

集団活動や教室での学習ができるようになってからは、特別支援教育コーディネーターの関わりも減らし、必要な支援については特別支援教育支援員が引き続き見守りながら対応を続けました。

インクルーシブ教育の具体事例は、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所による「インクルDB」に集められ、公開されています。

インクルーシブデザインの事例


画像出典:OGNO mahora note 公式サイト

インクルーシブデザインとは、障害のある方など、これまでのデザインプロセスで無視または軽視されてきた方々がデザインのプロセスに参加し、商品・サービスの開発を進めることをいいます。障害者にとって困る点や不便な点、扱いやすくするための提案など、多様な特性をもつ人々が一緒に話し合いながら検討を重ねていくものです。

インクルーシブデザインの事例は多くありますが、今回は大栗紙工株式会社のノート「mahora」をご紹介しましょう。

mahoraノートは、従来のノートとは異なり、紙の地色に白以外を使い、けい線に太線と細線、あみかけなどを導入したノートです。デザインには、発達障害の当事者が関わっています。

紙の地色は、「レモン」「ラベンダー」「ミント」の3種類。いずれも淡い色味になっており、感覚過敏がある方にも見やすいよう工夫されています。

けい線は2種類あります。1つめは、太線と細線が交互に引かれたタイプ。行の識別がしやすく、「書いているうちに行が変わってしまう」という悩みを軽減できます。

2つめは、あみかけのある行とあみかけのない行が交互に並ぶタイプです。行の色味が異なって見え、さらに行の識別をしやすいよう工夫されています。あみかけの行と紙の地色の行とで情報を分けて書けば、情報整理にも便利です。

mahoraノートは、装飾が少ないシンプルな作りが特徴。不要な情報を減らすことで、書くこと、読むこと、理解することに集中しやすくしました。

企業におけるインクルージョン

各企業では、障害の有無だけでなく、国籍や年齢、価値観、ライフスタイルなどの多様性も含めたインクルージョン推進が行われています。「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)」などとも言われます。

もともと、企業では「ダイバーシティ」の推進として女性の活躍推進やLGBTQの方々の採用・活躍推進を行ってきました。その後、国内の人手不足やグローバル化などの背景もあり、国籍や年齢の多様性も言及されるようになりました。

そして、障害者雇用の推進を中心とする施策が加わり、現在はD&IやDE&Iとして取り組みが続けられています。

D&IとDE&Iの違いは、「エクイティ(equity)」の有無です。エクイティは、多様な人々を公平に扱うこと、不均衡を調整することを意味する言葉。多様な人材を採用するだけでなく、それぞれが自身の能力や特性を活かして活躍できるよう、環境を整備していこうという姿勢を反映するものです。

企業におけるインクルージョンは、インクルーシブデザインの実践や日常生活でのインクルージョン実現にもつながる重要な取り組みです。

【参考】
コミュニケーションから多様な違いの強みを生み出す革新的チームを作る新資格『インクルーシブ・コミュニケーター』開講|PR TIMES

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