【江戸川区ひきこもり実態調査】「居場所がない」を解決するには? 当事者が求めていること・興味のあること


2022年6月、江戸川区は2021年度のひきこもり実態調査結果を公表。区内に約8千名の当事者がいることが分かりました。江戸川区は支援を進めようとしていますが、当事者の方々からの回答は「何も必要ない」が最多に。一方で、習い事やイベント、創作活動、就労支援などを求める声もあります。調査結果をもとに、ひきこもり支援で重視される「居場所づくり」や興味のある活動について考えます。

江戸川区が実施したひきこもりの大規模実態調査

近年の高齢化が社会問題となっています。その影響はひきこもり状態の方やそのご家族にも及び、80代の親御さんが50代のひきこもり状態にあるお子さんを支える「8050問題」として注目されるようになりました。

国や地方自治体でも、こうした状況を改善すべく、ひきこもり当事者やそのご家族への支援を進めようとしています。各地でひきこもり実態調査が実施され、どのくらいの方がひきこもり状態にあるのか、その理由は何か、どういった支援が必要かを調査しています。

江戸川区では2021年度に大規模なひきこもり実態調査を実施し、2022年6月に結果を公表。調査対象は区内の約18万世帯で、約10万世帯からの回答を得るとともに、ひきこもり状態の方が約8000人いることが分かりました。同調査の回答者は、引きこもり当事者、またはそのご家族です。

江戸川区による調査結果では、どのような方がひきこもり状態にあるのでしょうか。また、どういった困りごとを抱え、何を求めているのでしょうか。

実態調査で分かったひきこもり当事者の年齢・性別・ひきこもり期間

まずは、江戸川区の実態調査で分かった当事者の方の年齢・性別・ひきこもり期間を見ていきましょう。

ひきこもり当事者の方の年齢は、40代の方が最も多く、17.1%を占めました。次に多いのが50代で16.6%です。15歳以上20歳未満の方、20代の方はそれぞれ10.6%、11.7%で、30代は13.9%でした。60代、70代、80歳以上の方もそれぞれ約10%いて、いずれの年代にも当事者の方がいることが分かりました。

性別では、男性と女性がほぼ半分ずつですが、女性のほうが3.1pt多い51.4%となっています。性別に「その他」を選択した方も0.4%いました。

ひきこもり期間には大きな偏りが見られました。最も多かったのは、「1年〜3年未満」で28.7%です。次に多かったのは、「10年以上」で25.7%でした。全体で見ると、3年以上ひきこもり状態が続いている方が過半数を占めました。

なお、年齢とひきこもり期間で見ると、30代以下では1年〜3年未満が最も多く、40代および50代は10年以上が最多となっています。60代以上では、1年〜3年未満が比較的多いものの、10年以上と答えた方も2割以上見られました。

ひきこもり当事者が抱える困りごとと、求めているもの

困りごとで過半数の方から選ばれたのが、「自分の健康」「家族の健康」「収入・生活資金」です。年齢別に見ても、これらの困りごとがTOP3となっており、健康とお金がひきこもり当事者の方にとって大きな問題となっていることが分かります。

しかし、当事者の方が求めているものを見ると、「何も必要ない、今のままで良い」という回答が最も多く、32%でした。年齢が上がるほど「何も必要ない」と答える方の割合が高くなる傾向があります。

求めているものとして具体的な内容を回答した方のみで見ると、第1位が「就労に向けた準備、アルバイトや働き場所の紹介(21%)」、第2位が「短時間(15分から)でも働ける環境(18%)」でした。いずれも就労に関する支援や環境となっています。

次に多く見られるのが、「身体・精神面について専門機関への相談(16%)」「生活費についての相談(15%)」というように、困りごとに対応した相談窓口が選ばれました。

一方で、「友だちや仲間づくり(15%)」「趣味活動ができる場所(15%)」「気軽に立ち寄れるサロンや居場所(8%)」のように、家族以外の人とのつながり、家以外の場所に目を向ける回答を選んだ方も一定数見られます。「定期的(又は不定期)な訪問相談の機会」は最も少ない3%でした。

こうした結果から見えてくるのは、具体的な困りごとを相談できる窓口の大切さと、当事者の意図や目的に沿った形でのつながり・居場所づくりです。支援者の訪問は人とのつながりや支援への橋渡しになるものの、自分の部屋や自宅といった当事者にとって比較的安全な場所に他者を入れることになるため、あまり歓迎されていないと考えられます。

はじめから就労支援を受けるのはハードルが高すぎる方も…

ひきこもり当事者の方の就労支援に関しては、40代までなら「若者サポートステーション」(通称、サポステ)があり、障害手帳を持つ方や就職が困難と認められた方であれば就労移行支援事業所(原則、2年以内)があります。

近年は、年齢を問わず対応可能なひきこもり相談窓口も見られますので、外出ができて具体的に就職のための準備を進めたいと考えている方には、利用できる支援サービスは比較的多いでしょう。

ただ、
「いずれは働きたいけれど、まだ外出するのは難しい」
「生活リズムが不安定で、きちんと起きられない」
といった課題をもつ方には、就労のためのトレーニングを進めることは大変かもしれません。

そこで、就労支援につながる前の準備として趣味やイベント参加などの活動に目を向けることがポイントになります。ひきこもり当事者の方には、「働くことは難しいけれど、趣味のサークルなどへの参加なら、なんとかできる」という方がいます。好きなことが外出のきっかけになり、少しずつ外へ出られるようになった方も少なくありません。

今回の江戸川区による調査では、ひきこもり当事者の方がどのような文化活動やスポーツに興味をもっているのかを尋ねる設問がありました。外出や生活リズムの安定などを目指す方や、そうした方々を支援する際のカギになるかもしれません。次項でその結果を見ていきましょう。

ひきこもり当事者の方が「興味ある」と回答した文化活動・スポーツ

まず、興味ある文化活動に関する回答で最も多く選ばれたのは「興味がない(35%)」、スポーツ活動では「ウォーキングや体操など健康維持のための運動(41%)」でした。

文化活動では「興味がない」を選んだ方が3割強見られたものの、他の方は何らかの活動を選んでいます。その中で、「講師等から指導を受ける講座・教室・習い事(22%)」「コンサートや美術展のような鑑賞型イベント(22%)」のように、他の人と接したり外出したりする必要がある活動を選んだ方もいました。

一方、スポーツ活動では無理のないウォーキングや体操などが約4割の方に選ばれています。「興味がない」は33%でした。スポーツ活動に関する回答で特徴的なのは、ご自身の健康に関わる軽めの運動に興味を持つ方が多いということです。

他の選択肢では「トップアスリートが活躍するスポーツ観戦」が11%。「野球やテニスなどの競技スポーツ(8%)」「スポーツを支えるボランティア活動(3%)」などを見ても、強度が高いスポーツ、自分がスポーツをやらない活動については、比較的少ない割合となりました。

ひきこもり当事者の方が参加しやすい講座や習い事、イベント、軽く運動できる場所などを見つけるための、ひとつのヒントになりそうです。

参加のプレッシャーが少ないイベントや活動を探してみよう

ひきこもり状態の苦しさを和らげていくには、安心して過ごせる居場所をつくること・見つけることが大切です。

他の人と異なる何らかの特性があっても困らない場所、必要な時だけつながれる緩やかな関係性、特に親しい人がいるわけではないけれど落ち着く場所など、どういったものが「居場所」として重要なのかは人それぞれでしょう。

安心できる居場所は当事者の方ご自身の部屋や家かもしれませんし、家の外にあるかもしれません。現実にある場所ではなく、インターネット上のコミュニティも候補のひとつです。

ひきこもり状態の方にとっての居場所づくりというと、当事者のためにサロンや施設、コミュニティを設置するという方法が浮かびますが、近所で開催される講座やイベント、美術館、博物館、図書館など、他の多くの選択肢もあります。

好きなこと・興味のあることは、時に私たちを元気づけてくれるものです。インターネットや地元の広報誌などで情報を探してみると、ゆるやかにつながれる新しい居場所が生まれるかもしれません。気が向いたときなどに、少し調べてみてください。

なお、ひきこもりの当事者会や家族会については、以下の関連記事で紹介しています。ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

(関連記事)
「ひきこもり人権宣言」当事者の思いと適切な支援とは
「引き出し屋」に依頼する前に!「ひきこもり支援」で問題の引き出し屋裁判で損害賠償命令

【参考】
令和3年度「江戸川区ひきこもり実態調査」の結果報告書について|江戸川区

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