2023/02/14
【高次脳機能障害】受けられる福祉サービスは? 自宅でのリハビリに役立つサイト・アプリ6選
本ページはプロモーションが含まれています
高次脳機能障害をもつ方は、けがや病気による脳損傷で低下した機能を回復させたり、その機能を補うツールなどを使って対処したりして生活を送っています。公的な支援を利用すれば、日常生活や移動、買い物のサポートも受けられるでしょう。今回は、高次脳機能障害をもつ方が受けられる福祉サービスの例や便利なサイト・アプリをご紹介します。
どのような福祉サービスを受けられる?
高次脳機能障害をもつ方がどのような福祉サービスを受けられるかは、発症・受傷の原因、年齢、障害の状況などによって異なります。そのため、まずは高次脳機能障害をもつ方向けの相談窓口で尋ねることが一番です。
以下に代表的な制度の一部をご紹介しますので、ご検討・ご相談の際にお役立てください。
障害者手帳制度
高次脳機能障害をもつ方の場合、一定の障害があると障害者手帳の交付対象となります。大体の基準と相談窓口は下表のようになっています。
<障害者手帳の種類と対象となる高次脳機能障害をもつ方>
種別 | 対象(高次脳機能障害者の場合) | 手帳の等級 | 相談窓口(東京都の場合) |
身体障害者手帳 | 身体の麻痺や失語症、視野の障害などがある場合など | 1~6級 | 区市福祉事務所 町村障害者福祉担当課 |
愛の手帳(療育手帳) | 18歳未満の発症・受傷により知的障害がある場合など | 1~4級 | 18歳未満は児童相談所 18歳以上は東京都心身障害者福祉センター |
精神障害者保健福祉手帳 | 記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがある場合など | 1~4級 | 区市町村担当課 |
障害者手帳を所持することで、各種税金の減額・免除、交通費や施設利用料の割引、介護サービスや就労支援事業所の所得に応じた負担額での利用など、多様なサービスを受けられます。公的な支援として最も大きいのは、次項でご紹介する障害者総合支援法のに基づく福祉サービスです。
障害者総合支援法に基づく福祉サービス
障害・手帳の種別に関係なく共通で受けられる福祉サービスに、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスがあります。これには、大きく分けて「介護給付」と「訓練等給付」があります。
<介護給付の内容>※障害支援区分の認定を受ける必要がある
サービスの分類 | 内容 |
居宅介護(ホームヘルプ) | 自宅で入浴・トイレ・食事の介護などを実施 |
重度訪問介護 | 重度の四肢不自由者または知的障害・精神障害者で常に介護を要する人を対象に、自宅での入浴・トイレ・食事の介護、外出時における移動支援などを総合的に実施 |
重度障害者など包括支援 | 介護の必要性がとても高い人を対象に居宅介護など複数のサービスを包括的に実施 |
同行援護 | 視覚障害で移動に著しい困難がある人を対象に、外出時の移動に必要な情報提供・移動の援護などを実施 |
行動援護 | 自己判断能力が制限されている人を対象に、危険を回避するために必要な支援、外出支援を実施 |
短期入所
(ショートステイ) |
自宅で介護する人が病気の場合などに、短期間、夜間も含めて施設で入浴・トイレ・食事の介護を実施 |
療養介護 | 医療と常時介護を必要とする人を対象に、医療機関で機能訓練・療養上の管理・看護・介護・日常生活の世話を実施 |
生活介護 | 常に介護を必要とする人を対象に、昼間、入浴・トイレ・食事の介護を実施し、創作的活動や生産活動の機会も提供 |
施設入所支援 | 施設に入所する人を対象に、夜間や休日、入浴・トイレ・食事の介護を実施 |
<訓練等給付>
サービスの分類 | 内容 |
自立生活援助 | 一人暮らしに必要な理解力・生活力などを補うため、定期的な居宅訪問・随時の対応により、日常生活における課題の把握と必要な支援を実施 |
共同生活援助
(グループホーム) |
夜間や休日、共同生活を行う住居で、相談や日常生活上の援助を実施 |
自立訓練(機能訓練) | 自立した日常生活または社会生活ができるよう、一定期間、身体機能の維持・向上に必要な訓練を実施 |
自立支援(生活訓練) | 自立した日常生活または社会生活がでるよう、一定期間、生活機能の維持・向上に必要な訓練を実施 |
就労移行支援 | 一般企業などへの就労を希望する人を対象に、一定期間、就労に必要な知識・能力向上に必要な訓練を実施 |
就労継続支援
(A型=雇用型、B型) |
一般企業などでの就労が困難な人を対象に、就労する機会を提供するとともに、能力などの向上に必要な訓練を実施 |
就労定着支援 | 一般就労に移行した人に、就労に伴う生活面の課題に対応するための支援を実施 |
上記以外にも、自治体それぞれが独自の支援体制をもっていたり、障害特性に応じて日常生活等で必要な用具を給付・貸与していたりもします。東京都の場合は以下のハンドブックやパンフレット等に概要が記載されています。
「高次脳機能障害者地域支援ハンドブック」には東京都における制度の概要がまとめられており、「高次脳機能障害の理解と支援の充実をめざして2022年版」には、症状の簡単なチェックシート、都内の公的な相談窓口、入所施設や就労支援機関、医療機関、当事者会・家族会の一覧が掲載されています。
東京都以外の方は、「○○県 高次脳機能障害 制度」などでインターネット検索をしてみるとよいでしょう。
介護保険
高次脳機能障害で介護が必要な状態である場合(要介護)や、日常生活を送ることに支障がある場合(要支援)で、特定の条件に当てはまる場合は、介護保険サービスを受けられます。
介護保険の対象となるのは、次の方です。
- 65歳以上の第1号被保険者
- 40歳以上65歳未満で医療保険に加入している第2号被保険者で、老化による特定疾病が原因である場合
同一内容のサービスが介護保険サービスと障害福祉サービスの両方で提供されている場合は、40歳以上であれば基本的に介護保険サービスが優先されます。ただ、障害の状況により障害福祉サービスを利用できる場合もあります。
<介護保険サービス(例)>
分類 | 内容 |
介護給付 | |
居宅サービス | 訪問介護、通所介護など |
地域密着型サービス | 総規模多機能型居宅介護
認知症対応型共同生活介護など |
施設サービス | 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
介護老人保健施設など |
予防給付 | |
居宅サービス | 介護予防訪問看護
介護予防通所リハビリなど |
地域密着型介護予防サービス | 介護予防小規模多機能型居宅介護
介護予防認知症対応型共同生活介護など |
介護予防・生活支援サービス事業 (区市町村によって異なる) | |
訪問型サービス
通所型サービス 生活支援サービスなど |
介護保険サービスを受けたい場合は、ご本人かご家族の方が区市町村の窓口に直接申請しましょう。その後、認定調査員による聞き取り調査が行われます。要介護または要支援の認定があれば、その認定区分に応じたサービスが受けられるようになります。サービスの詳しい内容や申請・手続きの手順等は、お住まいの区市町村の窓口へご相談ください。
障害年金
初診日から1年6カ月経過した時点かそれ以前で症状が固定したとき(障害認定日)に法令に定める状態にあるか、65歳に達するまでの間に障害の状態になったときで、一定の条件を満たしていれば障害年金を受給できます。その条件の1つが、国民年金や厚生年金の保険料未納期間の有無です。
障害年金の条件や等級、金額などについては、やや複雑になります。障害年金への申請をお考えの方は、以下の関連記事で詳しくご紹介していますので、ご一読ください。
(関連記事)
障害年金とは? 受給資格や申請方法の流れ
精神障害者保健福祉手帳と障害年金の等級判定基準
高次脳機能障害をもつ方の生活に役立つサイト・アプリ6選
医療機関や他の支援機関、行政によるサービス以外にも、高次脳機能障害をもつ方向けの情報を発信しているサイトやアプリも暮らしや仕事の仕方をサポートしてくれます。その中から、今回はサイトを1つ、アプリを5つご紹介しましょう。
日本高次脳機能障害友の会 公式サイト
高次脳機能障害をもつ当事者やご家族にとって役立つ第一のサイトは「日本高次脳機能障害友の会」公式サイトでしょう。同団体は、全国にある17の「脳外傷友の会」の正会員団体、その他の11の準会員団体で構成される高次脳機能障害者の組織です。公式サイトには、高次脳機能障害をもつ方の生活・仕事・学び・利用できるサービス等のQ&A、公的機関へのリンク集、書籍紹介などが掲載されています。特にQ&Aにある「日中の過ごし方」は、どのような日課を習慣づけると自宅でリハビリテーションができるかが提案されていて便利です。
高次脳機能障害の方にとって便利なアプリ
高次脳機能障害をもつ方にとって便利なアプリには、
- 音声を文字化する
- 入力した文章を音声合成機能で読み上げる
- 絵や写真を使ってコミュニケーションをとる
- 指定した時間に特定のテキストを読み上げる
といったものなどがあります。
今回は、次の5つのアプリをご紹介しましょう。
<便利な5つのアプリ>
アプリ名 | 特徴 | 公式サイト |
UDトーク | 音声認識による音声のテキスト化などができる、iOS版とAndroid版あり
音声合成機能を使ったテキストの読み上げ 多言語音声認識・翻訳機能あり 読み仮名表示、漢字かな変換機能あり 企業での導入事例が多い 個人利用にはiOS版やAndroid版が便利 |
UDトーク公式サイト |
指伝話メモリ | 指伝話シリーズの1つ、iPad版のみ
絵と写真と文字と音声を組み合わせたカードを作り、コミュニケーションやメモリーノート、学習カード等に使える 設定によって、音楽をかける・とめる、メッセージを送る、他のアプリを呼び出すなども可能 リハビリ現場でも利用されている |
指伝話メモリ公式サイト |
指伝話ぽっぽ | 指伝話シリーズの1つ、iPhone版/iPad版がある
声と音楽でお知らせするアラームアプリ 「○○の時間です」など、アラームで流す文章を指定できる 曜日指定ができるので日課づくりが可能 スヌーズ機能あり 日本語と英語に対応 音楽はiTunesのミュージックライブラリから選択可能 |
指伝話ぽっぽ公式サイト |
ボイス オブ デイジー 5 | デイジー図書の音声再生アプリで、iOS版とiPad版がある
デイジー図書の本文情報を画面に表示し、読み上げている部分をハイライトする 文字サイズ・再生速度・音の高さ・色の変更OK 本棚機能、しおり機能あり ボイスオーバーによる操作ができる 指定した再生時間後に再生を自動停止するお休みタイマー機能あり |
ボイス オブ デイジー 5 公式サイト |
ミライロID | 障害者手帳をスマホに表示できる、iOS版、Android版あり
障害者手帳の情報をアプリに登録して、窓口などで利用できる 車椅子のサイズや必要なサポートをアプリに登録しておけば、窓口でスムーズに伝えられる 施設のバリアフリー情報を見られる 飲食店やレジャーなどでお得に使える電子クーポン一覧がある 障害者割引が適用されたオンラインチケットを購入できる 障害種別に応じた役立つ情報などを見られる |
ミライロID公式サイト |
ミライロIDと指伝話シリーズについては、以下の関連記事でもご紹介しています。
(関連記事)
「ミライロID」で障害者割引チケット販売開始! ミライロIDの利用方法は?
障害者在宅就労にも!障害者自立支援機器と好事例
デイジー図書は、視覚障害や読字障害をもつ方のための図書で、音声での読み上げ機能等、障害特性に応じて図書を利用できるよう工夫されたものです。高次脳機能障害をもつ方で読字などが難しい方にも便利な図書といえるでしょう。次の関連記事で、詳細を解説しています。
(関連記事)
発達障害者の読書環境改善 読書バリアフリー法とアクセシブルな書籍
リハビリや支援サービス、アプリ等で使える能力を生かす
高次脳機能障害になると、以前できていたことが困難になり「できない」部分に目が向きがちです。しかし、今でもできること、何か道具やアプリを使えば補えることもあります。
今使える能力を生かしながら、生活リズムを安定させたり楽しみを増やしたりしていきましょう。
「障がい者としごとマガジン編集部」がある就労移行支援事業所ルミノーゾでも、高次脳機能障害をもつ方をご支援しています。