2020/03/17
障害者を雇用した場合に受け取れる助成金一覧|受給条件・対象者・支給額など
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障害者を雇用する場合、事業主は業務遂行にあたって障害特性を考慮した合理的配慮を提供しなければなりません。また、一度も障害者を雇用したことのない事業主の場合、障害者雇用のイメージ自体がつかみにくいかもしれません。障害者を新規雇用したり雇用した障害者の職場定着を進めたりしたり事業主のために、国はさまざまな助成金を用意しています。障害者を雇用しようと考えている事業主は、こうした助成金の活用を積極的に検討してみてください。
まずはチェック! 「各雇用関係助成金に共通の要件等」
障害者雇用を支援する助成金を受けるには、まず厚生労働省による「各雇用関係助成金に共通の要件等」を満たさなければなりません。特に、助成金を受け取れない事業主の条件は重要です。
助成金を受け取れる事業主
雇用関係の助成金を受け取れる事業主は、各助成金の「対象となる事業主」の要件を満たすとともに、以下の要件も満たす必要があります。
- 雇用保険適用事業所の事業主である
- 助成金支給のための審査に協力する
- 申請期間内に申請を行う
特に(2)については、審査に必要な書類等を整備・保管している必要があります。管轄の労働局などに求められた場合には、審査に必要な書類等を提出しなければならないからです。
また、実地調査が行われる場合もありますので、それを受け入れる必要もあります。
助成金を受け取れない事業主
たとえ助成金を受け取れる事業主の要件を満たしていても、以下の(1)〜(9)のいずれか1つでも該当する事業主は助成金を受け取れません。
- 2019年4月1日以降に雇用関係助成金を申請し、不正受給による不支給決定を受けるか、支給決定の取り消しを受けて、その決定日または取消日から5年以内の場合。(5年を経過していても、不支給受給による請求金を納付していない場合。)
- 2019年4月1日以降に申請した雇用関係助成金について申請事業主の役員等に、他の事業主の役員等として不正受給に関与した者がいる場合。
- 支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない場合。(ただし、支給申請日の翌日から起算して2か月以内に納付していればOK)
- 支給申請日の前日から起算して1年前から支給申請日の前日までの間に労働関連法令に違反した場合。
- 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれら営業の一部を受託する営業を行っている場合。(接待業務等に従事しない労働者の雇用については助成金を受け取れる場合あり)
- 事業主または事業主の役員等が、暴力団と関わりがある場合。
- 事業主または事業主の役員等が、破壊活動防止法第4条に規定された暴力的破壊活動を行ったり、行う恐れがあったりする団体に属している場合。
- 支給申請日または支給決定日の時点で倒産している場合。
- 不正受給が発覚した際に、都道府県労働局等が実施する事業主および不正に関係した役員名等の公表についてあらかじめ承諾していない場合。
(5)については、事業規模や実質的に接待営業を行っていないなどの状況によっては助成金を受け取れる可能性もあります。詳しくは各助成金の担当窓口へ問い合わせてみてください。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、就職が困難な人たちの職業安定を図るための助成金です。どのコースも、対象労働者をハローワークや民間の職業紹介事業者等の紹介によって、雇用保険の一般被保険者として継続雇用することが要件に含まれています。
問い合わせ・申請窓口は、東京都の場合は事業所がある場所の管轄ハローワーク、神奈川県の場合は神奈川助成金センターです。
特定就職困難者コース
就職が困難な者を継続して雇用することが確実である事業主のための助成金です。
事業主が満たすべき要件は次の2つ。
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介で雇用する
- 雇用保険一般被保険者として継続雇用する(※)
※継続雇用とは、対象労働者が65歳以上になるまで継続して雇用し、かつ、雇用期間が継続して2年以上になることです。
対象障害者は、身体障害者、知的障害者、精神障害者。最大支給額は3年間で240万円となっています。
【参考】厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」
障害者他位雇用コース
これまで一度も障害者を雇用したことがない中小企業が、初めて対象障害者を雇用し、その後も継続雇用することが確実である場合に支給される助成金です。
事業者が満たすべき主な要件は次の6つ。詳細については担当窓口に問い合わせましょう。
- 支給申請時点で、雇用する常用労働者数が45.5人〜300人である
- 初めて対象障害者である労働者(以下「対象労働者」)をハローワークや地方運輸局、職業紹介事業者等の紹介で、雇用保険の被保険者として雇っている
- 対象労働者を初回雇用コースの支給後も継続して雇用することが確実である
- 雇用する対象労働者の数が法定雇用障害者数以上となった日(雇入れ完了日)の前日から起算して6か月から1年間(基準期間)、事業主の都合で被保険者を解雇していない(天災や当該労働者の責めに期すべき理由がある場合を除く)
- 出勤簿やタイムカード、賃金台帳、離職した労働者の氏名・離職年月日・離職理由等がわかる労働者名簿などの書類を整備・保管している
対象障害者は、身体障害者、知的障害者、精神障害者。最大支給額は120万円です。
「法定雇用障害者数」については…「障害者雇用納付制度とは? 仕組み・算出方法を徹底解説!」
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
障害者手帳を持たない発達障害者や難病のある人を継続雇用する事業主のための助成金です。
対象となる事業主の要件は、以下の2つ。
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇用している
- 一般被保険者として雇用し、継続して雇用することが確実である
一方、対象となる労働者の要件は以下の通りです。
- 障害者手帳を持っておらず発達障害または難病がある
- 雇入れ時点で満年齢が65歳未満である
- 発達障害の場合:発達障害者支援法第2条に規定する発達障害者である(自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害など)
- 難病の場合:難病指定を受けた疾患を有する(ウェルナー症候群や潰瘍性大腸炎など厚生労働省による一覧表で確認)
最大支給額は、中小企業の場合は、1人あたり2年間で120万円。中小企業以外の場合は、1人あたり1年間で50万円です。
【参考】厚生労働省「「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」のご案内」
トライアル雇用助成金
障害者の雇用経験のない事業主が、障害者をトライアルという形で雇用し、障害者の継続雇用のきっかけをつくるために設けられた助成金です。当該労働者がトライアル雇用から常用雇用に移行した場合は、特定求職者雇用開発助成金を受給することもできます。
トライアル雇用助成金は、短時間かそうでないかによって2つのコースがあります。申請・問い合わせ窓口は、東京都の場合は管轄ハローワーク、神奈川県の場合は神奈川助成金センター(地域によっては管轄ハローワーク)です。
障害者トライアルコース
障害者を原則3か月間トライアル雇用し、障害者の適性や能力を把握した上で継続雇用につなげたい事業主のための助成金です。
事業主が満たすべき主な要件は4つ。詳細は担当窓口に問い合わせましょう。
- 障害者トライアル雇用求人を事前にハローワーク等に提出した
- ハローワーク等の紹介によって対象者を原則3か月の有期雇用で雇用する
- 障害者トライアル雇用等の期間について雇用保険被保険者資格取得の届出を行う
- 継続支援事業A型の事業を実施していない
一方、対象労働者の要件は以下の通りです。
- 継続雇用する労働者としての雇用を希望している
- 障害者雇用トライアルを希望している
- 次のいずれかを満たす
- 初回日時点で、就労経験のない職業に就くことを希望している
- 紹介日の前日から過去2年以内に2回以上の離職や転職を繰り返している
- 紹介日の前日時点で、離職している期間が6か月を超えている
- 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者である
最大支給額は、対象労働者1人あたり月額4万円(最長3か月)です。ただし、精神障害者を雇用する場合、最初の3か月は月額8万円、その後の3か月は月額4万円となり、最長6か月のトライアル雇用が可能です。
【参考】厚生労働省「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」
障害者短時間トライアルコース
雇入れ時の週所定労働時間が10時間以上20時間未満の対象労働者をトライアル期間中に週20時間以上の所定労働時間にすることを目指す事業主のための助成金です。トライアル期間は3か月以上12か月以内となっています。
対象となる事業主の満たすべき主な要件は以下の4つ。詳細は担当窓口に問い合わせましょう。
- ハローワーク等に障害者短時間トライアル雇用求人を提出した
- ハローワーク等の紹介で対象労働者を雇用している
- 3か月以上12か月以内のトライアル雇用を実施する
- 継続支援事業A型の事業を実施していない
対象労働者が満たすべき要件は、以下の3つです。
- 継続雇用する労働者としての雇用を希望している
- 障害者短時間トライアル雇用を希望している
- 精神障害者または発達障害者である
最大支給額は、対象者1人あたり月額最大2万円(最長12か月)です。
障害者雇用安定助成金
障害者の職場定着や職場適応を支援するための助成金で、障害者職場定着支援コースと障害者職場適応援助コースがあります。障害者を雇用する事業主が対象となる助成金は、障害者職場定着支援コースと障害者職場適応援助コース(企業在籍型職場適応援助者による支援)です。
問い合わせ・申請窓口はコースによって異なるので注意しましょう。
なお、中小企業障害者多数雇用施設設置等コースは2019年3月31日をもって廃止されました。
障害者職場定着支援コース
障害者の雇用を促進し、障害者の職場定着を図りたい事業主のための助成金です。対象労働者に対して対象措置を実施した場合に受給できるもので、7つの措置が助成対象です。
問い合わせ・申請窓口は、東京都の場合は管轄ハローワーク。神奈川県の場合は、神奈川助成金センター(地域によっては管轄ハローワーク)です。
まず事業主が満たすべき主な要件は、以下の3つ。詳細は担当窓口に問い合わせを。
- 職場定着支援計画の認定を受けている
- 対象労働者に対して対象措置を実施した
- 対象労働者を6か月以上職場に定着させている
対象措置は7種類あり、単独でも複数の措置を組み合わせても助成金を受給することができます。ただし、措置7については措置1〜6と併せて実施した場合のみ助成対象となります。
措置1:柔軟な時間管理・休暇取得
措置2:短時間労働者の勤務時間延長
措置3:正規・無期転換
措置4:職場支援員の配置
措置5:職場復帰支援
措置6:中高年障害者の雇用継続支援
措置7:社内の理解促進
対象労働者は措置によって異なります。詳しくは下の表で確認しましょう。最大支給額は120万円です。
【参考】厚生労働省「障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)」
障害者職場適応援助コース(企業在籍型職場適応援助者による支援)
障害者職場適応援助コースのうち企業在籍型職場適応援助者による支援を実施する事業主のための助成金です。
対象事業主が満たすべき要件は以下の6つ。
- 地域センターが作成または承認した支援計画に基づき、職場適応援助を行う
- 支援の日ごとに支援記録票を作成し、保管する
- 同一の対象労働者について、支援の開始日前の3年間に2回(精神障害者の場合は3回)以上、本助成金または企業在籍型職場適応援助促進助成金を受給していない
- 支援対象期間に対象労働者と当該援助者の労働に対する賃金を支払期日までに支払う
- 対象労働者や当該援助者の出勤状況や賃金の支払い状況などが分かる労働者名簿、賃金台帳、出勤簿などを整備・保管している
- 支給対象期間の末日までに、対象労働者または当該援助者を事業主都合により離職させていない
ここでいう対象労働者とは、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害のある人と、その他に地域障害者職業センターが作成する職業リハビリテーション計画で、職場適応援助者による支援が必要と認められる人です。
最大支給額は、月額12万円。申請窓口は、東京都の場合は労働局、神奈川県の場合は神奈川助成金センター(地域によっては管轄ハローワーク)です。
【参考】厚生労働省「障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)」のご案内〜企業在籍型職場適応援助者による支援〜」
相談・申請窓口のまとめ
以上の国による障害者雇用関連の助成金について、相談・申請窓口を一覧表にしました。受給要件として本記事では紹介していない部分がある他、年度によっても変わることがありますので、申請を考える場合は必ず担当窓口に確認しましょう。