2020/12/25
アビリンピック過去問題|第38回全国(2018)洋裁と縫製
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私たちの生活必需品である衣料品。洋裁や縫製の現場でも、多くの障害者が活躍しています。障害をもつ方々の衣料品を製作する技能を間近に見るなら、アビリンピック競技種目「洋裁」と「縫製」がおすすめです。実際に洋裁や縫製の仕事をしている人や就職を考えている人にとっても、とても参考になるでしょう。
今回は、2018年全国アビリンピックの「洋裁」と「縫製」についてご紹介しましょう。
もくじ
競技種目「洋裁」課題は薄手ウールのオーバーブラウス製作
アビリンピック競技種目「洋裁」は、支給された型紙と材料からオーバーブラウスを製作する競技です。参加できるのは身体障害者・知的障害者・精神障害者の選手。2018年全国アビリンピックでは4名が参加しました。
今大会で出された課題は、テーラーカラー・長袖・パッチポケット付きのオーバーブラウス製作。例年通り、薄手ウールを使用したオーダー仕立てとなっています。
「洋裁」の評価ポイントは、以下の6点です。
- シルエットが美しく仕上がっているか
- 袖や衿がきれいについているか
- ポケットが正しい位置についているか
- ボタンとボタンホールが正しくきれいにつけられているか
- 袖口、裾、 見返しのまつりが表にひびいていないか
- オーダー仕立てのソフトな仕上がりになっているか
2018年は金賞・銀賞の受賞者はなく、銅賞と努力賞のみが授与されました。
「洋裁」で支給されるもの・持参するもの
「洋裁」では、大会当日の会場に材料一式とミシンなどの設備・用具が準備されています。選手は定規やしつけ糸などの小さな用具・材料を持参する必要はありますが、それ以外のものは会場側で用意してもらえます。
大会前の下見では支給される材料・設備・用具類に不備がないか確認を。念のため、大会当日もざっと確認しましょう。
大会会場には、以下のものが用意されています。
<「洋裁」で支給される材料>
- 型紙:1式
- 表地(薄手ウール):1.5m(粗裁ちしたもの)
- 芯地(接着芯):0.8m(粗裁ちしたもの)
- 接着テープ(縦地):1.5m
- ミシン糸(200m巻):1個
- 手縫い糸:1枚
- 穴糸:1枚
- ロック糸:3個
- ボタン(2.0cm):3個
- 肩パット:1組
<「洋裁」で会場に用意されているもの>
- 作業台:1台
- 丸椅子:2脚
- 本縫いミシン:1台
- 電気スタンド:3台
- ベビーロックミシン:1台
- ボビン・ボビンケース:1組
- ミシン針(11号):2本
- ハンガー:1本
- スチームアイロン:1台
- 仕上げ用具(まんじゅう・小馬・そでまん):1式
選手が持参するものは、以下の3点です。競技中の貸し借りはできませんので、忘れずに用意してください。
<「洋裁」で選手が持参するもの>
- 洋裁用具一式(ステッチ定規、しつけ糸、霧吹き等)
- 敷布:1枚
- 当て布:1枚
アビリンピック競技種目「洋裁」の課題で練習を行う場合も、なるべくこうした設備や用具・材料を使って製作しましょう。
「洋裁」の競技時間と課題概要
「洋裁」は長丁場の競技の1つ。生地の裁断から行う必要があるため、作業量が多いのも特徴です。
オーバーブラウスは見た目も大切。丁寧に、かつ効率的に作業を進めましょう。
「洋裁」の競技時間
「洋裁」の競技時間は6時間です。午前中に2時間、午後に4時間の作業時間が割り振られ、途中に1時間の昼休憩が入ります。
2018年全国大会では10:00-17:00で実施されました。
「洋裁」の課題概要
「洋裁」の課題は、支給された材料を用いて、裏無しのオーバーブラウスを製作すること。粗裁ちした布地を裁断して、芯貼り、印づけ、本縫い(ミシン、アイロン、ロックミシン)の順に作業を進めましょう。
具体的な課題の仕様は以下の通りです。
<2018年全国大会「洋裁」課題の仕様>
- オーバーブラウスは、テーラーカラー・長袖・パッチポケット付き
- 肩・脇・袖下・袖付け・ヘム・見返し奥はロック始末
- 衿付けは、前身頃・見返し共に、縫い代を割る
- 後ろ衿ぐりは、片返し・手まつり
- ポケットはコバミシン付け
- ボタンホールは手かがり
- 表衿と見返しのゆとり分は選手が自分で行う
ものさしは方眼定規を、しつけはチャコやステッチ定規を使うことが推奨されています。また、むやみにまち針を打たず、数を適宜減らすことで効率的に作業を進められます。
衿と袖付けでは苦戦する選手もいました。見た目をよく仕上げるには、丁寧な裁断、合印をきちんと合わせてミシンをかけること、そして丁寧なアイロンがけが重要です。作業中は、左右対称に作れているかも適宜確認してください。
競技種目「縫製」は知的障害者によるエプロン製作
アビリンピック競技種目「縫製」は、提供された裁断済みのパーツを組み合わせて縫製する技能を競う種目。課題材料の各パーツの仕上がり寸法が正確かどうか、アイロンとミシンが適切にかけられているか、完成作品の出来映えはどうかが評価ポイントとなります。
「洋裁」とは異なり、「縫製」には知的障害者のみが参加可能。2018年全国大会の参加選手数は17名でした。
今大会の課題は、「エプロンの縫製」です。提供される9枚のパーツを組み合わせて製作しましょう。きれいに仕上げるには、ミシンがけの際の指先や布の使い方、アイロンのかけかたがポイントとなります。
「縫製」で持参するもの・支給されるもの
「洋裁」と同様、競技に必要な材料や設備・用具類は基本的に会場で用意してもらえます。選手は、裁ちばさみやステッチ定規などの裁縫用具一式を持参しましょう。
支給される材料について注意しなければならないのは、もともと材料に欠陥がない限り再支給されないということ。競技中の貸し借りも禁止ですので、ミスのないよう気をつけて作業を進めましょう。
会場には、以下のものが用意されています。
<「縫製」で支給される材料>
- 表地(綿ツイル・裁断済み):1着分(袖ぐり・フリル上部はロック処理済み)
- ミシン糸:1個
<会場に用意されているもの>
- 作業台(1800×900×700程度):1台
- ミシン(職業用自動糸切り):1台
- ボビンケース(上記ミシン使用者のみ):1個
- ボビン(上記ミシン使用者のみ):2個
- ミシン針(11号・職業用ミシン針):2本
- アイロン(家庭用スチームアイロン):1台
- 敷布:1枚
選手が持参するのは、縫製用具一式。具体的に何が必要かは、以下を参考にしてください。
<「縫製」で選手が持参するもの>
- 縫製用具一式(裁ちばさみ・小ばさみ・目打ち・ものさし・チャコ・ステッチ定規・その他必要なもの)
「縫製」の競技時間と課題概要
「縫製」の競技時間は「洋裁」よりも2時間ほど短くなっています。しかし、ダーツ処理やその上にポケットを付けるなどの丁寧な作業が要求されますので、集中力を保って製作を行うことが重要。特に午後は、集中力が切れたりミスが増えたりする傾向が見られます。
事前に何度も製作の練習を行うことが、集中力を保ち、落ち着いて作業を進めるコツです。
「縫製」の競技時間
「縫製」の競技時間は4時間。今大会は、9:00-14:00で実施されました。競技の途中で1時間の昼休憩が入っています。
午後になると、集中力が途切れたり、仕様の見落としや誤解などが増えたりするため、注意が必要です。後半で息切れしないよう、大会前の練習でも時間配分を意識して取り組むようにしてください。
「縫製」の課題概要
「縫製」の課題製作では、仕様の読み間違いや見落としがあるとタイムロスになってしまいます。落ち着いて、丁寧に確認しながら製作することを常に意識しましょう。
課題となるエプロンの寸法等は事前公開されますので、大会前の練習が何よりも重要。練習を重ねた選手ほど、本番でしっかり実力を発揮できていました。
製作練習や競技本番で守るべき仕様は、以下の通りです。
<「縫製」課題の仕様>
- 肩ひも:2cmのできあがり幅、三方に端ミシンステッチをかける
- 腰ひも:4cmのできあがり幅、三方に端ミシンステッチをかける
- ダーツ縫い:中縫い、縫い代は中心側へ倒す
- ポケット口:1cm、2cmで三つ折り縫い
- ポケット付け:端ミシン、押え金の幅(0.6cm)のダブルステッチ
- 見返し:見返し布の下側を0.5cm、1cmの三つ折り縫い
- 肩ひも付け:見返しに挟み付ける
- 袖ぐりカーブ:1cm折りで、袖ぐりから胸のステッチ幅は0.6cmの押え金の幅でかける
- フリル作り:できあがり幅10cm、裾・両端は0.5cmの三つ折り縫い
- フリル付け:ギャザーを寄せて身頃の裾につける(付け縫い代の両脇は脇縫いで挟み付ける)、0.6cmの押え金幅でステッチをかける
- 脇:1cm、1.5cmの三つ折り縫いで、フリル付けの後にステッチを行い、腰ひもを挟み込んで脇縫いをする
多くの選手が苦戦したのは、ダーツ処理の上にポケットをつける工程や、ギャザーを寄せる工程、縫い代潰しなど。これらの工程は特に繰り返しの練習が必要です。
課題図には、ポケットを付ける位置やステッチのかけ方、仕上がり幅などの指示があります。完成エプロンを写した「参考写真」もありますので、完成形をイメージしながら各工程を進めていきましょう。