亜急性期脊髄損傷に光、ケイファーマが企業治験に向けニコン・セル・イノベーションと基本合意


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2026年2月24日、株式会社ケイファーマと株式会社ニコン・セル・イノベーションによる、亜急性期脊髄損傷の治療に向けた企業治験の技術移管と治験製品の製造委託について、基本合意書が締結されました。慶應義塾大学の岡野栄之教授らの25年以上におよぶ研究の成果が、実用化に向けて大きく動き出します。同日に開催された記者会見の様子とケイファーマの取り組みをご紹介します。

ケイファーマがニコン・セル・イノベーションと企業治験に向けた基本合意書を締結


会見の様子:(左から)岡野栄之教授、福島弘明社長、中山稔之社長
(撮影:編集部)

2026年2月24日、株式会社ケイファーマ(以下、ケイファーマ)の福島弘明社長と岡野栄之教授、株式会社ニコン・セル・イノベーション(以下、ニコン・セル・イノベーション)の中山稔之社長らが登壇。ケイファーマの再生医療事業の開発パイプラインのひとつである「KP8011(亜急性期脊髄損傷)」の再生医療等製品に関する企業治験に向けた技術移管と治験製品の製造委託について基本合意書を締結したことを発表しました。

ニコン・セル・イノベーションは、ニコンのヘルスケア事業の中で細胞受託生産を担う100%出資子会社。世界最大手のLonzaと戦略的業務提携による世界基準の品質管理ノウハウとネットワークをもちます。日本最大級のGCTP/GMP準拠生産施設を有するといった点も大きな強みです。

岡野教授らの25年以上にわたる長年の研究の成果が、いよいよ実用化・市場投入に向けて具体的に動き始めました。

ケイファーマの亜急性期脊髄損傷を対象とする細胞移植と機能回復の事例


出典:ケイファーマ会見資料

ケイファーマは、疾患特異的iPS細胞を活用した創薬(iPS創薬)ならびにiPS細胞を活用した再生医療を主たる事業とする、慶應義塾大学発のバイオベンチャーです。2016年11月に設立され、今年で10年目を迎えます。

創業メンバーは、中枢神経領域に強いエーザイでの長年の経験をもつ代表取締役社長CEO福島弘明氏、脳・神経領域の世界的研究者である取締役CSO 岡野栄之教授、整形外科領域の世界的な研究者である取締役CTO 中村雅也教授の3名です。中村教授は2019年から日本再生医療学会常務理事を務め、岡野教授は2025年からISSCR(国際幹細胞学会)Presidentを務めています。

ケイファーマのiPS創薬では、ALS(筋萎縮性側索硬化症)治療薬の研究開発を進めており、現在は医師主導治験PhⅠ/Ⅱaを終了、PhⅢの準備中です。また、2024年には、アルフレッサ株式会社と再生医療事業における亜急性期の脊髄損傷の開発パイプラインについてのサプライチェーンに関する業務提携基本契約を締結しました。

今回、基本合意を締結したのは、再生医療事業として進めている5つの開発のひとつである、亜急性期脊髄損傷の治療(開発コード「KP8011」)に関するものです。

福島社長によれば、脊髄損傷の急性期(受傷直後)は患部の炎症が激しく、細胞を移植しても生着しにくいとのこと。移植した神経前駆細胞が、免疫細胞の激しい攻撃を受けてしまうからです。反対に慢性期では、炎症は落ち着いたものの、中枢神経系を構成する神経細胞の生存・機能を支えるグリア細胞の一種「アストロサイト」が反応し、「グリア瘢痕(はんこん)」と呼ばれる“かさぶた”のようなものを形成してしまいます。グリア瘢痕は、神経の再生を妨げる組織です。

これに対し、亜急性期の脊髄損傷では、炎症が落ち着き始めるとともに、まだグリア瘢痕が多くは形成されていません。ケイファーマが開発する治療法は、この時期に神経前駆細胞の移植を行い、神経の再生を促す仕組みとなっています。

従来は、急性期に大量のステロイドを使う治療法が用いられてきましたが、副作用のリスクが大きく、治療効果も高くない点が課題となっていました。

慶應義塾大学のヒトiPS細胞由来神経前駆細胞を用いた臨床研究では、患者本人の同意を得たうえで、受傷後14日〜28日に免疫抑制剤を併用しつつ200万個の細胞を移植。移植後3週間の時点で「村山医療センター」へ転院し、リハビリと1年間の経過観察を実施しました。

その結果、安全性について再生医療と因果関係のある重篤な有害事象は1件も認められず、実施した4例のうち2例で顕著な機能改善が見られたとのことです。そのうち1例は完全まひの状態から、自力で食事・車いすへの移乗ができる状態まで改善。もう1例では、完全まひの状態から自力で立てる状態まで改善しました。

KP8011の企業治験を進めるため、2027年中には治験届を提出し、2030年代前半までには販売を開始したいとしています。

ニコン・セル・イノベーションの強みと実績


画像提供:ニコン・セル・イノベーション

ニコン・セル・イノベーションは、カメラで有名なニコンが100%出資するヘルスケア事業の子会社です。「世界最高レベルの再生医療用細胞、遺伝子治療用細胞の受託生産サービスを日本のお客様に」をミッションとして、2015年5月に設立されました。

ニコンはカメラのイメージが強い企業ですが、実は顕微鏡事業のほうが古い歴史をもちます。カメラより早く市場に投入されたニコンの「JOICO顕微鏡」発売から昨年100周年を迎え、近年は「細胞を見る」から「細胞を育てる」まで幅広く事業を展開しています。具体的には、細胞受託開発・生産を行う企業(CDMO、Contract Development and Manufacturing Organization:医薬品開発製造受託機関)として、商用・治験を含め約10のプロジェクトを進めています。扱う細胞の種類も、T細胞、iPS細胞、MSC(間葉系間質細胞)など様々。Heartseed(ハートシード)株式会社のiPS細胞由来心筋細胞も取り扱っています。

ニコン・セル・イノベーションの強みは、世界基準の品質管理とネットワーク、独自の生産施設を有していることです。設立当初から、受託生産で世界最大手のLonzaと業務提携することで、世界基準の品質システムとワールドワイドな技術移管を可能に。ニコン・セル・イノベーション自身も、東京都江東区の潮見という好立地に再生医療用細胞のCDMOとしては日本最大級の施設をもち、1万1,000平方メートルを超える広さに拡張中です。中山社長によれば、「物流の面でアクセスが良く、製品の移管・輸送、細胞管理など、オペレーションの面でも大きなメリットがある」とのこと。加えて、多数の実績から開発から製造まで、幅広い受託サービスを提供できる点も、差別化につながっています。

ケイファーマの岡野教授は、ニコン・セル・イノベーションと提携することの意義について、「CDMOをどこにするかで、かなり勝負が決まる」と話します。

「iPS細胞を扱えるCDMOは、日本ではごくわずか。知人から助言を受け、実際にサイトビジットをさせていただいて『ここならお任せできる』と思いました。今後、我々がアカデミアの臨床研究でやったことをそのままスケールアップできるかどうか、これはやってみないとわかりません。Lonzaと業務提携し生産体制が整っているニコン・セル・イノベーションと取り組むことが非常に大事です。この日を本当に楽しみにしていました」(岡野教授)

中山社長も、「いよいよ治験薬製造に向けた基本合意書を締結することができました。本当にありがとうございます。ニコン・セル・イノベーションは、11年間の再生医療を支えるインフラとしての想いと細胞生産技術を最大限に活かして、全力で取り組んでいきます」と、会見で意気込みを語りました。

ケイファーマ、ニコン・セル・イノベーションからのメッセージ


撮影:編集部

「ニコン・セル・イノベーションを委託先に選んでいただいたのは、弊社の長年の実績を基に、提携するLonzaのグローバルなネットワークも踏まえ、本プロジェクトの開発を加速できると考えていただいたからだと思います。KP8011は、極めて社会的意義の高いプロジェクトです。ニコン・セル・イノベーションは、患者様に一刻も早く有効な治療をお届けできるようケイファーマと密に連携し、再生医療を支えるインフラとして、これまで培ってきた細胞製造技術と品質基盤を活かした高品質な細胞製品の製造を通して、本プロジェクトの推進に貢献して参ります」(ニコン・セル・イノベーション)

「脊髄損傷は大変厳しい疾患であり、有効な治療法もありません。ケイファーマとしては、一刻も早く患者さんの元にiPS細胞を活用した再生医療等製品を用いた治療法をお届けできるように尽力して参ります」(ケイファーマ)

【取材協力】

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