就労移行支援体制加算・B型事業所などの報酬、臨時的見直しへ(令和8年度)


本ページはプロモーションが含まれています

令和8年1月22日の「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」において、令和8年度の臨時応急的な報酬見直しを行う案が示されました。対象サービスは、就労継続支援A型・B型、生活介護、自立訓練、共同生活援助、児童発達支援、放課後等デイサービスです。制度本来の趣旨に沿わない加算算定や、令和6年度報酬改定による影響、ニーズを反映しない新規参入などの課題が背景にあります。就労系サービスへの影響を中心に、見直し案の内容をお伝えします。

令和8年度の臨時応急的な報酬見直しの概要と背景

今回の見直し案の内容は、大きく分けて3つあります。1つ目は就労移行支援体制加算の見直し、2つ目は就労継続支援B型の基本報酬区分の基準の見直し、3つ目は、近年新規事業者の伸び率が大きいサービスの新規事業者を対象とする応急的な報酬単価の特例(引き下げ)です。

下表が見直し内容と実施時期の概要です。

【臨時応急的な見直し案で示された内容】

項目 見直しの概要 実施時期
就労移行支援体制加算 一事業所で算定対象となる年間の就職者数に上限を設定 令和8年4月から
就労継続支援B型の基本報酬区分の基準 平均工賃月額の区分1〜8に、区分A〜Cを追加 令和8年6月から
新規事業者の報酬単価特例 対象サービスの新規事業者(令和8年6月1日以降指定)について、基本報酬を一定程度引き下げ 令和8年6月1日から令和9年度報酬改定まで

こうした見直しの背景には、障害福祉サービス等で続く予算額の増加と人材およびサービスの質の確保という従来の課題に加え、本来の制度趣旨を無視した加算算定を行う事業者の存在や当事者・地域のニーズを反映しない新規参入の増加といった新たな課題もあります。

障害福祉サービス等の国の予算額は、19年間で約4.5倍、令和8年度予算案は前年度から8.8%増の2兆3,293億円となっています。人材確保に向けた従事者の処遇改善、サービスの質の確保、および障害福祉の各制度を今後も続けていくためにも、令和8年度に臨時的な見直しを行う方針です。

次項から、それぞれの内容についてお伝えします。

就労移行支援体制加算の見直し(令和8年4月から)

就労移行支援体制加算とは、一般企業などへの就職・職場定着を進めることを目的に、継続的な支援体制を構築している事業所を評価する加算制度です。前年度に就労継続支援A型などを利用して一般就労へ移行し、その後6か月以上働き続けた者がいる場合に算定できます。加算額は、評価点に応じた所定単位数と前年度実績の人数・利用者数をもとに算出されます。

令和8年度の就労移行支援体制加算の見直し案では、

  • 一事業所で算定対象となる年間の就職者数の上限は「定員数まで」
  • 他の事業所において過去3年間に算定実績がある利用者は、就労移行支援体制加算を算定できない

という内容が示されました。

この見直しが適用される障害福祉サービスは、以下の4つです。

【見直し適用対象となるサービス】

  • 就労継続支援A型
  • 就労継続支援B型
  • 生活介護
  • 自立訓練(機能訓練・生活訓練)

ただし、適用除外となるケースもあります。他の事業所で過去3年間における算定実績がある利用者について、ハラスメントなどのやむを得ない理由で退職したケースなどです。これらの市町村長が認めたケースについては、就労移行支援体制加算の算定が可能です。

この見直しの背景には、ニュースにもなったA型事業所の事例があります。同一の利用者について、A型事業所と一般企業の間で何回も離職・転職を繰り返し、その都度加算を取得していたケースです。利用者の一般就労への移行と職場定着という制度本来の趣旨に合致しない運用である点が、大きく問題視されました。

こうした不適切な加算取得を防ぎ、制度本来の趣旨に沿う運用をより確実なものとするための規制です。

就労継続支援B型の基本報酬区分の見直し(令和8年6月から)

就労継続支援B型の基本報酬区分に関する見直しでは、

  • 区分1・区分2の範囲を分割して区分Aおよび区分Bを追加する
  • 区分3〜区分6については全体的に基準を見直したうえで、区分6の下に区分Cを追加する

という形が提案されています。区分7および区分8の基準に変更はありません。

厚生労働省の資料から引用した見直し案の図。 区分の基準は以下の通り。 区分1:4万8,000円以上(単価837) 区分A:4万5,000円以上4万8,000円未満(単価812) 区分2:3万8,000円以上4万5,000円未満(単価805) 区分B:3万5,000円以上3万8,000円未満(単価781) 区分3:3万3,000円以上3万5,000円未満(単価758) 区分4:2万8,000円以上3万3,000円未満(単価738) 区分5:2万3,000円以上2万8,000円未満(単価726) 区分6:1万8,000円以上2万3,000円未満(単価703) 区分C:1万5,000円以上1万8,000円未満(単価682) 区分7および区分8:変更なし
出典元:「第52回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料」(厚生労働省)p.4

ただし、令和6年度報酬改定の前後で区分が上がっていない事業所については、適用除外となります。

この見直しの背景には、令和6年度報酬改定で平均工賃月額の計算式を変更したことで、区分が上がるB型事業所が想定以上に増えたことがあります。

改定前の計算式は「支払った工賃の総額÷工賃を支払った対象者の総数」というシンプルなものでした。しかし、これでは障害特性などによって利用日数が少ない者を多く受け入れる事業所が正当に評価されないという懸念があり、延べ利用者数を用いた計算式に改められました。

【令和6年度報酬改定後の計算式(B型の平均工賃月額)】
平均工賃月額=年間工賃支払総額÷(年間延べ利用者数÷年間開所日数)÷12か月

厚生労働省の資料によれば、新しい計算式によって算出される平均工賃月額は、改定前の計算式による金額よりも6,000円ほど上昇したとのこと。改定前の令和4年度では平均1万7,031円だったところ、改定後は令和5年度で2万3,053円、令和6年度で2万4,141円になったということです。B型事業所側の問題ではなく、制度の持続可能性の観点から区分の見直しが図られています。

応急的な報酬単価の特例(令和8年6月から令和9年度報酬改定まで)

新規事業所に対する応急的な報酬単価の特例は、就労移行支援体制加算と同様、事業所側の不適切な運営が背景となって検討されるものです。令和8年6月1日以降に新規に指定された事業所について、収支差率に応じた応急的な報酬単価の引き下げを行います。

対象となるサービスは、以下の4つです。

【応急的な報酬単価引き下げの対象となるサービス】

  • 就労継続支援B型
  • 共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)
  • 児童発達支援
  • 放課後等デイサービス

ただし、一定要件を満たす事業所については適用されません。

【基本報酬引き下げの適用除外となる事業所の要件例(障害者の場合)】

  • 強度行動障害の状態にある者、医療的ケアを要する者への支援を行い、報酬上の一定の評価を受けている事業所
  • 視覚・聴覚・言語機能障害者、高次脳機能障害者を支援する体制について、報酬上の一定の評価を受けている事業所
  • 離島・中山間地域にある事業所
  • 自治体が客観的に必要であるとして設置する事業所

新規事業所が対象ですので、既存事業所には適用されません。合併・分割・事業譲渡によって指定されるケースについては、「その前後で実質的に継続して運営されている」と認められれば、既存事業所と同様に報酬引き下げの対象とはなりません。

厚生労働省は報酬引き下げ案の背景にある事例に、事業内容をeスポーツ支援として「急成長」「社会性のあるビジネスモデル」などとアピールするB型事業所の開業支援などを挙げています。新規参入だけでなく、新たな事業の実施、出資などの呼びかけもあるとのことです。

これらの問題事例に見られる「特段の知識や経験は不要」「簡単にできる」「利益をあげることができる」といった誘い文句は、決して障害福祉サービスの実態を示すものではありません。物価高の影響や重度障害者への質の高い支援に向けた取り組みにかかる様々なコストおよび人材不足に頭を抱える事業所は多く見られます。

それにもかかわらず、近年は営利法人の参入が増えてきました。厚生労働省は、「事業者側はニーズ調査をせずにどんどん算入してきており、先行して開設した後に利用者を募るという状況がみられる」といった自治体側の懸念も紹介しています。

安易な参入の結果、利用者の能力向上や一般就労への移行と職場定着などの本来の役割を無視し、“収益を上げるために利用者を募集して、都合が悪くなったら放り出す”という状況は放置できるものではありません。事態の打開を図るべく、このような新規参入事業者に対する報酬単価の引き下げが検討されています。

(関連コラム)

  • 就労継続支援は儲かる?虚偽の実績記録票で加算算定
  • 【就労継続支援A型・B型事業所】不適切な支援を見抜くチェックポイント

不正を行う事業者の参入抑制には地域の力も

3つの見直し案の中で、2つは制度の穴を悪用した利益目的の“名ばかり支援”が背景にあるようです。支援の質を確保するために奮闘してきた事業所にとっては、腹立たしい事態ともいえます。

国は、障害福祉サービス等に新規参入しようとする事業者について、支援の質を確保できるかどうかを見極めるガイドラインを示しています。具体的には、

  • 障害に対する理解や支援ノウハウ
  • 障害福祉サービス等の会計処理に関する知識
  • 地域のニーズの理解
  • 地域の支援機関との連携

といった点の重視です。自治体の担当者は新規参入しようとする事業者との面談を繰り返しながら、適切なサービスの提供や会計処理ができるかどうかを確認していきます。

自治体および支援機関・福祉事業所のネットワークは、これまでも大切にされてきました。不正な請求により利益をあげようとする事業者の参入を抑制し、支援の質を確保するためにも、より一層の連携強化が求められています。

【参考】
「第52回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料」(厚生労働省)

ルミノーゾチャンネル あなたの働きたいを応援する就労移行支援事業所
就職、職場定着に真に役立つ情報をわかりやすく解説。
あなたの就労に活用ください。
TOP