2023/11/06
デフリンピックとは?正式名称と特徴、パラリンピックとの違い
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2025年、東京で「第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025」が開催されます。デフリンピックとは、耳が聞こえないアスリートのための国際的な競技大会。オリンピックと同様に夏季大会と冬季大会があります。デフリンピックとパラリンピックの違い、デフリンピックならではの特徴や魅力、そして2025年夏季大会の情報をお届けします。
デフリンピックとは? 定義と特徴
デフリンピックとは、耳が聞こえないアスリートが参加できる国際的なスポーツ競技大会です。ろう者が適切に情報得られるようさまざまな工夫がされている点に特徴があり、基本的にはオリンピックと同じルールで競技が行われます。
デフリンピックの定義と正式名称
デフリンピックとは、国際的な「ろう者のオリンピック」のこと。英語で「耳が聞こえない」という意味のDeaf(デフ)と「オリンピック」に由来して名付けられました。
正式名称は、「第○回△季デフリンピック競技大会 (開催地名+開催年)」の形をとります。たとえば「デフリンピック2025」の場合は「第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025」、2019年の冬季デフリンピックの場合は、「第19回冬季デフリンピック競技大会 ヴァルテッリーナ イタリア 2019」となります。
デフリンピックを運営するのは、国際ろう者スポーツ委員会(ICSD、 International Committee fo Sports for the Deaf)です。1924年に設立され、これまでデフリンピックや、ろう者世界選手権大会の開催、各国でのろう者スポーツの振興などに取り組んできました。
デフリンピックの特徴と出場条件
デフリンピックの開催時期は、夏と冬です。夏は「夏季大会」、冬は「冬季大会」と呼ばれます。オリンピックと同じように、4年に1度、夏季大会と冬季大会が交互に、2年ごとに開催されています。
競技ルールは、オリンピックと基本的に同じ。オリンピックとの違いはルールではなく、むしろ情報保障のやり方にあります。
たとえば、競技スタートを知らせる際、オリンピックでは笛やスターターピストルなど「音」で合図するケースが非常に多く見られるでしょう。デフリンピックでは、耳が聞こえない人のために、「フラッシュランプ」や旗、手を使った合図も行います。観客に対しても、音で情報を伝えるだけでなく、国際手話や字幕などの視覚による情報提供があります。
そして、デフリンピックに出場できる選手は、補聴器などがない状態では普通の声の大きさでの会話が聞こえない人のみです。普段の生活で補聴器や体外人工内耳を使用しているアスリートでも、競技会場ではこれらの機器を使用せずに競技に臨みます。
【デフリンピックの参加資格】
- 補聴器などをつけない状態で、普通の声での会話(55デシベル)が聞こえない
- ICSD加盟国の国籍を有する人で、「ろう者スポーツ協会」や「全日本ろうあ連盟」に登録されている大会における記録や順位などで出場条件を満たしている
- 公平なプレーのため、競技会場内では補聴器や体外人工内耳を使用しないこと
デフリンピックの目的
デフリンピックを開催する目的は、「デフリンピック規約」の「DG1. 基本原則」に記載されています。
【DG1. 基本原則】
デフリンピックの目的には以下を含む:
- ろうのスポーツ選手の肉体的・精神的幸福
- ろう者が高レベルのスポーツ競技に参加する機会の提供
- 4年に一度のスポーツ競技会への世界中の選手の集結
- 国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)の原則の世界への推進と、それによるろうコミュニティ中の国際親善の構築
基本原則によれば、ろう者のスポーツを通じた幸福の実現、高レベルなスポーツ競技大会の定期開催と参加機会の提供、差別がないろう者のスポーツ促進と国際的交流の実現が、デフリンピックの大きな目的となっているようです。
パラリンピック、スペシャルオリンピックスとの違い
デフリンピックと似た言葉に、「パラリンピック」や「スペシャルオリンピックス」があります。いずれも障害者のスポーツ競技大会に関する言葉ですが、出場条件や大会の方針などに違いがあります。
パラリンピックとの違いと加盟・離脱の歴史
障害者のスポーツ競技大会といえば、「パラリンピック」をあげる人が多いでしょう。実際、全日本ろうあ連盟スポーツ委員会のデフリンピック紹介ページによれば、パラリンピックは9割以上の人が「知っている」と回答しました。これに対し、デフリンピックを知っているのは1割程度にとどまっています。※1
しかし、実のところ、デフリンピックのほうがパラリンピックよりも早く始まりました。先ほどご紹介したように、デフリンピックの運営組織であるICSDが発足したのは1924年。パラリンピックの運営組織である国際パラリンピック委員会(IPC, International Paralympic Committee)が発足したのは1989年です。
当初はICSDもIPCに参加していたものの、1995年に方向性の違いからICSDは離脱。国際手話によるコミュニケーションや情報保障を重視し、それ以外のところではオリンピックと同じルールで競技大会を行うというデフリンピックの独自性を追求するためでした。
この結果、パラリンピックには肢体不自由、脳性まひ、視覚障害、知的障害のある人が出場し、聴覚障害者はパラリンピックではなくデフリンピックに出場することになりました。
スペシャルオリンピックスとの違い
パラリンピックとは別に、「スペシャルオリンピックス」というものもあります。これはスポーツ競技大会の名称ではなく、国際的なスポーツ組織の名称です。日本の組織は、公益財団法人スペシャルオリンピックス日本です。
デフリンピックとの違いは、参加条件と競技会の位置づけ、目的にあるでしょう。デフリンピックは聴覚障害があり、かつ特定の大会で上位の成績をおさめることが条件となっていました。しかし、スペシャルオリンピックスでは、6歳以上の知的障害のある人がアスリートになれます。
また、スペシャルオリンピックスでは、年間を通じて、知的障害のある人が参加できるスポーツトレーニングや競技会などを開催。種目は、オリンピック競技種目に準じたものです。他に、ボランティアの育成も行っています。
スペシャルオリンピックスがこうした活動を行う目的は、知的障害のあるアスリートの健康増進や自立、社会参加などです。日本が初めて選手団を送ったのは、1983年の第6回夏季国際大会(アメリカ)でした。
スペシャルオリンピックスの最大の特徴は、日々のスポーツトレーニング(練習会)を競技会と同様に重視していることです。競技会では、年齢や性別、能力、成績に応じた8名以下の組み分け(ディビジョン)があるものの、「予選で敗退する」というシステムがありません。
そのため、失格や棄権がなければ参加したアスリートは全員決勝へと進み、組ごとに表彰が行われます。上位3名にはメダルが授与され、4位以下には参加賞のリボンが贈られます。
※1 デフリンピックってなに?|一般財団法人全日本ろうあ連盟 スポーツ委員会
デフリンピックの魅力
デフリンピックは、選手と観客の双方にとって大きな魅力がある大会です。
まず、これまで述べてきたように、デフリンピックでは聴覚障害のある人のためにさまざまな情報保障が行われます。
選手は国際手話やフラッシュランプ、審判が用いる旗や手の動き、文字などで情報を得られますし、観客もそうした機器や動きの他に会場内に設置された大きなモニターで手話や字幕を利用できます。
聴覚障害のない人が多い場所では無視されがちな視覚による情報をしっかり得られるため、今どのような状況なのかをリアルタイムで把握しながら参加、応援できるのです。
さらに、デフリンピックにおける日本選手団の活躍にも注目が集まります。73の国や地域から2,408名の選手が参加した2022年夏季デフリンピック ブラジル大会で、日本は過去最多となる30個のメダルを獲得しました。
ブラジル大会は、コロナ禍の影響で感染症対策を続けながらの競技会でした。日本選手団でも149名のうち陽性判定を受けた選手が23名となり、期間中最後の5日間は全ての競技を出場辞退することに。このような苦しい中での快挙に、多くの方が喜びを分かち合いました。
【2022年 第24回夏季デフリンピックの成績】(日本のメダル獲得競技)
メダルの種類 | 個数 |
競技 |
金メダル | 12 | 空手、水泳、陸上 |
銀メダル | 8 | 水泳、バドミントン、卓球、陸上、自転車 |
銅メダル | 10 | 空手、自転車、卓球、陸上 |
2025年に日本でデフリンピック開催!
2025年11月には、東京で夏季デフリンピックが開催されます。
大会で使用されるエンブレムも今年9月に決定し、今後見かける機会が多くなるでしょう。エンブレムのデザインは、筑波技術大学の産業技術学部総合デザイン学科、多田伊吹さんによるもので、「手」や「花」のモチーフを採り入れつつ、デフリンピックを通じた人々のつながりを意味する「輪」を表現しました。
東京2025デフリンピックで行われる競技は、全部で21競技。2025年11月15日から12日感の日程で開催され、世界の70~80の国・地域から、約3,000名が参加する見込みです。
画像出典:競技一覧|東京2025デフリンピック 大会情報サイト
編集(画像配置):編集部
詳しくは、以下の関連記事および公式の大会ポータルサイトでご確認ください。
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東京2025デフリンピックの大会エンブレム決定!大会概要と競技一覧
【参考】
一般財団法人全日本ろうあ連盟 スポーツ委員会
認定NPO法人スペシャルオリンピックス日本・東京