2022/04/14
「働きやすい職場」はどうやって実現する?—P&Gによる障害者雇用の取り組み
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世界大手の日用品メーカーP&Gは、展開するさまざまなブランドの製品だけでなく「働きやすい職場」としても広く評価されています。P&G JAPANには障害をもつ社員のチームが人事部にあり、施設・設備や制度も整備。どのような取り組みを行っているのか見ていきましょう。
もくじ
「働きやすい」職場として評価されてきたP&G
私たちの生活に欠かせない洗剤やさまざまなケア商品。その人気ブランドを複数有する企業の1つが、P&Gです。
P&Gの製品は世界的で大きなシェアをもつとともに、文化や性別の多様性、男女平等の権利といった点で働きやすい企業のひとつとしても評価されてきました。
主な受賞歴に、フォーチュンによる「世界で最も賞賛される企業」、グラスドアの「働きやすい企業」、ダイバーシティの「多様性のトップ50社」、ユニバーサム・グローバルの「最も魅力的な企業」などがあります。
P&Gがどのような仕組みで働きやすい職場を実現しているのか、障害者雇用の観点から見ていきましょう。
P&GのV500におけるコミットメント
P&Gの障害者雇用を含む活躍推進に関する取り組みの1つが、国際イニシアチブ「The Valuable 500」(以下、V500)への参加。P&Gが表明したのは、3つの主要分野における取り組みです。
<コミットメントの概要>
- さまざまな能力をもつ従業員のために世界における職場でアクセシビリティと環境づくりの方針を定め、実践する(あるいは要望に応じた職場における支援を提供する)
- さまざまな能力をもつ人材を募集・採用し職場定着を図ることで人材プールを拡大する
- 障害のある消費者のニーズを満たすアクセシブルな製品やサービスの開発に意欲的に取り組むビジネスリーダー、企業リーダーとのパートナーシップを継続する
障害者雇用に関わる取り組みは、コミットメントの1つめと2つめ。では、その基本となる考え方と実際の仕組みはどのようになっているのでしょうか。
P&Gの「EQUALITY & INCLUSION」
P&Gでは、多様な人々が教育を受けられること、職場で働けること、社会参加できることを「EQUALITY & INCLUSION(平等な機会とインクルーシブな世界の実現)」と呼んでいます。
EQUALITY & INCLUSIONで目指すのは、互いの尊重とインクルージョンを企業文化の礎とし、学びや成長、成功、繁栄のための平等な機会がすべての人にもたらされる世界を築くこと。そのため、取り組みは商品開発やサービスの提供、事業関係者との協力、社会に向けての発信や貢献、自社での障害者雇用など多岐にわたります。
P&G JAPANの障害者雇用とJAPAN PwD-SSC
障害者雇用の実際の取り組みは、P&G JAPANの「PwD-SSC」が中心となっているのが特徴です。
P&G JAPANでは障害をもつ方をPwD(People with Disabilities(障害をもつ人々)の略)と呼びます。PeDで構成された人事部内のチームが「PwD-SSC」です。
SSCは「Shared Service Center」で、ビジネス支援業務の集約し専任化した部署。その名のとおり、JAPAN PwD-SSCでは全社共通のビジネス支援業務を統括して代行するサービスを提供しています。
PwD-SSCの業務内容と入社後のサポート
PwD-SSCは会社全体の業務の効率化・標準化を図るため、一般事務サポートを中心とする業務を担っています。配属は入社時点の得意・不得意に応じて決定される仕組みです。
主な業務内容は、以下の4分野です。
<PwD-SSCの業務内容>
- データ入力・加工
- 物品購入事務
- 部署付事務
- 一般事務
業務内容自体は他の特例子会社などと大きく異なるものではありません。しかし、採用後のスキルアップや職域の拡大、チームワークなどに積極的に取り組む姿勢が求められます。
P&G JAPANでは、障害のある社員もビジネスを成長させる大切な戦力となっているのです。
PwD-SSCで利用できる設備
PwD-SSCで働く社員は、各フロアにある会議室やオープンスペースを業務・面談・メンターとの相談等で利用できるとともに、オープンスペースのウォーターサーバー、コーヒーマシン、自動販売機なども利用できます。職場全体も段差のないバリアフリー設計ですので、車椅子ユーザーでも移動や業務をしやすい職場環境です。
体調管理に利用できる施設・設備には「健康管理室」やマッサージルームも。健康管理室では産業保険医が常駐していつでも健康相談を受け付けているほか、体調が悪化した際にベッドで休むこともできます。
P&G JAPAN PwD-SSCでのキャリアアップ
P&G JAPAN PwD-SSCでのキャリアは契約社員から始まります。
通算で最大4年間となる契約社員の間は、技能習得支援を利用しながら基本的な英語力を含むさまざまなスキルを習得する期間。リーダーになるために必要なスキルを習得・向上させていきます。
その後、習得したスキルをもとにキャリアアップの挑戦へ。たとえば、毎日の就労姿勢、職務への適性などの条件を満たすことで、正社員登用試験を受けられる制度があります。
P&G JAPANにはPwD-SSCの他に総合職での採用枠もあり、採用されればはじめから正社員として働くことも可能です。募集は部門ごとに実施。障害のない社員とともに肩を並べて働ける環境づくりが進められています。
P&G JAPAN の職場環境づくりと各種制度
P&G JAPANでは、職場のバリアフリー化以外にも障害をもつ社員が働きやすいよう、さまざまなシステムが導入されています。
まず、業務上の相談やスキルアップに利用できる主な制度として、メンター制度、上司によるコーチング、多様な研修への参加、各種プロジェクトへの参加という4つをあげることができるでしょう。
<P&Gの研修・制度>
制度 | 概要 |
メンター制度 | 業務内外問わず相談できる先輩による助言 |
上司によるコーチング | 上司との定期的な1対1のミーティングで成果や改善点の振り返り |
多種多様な研修 | 先輩社員が1対1で行うOJTやマニュアル資料による業務習得のサポート
効果的なコミュニケーションなどのビジネススキル向上を図る研修 |
各種プロジェクト | 所属組織に関するプロジェクトへの参加
他者との相互理解や会議での発言、意思決定のプロセスの習得 |
他にも、新しい取り組みとして、障害をもつ社員の経験を聞いたりトレーニングをしたりする社内研修、障害をもつ社員ともたない社員がペアになって成長を支え合うピア・ラーニングなども始まりました。
<P&G JAPANの新しい取り組み>
- 社内研修:社内外の当事者・専門家によるトレーニングや、今までの経験を聞く「ヒューマン・ライブラリー」
- ピア・ラーニング制度:障害をもつ社員と障害をもたない社員がペアになり、お互いのことを知り、理解し合うことで成長を支え合う
また、障害をもつ方にとって重要な勤務場所や勤務時間帯、健康管理などに関連する制度では、在宅勤務やフレックス制度、医療費の補助などがあります。
<P&Gの勤務制度・支援制度>
制度 | 概要 |
ワーク・フロム・ホーム | 在宅勤務を含め就業場所に幅広い柔軟性をもたせる |
フレックス・ワーク・アワー | 勤務時間を月単位で管理し、コアタイムを満たせば日ごとの開始・終了時間を柔軟に調整可能 |
健康管理室でのサポート | 体調に合わせて、常駐の産業保健師との面談が可能 |
療養附加金制度 | 福利厚生制度の一環として、月3000円以上の医療費を会社が負担 |
パートタイム勤務 | 短時間で就業可能な業務を設定し、異なる勤務ニーズに合わせた活躍の場を整備予定 |
この中で、「パートタイム勤務」はパートタイマーとして超短時間雇用が可能なシステム。社外からも注目されている取り組みです。
超短時間での障害者雇用は、企業にとっては法定雇用率達成に寄与しない雇用形態。一方で、業務の効率化や就業体験によるステップアップ、職場復帰の準備にも活用できるというメリットがあります。
ただ、超短時間雇用は通常の障害者雇用とは異なるため、契約社員や正社員にキャリアアップするには労働時間や業務量、職域などの再調整が必要なようです。より効果的な制度にするための取り組みが進められています。
P&G JAPANのPWDインクルージョンウィーク
多様な社員が能力を最大限に発揮できる組織づくりの一環として、P&G JAPANは2020年12月に「PWDインクルージョンウィーク」を初開催しました。
「PWDインクルージョンウィーク」は、障害のある社員と障害のない社員がお互いに理解を深め、障害を持つ人を含めた多様なすべての社員が「最高の自分」でいられる魅力的でインクルーシブな職場環境と文化を育くむ取り組みです。
<PWDインクルージョンウィークの活動>
- オンライン研修:PWD社員が職場で経験する難しさ・障壁と、ともに働く社員としてできることについて学ぶオンライントレーニング。社内の事例を用いたグループディスカッションを行い、それぞれの社員が今日からできることを考える。PwD-SSCの業務も解説。
- 社内ニュースレター:経営層からのメッセージ発信、障害理解などに関する情報発信
- 社内コミュニティサイトの開設:障害をもつ人に接する際の考え方について、社員による当事者視点のコラムを発信
こうした活動をとおして、障害を理解する場を設けるとともに、障害をもつ社員と一緒に仕事をすることがない社員への意識づけなどを進めています。
P&Gの企業目的・価値観・行動原則と主要事業
最後に、障害者の社会における活躍を推進してきたP&Gの事業の基本にある考え方と主要事業を概観しましょう。
P&Gの企業目的・価値観・行動原則
P&Gには180年以上にわたるビジネスにおいて掲げ続けてきた価値観があります。その最も根本的なものとして位置づけられるのが、「企業目的(Our Purpose)」です。
<P&G「企業目的」>
当社は現在、そして次世代の世界の消費者の生活を向上させる、優れた品質と価値を備えた製品とサービスを提供します。その結果、消費者は世界をリードする売上高、収益、価値創造を当社にもたらしてくれ、当社の社員、株主、そして私たちが住み業務を行う地域社会が繁栄します。
出典:ポリシー&活動|P&G
そして、他の社員やビジネスパートナーと共有しているのが「共有する価値観(Our Values)」。社員それぞれが責任をもって誠実に仕事をすることや自身の能力向上に取り組むことなどを強く求める内容となっています。
<P&G 「共有する価値観」の概要>
- 誠実さ:
- お互いに正直・率直で、法律やP&Gの価値観、行動原則を守る
- データに基づき誠実な提唱を行う
- リーダーシップ:
- 自分が責任を負う分野で全員がリーダーであるという意識をもつ
- 目的達成と戦略に従うためのリソースを重視する
- 戦略を立て障壁を突破する能力を高める
- 当事者意識:
- ビジネスニーズを満たす・制度を改善する・他の人が効率的に働くことに対して自分が個人的に責任を負うことを受け入れる
- 会社の長期的成功を考えて行動する
- 勝利への情熱:
- 最も重要なことを最も得意とする
- 現状に対して健全な不満を抱き、成長したい、市場で勝利したいという熱意がある
- 信頼:
- 同僚、顧客、消費者を尊重する
- お互いの能力と目的を信頼し、根底に信頼があるとき人々は最もよく働くと信じる
これら2つに並ぶものとして重要なのが以下の「行動原則(Our Principles)」です。
<P&G「行動原則」の概要>
- 誠実さ
- P&Gの利益と個人の利益は不可分です
- 自分の仕事に戦略的に取り組みます
- 革新は、私たちの成功の礎です
- 個人の専門能力に価値を置きます
- 私たちは最善を求め続けます
- 社外の状況を重視します
- 相互に支えあうことは生活の一部です
企業目的・共有する価値観・行動原則の3つは、P&Gでその頭文字をとって「PVP」と呼ばれています。
P&Gの主要事業
出典:構造&ガバナンス|P&G
P&Gは世界で事業を展開しています。主な事業は「グローバル・ビジネス・ユニット(GBU)」と呼ばれるカテゴリーの事業です。
GBUで行っているのは、ブランド戦略の策定、製品開発、マーケティング計画の策定など。ここには、私たちが日常的に目にする洗剤やケア用品のブランドも多く含まれています。
<P&Gの主なブランド>
カテゴリ | 主なブランド名 | 概要 |
ベビーケア | パンパース | 乳幼児用紙おむつ |
ファブリックケア | アリエール、ボールド
さらさ、レノア |
衣類用洗剤、柔軟剤 |
フェミニンケア | ウィスパー | 尿もれ・吸水ケア製品 |
ヘアケア | パンテーン、ハーバルエッセンス、ヴィダルサスーン | シャンプー、コンディショナーなど |
ホームケア | ダブリーズ、ジョイ | エアケア製品、台所用洗剤 |
スキンケア | ジレット、SK-Ⅱ | シェーバー、スキンケア |
P&Gは商品の広告にも力を入れており、2017年にはジレットやアリエール、SK-Ⅱなどでカンヌライオンズ(26部門ある国際的広告賞)を獲得しました。
日本におけるグループ企業は2021年4月時点で4社あります。
製品の輸入・販売を手がけるのは「P&Gジャパン合同会社」と「P&G プレステージ合同会社」。国内での製造は「ピー・アンド・ジー株式会社」が、研究開発や事業戦略の立案などは「P&G イノベーション合同会社」が担っています。
いずれも神戸市に本社があります。
【参考】
P&G|The Valuable 500
EQUALITY AND INCLUSION | P&Gジャパン
P&G JAPAN 障がい者採用情報|P&Gジャパン
障がいのある社員が自分らしさを活かして能力を発揮するために|P&Gジャパン
ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容と活用)への取り組み|P&Gジャパン
P&Gジャパン初!PWD(障がい者)インクルージョンウイークを開催|P&Gジャパン
【開催レポート】「コロナ時代の障害者雇用3.0」これからの仕事を創り出す、新たな職域開拓の可能性|en+courage