2022/03/17
【障害者の在宅ワーク】機械部品組立は福祉事業所が得意! 直接雇用では在庫管理の事例も
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在宅ワークが可能な仕事というと、パソコン業務を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、障害者が担う在宅の業務には物を直接扱う仕事もあります。今回は、必要な設備や支援体制を整えた福祉事業所で実施される在宅ワークや、在宅ワーク向けに在庫管理の一部を切り出した特例子会社の事例をご紹介します。
福祉事業所だからできる在宅ワークの職域と業務管理
在宅ワークの基本的なイメージは「自宅で仕事をする」というもの。自宅でやることを前提とすると、大きな設備や危険を伴う業務、実際に多くの物品を扱う業務などは「在宅ワークでは無理」と感じられるかもしれません。
しかし、障害者の在宅ワークは自宅以外に福祉事業所の中で行われていることもあります。必要な施設・設備があり、ノウハウをもった人材がいる福祉事業所内なら、自宅では難しい業務も可能。機械部品の製造や組立、在庫管理などが代表例です。
福祉事業所における事例と業務管理
たとえば、機械部品等の成形・組立を福祉事業所で担う事例では、社会福祉法人足柄緑の会が運営するコスモス学園中沼ジョブセンターがあります。機械部品等の検品・梱包では社会福祉法人すずらんの会が複数企業から受注しています。神奈川県で活動する両社会福祉法人について見てみましょう。
機械部品等の成形・組立の在宅ワーク事例
福祉事業所での在宅ワークとして機械部品等に使われるプラスチックの形成を担っているのが、神奈川県南足柄市にあるコスモス学園中沼ジョブセンターです。
中沼ジョブセンターは、就労支援事業所としては他に類を見ないプラスチック成形工場を持っているのが最大の特徴。 自動車部品や食品容器、プラモデルのパーツなど、30種類以上の部品を製造してきました。
同センターで企業からの受注が続く大きなポイントは、福祉事業所での在宅ワークでありながら本格的な設備を使って品質管理と生産性向上に努めている点です。同時に、福祉事業所として障害特性や能力に応じた作業内容の選定、仕事・生活両面でのサポートも行っています。
納品方法では自社トラック便、宅配便、チャーター便などにも対応可能です。
機械部品等の検品梱包の在宅ワーク事例
神奈川県相模原市にあるすずらんの会では、機械部品等の検品や梱包などを担う福祉事業所を運営しています。こちらも施設内に業務に必要なフォークリフトやハンドフォークといった設備類を持っています。
これまでに衛生用品、テープ、自動車部品などの検査・梱包、自動車用カーテンレールの組み込み作業などを担ってきました。
すずらんの会は、少量の業務でも対応できるのが特徴。障害をもつ方の特性や体力などの点から、一般企業で前提とされる作業量よりも少ないと思われる分量が「ちょうど良い」ケースがあるとしています。
「外注するには少ないから・・・」と自社で対応していた作業を外注できれば、発注元の企業は別の業務により専念できるでしょう。
福祉事業所での業務管理
福祉事業所での業務管理は、作業面での訓練・サポートと生活面でのサポート、品質や安全のために行うさまざまな管理といった3点に分けられます。
業務管理で行う具体的な内容には、たとえば次のようなものがあります。
<作業面での訓練・サポート>
- 作業を担当する利用者の業務の習得
- 業務内容・進め方の説明やマニュアル化
- 特性に応じた設備類の導入
- 作業現場における指導やサポート
- 就労意欲の維持・向上
<生活面でのサポート>
- 生活リズムの形成・維持
- 健康管理・服薬管理
- 休憩・食事・トイレなどの介助
- ストレスチェックや不安・悩みなどへの対応
<品質・安全管理>
- 発注元企業との打合せと対応可能な数量・納期・納品方法の確認
- 福祉事業所のスタッフが仕上がりの全数を確認
- データベースソフトで品質管理・生産管理を実施
- 受注・出荷・売上管理ソフトの自社開発
- 故障解析技術者、生産技術や金型メンテナンスの専門家との連携
- 専門家との連携による品質改善、トラブル防止、コスト削減
- 安全確認の徹底
- ISO9001の取得
一般企業では品質・安全管理体制は導入済みである一方、生活面でのサポートや障害特性に合わせた業務遂行方法の検討・支援などで課題を抱えるケースがあるでしょう。専門の施設・設備をすでに持っている福祉事業所であれば、生活面・作業面の支援と品質・安全管理体制の両方に対応可能です。
コロナ禍で在庫管理から職域創出し在宅ワークへ
これまで在宅ワーク制度を運用していなかった企業でも、近年はコロナ禍をきっかけに自宅での在宅ワークを実施するところが出てきました。そうした業務の中には、通常は在宅ワークにするのが難しいと思われる在庫管理もあります。
在庫管理の在宅ワーク事例と業務管理
三重県にある百五銀行の特例子会社である百五管理サービス株式会社では、グループ企業の一員として各営業店などの備品管理を担ってきました。障害をもつ社員が行うのは、請求書のPC入力、用度品の出庫、小分け、在庫補充などです。
もともとは在宅ワークが難しいだろうと考えられていた職域でしたが、個人情報の取り扱いが多い業務の中から在宅ワーク向けの業務の切り出しを実施。さらに、指導担当者が資料・資材を直接配送することで、在宅ワークでも直接コミュニケーションをとる機会を確保したことも大きな成功ポイントとなっています。
百五管理サービスでは知的障害者等の在宅ワークに向けて、社内の「用度品取扱業務」から在宅での作業に適した作業を切り出しました。用度品取扱業務とは、伝票等や広告宣伝物、事務用度品等の出庫と在庫管理を行う業務です。
知的障害等をもつ従業員向けに切り出された業務内容は、「小分け作業」と「セット作業」でした。
<小分け作業>
- 各営業店で使う資料、パンフレット、チラシを小分けにする
- 小分けの単位は、10冊、50冊、100冊など
- 小分けしたものに帯封をかける
<セット作業>
- 数種類のパンフレットやチラシを1セットにする
- セットにしたパンフレットやチラシをクリアファイル等に詰める
在宅勤務のスケジュールは、業務を担当するそれぞれの社員に合った作業と作業時間に基づいて作成。知的障害等のある社員が在宅ワークで働けることは、社員の心身の健康、労働意欲の維持につながっているとのことです。
小分け作業やセット作業の業務管理
百五管理サービスの在宅ワークで作業場所となるのは、従業員の自宅です。そのため、従業員の家族に在宅勤務に関する説明を行い、理解を得て開始されました。在宅での勤務時間を通常の勤務時間である8時45分から17時15分(昼休憩1時間)に設定することで、生活リズムを安定させて集中して作業できるようにしています。
他に業務管理として実施したのは、次のような取り組みです。
<百五管理サービスの在宅ワークにおける業務管理>
- 効率的に在宅ワークをする従業員の自宅をまわれるようにルートを決定
- 一人ひとりの在宅勤務スケジュールに合わせて資料や資材を選定
- 週1回、業務に使う資料・資材を指導担当者が直接従業員の自宅に配送
- 配送時に完成品や取り組み状況を確認
- 配送時に、従業員の様子や健康状態、労働意欲などに関する相談等を実施
実際に在宅ワークで働いた方からは、配送時に直接声をかけてもらえることがとても嬉しかったという声が聞かれます。
製造・組立・検品等や在庫管理等の在宅ワークのポイント
機械部品等の製造・組立・検品・梱包や百五管理サービスが行ったような業務例は、通常ではなかなか在宅ワークとして切り出せない職域です。
しかし、必要な設備や管理体制を備えた福祉事業所なら自宅での在宅ワークでは難しい作業も請け負えますし、一般企業にとっては少ないと感じられる分量にも対応できる場合があります。
特に障害をもつ方のためのバリアフリー化や支援体制が十分でない企業にとっては、福祉事業所の施設・設備や支援体制は心強いでしょう。
自社で新たに在宅ワーク向けの職域を切り出す場合は、障害をもつ従業員にとって無理のない作業内容や分量を見定め、在宅勤務スケジュールを作成することがポイントです。従業員の家族にもきちんと説明し協力してもらうことで、より在宅ワークを進めやすくなるでしょう。
こうした実際に物品を扱う職域では、材料等の配送や完成品の納品・回収をどのように行うかも重要です。配送や納品・回収等は、直接コミュニケーションをとれる貴重な機会。ただ受け渡しをするだけでなく、体調面の問題や困り事、悩みなどがないかヒアリングしてみましょう。「よい作業ができた」「前回よりもスキルが向上した」などポジティブなフィードバックをすることも働く意欲の向上につながります。
「在宅ワークは無理」と感じられる業務でも、一部には在宅ワークが可能な作業があるかもしれません。「どうやって切り出せばいい・・・?」とお悩みの方は、ぜひ在宅就業支援団体やお近くの就労支援事業所などにご相談を。それぞれの在宅ワーカーに適した職域や業務管理のやり方を一緒に探していきましょう。
【参考】
就労継続支援B型 プラスチック成形|社会福祉法人足柄緑の会
仕事をご依頼ください|社会福祉法人すずらんの会
在宅就業の事例 百五管理サービス株式会社|チャレンジ ホームオフィス
百五管理サービス株式会社 公式サイト