【障害者の在宅ワーク】近年重要度が高まるWebアクセシビリティ診断【職域と事例】


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インターネットでの情報収集が増えた今、Webサイトに求められているのが「Webアクセシビリティ」です。具体的には音声の読み上げやユニバーサルデザインへの配慮などが求められ、障害をもつ方がアクセシビリティの分析や問題解決に関わる例も珍しくありません。在宅ワークでWebアクセシビリティ診断を行う事例とともにご紹介します。

障害特性を生かす「Webアクセシビリティ診断」

Webアクセシビリティ診断とは、高齢者や障害者などを含む全ての人がWebサイトなどの情報にアクセスして必要な情報を得られるかどうか、Webサイトを利用できるかどうかを診断することです。

外国ではアメリカやイギリス、フランス、カナダなど多くの国で法制化されており、日本でも総務省がガイドラインを作成しています。

Webアクセシビリティは、特に公共性の高い情報を発信するWebサイトで重要なもの。省庁や自治体等の公式サイトでは音声読み上げに配慮したページやファイル、拡大表示に配慮したデザインになるよう改修等を進めてきました。

こうしたWebアクセシビリティがどの程度実現されているかは、国際標準規格IS0/IEC40500をもとに作成された日本工業規格であるJIS X 8341-3:2016に基づいて診断されます。

Webアクセシビリティの 診断を担う人には視覚障害や聴覚障害をもつ方もいます。

たとえば、視覚障害をもつ方に音声読み上げでサイトの分かりやすさをチェックしてもらうことで、耳からの情報でも理解しやすい表現や情報の提示順序を調整。聴覚障害をもつ方には、音声や映像を中心とするメディアにおいてどのような字幕やテキスト情報が必要かを検証してもらうことが可能です。

Webアクセシビリティ診断で求められる知識

Webアクセシビリティ診断に必要な知識は、まずWebアクセシビリティが求められる背景や目的への理解と「JIS X 8341-3:2016」(規格名称「高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス―第3部:ウェブコンテンツ」)の把握です。

背景や目的は前項で述べたとおりで、端的に言えば情報化社会において全ての人がWebサイトなどのWebコンテンツにアクセスできること、そこで提示されている情報を利用できることを目的としています。

JIS X 8341-3:2016については、最初に達成基準となる「レベル」を押さえましょう。「レベル」にはA、AA、AAAの3段階があり、Aの数が増えるほど高レベルの達成基準となります。以下のレベルの例で雰囲気を掴んでおくとよいでしょう。

<達成基準となるレベルの例(一部抜粋)>

  • 1.1.1 非テキストコンテンツに関する達成基準(レベルA)
    • 利用者に提示される全ての非テキストコンテンツには、同等の目的を果たす代替テキストが提供されている。
  • 1.3.4 最低限のコントラストに関する達成基準(レベルAA)
    • テキスト及び文字画像の視覚的提示には、少なくとも4.5:1のコントラスト比がある。
  • 1.4.6 コントラスト(高度レベル)の達成基準(レベルAAA)
    • テキスト及び文字画像の視覚的提示には、少なくとも 7:1 のコントラスト比がある。

実際の取り組みでは、まずはJIS X 8341-3:2016の中で達成基準がレベルAとなる項目の達成を目指し、次にAAを目指すというように、段階的に取り組むことになります。民間企業ではレベルA達成を、自治体等の公的機関のWebサイトではレベルAA達成を目指すこととされています。

具体的な基準やガイドラインについては、以下のページでご確認ください。

【参考】
ウェブアクセシビリティ方針策定ガイドライン|ウェブアクセシビリティ基盤委員会
情報アクセシビリティの確保|総務省

在宅ワークでの「Webアクセシビリティ診断」業務事例と業務管理

専門性が高いWebアクセシビリティ診断を在宅ワークで実施する場合、どのように取り組めばよいのでしょうか。

今回は、障害をもつ方が実際に在宅ワークで業務としてWebアクセシビリティ診断を担う事例として、NTTクラルティ株式会社とNULアクセシビリティ株式会社の事例を見ていきましょう。

NTTクラルティ株式会社の業務事例


画像出典:NTTクラルティ株式会社 公式サイト

日本電信電話株式会社の特例子会社であるNTTクラルティ株式会社では、障害者が参画する障害者に役立つポータルサイト「ゆうゆうゆう」の運営とJIS X 8341-3:2016に基づくWebアクセシビリティ診断などを手がけています。

2021年6月1日時点で従業員数461名のうち345名が障害をもつ方で、その47.2%が重度障害者です。

NTTクラルティのWebアクセシビリティ診断は、サイト内の問題点を体系的に示して改善案も含むレポートを作成する「サイト総合診断」と、対象WebサイトについてJISに基づいて試験を実施する「JIS準拠確認試験」のサービスを提供。特にJIS準拠確認試験では、NTTグループ各社の公式サイトだけでなく各社CSR報告書ページなど、多数の実績をもっています。

同時に、宮城県や福島県、長野県長野市へはWebアクセシビリティの重要性とアクセシブルなサイトの実現にあたってのポイントを解説する「アクセシビリティ研修」を実施。新宿区に対しては、JIS X 8341-3:2016や総務省の「みんなの公共サイト運用ガイドライン」に基づいて現状の問題点の把握や今後の取組目標を定めた「アクセシビリティ方針策定」を支援しました。

こうしたWebアクセシビリティ診断業務などに関わっている従業員には、在宅ワークを行っている方がいます。通勤による障害への負担軽減によって安定した就労環境を確保するために、在宅雇用制度を導入したとのことです。

業務に必要なパソコンやリモートアクセス用USB等の機器は会社から全て貸与され、通信費、電気代の一部も会社が負担。他の主な勤務体制や業務管理は、以下のようになっています。

<NTTクラルティでの業務管理等>

勤務体制 週5日、1日7.5時間
業務管理
  • 業務開始・終了時にメールで報告
  • 日報を作成・提出
  • 月に1回程度本社へ出勤
  • 業務上の相談はメール、電話、メッセンジャー等を活用
  • 本社内での会議への参加は主に電話を使用
  • スケジュール管理はグループウェアを使用(在宅社員を含め、全社員のスケジュールを把握できる)

【参考】
NTTクラルティ株式会社 公式サイト
NTTクラルティ株式会社(平成28年度登録)|チャレンジホームオフィス

BIPROGYチャレンジド株式会社の業務事例


画像出典:BIPROGYチャレンジド株式会社 公式サイト

BIPROGYチャレンジド株式会社は、BIPROGY 株式会社(元 日本ユニシス株式会社)の特例子会社です。完全在宅勤務制をとっているのが大きな特徴で、従業員が居住する地域のNPO法人や行政、企業等と連携しながら遠隔地における障害者の就労をサポートしてきました。

BIPROGYチャレンジドが手がける業務は、社名のとおりアクセシビリティに関する適合性診断が中心です。JIS Q 17020(ISO/IEC 17020)に基づいて認定された検査機関としてWebアクセシビリティ診断を実施するとともに、対策が必要な事項への対応策の策定と対策支援、診断結果に基づく適合証明書の発行などを行っています。

同社の勤務体制で最大の特徴は、完全在宅勤務かつコアタイムなしのスーパーフレックス制度をとっているところ。コアタイムがないため服薬による眠気や注意力低下等での中抜けが可能で、週の勤務日数や1日の勤務時間や休憩時間も障害特性・健康状態を考慮して決定する体制をとっています。

業務に必要なパソコン(アンチウイルスソフト、暗号化ソフト導入済み)やVPN等、業務に必要な機器類は会社から貸与。業務管理やコミュニケーションは、以下のような仕組みで行っています。

<BIPROGYチャレンジドでの業務管理等>

勤務体制
  • 完全在宅勤務
  • スーパーフレックス制度
  • 週の勤務日数や1日の勤務時間や休憩時間は各人の特性や健康状態に応じて決定
業務管理
  • 毎日、朝と午後にミーティングを実施(Web会議、15分〜30分)
  • チャットシステムのステイタスに現在の作業内容を記載して業務状況を把握
  • 業務目標は各人ではなくチームで達成する
  • 複数のITツール活用とモバイル端末の通知の連携で、課題や心配事に常時対応
  • 健康上の問題は外部の産業カウンセラーに相談可
  • 残業防止のため、ログイン・ログアウト時間を管理
コミュニケーション
  • 各自が使いやすいよう簡単に改修できるアプリの導入
  • 週1回、テーマを設定せずに自由に雑談・相談できる時間を設定
スキルアップ
  • 毎月の個別面談
  • 情報セキュリティ研修(年1回)
  • e-ラーニング研修
  • 外部研修受講の推進
労務管理で使用しているツール
  • 日報管理・FAQ管理:サイボウズ社kintone

毎日行われる朝と午後のミーティングでは、メンバーそれぞれの役割とゴール設定、健康状態を確認。業務上の相談や健康に関する相談もそれぞれ窓口を設置しています。

また、完全在宅ワークで同僚や上司と顔を合わせる機会が少ないことから、業務以外のことを自由に話せる時間を週に1回設けている点も大きなポイントです。

【参考】
BIPROGYチャレンジド株式会社 公式サイト
都市部と地方をつなぐ 障害者テレワーク事例集|厚生労働省

障害特性を生かせる新しい職域「Webアクセシビリティ診断」は人材育成も視野に

情報化社会の中でダイバーシティ&インクルージョンを実現するには、Webアクセシビリティの理解と実現が欠かせません。日本におけるWebコンテンツのアクセシビリティはJIS X 8341-3が基準で、企業の公式サイトも公的機関の公式サイトもレベルAまたはレベルAAの達成を求められています。

具体的にどのような基準なのか、どうすれば達成できるかといった診断や対応策の提案・決定には専門的な知識が必要です。実際に障害をもつ方が診断や対応策の提案・決定に関わることで、より効果的な改善が可能になるでしょう。

今後いっそう需要が高まることが予想されるWebアクセシビリティ診断は、業務を担える人材の育成も視野に取り組んでいきたいところです。

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