2021/07/06
【合理的配慮好事例第15回】業務の遂行にチーム制を導入! 従業員の健康管理へ
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障害をもつ方が働く際に最も気をつける必要があることの1つが、健康管理です。実際に仕事をしていると「自分が休んだら迷惑をかける」という思いから無理をしてしまい、うまく休めないという方は珍しくありません。
しかし、チーム制を導入することで、適切な時に休んで日々のストレス軽減につなげることができます。
合理的配慮好事例解説シリーズ第15回は、チーム制を導入して健康管理上の課題などに取り組んだ好事例を紹介・解説します。
もくじ
納期前の不安軽減、得意なタスクの担当でスキルアップへ—大和ライフプラス株式会社
大和ライフプラス株式会社は、大和ライフネクスト株式会社の特例子会社。精神障害者を多く雇用しており、文書の電子化やデータ入力、印刷、清掃などさまざまな業務を任せています。
平成25年の「精神障害者のための職域拡大及び職場定着」の好事例として優秀賞を受賞し、取り組みの1つであるチーム制での業務遂行が紹介されました。
同社では、納期が迫ると焦りや不安から体調不良になる従業員が見られ、業務全体の進捗にも支障をきたすようになっていたそうです。そこで導入したのが、急な欠勤があってもフォローしやすいチーム制でした。
導入後に感じられたメリットは主に2つあったそうです。
<チーム制導入による主なメリット>
- 納期前の不安感を軽減することができ、業務管理が円滑になる
- 業務の細分化が可能になり、各自の得意分野を活かしやすい
精神障害者の場合、納期や不得意なタスクなどで焦りや不安を感じ、気分が落ち込んで休みがちになったり、逆に「休んではいけない」という気持ちがつらさを強めてしまったりすることがあります。
しかし、チーム制で業務を進めていれば、あるメンバーの担当分に遅れが出ていても他のメンバーが手伝えますし、万が一体調不良になっても他のメンバーがその分の業務を進められます。
さらに、1つの業務の全てを1人の従業員が担う必要もありません。
1つの業務には複数のタスクが含まれるのが一般的。これを1人の従業員に任せきりにしてしまうと、得意なタスクで順調に進められても、不得意なタスクで困ってしまいます。
チーム制であれば、各タスクを得意な従業員に割り振ることが可能。得意なタスクに多く取り組めれば、業務を効率的に進められるだけでなく精神的な負担の軽減にもつながるでしょう。似たようなタスクに取り組み続けられるため、スキルアップもしやすくなります。
【参考】
精神障害者のための職域拡大及び職場定着に関する職場改善好事例集(平成25年度)|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
大和ライフプラス株式会社
プロジェクト単位でチーム結成! スキルに応じて複数チームへの参加も—株式会社沖ワークウェル
株式会社沖ワークウェルは、OKIグループの特例子会社です。重度身体障害者の在宅勤務に長く取り組んできた企業で、HP制作やシステム開発など、主にIT系の業務を担っています。
同社では在宅雇用者が中心となってプロジェクト単位のチームが組まれているのが特徴。チーム全体をまとめるのは、在宅雇用者である「ディレクター」です。チームメンバーには、たとえばSE、プログラマー、デザイナーがいます。
メンバーのスキルに合わせ、1人が複数のチームに所属することも。誰にどのプロジェクトに入ってもらうかなどの割り振りは、「コーディネーター」が行っているそうです。
チーム制の導入により、同社では主に4つのメリットがありました。
<チーム制の導入による主なメリット>
- 各自に責任感が生まれる
- 相談しやすい環境をつくれる
- 孤独感や寂しさが軽減される
- 体調が悪いときは無理をさせず、チームでフォローできるようになる
まず、プロジェクトごとにチームが結成されることで、自分が「どのプロジェクトの何を担当するのか」が分かりやすくなります。困ったことや分からないことがあるときは、すぐにメンバーに相談できるのもストレス軽減には欠かせません。
在宅勤務で課題なりやすい孤独感や寂しさの軽減については、自社開発した在宅勤務用のコミュニケーションツールが大きく貢献しました。
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そして、大和ライフプラスと同様、沖ワークウェルでも体調不良のメンバーをチームでフォローしています。欠勤が決まってからバタバタと対応するのではなく、あらかじめ欠勤に対応できる体制を整えることで、従業員それぞれが自分の体調に合わせて働くことができる仕組みです。
【参考】
障害者の在宅雇用事例集—就職支援ノウハウを活用して—|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
株式会社沖ワークウェル
同じ障害をもつ従業員によるグループで不安軽減、作業能率向上—株式会社イオンファンタジー
株式会社イオンファンタジーも、平成25年の好事例で優秀賞を受賞した企業です。精神障害のある従業員がグループになって業務を担当する体制を導入しました。担当業務は、メール便の封入・発送、データ入力などです。
チーム制の導入によって感じられたメリットは、主に従業員のメンタル面でした。
<チーム制の導入による主なメリット>
- 同じ障害のある仲間が身近にいることで安心感につながる
- 安心感により、各人が徐々に能力を発揮できるようになる
精神障害をもつ従業員の場合、障害のない従業員には気にならない程度の音や話し声でも業務の妨げになってしまうことも。そうした他の従業員との違いは、職場での不安や孤独感につながることがあります。
同社では、そのような課題を抱える従業員に比較的静かな作業場を用意し、同じ障害をもつ従業員同士でチームを組んで業務を担当してもらうことにしました。
その結果、それぞれの従業員が安心感をもって業務にあたれるようになったとのこと。全体の作業能率向上にもつながったそうです。
【参考】
精神障害者のための職域拡大及び職場定着に関する職場改善好事例集(平成25年度)|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
株式会社イオンファンタジー
障害者雇用でチーム制を導入する健康管理上のメリット
チーム制の導入には、障害をもつ方々にとっても事業所にとっても大きなメリットがあります。
障害をもつ従業員にとっては、体調不良の時にきちんと休んだり、困った時にフォローしてもらえる環境が整えられたりして、健康管理と仕事を両立しやすくなります。
事業所にとっては、納期前に欠勤があっても円滑な業務管理がしやすくなり、従業員の不調にも柔軟に対応しやすくなります。業務上のストレス軽減やスキルアップにもつながるため、全体の作業能率を向上させることも可能になるでしょう。
チームを組み際には、
- チーム全体として何に取り組むのか
- それぞれのメンバーは何を担当するのか
- チームで担当する業務全体の進捗状況
をきちんと共有しておくと混乱が少なくなります。
メンバーが休んだ時にどうやってフォローするかも、事前に話し合っておくとよいでしょう。
健康管理のしやすさや安心して働ける環境は、障害をもつ方画の職場定着にもつながります。