公益財団法人PwC財団 H2L「BodySharing®」新型システム「RaraaS」遠隔農業体験会を開催


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2023年8月25日、公益財団法人PwC財団は助成事業2022年度秋期人間拡張(農福連携)の一環として、東京都千代田区にて遠隔農業体験会を開催しました。
H2L株式会社の新型システムによる障害者の遠隔農業体験会であり、FirstVR®コントローラとBodySharing®技術を用いたシステム「RaraaS」で、体験者の腕の動きと連動するアームロボットを動かし、イチゴの摘み取りに挑みます。当日の会場で、研究開発部の中山さんと体験者の菊池さんにお話をうかがいました。


画像提供:H2L株式会社

H2L「BodySharing®」と「RaraaS」とは

2023年8月25日、東京都千代田区にて公益財団法人PwC財団はH2L株式会社(東京都港区、以下 H2L)の新型システム「RaraaS」(ララース、Remote Agricultural Robot as a Service)による障害者の遠隔農業体験会を開催しました。

H2Lは、人間の能力を引き出すための支援ツールとAIの企画・開発や販売等を手掛ける企業。他者と体験を共有する独自技術「BodySharing®」(ボディシェアリング)により、場所や時間、身体にとらわれない生活の実現を目指しています。

BodySharing®は、キャラクターの身体、ロボットの身体、他の人の身体と、ユーザーの感覚を連携させて「体験共有」ができる技術です。
RaraaSは、BodySharing®技術を活用することでユーザー自身の腕の動きとロボットアームの動きを連動させ、遠隔地から農業に参加できるシステム。


画像提供:H2L株式会社

RaraaSには、光学式筋変異センサーを組み込んだアームバンド型のコントローラ(FirstVR®コントローラ)を使用。センサーは前腕から指先までの筋肉の動きを検出し、そのデータをもとにロボットの動きを連動させます。ユーザーの手を握る・開くという動作は、ロボットアームの先端を閉じる・開くという動作につながり、前腕の上下左右への動き、回転に合わせてロボットの腕も動くという仕組みです。腕にコントローラを装着しない場合は、スマホアプリによるロボット操作もできます。

こうしたH2Lの人間拡張技術が、公益財団法人PwC財団(東京都千代田区、以下 PwC財団)の助成事業2022年度秋期 人間拡張(農福連携)に採択され、PwC財団による伴走支援とともに、今回の体験会開催となりました。

現在は、外出困難者のための遠隔農業を実現するため、システムの改良と観光農園への試験導入を進めています。将来的には、障害者や長期闘病者といった外出困難者の社会参画機会確保、農業分野における労働力不足への対応につなげたいとのこと。2023年12月にも、茨城県常陸大宮市にあるイチゴ農園と病院を協力者として、より大規模なRaraaSの体験会を予定しています。

研究開発担当者に聞くFirstVR®+ロボットの魅力と難しさ


画像提供:H2L株式会社

今回の体験会には、車いす利用者を中心とした体験者が参加しました。FirstVR®コントローラを右の前腕に装着し、チュートリアル・プログラムを実施した後に、実際に港区のH2L本社にあるロボットを操作します。

体験者の前には大きなスクリーンが設置され、港区のオフィス内に設置されたロボットとイチゴのオブジェクトが映し出されています。研究開発部の中山雅野さんによれば、「大きな画面にすることで、ユーザーの視界いっぱいに広がり、より没入感が高まる」とのこと。ユーザーは、イチゴ狩りなどを提供する観光農園を実際に訪れたような体験ができます。

H2Lでは、2021年にもロボットアームを遠隔操作してイチゴの収穫を行う実証実験を行いました。これと今回の体験会が大きく異なるのは、2021年の実験ではスマホアプリを用いたのに対し、今回はユーザーの腕の動きをロボットに連動させる点です。スマホアプリよりもずっと直感的な収穫作業が可能となりました。

実験を進める中で、作物の収穫のやりやすさ、難しさもにも気づいたそうです。

「イチゴは茎の部分が細くて長い草本性の植物なので、茎をつかんで切ることで簡単に収穫できます。でも、実の部分は柔らかく、つかむと潰れてしまう。うまく茎の部分を持つという点が、難しいところですね」(中山)

今後は、まず観光農園へのRaraaS普及を目指し、将来的には農福連携による障害者の参画機会創出と農業の人手不足解消につなげていきたい考えです。

観光農園のサービスとして見れば、現段階でも体験者の方々はとても楽しんでいました。一方で、就労として考えると、課題が残っています。

「現地での農作業の場合、イチゴの茎を摘んでひねるという行動が、より簡単にできます。1つのイチゴを収穫しながらも、目では次のイチゴを見て『次はあのイチゴを取ろう』と考えている。ところが、ロボットの遠隔操作では、画面の中にあるイチゴを見つけて、そこにアームの位置を合わせて摘み取るという流れになります。現地で収穫していく時のような視線の動きができません」(中山)

H2Lでは、今回のような体験会で当事者からのフィードバックを受け、さらなる課題の把握と改良を重ねていく予定です。農業以外の分野における活用については、今後協力してくれる企業のニーズに応じて検討していくとのこと。問い合わせは既に複数きており、技術のマッチングを随時進めているとのお話でした。

体験した菊池さん「できるという可能性を増やしたい」


RaraaSを体験する車いすバスケットボール選手 菊池隆朗さん
撮影:編集部

体験会で実際にロボットを遠隔操作した一人、PwC Japanグループ所属の車いすバスケットボール選手である菊池隆朗さんにも、ご感想をうかがいました。

菊池さんは、これまでもH2Lの開発に協力しており、体験は既に3回目だと言います。今回のシステムについて、「以前のスマホアプリに比べて、没入感が強い」と語りました。

菊池さん自身は、農園での果物収穫体験は何回かあり、ご家族と一緒にブルーベリー狩りやイチゴ狩りを楽しんできたそうです。しかし、難しさを感じることもありました。

「バリアフリーにはなっていない農園で、車いすを泥だらけにしながら収穫しました。ただ、車いす利用者にとって難しいのは、木になる実のように高い所にあるものを取ることです。だから、梨狩りやブドウ狩りは、手が届きません。家族と一緒に行っても、自分は見ているだけになってしまいます」(菊池)

RaraaSによって今後高い場所にある実の収穫にも対応できるようになれば、これまでできなかったことをご家族と一緒に楽しめるのではと期待を寄せます。


FirstVR®コントローラとジョイスティックでロボットを操作する菊池さん(左)
ロボットアームの前後運動を制御するジョイスティック(右)
撮影:編集部

体験者によっては、障害特性の影響でロボットアームの操作に苦労する姿も見られました。菊池さんの場合は、アームの先端を開く際に必要な「リラックスする」ことが難しかったようです。理由は、胸から下が動かないため、自身の体勢を維持するために常に身体に力を入れておく必要があるから。体勢を維持するための力が、腕にも伝わってしまうのです。

菊池さんは、力のコントロールをしやすくするために「車いすに肘を支える部分があると良い」と話します。上腕を使った腕の前後移動はジョイスティックで操作しますが、「このジョイスティックも、車いすの上など自分の手が届く範囲にあると使いやすい」とのことでした。

今後のRaraaSの活用について、「(RaraaSを農業以外で活用するなら)例えば、なかなか人が入れない場所にロボットを入れて遠隔操作し、廃坑などを冒険できると面白いですね。家族と一緒に楽しめることが増えるといいなと思います」とも語ってくれました。

「(障害のある自分達は)何かやるにしてもハード面の影響でできなかった経験が多いので、『できない』ことに慣れています。だから、障害のない方ができることについても、『できる』という選択肢が頭の中から抜けていることが多い。しかし、今回の新型システムのような技術が普及することで、『できるかもしれない』という可能性が出てきます。『できる』という可能性を増やしていきたいですね」(菊池)

RaraaSの中心的な技術であるBodySharing®技術について、H2L公式ページでは「場所、時間、空間、身体や意識にとらわれない生活」を目指すとしています。BodySharing®技術によって、「できない」という意識からも解放されるかもしれません。H2Lは、これまでの「当たり前」を変え、人間の可能性を拡げる技術の開発・提供のために進み続けています。

2023年12月、RaraaSによる農福連携の体験会を開催予定


画像提供:H2L株式会社

H2Lでは、RaraaSによる農福連携の第一歩となる体験会を2023年12月に開催する予定です。

現在はつづく農園のみでの実施ですが、「将来的には全国の農家で遠隔農業の環境を整え、外出が難しい方が、日常的に遠隔の農業従事者として働けるようにしたい」としています。

【画像提供・取材協力】
H2L株式会社
公益財団法人PwC財団

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