iPS細胞活用のALS治療薬、ケイファーマで治験第3段階へ


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2024年4月23日、慶應義塾大学発のバイオベンチャーである株式会社ケイファーマが初めてのメディア懇親会を開催しました。懇親会では、同社の成り立ちや想い、iPS創薬事業と再生医療事業の進捗状況などを報告。ALS治療薬として注目される「ロピニロール塩酸塩」(ロピニロール)は、第Ⅲ相試験に向けて準備中です。

ケイファーマのiPS細胞を活用したALS治療薬開発


メディア懇親会で説明を行うケイファーマの福島弘明社長
撮影:編集部

慶應義塾大学(以下「慶応大学」)発のバイオベンチャー、株式会社ケイファーマ(東京都港区、以下「ケイファーマ」)が、2024年4月23日に同社初となるメディア懇親会を開催しました。

同社は、iPS細胞を用いた創薬(iPS創薬)や再生医療で注目されています。特にALS(筋萎縮性側索硬化症)に対する有効化合物をiPS創薬によって発見したことは世界初であり、アカデミアの研究成果を社会実装へつなげる企業として、総合科学ジャーナル『Nature』でも紹介されました。

ALSは、運動神経が障害され全身の筋肉が麻痺していく疾患。症状が進むと生命維持に欠かせない呼吸運動も難しくなり、人工呼吸器をつけるか否かという選択を迫られてしまう病気です。発症からの生存期間は平均3~5年、10年後に生存している可能性は10~20%程度といわれます。現在、根本的な治療薬は見つかっておらず、患者の寿命を延ばす研究が進められてきました。

ケイファーマで開発しているのは、ALSの1割を占める家族性ALS、9割を占める孤発性ALSの両方を対象とした治療薬「ロピニロール」です。

研究段階では、家族性ALS患者から採取した細胞をもとにiPS細胞を作り、そこから運動神経細胞を分化誘導。その運動神経細胞による既存薬ライブラリーを用いた薬効スクリーニングで、ロピニロールを見出しました。ロピニロールが孤発性ALS由来の神経細胞の約73%に有効であるという結果も確認しました。

その後に行われた治験(第Ⅰ/Ⅱa相試験)では、1年間の治験期間で病気の進行を約7か月遅らせる可能性が示されました。特に最初の6か月間で複数の筋肉における筋力低下や活動量低下の有意な抑制が見られたとのことです。


ロピニロールの治験(第Ⅰ/Ⅱa相試験)結果
画像提供:株式会社ケイファーマ

ロピニロールには、日本ALS協会も大きな期待を寄せています。2021年5月に慶応大医学部による治験結果の発表を受け、厚労大臣、医薬・生活衛生局長、大臣官房審議官、独立行政法人医学品医療機器総合機構(PMDA)理事長に対して要望書を提出。ロピニロールの医薬品条件付早期承認制度の適用を求めました。

ケイファーマは、多くの患者について有効性や安全性を他の薬と比較しながら確認するため、ロピニロールの第Ⅲ相試験に向けて準備を進めています。

ケイファーマとは


東京証券取引所グロース市場上場を果たしたケイファーマ
画像提供:株式会社ケイファーマ

ケイファーマは「医療イノベーションを実現し、医療分野での社会貢献を果たす」ことを経営理念として、2016年に設立されました。iPS細胞を活用した創薬と再生医療で世界の医療イノベーションに挑み、2023年10月には東京証券取引所グロース市場上場も果たしています。

同社の設立には、製薬会社出身者が大学へ移籍し、アカデミアから創薬ベンチャーを立ち上げることによる「創薬開発の効率化」の狙いがありました。創業者には、エーザイ株式会社で研究やマネジメントを手掛けてきた福島弘明特任准教授(代表取締役社長CEO)、国際的に活躍する神経科学の第一人者である岡野栄之教授(取締役CSO)、整形外科学の専門家で慶応大医学部の副医学部長である中村雅也教授(取締役CTO)が名を連ねます。

グローバルな研究実績をもつ岡野教授と中村教授、そして創薬にかかるさまざまなマネジメント経験豊富な福島社長がけん引する研究チームには、30代など若手の博士号取得者が多く在籍。大手製薬会社で創薬研究マネジメント経験をもつ人材も、アドバイザーとして加っています。

創薬でiPS細胞を活用するメリットは、「直接ヒトの細胞を使って新しい薬を見つけられること」だと福島社長は語ります。通常は動物モデルでの薬効確認を行いますが、動物とヒトでは薬の効き方が異なることも多く、大きなコストや時間が課題でした。しかし、患者の血液細胞などからiPS細胞を作って薬の有効性を確認すれば、動物での実験が不要になり、開発にかかるコストを大幅に削減できます。

同社のiPS創薬事業では、ALSの他にも、FTD(前頭側頭認知症)、ハンチントン病、フェリチン症、那須ハコラ病などの研究も。患者数が比較的少ない難治性疾患の創薬開発を進めることで、患者数の多い疾患の創薬開発につなげていく考えです。加齢性難聴についても、北里大学と連携して治療薬開発を進めています。

もう1つの事業である再生医療事業では、亜急性期脊髄損傷の治療法などを研究。2021年12月に臨床研究として、亜急性期脊髄損傷の患者へのiPS細胞移植を成功させました。2022年3月の時点で、第三者の専門家が移植を受けた患者の経過を評価し、安全性に問題なしとしています。また、慢性期脊髄損傷への展開を加速させ、さらには慢性期脳梗塞や外傷性脳損傷等を対象に大阪医療センターとの連携で治験を進めていきます。

ALS治療薬について、福島社長は「症状の進行を遅らせることで、ALSでも生き続けられるような治療薬の開発につながれば」と想いを語りました。オリィ研究所の「OriHime」などロボットを活用した就労が注目されているALS。有効な治療薬で症状の進行を抑えられれば、より多くの方の社会参加につながることが期待されます。

【取材協力】
株式会社ケイファーマ

【参考】
神経難病におけるiPS 細胞創薬に基づいた医師主導治験を完了-筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療の世界に新たな扉を開く-|慶応義塾大学
一般社団法人 日本ALS協会 公式サイト

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