2021/10/19
光と振動で音を感知する「Ontenna」—富士通が令和2年度関東地方発明表彰を受賞
本ページはプロモーションが含まれています
世界1位となったスーパーコンピュータ「富岳」でも知られる富士通グループは、スパコン以外の分野でも多様な製品やサービスを開発しています。令和2年の関東地方発明表彰では、聴覚障害者が音を感知できる「Ontenna(オンテナ)」が2つの賞を受賞しました。
今回は、富士通グループが取り組む障害者の社会参加について見ていきましょう。
聴覚障害があっても「音」で一体感を得られる「Ontenna(オンテナ)」
2020年11月、富士通が開発した「Ontenna(オンテナ)」が令和2年度関東地方発明表彰で特許庁長官賞と実施功績賞を受賞しました。
Ontennaは音の大きさをリアルタイムに振動と光の強さに変換することで、リズムやパターンといった音の特徴をからだで感じる音知覚装置。全国の多くのろう学校における発話練習やリズム練習に活用できるとともに、複数人が装着した製品を同時に制御できるコントローラーもあり、臨場感や一体感を生み出すこともできます。
髪や耳たぶ、えり元、そで口など様々な部位に装着しやすい構造で、装着しても違和感がなく、振動を感じ取りやすい形状をしているのが特徴です。
実際に全国のろう学校で活用され、普段声を出さない生徒が積極的に声を出す、太鼓や笛の強弱を感じることで皆でダンスを合わせるといったことができたとのこと。2021年5月現在、Amazonや富士通WEB MART で購入可能です。
富士通での障害者雇用
Ontennaを開発した富士通は、グループでの障害者雇用にも積極的に取り組んでいます。
ビジネスにおける障害者インクルージョンを推進する国際イニシアチブ「The Valuable 500」にも2020年に参加。以下の4つに取り組むと発表しました。
<The Valuable 500で表明した富士通の取り組み>
- 障害者のための職場環境整備の実施プロセスを迅速化する
- すべての動画に字幕を付ける、ブログにアクセシビリティ・リボンをつけるなどして、社内外のコミュニケーションにおけるアクセシビリティを向上させる
- 学習障害のある若者を対象とした職場体験を導入する
- イギリスの国際チャリティ・パートナーであるAutisticaと連携し、自閉症の方々をサポートするための理解を深める
出典:Fujitsu | The Valuable 500から翻訳
では、具体的に富士通がどのように取り組んでいるのかを見ていきましょう。
取り組み1:職場環境の整備
障害者の職域を限定することなく採用活動を実施。営業、SE、開発、研究、事業スタッフなど、多くの職種で障害のある400名以上の社員が活躍しています。社員インタビューでは、聴覚障害、内部障害、上肢障害といった身体障害をもつ方が登場しますが、障害種別にかかわらず募集しています。
富士通グループでは、障害者雇用のための職場環境整備について以下のような取り組みを行ってきました。
<障害者雇用に関わる職場環境整備(一部)>
取り組み | 内容 |
ダイバーシティ推進室の設置 | – 富士通負ループのD&Iを推進
– 定期的に全リージョンのダイバーシティ推進担当者が参加する会議を開催(情報共有・推進施策の企画立案) – 毎年、世界のグループ企業を対象に社員意識調査を実施 |
ダイバーシティやバリアフリーへの理解 | – 障害をもつ社員が管理職になる例あり
– 新入社員導入時教育における障害のある社員による講話の実施 |
コミュニケーション時の配慮 | – チャットツールの活用
– 要約筆記者の帯同 – 自社コミュニケーションツールを国内グループ各社に導入 |
定期面談 | – 職場と連携した面談を実施
– 本人の能力を最大限発揮できるよう支援 |
職場向けマニュアル「ワークスタイルガイドライン」作成 | – 障害のある社員とともに働くにあたって、双方が考慮すべき点を障害の状況ごとに記載 |
勤務体制の整備 | – テレワーク制度の導入・浸透(自宅勤務・サテライトオフィス勤務・出張先での作業など)
– フレックス制の拡充 – 長時間労働削減 – 休み方改革(連続5日の有休取得の推奨) |
仕事と治療の両立支援 | – 各種休暇制度・収入補償の仕組みを整備
– 休業中・復帰時も支援 – 休業中の療養・職場復帰支援のため、ガイドブック「療養期間の過し方」を社員・所属長・ご家族に提供 |
富士通グループには「配慮はするが遠慮はしない」という文化があります。選考基準・雇用条件・仕事内容・入社後の評価などは障害の有無にかかわらずすべて同じ。意欲的に働く社員には新規プロジェクトへのチャレンジやキャリアアップのチャンスなどがより多くあるということです。
テレワークについては、総務省による平成29年度「テレワーク先駆者百選」、日本テレワーク協会「第18回テレワーク推進賞・テレワーク実践部門」優秀賞を受賞しました。
なお、富士通グループには下表のように「富士通エフサス太陽株式会社」「富士通ハーモニー株式会社」「株式会社富士通SSLハーモニー」という3つの特例子会社があります。
出典:「富士通グループ サステナビリティデータブック 2020」p.5-1-2-4
富士通には特例子会社で働く方もいれば、他のグループ企業の中で働く方もいるというように、特性や希望に合った職種で働けることが大きな特徴でしょう。
国内外のグループ企業で障害者当事者のコミュニティも自主的に発足し、より働きやすい環境づくりに向けて活動しています。
富士通での障害者雇用率は2019年度で当時の法定雇用率を上回る2.23%でした。
取り組み2:コミュニケーションにおけるアクセシビリティの向上
障害者の採用にあたり、富士通グループでは求職者向けのパンフレットやWEBサイトを作成。社員のインタビューや入社後の職域を掲載することで、同グループで働くイメージをつかみやすくしています。
さらに、国内の富士通グループ会社に対しては、ダイバーシティ・コミュニケーションツール「FUJITSU Software LiveTalk」を展開。これは、発話者の発言を音声認識し、即座に翻訳・テキスト変換できるツールです。株式会社アドバンスト・メディアの音声認識クラウドサービス「AmiVoice Cloud」日本マイクロソフト株式会社の「Microsoft Azure Cognitive Services Speech Services API」(多言語音声認識エンジン)、「Microsoft Azure Cognitive Services – Translator Text API」(多言語翻訳エンジン)を用いています。
LiveTalkを使えば音声入力で認識された文字が画面にリアルタイム表示されるとともに、同時通話でも確実な話者分離が可能なので、複数人が発言する会議などでも大変便利です。キーボードから発言を入力・修正することも可能で、定型文入力機能もあります。
LiveTalkなら話の流れを正確に把握できるため、聴覚障害のある社員を含めたコミュニケーションの円滑化と業務の効率化につながっているとのことでした。
取り組み3:学習障害のある若者を対象とした職場体験
障害のある学生に対しては、1Dayのワーク型イベントを開催しています。ICT業界、富士通で働くことがどのようなことなのかを体験できるとともに、最前線で活躍する障害のある社員との交流も可能。年に複数回実施され、手話通訳が導入される回も見られます。
コロナ禍では感染症拡大防止のため、オンライン形式で行われました。
取り組み4:自閉症の方々をサポートするための理解促進
自閉症に限らず、障害者が職場で活躍できるよう支援することを目的として、毎年ダイバーシティ全社推進フォーラムを開催しています。
合理的配慮やユニバーサルデザインを学び、目に見えにくい発達障害について理解するなど、毎年テーマを設定してディスカッションや体験会を実施。2019年度は465名が参加しました。
また、社内フォーラムには「障がい者社員向けダイバーシティ推進フォーラム」もあり、国内グループの114名が参加したとのことです。
毎年12月3日の「国際障がい者デー」には、障害者理解促進のためのイベント開催、テーマカラーであるパープルで建物をライトアップすることでの意識づけなど、国内外のグループ企業で様々な取り組みを共有しています。
アイコンシャスバイアス(無意識の偏見)に関するeラーニングでは、2018年度と2019年度の累計受講者数が48,266名となりました。
富士通の理念と主な事業
富士通グループはITサービスにおいて国内No.1、世界でも上位のシェアを占めるグループ。グループ理念は「Fujitsu Way」と呼ばれ、全社員の行動の原理原則を示しています。
出典:FUJITSU「富士通グループ総合レポート 2020」
グループ理念「Fujitsu Way」
富士通グループの理念である「Fujitsu Way」は、「パーパス」「大切にする価値観」「行動規範」の3つで構成されています。
「パーパス」は社会における存在意義、「大切にする価値観」は社員一人ひとりが持つべき価値観、「行動規範」は社員として遵守すべきことです。
<Fujitsu Way を構成する3つの要素>
【パーパス】
わたしたちのパーパスは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし 世界をより持続可能にしていくことです。【大切にする価値観】
- 挑戦
- 志高くターゲットを設定し、スピード感をもって取組みます
- 多様性を受け入れ、斬新なアイデアを生み出します
- 好奇心を持ち、失敗や経験から学びます
- ヒューマンセントリックなイノベーションにより、より良いインパクトをもたらします
- 信頼
- 約束を守り、期待を超える成果を出します
- 倫理感と透明性を持って誠実に行動します
- 自律的に働き、共通のゴールに向けて協力します
- テクノロジーを活用し、信頼ある社会づくりに貢献します
- 共感
- お客様の成功と持続的な成長を追求します
- すべての人々に耳を傾け、地球のことを考えて行動します
- グローバルな課題を解決するために協働します
- 社員、お客様、パートナー、コミュニティ、株主に共通価値を創造します
【行動規範】
- 人権を尊重します
- 法令を遵守します
- 公正な商取引を行います
- 知的財産を守り尊重します
- 機密を保持します
- 業務上の立場を私的に利用しません
「Fujitsu Way」は、2002年に制定された「The FUJITSU Way」から改定される形で2008年に制定。2020年7月1日に12年ぶりに改定され、現在の「Fujitsu Way」となりました。
主な事業
富士通グループの主な事業は3つあります。
<富士通グループの事業>
- テクノロジーソリューション
- 売上収益の約80%を占める最も大きな事業
- ソリューション・サービス
- システムプラットフォーム
- 海外リージョン
- テクノロジーソリューション共有
- ユビキタスソリューション
- 全体の約11%を占める事業
- パソコン
- デバイスソリューション
- 全体の約8%を占める事業
- 電子部品(半導体パッケージ、電池等)
テクノロジーソリューションでは、働き方改革やニューノーマルを実現するためのソリューション、さまざまな業界における経営企画・生産管理・経理・財務などに関するソリューション、コンピュータプラットフォーム、ソフトウェア、ネットワーク機器など、さまざまなサービス・製品を手がけています。
ユビキタスソリューションでは、法人向けパソコン・タブレット、PCソリューション(セキュリティなど)を提供。デバイスソリューションでは、プリント基板、コンポーネント、半導体を扱っています。
さらに、今後注力する技術領域として、富士通グループは以下の「7つの重点技術領域」を公表しました。
<富士通グループ 7つの重点技術領域>
- デジタルアニーラ、HPC
- Explainable AI、Wide Learning
- Local 5G、ネットワークスライス
- マルチ生体認証、セキュリティ・バイデザイン
- ハイブリッド/マルチクラウド
- Virtuora DX、データレイク、Chain Data Lineage
- Dracena、エッジコンピューティング、リアルタイム・デジタルツイン
ここで忘れてはいけないのが、コロナ禍の飛沫に関するシミュレーションなどで頻繁に名前を聞く富士通のスーパーコンピュータ「富岳」です。
「富岳」の前には、スパコン「京」が7年にわたり学術・産業分野に向けて広く利用されてきました。
後継の「富岳」は理化学研究所との共同開発で2021年3月9日に完成し、「International Supercomputing Conference (ISC 2020)」のスパコン世界ランキングの4部門で他を圧倒して1位を獲得。現代社会が抱えるさまざまな課題と、科学分野における重要な問題の解決に貢献するとしています。
【参考】
Ontenna公式サイト
受賞一覧|FUJITSU
富士通グループ サステナビリティデータブック 2020|FUJITSU
ダイバーシティ&インクルージョン|FUJITSU
障がい者採用|Fujitsu
Recruiting Promise|FUJITSU
障がい者採用情報|FUJITSU
FUJITSU Software LiveTalk 製品詳細|FUJITSU
スーパーコンピュータ「富岳」|FUJITSU