【障害者雇用状況】民間企業は過去最高を更新も法定雇用率(2.5%)達成ならず【2024年】


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2024年12月20日、厚生労働省は「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」を発表しました。2024年4月から引き上げられた新しい法定雇用率のもとでの初めての集計結果となります。民間企業では、雇用障害者数・実雇用率の過去最高を更新したものの、全体の実雇用率としては法定雇用率(2.5%)の達成まで0.09pt足りませんでした。

今回は、公的機関や独立行政法人等の状況とあわせた概況と、通常より短い時間で働く「短時間労働者」「特定短時間労働者」の雇用状況についてお伝えします。

2024年の民間企業における障害者雇用の状況

今回の集計では、民間企業における雇用障害者数の合計は約68万人。

障害種別では、

  • 身体障害者 約37万人
  • 知的障害者 約16万人
  • 精神障害者 約15万人

となりました。

これをさらに企業規模別・産業別でも見てみましょう。

雇用障害者数と実雇用率は過去最高

民間企業全体での雇用障害者数と実雇用率は、過去最高を更新しました。雇用障害者数は、前年から約3万5,000人増えた67万7,461.5人、実雇用率は前年から0.08pt上昇した2.41%です。

2024年4月から法定雇用率が引き上げられ、2.3%から2.5%となりました。そのため、昨年までは法定雇用率を達成していても、この引き上げによって未達成となった企業があります。2026年7月には、さらに2.7%まで引き上げられる予定。まずは民間企業全体で2.5%の雇用率達成に向けて施策を進めていくことになります。

ここで、実雇用率を企業規模別に見てみましょう。

上の図のように、企業規模が大きくなるほど法定雇用率達成に近い実雇用率となっています。従業員数1,000人以上の企業規模ではすでに法定雇用率を達成しており、500人以上1,000人未満の企業も達成間近といえるでしょう。

これに対し、中小企業ではより一層の取り組みが必要そうです。今回の調査から、新しく40.0人以上43.5人未満の企業規模も障害者雇用義務のある企業に加わりました。そのため、昨年の結果と単純比較はできませんが、それでも100人未満の企業規模では実雇用率が2.0%を切る状況が続いており、より積極的な取り組みが求められています。

100人未満の企業の場合、障害のある短時間労働者1人または通常の所定労働時間で働く障害者を1人雇用すれば、法定雇用率を達成できる企業も多くあります。障害者雇用の「はじめの一歩」をいつ踏み出せるか、踏み出すにあたって適切な情報収集や外部機関(ハローワークや就労系障害福祉サービス事業所など)との連携ができるかが、ポイントです。

法定雇用率達成企業の割合は5割未満が多数

では、現在どのくらいの企業が新しい法定雇用率2.5%を達成しているのでしょうか。

下図にあるように、50%以上の企業が法定雇用率を達成した企業規模は、従業員数1,000人以上の大企業のみ(54.7%)。ただ、100人以上300人未満の企業も、あと一息で50%に達するところです(49.1%)。他方、500人以上1,000人未満の企業では、企業規模全体で見た実雇用率が法定雇用率達成までもう一歩という状況でしたが、達成企業の割合は44.3%にとどまりました。

つまり、100人以上300人未満の企業では、実雇用率が500人以上1,000人未満の企業規模ほどではないものの達成企業の割合が高く、500人以上1,000人未満の企業では、その反対の状況にあるようです。500人以上1,000人未満の企業規模では、企業ごとの差が大きいといえるでしょう。

300人以上500人未満の企業規模でも、実雇用率は100人以上300人未満の企業規模より0.1pt高かった一方で、達成企業割合では大きく後れをとっています(41.1%)。やはり企業ごとの障害者雇用の状況に差があると推察されます。

産業別の法定雇用率達成企業の割合については、昨年に引き続き「医療・福祉」が高い達成率でした(58.3%)。

法定雇用率達成企業の割合が50%を超えた産業には、ほかに

  • 農・林・漁業(52.7%)
  • 鉱業・採石業・砂利採取業(53.5%)
  • 製造業(51.9%)
  • 運輸業・郵便業(52.6%)

があります。

反対に、達成企業の割合が特に低かった産業は、

  • 情報通信業(26.8%)
  • 不動産業・物品賃貸業(31.5%)
  • 学術研究、専門・技術サービス業(32.6%)

などです。

情報通信業では、法定雇用率未達成企業として特別指導が行われるケースも比較的多く出ています。業務の性質から「障害者雇用の推進が難しい」と感じる現場もあるかもしれません。しかし、合同会社DMM.comのように、適切な業務の切り出しと割り振り、成長のサポートで好事例となっている企業もあります。

全体としては、達成企業の割合が50%に満たない産業が大部分を占めました。未達成企業となっている企業は、自社と同じ業界あるいは隣接する業界の取り組みをヒントに、自社の業務や働き方を分析してみるとよいかもしれません。

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障害種別の割合は産業別で大きな差

障害者雇用では、「どのような障害のある方が多く働いているか」を確認することで、その分野における雇用ノウハウの蓄積度や働きやすさを推し量ることができます。そこで、民間企業における雇用されている障害者の障害種別の割合も確認していきましょう。

雇用障害者数における障害種別(身体障害・知的障害・精神障害)の比率では、企業規模別による大きな差は見られませんでした。

しかし、産業別で見ると、その比率には違いがあります。下図をご覧ください。

上の表で各障害種別について比較的割合が大きい産業をまとめると、下表のようになります。

【2024年 各障害種別の割合が大きい産業】

障害種別 割合が大きい産業 割合
身体障害 鉱業・採石業・砂利採取業 84.5%
建設業 76.4%
電気・ガス・熱供給・水道業 75.3%
知的障害 農・林・漁業 37.4%
宿泊業・飲食サービス業 40.9%
生活関連サービス業・娯楽業 40.3%
精神障害 情報通信業 29.3%
医療・福祉 30.6%
サービス業 26.2%

※厚生労働省「障害者雇用状況の集計結果」から作成

特に業界による差が大きいのが、身体障害と知的障害です。これらの産業では、新たに身体障害や知的障害の方を雇用する際に、どのような業務や環境の調整があればよいかを検討しやすいでしょう。

精神障害者については、他の障害種別ほどの大きな差は見られません。上の表にあるように、比較的多い業界では約3割を占めており、反対に比較的少ない業界では1〜2割といった状況です。

もちろん、障害特性や具体的な調整内容には個人差があります。業界で蓄積されたノウハウを活用しつつ、本人と話し合いながら、働きやすい環境を整備することが大切です。

2024年の公的機関・独立行政法人等における障害者雇用の状況

次に、国や都道府県、市町村といった公的機関や、独立行政法人等における障害者雇用の状況をご紹介します。これらの機関についても、2024年4月から法定雇用率が引き上げられました。教育委員会の法定雇用率は2.7%、それ以外の公的機関や独立行政法人等は2.8%です。

公的機関の雇用障害者数の推移では、精神障害者と身体障害者の雇用人数が伸びた一方で、知的障害者の雇用人数はほぼ横ばいとなりました。

以下で、もう少し詳しくご紹介します。

国・都道府県は法定雇用率2.8%達成、教育委員会は苦戦中

まずは実雇用率を見ていきましょう。

上図のように、国と都道府県の機関(教育委員会以外)は、実雇用率2.94%〜3.08%となっており、法定雇用率2.8%を達成しました。市町村は達成まで一歩及びませんでしたが、2.75%と達成間近の状況です。

一方で、近年の法定雇用率引き上げの前後を通じて障害者雇用に課題を抱えてきた教育委員会は、2.43%〜2.47%と苦しい状況が続いており、引き上げ前の法定雇用率(2.5%)を超える結果にもなりませんでした。

都道府県教育委員会の状況では、実雇用率に各都道府県で大きな差が見られます。特に雇用すべき障害者数との差(不足数)が大きな教育委員会は、次の5都府県でした。

【2024年 不足数が大きな都道府県教育委員会】※法定雇用率2.7%

都府県名 実雇用率 不足数
東京都 1.95% 378.5人
愛知県 1.63% 353.0人
兵庫県 1.71% 249.5人
大阪府 2.11% 189.5人
福岡県 1.88% 151.0人

※厚生労働省「障害者雇用状況の集計結果」から作成

他方、不足数0人(法定雇用率達成)で実雇用率が高い教育委員会は、以下の6県です。

【2024年 実雇用率が高い都道府県教育委員会】※法定雇用率2.7%

県名 実雇用率 不足数
愛媛県 3.60% 0人
高知県 3.22% 0人
滋賀県 2.91% 0人
茨城県 2.89% 0人
熊本県 2.88% 0人
大分県 2.88% 0人

※厚生労働省「障害者雇用状況の集計結果」から作成

教育委員会単独での雇用障害者数は、全体としては下のグラフのようにわずかながら増えています。より一層の障害者雇用強化が期待されるところです。

独立法人等の実雇用率では、独立行政法人や国立大学法人などでは、全体として法定雇用率を達成しました。

ただし、国立大学法人を個別に見ると、実雇用率が3.0%を超える法人と民間企業の2.5%にも達していない法人とが混在する状況。ここでも、取り組みの差が現れる結果となりました。

地方独立行政法人等では、全体としても2.8%の達成には0.8pt足りませんでした。

都道府県・市町村で身体障害の割合大、国では精神障害も

公的機関や独立行政法人等で雇用される障害者の障害種別の割合は、下図のようになっています。

身体障害の割合が最も大きかったのは、都道府県の機関(76.7%)。次いで市町村の機関(76.7%)や教育委員会(71.0%)でした。

知的障害の割合が大きかったのは、独立行政法人等です。これ以外での割合は小さく、特に少ないのが都道府県の機関で2.7%でした。雇用人数で見ても、都道府県の機関における知的障害者の雇用は国の機関より少ない人数となっています。

精神障害については、国の機関における割合が圧倒的に大きく、37.9%を占めました。国以外の機関では、概ね2割程度となりました。

他の障害種別への雇用拡大、同業他社の施策もヒントに

障害のある方の社会参加や新しい法定雇用率の達成で苦慮している企業・組織は、現在の施策の拡大が必要となるでしょう。

具体的には、

  • 採用対象をこれまで雇用していなかった障害種別に拡大する
  • 職場環境整備や業務調整のヒントに同業他社の施策を参照する

といった取り組みです。

同時に、同業他社や同じ職種の労働者を雇用している企業の参考になるよう、障害者雇用の具体的な取り組みを自社サイトなどで積極的に発信することも、社会全体での障害者雇用促進に欠かせません。

国・自治体・民間企業を問わず、相互に施策を参照し合いながら、より多くの方にとって自分に合った働き方ができるよう制度・風土の変革を前向きに進めていきましょう。

【参考】(データ出典元)
令和6年 障害者雇用状況の集計結果|厚生労働省

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