「Doronkoパラリンアートカップ2025」受賞作品に盛り上がる審査員コメント、受賞者インタビュー


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2025年11月12日、浜離宮朝日ホール(東京都)で「Doronkoパラリンアートカップ2025」の表彰式が開催されました。当日のプレゼンターは、タレントで一般社団法人障がい者自立推進機構理事の中山秀征さん、車いすテニス世界王者の国枝慎吾さん、元サッカー日本女子代表の澤穂希さん、日本障がい者サッカー連盟会長の北澤豪さん、そして協賛する「どろんこ会グループ」の安永愛香さんなど。表彰式とミニトークショーでは、作品を鑑賞しながら話が盛り上がるなど、楽しい場面が多く見られました。

「どろんこ賞(中・高校生部門)」を受賞した金子日葵さんへのインタビューとともに、当日の様子をお届けします。

「Doronkoパラリンアートカップ」とは?現役プロアスリートが選ぶアートコンテスト


(左上から右へ)国枝慎吾さん、NAMYさん、中山秀征さん、小林瑞恵さん、安永愛香さん
(左下から右へ)北澤豪さん、中矢幸夫さん、澤穂希さん、カミジョウミカさん、櫛野展正さん、会場に展示された入賞作品
撮影:編集部

2025年11月12日、浜離宮朝日ホールにて「Doronkoパラリンアートカップ2025」の表彰式が執り行われました。

「パラリンアートカップ」は、“スポーツの力で障害者の自立を支援する”という趣旨のもと、現役プロアスリートが作品選考を行う日本唯一のアートコンテスト。今年で9回目を迎え、国内外から369点もの作品が寄せられたとのことです。今回は新たに審査委員に小林瑞恵さん(社会福祉法人愛成会理事長、アート・ディレクター、社会福祉士)を迎えています。

審査委員長の櫛野展正さん(アーツカウンシルしずおか チーフプログラム・ディレクター)は、総評として「自分が描きたいものを描いているとか、描かずにはいられないというようなエネルギーを作品から感じる」ものが多かったと語ります。

昨年からは「どろんこ会グループ」も協賛。新たに「どろんこ賞」も設けられました。どろんこ会グループは、1998年に埼玉県の小さな認可外保育園からスタートし、現在は北海道から沖縄まで全国200箇所のインクルーシブ施設を運営。認可保育園と障害児施設が併設され、障害のある子もない子も一緒に活動している施設です。


例年受賞者に大好評の「どろんこ米」
撮影:編集部

どろんこ賞の副賞は「どろんこ米 1俵(60kg)」。表彰式はちょうど新米の時期で、「すごく嬉しい」と受賞者からも大好評です。

昨年どろんこ賞(小学生以下部門)を受賞した佐々木稀さんは、贈られたどろんこ米の一部をお世話になっている療育園へ寄付。昨年の表彰式当日に体調不良で欠席となったため、今回の表彰式で1年遅れの表彰を受けました。稀さんのお母様が「何よりも本人が、(寄付できたことが)一番嬉しかったんだよね」と言うと、稀さんも「はい、そうです!」と元気に頷きます。

どろんこ米は、子どもたちが課外体験として毎年田植え・稲刈りを行い、大切に育てたお米。食の安心・安全を守るため、農薬や化学肥料の使用を半分以下に抑えており、全国のどろんこ会グループの施設で給食米として使用されています。

各選手会賞、個人賞、審査員特別賞の受賞作品

「Doronkoパラリンアートカップ2025」の受賞作品は、以下の通りです。まずは作品をご覧ください。

【各選手会賞】

作品画像 賞・作者・タイトル(敬称略)
  日本プロサッカー選手会賞

作者:HI-KUN

作品名:明日に向かって

日本バスケットボール選手会賞

作者:フミ スギタニ

作品名:無限のジャンプ

  日本ラグビーフットボール選手会賞

作者:タカハシ ユウト

作品名:Brave Blossoms with earth

  日本プロ野球選手会賞

作者:阿部 貴志

作品名:拓け!ホームラン

作品画像提供:パラリンアート運営事務局

 

【各個人賞】

作品画像 賞・作者・タイトル(敬称略)
  北澤豪賞

作者:中矢 幸夫

作品名:シュート北澤

  澤穂希賞

作者:カミジョウミカ

作品名:カラフル世界でサッカーしたい

作品画像提供:パラリンアート運営事務局

 

【審査員特別賞】

作品画像 賞・作者・タイトル(敬称略)
  審査員特別賞

作者:ひろよが

作品名:The Dream Match

作品画像提供:パラリンアート運営事務局

北澤豪賞の作品「シュート北澤」では、審査員の北澤豪さん(元サッカー日本代表、日本障がい者サッカー連盟会長)が「躍動感あふれる姿。辞めてから時間が経ってるんですけど、いろんな方と一緒に戦ってきたんだな、と。現役時代にいろんな方が想いをはせてくれていたというのを改めて感じられた」と評価。澤穂希さん(元サッカー日本女子代表)も「北澤さんは、いつもストッキングを下げてプレーしてたんですよ。その特徴をすごく捉えた作品」と楽しそうに話しました。

作者の中矢さんは北澤さんのファンであり、ずっと応援してきたといいます。表彰式のオンライン通話で「もう夢のようです」と大きな笑顔を見せました。

澤穂希賞の作品「カラフル世界でサッカーしたい」は、その色彩の豊かさが特徴です。澤さん自身は絵を描くのが苦手とのこと。「どうやったらこういう色を使って、思った表現ができるのかな」と感心していました。作者のカミジョウさんは、宇宙も地球もカラフルになっており「そういう世界でサッカーを今後もいっぱいできればいいな」という想いを込めたと語ります。

澤さんは、「サッカーという1つのボールで国籍や性別、年齢に関係なく、皆が楽しんでるという表現に、すごく惹かれました」と受賞の理由を伝えました。

今回の表彰では、海外からの応募作品も入賞しました。それが、インドネシア出身のひろよがさんが制作した「The Dream Match」です。

審査にあたった櫛野さんは、「すごく『描きたい』という想いが伝わってくるような絵画」であることから、本作品を選出。インドネシアと日本によるサッカーの試合とともに、インドネシアの国鳥「ガルーダ」が大きく描かれた作品です。

どろんこ賞の受賞作品

どろんこ会グループによる「どろんこ賞」では、「小学生以下部門」「中・高校生部門」「パイオニア=初応募部門」がそれぞれ選出されました。

【どろんこ賞】

作品画像 賞・作者・タイトル(敬称略)
  小学生以下部門

作者:Hiiiii

作品名:パラブレイキン Hiiiii vs Mizuking

  中・高校生部門

作者:金子 日葵

作品名:黒い雲に向う希望の女性

  パイオニア=初応募部門

作者:kayaran

作品名:競り合い

作品画像提供:パラリンアート運営事務局

小学生以下部門の受賞作品を制作したHiiiiiさんは、自身のブレイクダンスの様子を描いています。「止まっているはずなのに、動きを感じる。色使いもすごくポップ。絵を見ただけでわくわくしました」と、プレゼンターの安永さんは話します。

パイオニア=初応募部門の受賞作は、選手の1対1の競り合いを描いたシーン。チームでの戦いというイメージのあるサッカーで、選手個人のプレーに注目した視点が印象的です。作者のkayaranさんは、病気で入院した際にテレビでサッカーの試合を観て勇気づけられたとのこと。「自分もそういうふうな絵を描いてみたい」という想いが、この作品につながりました。

中・高校生部門の受賞作品「黒い雲に向う希望の女性」は、作品のアイデアが高く評価されました。義足の女性が青空から真っ黒な雲の中に飛び込んでいくシーンに、「逆境に力強く向かっていく女性の意思をすごく感じた」と話すのは、プレゼンターを務めた高堀雄一郎さん(株式会社ゴーエスト、株式会社南魚沼生産組合、株式会社 Doronko Agri 代表取締役)です。

金子日葵さんの作品制作について、編集部もインタビューにて詳しくうかがいました。

受賞者インタビュー:どろんこ賞(中・高校生部門)「黒い雲に向う希望の女性」(金子日葵さん)


インタビューに応じる金子日葵さん(左)とお父様(右)
撮影:編集部

—— Doronko賞(中・高校生部門)を受賞されて、いかがですか?

金子日葵(ひなた)さん(以下、日葵)「最初は『マジで』って思いました。驚きましたよ、『まさか』と。ほとんどは趣味でやってます。普通の絵で」

日葵さんのお父様(以下、父)「普通の中学生で、学校で描いたものが、たまたま学校を通して、いろんな所(作品展示など)に引っかかったりすることがある。なので、わりと自分で『得意だ』っていう感覚はあるのかもしれないですね」

—— 普段は、どのような絵を描いてますか?

日葵「(普段は)都市伝説やゴースト系を描きます。オリジナルのやつも描いてます。SCPをゴースト化して描いてるものもありますね」

父「おばけとか妖怪みたいなやつ。空想で描いたりとかしてます」

日葵「現象とか物品もあります」

父「SCP財団っていうのがあって、いろんなものを作って世の中に解き放って、人々にいたずらしたりっていう世界観があって。それをいろいろ自分で描き写して、『こういう特徴がある』という説明書みたいなものを作ったり」

—— 想像して描くのがわりと好きですか?

日葵「そんな感じです」

—— そうした中で、今回の受賞作品は「走り幅跳び」の場面を描かれましたね。

日葵「前に、体験みたいなものをやったんです。それをもとにiPadを使って描いた。(参考画像はあるけれど)義足をつけたり、雲を描いたり、いろいろ変えました。ゼッケン番号も、本当は1番じゃない。腕の上げ方も」

父「(動きの)勢いは自分でつけたんだよね」

日葵「はい」

—— 背景に黒い雲を描こうと思ったのは、なぜですか?

日葵「義足で思いついたんです。ここ(右半分の黒い雲)は悪い未来のほうで、(左半分の)明るいのは良い未来のほうです。勇気を持って飛び立とうって感じの絵です」

父「チャレンジする感じの絵だね」

日葵「はい。この女性は義足がついてます。誰でもスポーツができるっていう、希望の心があります」

—— 今回、力を入れて描いたところは?

日葵「うーん……2番目は女性で、1番目はここ(フィールドと空の境界部分)かな。特に、座席が難しかったです。あと、うしろの森林も。3番目は、ここ(砂場)。僕、細かく描くので」

—— 制作するのにどのくらいの期間がかかりました?

日葵「あんまり覚えてないんですけど、1週間か2週間……ですかね。休み時間とかに描いたので。学校のiPadです。(自分の)携帯とかないので、いつもお母さんのを使ってます。高校生になったら買いたいです、おかあさんのおかあさんに言って」

父「おばあちゃんに」


絵の説明をする日葵さん(左)と正直な回答に苦笑するお父様(右)
撮影:編集部

—— いつもiPadで描かれるんですか?

父「メモ帳みたいなやつに、ペラペラめくりながら描いています。色鉛筆で。今回も、(iPadのアプリにある)色鉛筆ですね」

日葵「はい、色鉛筆です」

—— 好きなアーティストや作品はありますか?

日葵「うーん……いろいろあります。一番好きなのは……いろいろあります。ダ・ヴィンチとか。有名な絵描きが好きです。美術館にもたまに行きます。前は『(ストランド)ビースト』を展示で観ました。絵じゃなくて、物体みたいなものです。風に当たるとすごく動く」

父「静岡県立美術館ですね。テオ・ヤンセン展」

—— 迫力がありますね。日葵さんは、作品制作で「これは大事にしている」ということはありますか?

日葵「はみ出さないようにしたい。趣味で描いてても、僕にとっては大切なものですから。一度描いて、二度目に描くと『あ、形が違うな』となってしまう。一度描いてダメだったものは、たまにリメイクとして使います。同じやつを少しだけ良くする、みたいな」

父「1回描いたもので、ちょっと気に入らなかったら、もう1回描き直すことがあるということ?」

日葵「はい。(そういう場合の1回目は)没になりますね。名前とか、やってることとか、ほかの作品と似てそうなものは没になります」

—— なるほど。ほかの作品にも配慮しながら、自分の作品を作るんですね。今後またコンテストに出すことは考えていますか?

日葵「さすがに、大量にやったら先生が困ってそうなので……」

父「もともと授業で描いてるわけではなく、休み時間に描いている。先生に付き合ってもらってるんだと思います。だから、あまりたくさん描くと、先生が困っちゃう。まあでも、好きだから、先生が付き合ってくれる分には絵を描けばいいのかなと思います」

—— 学校で絵を描くクラブ活動みたいなものは、ないんですか?

日葵「ない。そんな部はありません。高校に入ったら文化部に入りたいです。(マンガ・アニメ系も美術系も)どっちも好きです」

父「この前、学校見学があって。百人一首の世界観で描いて、そこに和歌を入れたものを飾っていました。そういうのもできそうかな。あれも多分、想像で描いてると思うので」

—— いろいろ見たり聞いたりしていく中で「描きたいな」と思うものが出てきたら描く、と。

日葵「はい。(将来は)あえて言えば、趣味で描いた絵をマンガに出すとか」


受賞作品を持つ日葵さん
撮影:編集部

準グランプリはNAMYさんの「世界一輝け!!」

「Doronkoパラリンアートカップ2025」準グランプリを受賞したのは、NAMYさんの「世界一輝け!!」です。


作品画像提供:パラリンアート運営事務局
加工・編集:編集部

NAMYさんには「パラリンアート世界大会2022」の東海理化賞など、多くの受賞経験があります。これまでも色とりどりに描く画風で制作してきましたが、今回の受賞作品では水泳選手の勢いと力強さが表現されました。ご自身が「全然泳げない」からこそ、「泳げる選手にすごい憧れます」と話します。

準グランプリのプレゼンターは国枝慎吾さん(車いすテニス金メダリスト)。国枝さんは、9歳のときに脊髄のガンを患って車いす生活に入りました。それまでは水泳をしており、バタフライを泳いでいたといいます。しかし、20歳の頃に再びプールに入ったところ、バランスがとれず「いきなり1回転」。「今までと体のバランスが違うんですよ。上半身が重くて下半身が軽い。それから結構、水に対しての恐怖心があって」と経験を語りました。

車いすテニスで現役を引退したあと、国枝さんは水泳に再挑戦しています。水中で姿勢を保てなかったかつての状況から、今は平泳ぎで50mを泳げるようにまでなりました。

作品について、国枝さんは「飛び込むっていう瞬間をあんなに色彩豊かに表現するんだ」と驚き、「こんなふうに勢いよく飛び込んでみたい」という気持ちになったそうです。国枝さんご自身の体験と重ね、作品の魅力を次のように語りました。

「何かできないことができるようになる瞬間っていうのが、スポーツの一番楽しい瞬間でもある。この作品も、絵を通してスポーツの熱さ、楽しさを伝えてくれました」(国枝慎吾さん)

グランプリはmytoshiさんの「ま、まずいっ!!」


作品画像提供:パラリンアート運営事務局
加工・編集:編集部

そして、2025年のグランプリには、mytoshiさんの「ま、まずいっ!!」が選ばれました。

相撲の土俵際で、今にも倒れ込みそうになっている力士を描いたmytoshiさんの作品。櫛野さんは、まずタイトルに引きつけられたといいます。そして、「『まだ諦めたくない』という非常に強い思い」とともに、背景のオレンジや白を使った描写に「その選手が持っている人間のエネルギーを具現化したもの」を感じたと語りました。

描かれている場面の次の瞬間については、審査員の間で感想が分かれました。中山秀征さん(タレント、一般社団法人障がい者自立推進機構理事)は「勝ったか負けたかわからない」と話し、北澤さんは「『負けたんじゃないかな』ってつい思っちゃうけど、そこがまた魅力的」と話します。

当日、本来であればmytoshiさんも表彰式に出席するはずでした。しかし、身内に不幸があり、急遽欠席。mytoshiさんから寄せられたコメントを中山さんが代読しました。

【グランプリ受賞者 mytoshiさん コメント(全文)】
「パラリンアートは、僕の人生の出発点です。収入もない中で良い画材も手に入らず、描写の限界を感じることもありました。そんな負けそうになった瞬間をこの絵に託しました。次の展開は、本人ですらわからないものです。
悲願のグランプリ、こんな価値ある賞をいただけたなんて、光栄の至りです。
本日は、会場に伺う予定でしたが、女手一つで僕を大切に育ててくれた母が急死いたしました。一緒に会場に行く予定で朝迎えに行ったところ、冷たくなっていました。
二浪して僕が大学に受かったときも、僕が障害を負ったときも、誰よりも励ましてくれました。母に今日の晴れ姿を見せたかったのに、残念でなりません」

中山さんは、「人生は、本当に何が起こるか分からない。最後の最後まで結果はわからない。その思いが、この作品に映し出されていました」と、mytoshiさんの言葉を噛みしめていました。

「パラリンアートカップ」10周年に向けて

2026年のパラリンアートカップは、記念すべき10回目の開催です。

来年はFIFAワールドカップの開催年。北澤さんは「ワールドカップをいろんな目線で表現していただければ、我々にとってもすごくありがたい」と話します。一方で、今回はテニスを描いた作品が受賞していないことから、車いすテニスの世界王者・国枝さんは、「来年、アーティストの方々がどんなテニスの作品を描いてくれるのかが楽しみ」と期待を込めました。

澤さん、安永さんも、スポーツを描くという活動を通じた共生社会の実現への思いを伝えています。

「障害のある人もない人もお互いに理解して、支え合った、皆が安心して自分らしく楽しんで生きていける社会に、もっともっとなってほしい」(澤穂希さん)

「いろんな形で、皆がスポーツだったり選手だったり、アートだったり表現だったり、そういうことで関わっていける、そんなコンテストを来年も作っていけたらと思います」(安永愛香さん)

最後に、「ジャンルも幅広くありますので、多くの方に参加していただければ」と中山さんが応募を呼びかけました。


撮影・提供:パラリンアート運営事務局

テーマは例年通り「スポーツ」。スポーツに関する作品であれば、どのような視点・描き方でも構いません。応募期間は、例年7月下旬〜9月下旬頃の約2カ月間です。

最新情報は、以下の公式サイトでご確認ください。

取材協力:
パラリンアート運営事務局
金子日葵さん

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