2018/05/08
大人の発達障害 ~特徴を知る~
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近年増えつつある「大人の発達障害」。
「大人の発達障害」とはどういうものなのか。また社会で生きていくにはどうすればいいのか。2回に分けて解説していきます。
発達障害とは
発達障害者支援法において、「発達障害」は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。
これは、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の基準に準拠しています。
支援法では「低年齢において発現する」とありますが、実際には大人になってから診断の下るケースもあります。これが「大人の発達障害」です。幼児期や学生時代に発覚すると様々な受け皿があるのですが、このルートに乗らなかった大人の発達障害では、本人も家族も原因や対処法がわからず困難に直面します。しかし要因(発達障害である)がわかれば、対処は可能です。
発達障害をまとめると
- 100人に1人存在(分析によって1%〜11%まで人口比で幅があります)
- 脳機能の障害であり、現在根本的な治療法はない
- しかし、適切な支援で症状は緩和される
まずは、「知ること」が大切です。
発達障害の大きな3つの種類と特徴
ASD(自閉症スペクトラム アスペルガー症候群)
- 空気を読むことが苦手、言葉の比喩や裏の意味がわからない
- 人との距離感が独特で、一方的だったり、拒絶的だったりする
- 好きなテーマを語りだすと止まらない、人の話を聞くのが苦手
- 過去のことはよく覚えているが、未来を想像し予定を立てるのが苦手
- 時に過去の嫌な出来事がフラッシュバックして情緒不安定になる
- 視覚、聴覚などの感覚が過敏
- 同時に複数のことを処理することが苦手
- 他者視点に立って考えることが苦手
ASD(自閉症スペクトラム アスペルガー症候群)は、「自閉症」と言っても自分から閉じこもるわけではありません。医学的な「自閉」とは「自分目線」という意味です。
自分のこだわりや限定した世界では能力を発揮しますが、他者とのコミュニケーションが必要な場面で多く、困難に遭います。
ADHD(注意欠如・多動性障害)
- 常に動き回ったり思考がせわしない
- 一方的に喋る
- 思い立ったことをすぐにやりたくなる
- 忘れ物やミスが多い
- 部屋が片づけられない
ADHD(注意欠如・多動性障害)は、発達障害の中でも服薬によって緩和できる分野です。医師の適切な処方のもと、注意力を高めたり、気持ちのアップダウンを押さえられたりします。
LD(学習障害)
- 文字の区別ができない
- 計算ができない
- 推論ができない
- 図形が苦手
LD(学習障害)は、上記のように学習において極端な偏りや遅れが見られます。しかし、純粋なLD(学習障害)はほとんどおらず、ASDやADHDと合併していることが一般的です。
また、大人になると、子供の時にみられた学習障害の症状は目立ちにくくなります。書いたり計算したりすることは、パソコン、スマートフォンや、電卓を使うなどで補えるからです。学習障害をサポートする体制は大人のほうが整っていると言えるでしょう。
これらの発達障害の症状は、合併して現れることも多く、また症状の重さも人それぞれであることから、幾重にも重なる虹のグラデーションで表現されます。
発達障害とうまく付き合うために
発達障害専門のデイケアで訓練を終えた、ある当事者の言葉があります。
「発達障害は乗り心地の悪い乗り物のようなものだ。わたしはその操縦方法を学んだ」
「乗り心地の悪い乗り物」の操縦法を学ぶには訓練が必要です。その事例を幾つか挙げましょう。
デイケア
医療機関で行うケアの一つ。自分に合った処世術を身につけ生活しやすくなることを目的に、心理教育や認知行動療法、SSTなどを行います。
有名なところでは、
などがあります。
ケアの内容はそれぞれの医療機関で特色があります。
晴和病院では生活のリズムを整えたい方から、就職したい方まで、利用者の目的あわせて6つのコースがあります。一方、メディカルケア虎ノ門では、復職希望者へのケアに力を入れています。
ピアサポート
ピアサポートとは、ピア(当事者、同じような境遇にある人、仲間)同士が交流するプログラムのことです。認知や感覚の異なる発達凸凹の当事者が社会で生きていくには、生き抜く「モデル」や「仲間」の存在が必要です。
ピアサポートでは、いわゆる「普通」に合わせなくてもいい、ありのままの自分でいい、また自分だけではないという発見が得られます。孤立感の解消や、自己肯定感の向上、社会参加への意識向上に有効です。
ピアサポートの成功事例として世田谷区の「みつけばルーム(https://www.facebook.com/mitsukeba/)」があります。
ここでは「自分の居場所を見つける」「社会への興味を引き出す」ことをテーマに、多彩なワークショップや専門性の高い外部講師のプログラムを行っています。
価値観、ライフスタイル、仕事の多様性は本人の様々な興味や特性を引き出しています。
まとめ
障害における「自己理解」とは、必ずしも「自分が障害者である」と認めることではありません。自分は何が好きで、何が得意か、苦手なものに出会ったらどう対処すればいいのか、そうした自己発見が「自己理解」と言えます。こうしたポイントは、障害の有無に関わらず生きていく上で必要なことでもあります。
次回は、発達障害の方の就職活動をサポートする各種支援機関について紹介します。
→ (続き)大人の発達障害 ~就労へ向けて~