障害者の安定就労3つのポイント「キャムコム」の障害者雇用


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多彩なサービスで人事課題の解決をサポートするキャムコムグループは、顧客企業の障害者雇用や働きたい障害者の就労を支援。同時に、グループの特例子会社である綜合キャリアトラストを中心としたグループ内の障害者雇用も進めてきました。同グループの障害者雇用関連事業や、グループで行っている障害者雇用について取材しました。

“いい仕事”創出で「生きる力にあふれた社会」へ

2024年5月、キャムコムグループが主な事業内容や取り組み等をまとめたファクトブックを公開しました。

多彩なサービスで人事課題の解決をサポートしてきた同グループは、2001年の設立から連続黒字経営を達成。2020年からはデジタルとアナログをシームレスにつなぐ人材採用のプラットフォーマーとしてサービスを拡大しています。

日本では少子高齢化で労働力人口が減少し、深刻な人手不足が叫ばれています。他方、一般的な労働条件では働きにくい育児や介護中の方、障害などのある方、高齢者など、就労意欲があっても労働市場から弾き出されてきた人材にも注目が集まってきました。

キャムコムグループは、こうした人材や未経験の人材について、テクノロジーを用いることで雇用機会を創出。顧客企業の生産性向上につながる“いい仕事”の構築に尽力しています。

“いい仕事”には、2つの要素があります。1つは「自己実現につながる仕事」。給与、働き方、業務内容などが、労働者自身の未来の目標とつながる仕事。もう1つは「企業の成長につながる仕事」であり、社会に貢献し、価値提供ができている仕事です。

“いい仕事”を創るため、以下の3つの行動基準も策定されました。

キャムコムグループ 【バリュー】3つの行動基準

  • 目的実現
    • 仕事を自己の成長と成功への道筋を学べる場にすること
  • 感謝と敬意
    • 共に働く仲間や環境に感謝しながら敬意を持つこと
  • 利便性の追求
    • アイデアとテクノロジーの活用で、働く人々がより能力を発揮しやすく、活躍しやすい仕組みを創ること

キャムコムグループは「企業・求職者双方の利便性を追求し、生産性向上と雇用機会をつくる」ことをミッションに、「生きる力にあふれた社会の実現」を目指しています。

キャムコムグループの事業と障害者の働き方サポート


画像出典:キャムコムグループ「FACT BOOK 2023」

キャムコムグループは、「多様な人材とその可能性を活かし、2030年に30万人の“いい仕事”を創出する」ことを掲げています。キャムコム代表取締役・キャムコムグループ最高技術責任者である宮林利彦氏は、今回公開したファクトブックにおいて、さまざまな人材を積極的に労働市場に取り入れ、「これらの人材が持つ独自の価値と能力を発揮させることで、企業と労働者双方に新たな機会を提供」すると述べました。

それぞれの人が持つ価値を活かせる機会の創出は、グループ全体で行われています。このうち、中心となって障害のある方々の支援を行うのは、同グループの特例子会社である綜合キャリアトラストです。

これらの事業には、

  • 採用計画立案から入社確定まで伴走する採用支援サービス
  • 「長く働き続けられる環境づくり」を専門スタッフが支援する定着支援サービス
  • 企業の中に障害者雇用の専門部署を設立し、社内の切り出し可能な業務を集約・実施する「ソーシャルオフィス」
  • 製造工程での障害者作業創出を行う「ソーシャルワークス」
  • 業務整理・分析・選定サービスの「ソーシャルコンパス」(フィンテックスと共同開発)
  • 利用企業に対し福岡県の補助金支給がある「福岡県障がい者テレワークオフィス こといろ」の運営

などがあります。「ソーシャルオフィス」や「ソーシャルワークス」については、次項でもあらためてご紹介します。

障害のある方が持つ独自の価値の例として、綜合キャリアトラストの担当者は次のように語りました。

「例えば社内業務に『タイムシートのチェック』という業務があります。ある発達障害を持っている社員が上記業務を行っているのですが、自身の性格とこだわりが強いという特性をうまく発揮し、細かい改善点に気づき、より作業を効率化してくれました」

2024年3月には、東京都から受託した「都立高等学校に在籍する発達障害等のある生徒の就労支援モデル事業」にて、生徒の将来の就労定着など社会参加を実現していくためのプログラムを実施しました。

キャムコムグループの障害者雇用率と特例子会社での取り組み

綜合キャリアトラストでは、精神障害者の方を中心に障害者雇用を積極的に進めています。同社の障害者雇用率は、2023年3月時点で法定雇用率を上回る2.8%。現在はグループ内の業務だけでなく、外部から受託した業務も担います。

綜合キャリアトラストの主なサービスは、就労移行支援SAKURA、ソーシャルワークス、ソーシャルオフィスなどです。

【綜合キャリアトラストの主なサービス

就労移行支援SAKURA
  • 就労を希望する障害者のビジネススキル習得や就職を支援
  • 就労移行支援事業所「SAKURAセンター」を全国に展開
  • 直近5年間の累計就職者数 495名
  • 就職後の半年間における定着率 9割以上
ソーシャルオフィス
  • 障害者雇用を行いたい 企業向けに、運用体制構築から業務選定・遂行までワンストップで課題解決を支援
  • 専門スタッフが常駐し、現場をトータルでサポート
  • 自社内に体制構築するインハウス型、社外の施設を利用するサテライト型がある
ソーシャルワークス
  • 製造・物流関連企業向けに、大手自動車メーカーの新規事業と連携して障害のある人材が担当できる工程を創出・検証
  • 実践的なノウハウで製造・物流の現場を継続的に支援
 オフィスバース
  • 出社が困難な人材がメタバース空間に構築されたオフィスを活用しながらリモートワークを実施
  • グループ企業である綜合キャリアオプションのBPO事業と連携し、綜合キャリアトラストで働く障害者が業務を遂行
  • 障害者のほか、ひきこもりの方や介護・育児中の方などが働く
  • 社内システムとしてテスト活用中。24年度にサービス化目標

これらの事業で支援してきた企業数は累計300社以上、障害のある人材への支援は年間500人に上ります。

「キャムコムグループの中で障害のある方の働き方をサポートする綜合キャリアトラストでは、障害者雇用を単なるCSR(企業の社会的責任)として捉える従来の見方から前進し、障害者を働き手として明確に位置付け、戦力としてとらえて教育・研修し、社会共通の公的資源とすべく育成することを提案しております。それは単なる人道的な意味合いではなく、少子高齢化が加速し、労働人口が減少する昨今の日本において、障害のある方もまた、企業の成長に欠かせない人材として活躍できる社会こそが必要であると考えるためです」(担当者)

障害者の安定就労に不可欠な3つの合理的配慮

最後に、綜合キャリアトラストの取り組みの中で、障害のある方々が安定して働くために重視している3つの要素を伺いました。いずれも、障害のある本人と企業の双方の協力が欠かせないとしています。

体調管理:生活リズムの安定と変化に気づける仕組み

1つめは、体調管理です。

障害のある方には、自身の体調管理が苦手な方も多いでしょう。しかし、安定した就労には、安定した出勤と業務パフォーマンスの発揮が欠かせません。そのため、自身で体調管理ができるようになる必要があります。適切な体調管理を行うには、生活リズムの管理も重要です。

企業側でも、体調管理を本人任せにしてはいけません。障害のある従業員の不調やちょっとした変化に気づける仕組みや相談体制を構築し、しっかり運用していくことが大切です。

そして、特性や障害の状況の変化などで急に欠勤となった場合にも応じられるよう、不安定な勤務状況にも柔軟に対応できる仕組みをつくりましょう。具体的には、業務の属人化を避けてタスク化するなどの施策が可能です。

自己発信:お互いに気持ちや要望を確認するコミュニケーション

2つめは、自己発信です。「言わなくてもわかってほしい」という気持ちでは、ときに誤解を招く恐れがあります。障害のある方、企業側がともに、お互いに要望などを確認・検討するといったコミュニケーションを大切にしましょう。

例えば、障害のある方が取り組むとよいことは、職場で必要とされる報連相などの自己発信のスキルを習得することです。特性上、うまくコミュニケーションができない部分もあるかもしれません。その点については、特性に合わせた配慮を得ながら、報連相をしやすいやり方をリーダーや上司などと相談しましょう。

企業側では、報連相の方法を従来の口頭によるものに限定せず、メールやチャットなど、多様な手段を使えるようにするとよいでしょう。本人から合理的配慮に関する申し出があった場合には、配慮が必要な理由や目的を確認しながら、具体的な方法を一緒に検討します。

報連相などの業務連絡に限らず、どのような合理的配慮を行うにしても「本人に確認せずに支援方法を決定しないようにする」ことが重要です。

「障害者雇用に限った話ではありませんが、仕事をする上で人とコミュニケーションをとることは必須です。そのことを、働く障害者と企業の双方が意識し、個別のケースに合ったコミュニケーション方法を見つけていく努力が必要です」と担当者の方は語りました。

目的意識と多様性:仕事の場であることを意識した行動

そして3つめは、「仕事の場である」ことを前提とした目的意識と多様性の重視です。

障害のある方にとって、職場で仲の良い同僚ができることは、とても嬉しいものです。しかし、職場は仕事をする場。業務の目的に沿った行動が第一であることを忘れてはなりません。

これは、個人の感情・要望だけで行動するのではなく、職場で仕事をしていることを意識する必要があるということです。「良い意味で他人に干渉しすぎず、仕事の成果を出せる働き方をする」ことを心に留めて行動することが大切です。

企業側も、障害のある従業員本人の不安などの相談に乗りつつ、「仕事の場」であることを前提とした価値観と望ましい行動を具体的に示しましょう。

「職場は仕事をして対価を得るために不特定多数の人々が集まる場所であり、目的はそれぞれの役割に応じた成果を上げる事です」(担当者)

障害の有無にかかわらず皆が安定して働けるよう、お互いがそれぞれの多様性を認め合い、尊重すること。この理解を深めることが、働きやすい職場づくりの実現につながります。

【取材協力】
キャムコムグループ
株式会社綜合キャリアトラスト

【参考】
キャムコムグループ「FACT BOOK 2023」

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