どうすればいい? 障害者雇用における事業主支援


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障害者雇用における職場定着を図るには、障害者への支援だけでなく、事業主に対する支援も不可欠です。どのようにすれば、よりしっかり課題を把握し、支援していけるのでしょうか。今回は、障害者職業総合センター(NIVR)の調査研究報告書をもとに、事業主が抱える課題の把握やサポート方法を見ていきましょう。

地域障害者職業センターによるサポートと事業主がもつ課題は?

2020年、NIVRは事業主に対する支援について、地域障害者職業センターを対象にアンケート調査を実施しました。まずはこのアンケート結果から、地域障害者職業センターでどのような事業主支援を実施しているのか概観していきましょう。

地域障害者職業センターでは採用・職場定着・復職を中心に事業主を支援

地域障害者職業センターでは、そのほぼ全てで何らかの事業主支援を実施しています。実際に行った事業主支援で中心となっているのは、

  • 特定の障害者・患者の採用(または職場適応、職場復帰)に伴う事業主支援
  • 障害者・患者が特定されていない段階(雇用の拡大を含む)の事業主支援

など。特定の対象者に関連した事業主支援とは、たとえば採用前後のジョブコーチ支援などを指しています。
より具体的に支援内容を尋ねると、9割以上の地域障害者職業センターが次の項目を選択しました。

  • 社員研修への協力(講師派遣、外部講師の活用を含む)
  • セミナーや研修への参加の案内
  • 典型的な障害特性や配慮事項の説明
  • 障害者の担当職務内容の提案
  • 制度や事業の利用の案内
  • 他社の障害者雇用事例の紹介

事業主支援のきっかけと事業主が抱えやすい5つの課題

事業主支援が始まるきっかけは、基本的に事業所からの相談や要請が多いようです。一方、ハローワークの雇用率達成指導への同行やあっせんから始まった例、ハローワーク以外の関係機関からの要請で始まった例なども見られます。
事業主が支援を求める理由のTOP3は

  1. 法定雇用率の達成
  2. 障害者の担当職務の検討
  3. 経営者・社員の意識向上、経営者・社員への情報提供

でした。他に、社内の雇用管理体制の整備、マニュアル整備、関連機関との連携を目的に、支援を求めるケースもありました。
調査全体をとおして見えてくる障害者雇用の課題は、次の5つに大別されるとNIVRは報告しています。

<地域障害者職業センター調査で見られた障害者雇用5つの課題>

(1)企業全体の方向性
  • 法定雇用率の達成
  • 法定雇用率の達成後のさらなる障害者雇用の拡大
  • 経営者・社員の意識向上
  • 経営者・社員への情報提供
(2)職場の理解・調整
  • 障害者の担当職務の検討、職務開発
  • そもそもの人員不足と育成体制の課題
  • 社内体制、雇用の仕組みづくり
(3)企業全体と職場の両方の理解、企業と障害者のニーズ調整
  • 企業全体の視点と職場の視点の調整
  • 事業主のニーズと障害者のニーズの調整
(4)予測が難しく準備を整えることが困難な課題の解決
  • 発達障害者と精神障害者の雇用上の課題
  • 支援困難な諸課題
(5)企業における障害者雇用の実務
  • 求人活動における支援機関の活用
  • 事業主支援の方法・内容
  • 地域の社会資源の活用

障害者雇用における課題はどうやれば把握できる?

アンケート調査によって、事業主の方から相談が多い課題が分かりました。とはいえ、それぞれの事業主が抱える課題は、雇用する障害者の特性や職場・職務によって大きく異なるものです。実際の支援現場で課題を把握するには、どのようにすればよいのでしょうか。
NIVRは調査結果を踏まえて、事業主や支援者が活用できる課題把握のためのツールを開発。それが、「障害者雇用のためのサポートツール」というワークシートです。

「障害者雇用のためのサポートツール」と7つのチェックポイント

「障害者のためのサポートツール」は、事業主が7つのチェックポイントを確認しながら取り組み状況を記入していくものです。A4紙やA3紙に印刷して直接書き込むことができる他、PDFツール等を使って電子媒体のまま書き込むこともできます。

サポートツールにおける7つのチェックポイントには、障害者雇用の現場でよく見られる課題内容が反映されました。なぜそれが重要なのか、どういった点に取り組む必要があるのかといった情報も簡潔に示されています。

チェックポイントには順番付けがないため、書きやすいところ、取り組みやすいところから記入・活用できるようになっています。

<サポートツールにおける7つのチェックポイント>

  • 経営者は障害者雇用の方針を広く社内に示していますか
  • 障害者雇用が社内に理解されていますか
  • 上司や同僚は、障害者への関わり方を理解していますか
  • 障害者雇用をサポートする支援機関を利用していますか
  • 社内のサポート体制はありますか
  • 募集・採用の方法は決まっていますか
  • 職務内容、配属部署は決まっていますか

さらに、障害者雇用に関する相談窓口・支援機関、各種資料を閲覧できるリンクなども掲載。それぞれの窓口・機関・資料がどのような課題解決に役立つかも1~2文で説明されており、連携先や事例などの情報提供に便利です。

「障害者雇用のためのサポートツール」は、以下の公式ページからダウンロードできます。

サポートツールの活用方法

サポートツールは、事業主がダウンロードして記入し、自社の取り組みを確認・検討するために活用できるものです。同時に、支援者との相談において記入を進めたり、あらかじめ記入したものを見ながら検討を進めることもできます。

NIVRは、相談の場でのサポートツールの活用について、以下の4ステップにおける活用を提案しました。実際に職場に障害者を雇い入れる前の段階で相談したい事業主や、会社あるいは職場全体で取り組みを進めたい事業主を想定しています。

主な活用の流れは、以下のようになります。

<サポートツール等を用いた事業主相談の流れ>

  1. 事業主が話す
    • 支援者は事業主の話に耳を傾けることを最優先する
    • 助言や他のツール等の資料提示よりも、支援者からの次のような質問により話を促す
      1. 相談のきっかけ
      2. 障害者雇用に関してアドバイスを受けたり調べたりした経緯
      3. 障害者雇用に関する社内の話し合いの状況
      4. 採用を検討している障害者について
      5. 障害者雇用の具体的な計画等
      6. 人事担当者の取り組み等
    • 事業主の話を聞いてから、サポートツールを活用して実情の明確化を行う
  2. 支援者が手元の資料の中から、情報提供を行う
    • 事業主が話した内容と関係がありそうな箇所を示しながら説明する
    • 助言ではなく、他社にも似たような状況や事例があることを共有する
    • 情報提供の中で事業主が再び実情を話し始めた場合は、他社に関する情報提供をやめて話を聞く
    • 事業主の話す内容が今後の取り組みに移るまで、傾聴と情報提供を繰り返す
  3. 事業主が当面の取り組みについて話す
    • 障害者雇用に関する実情が明確になり、事業主の関心が今後の取り組みに移ったら、事業主の考え方を聞く
    • 事業主の考えを促すため、適宜以下のような質問をする
      1. 障害者雇用の今後の具体的な計画
      2. 人事担当者の今後の取り組み
      3. 採用を考えている障害者 等
  4. 支援者が支援策を提案する
    • 今後の取り組みに関する事業主の考え方・方針に対して、支援策を提案する
    • 必要に応じて、サポートツールや他のツール・資料を示しながら話す
    • 提案の中で以下のような質問をして、支援者が支援を行うことについて事業主の同意を得る
      1. 提案に対する事業主の意見
      2. 事業主にとってのメリット
      3. 支援内容の再検討を要する部分 等

ここで重要なのは、サポートツールのみを用いて相談を進めるのではないということ。サポートツールは他の様々なツールや資料の1つとして活用するもので、相談の流れや目的に応じてどのツール・資料を使うか決める必要があります。

事業主の状況をより把握しやすく課題解決に役立つツール・資料がどれかを検討しながら、必要に応じてサポートツールを活用していきましょう。

提供・共有する情報や事例はどこで探す?

事業主への支援に際して提供・共有する情報や事例を探すには、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下、JEED)の事例データベースや事例集、パンフレット等が便利です。順番に見ていきましょう。

雇用事例リファレンスサービス

事例データベースである「雇用事例リファレンスサービス」では、JEEDが発行する事例集や広報等に掲載された企業の取り組みやモデル事業の内容について、障害種別と課題、解決に向けた対処策等の情報を得られます。業種や障害種別、企業規模での絞り込みもできますので、より事業主の状況にあった事例を探しやすいでしょう。

「はじめての障害者雇用~事業主のためのQ&A~」

これまで障害者雇用を行ったことがない事業主が障害者雇用を初めて行う場合に直面しやすい課題については、「はじめての障害者雇用~事業主のためのQ&A~」というWebページが役立ちます。

障害者雇用の基礎的な知識から採用の準備、職場定着のための取り組み、代表的な障害特性と配慮事項、支援機関との連携など多数の項目があり、各質問について詳しい解説が記載されています。既に取り組んできた事業主の方でも、新たな気づきを得られるかもしれません。

業種別、テーマ別の事例集(PDF)

製造業、運輸業・郵便業、卸売業・小売業、教育・学習支援業などでの課題解決については、「障害者の職場定着と戦力化」としてまとめられたPDF資料があります。経営者の声、具体的な課題と取り組み、障害のある社員の声などを掲載しているため、どのような施策にどのような効果があるのか、イメージしやすい構成となっているのが特徴です。

業種以外に、特定の障害種別や働き方、重視する観点別などで事例を探す場合は、JEEDがさまざまなテーマ別に発行している「職場改善事例集」をチェックしてみましょう。

また、当メディア「障がい者と仕事マガジン」でも、テーマ別の事例や企業ごとの取り組みをシリーズでご紹介しています。ぜひ事例共有にお役立てください。

(関連記事)
合理的配慮好事例シリーズ

The Valuable 500シリーズ

動画やコミック形態の資料

その他、映像またはコミックで取り組み事例を見られる資料もあります。

事業主や社員の方にあとで見てもらう、ストーリーで障害者雇用の進め方を理解してもらう、より具体的に取り組みの流れをイメージしてもらうといった場合に効果的でしょう。

まずは事業主の状況を傾聴し課題の明確化を

障害者雇用では、一般枠での採用と異なり、さまざまな観点での支援が必要です。どのような課題を抱えているのか、どのような支援が必要なのかということ自体が明確ではない事業主の方も少なくありません。

障害種別や主な特性ごとの配慮・支援の大まかなパターンは、課題の明確化や必要な支援の検討で大いに役立つでしょう。しかし、はじめから一方的にそうしたパターンに当てはめて考えてしまうと、細かなニーズを聞き取れない可能性もあります。
最も重要なのは、事業主の状況をていねいに聞いていくことです。

今回ご紹介した主な課題やサポートツールは、事業主がまだ話していない、あるいは気づいていないかもしれない点を聞き取るためのチェックポイント、支援ツール・資料として活用していくとよいでしょう。

【参考】
調査研究報告書 No.163障害者雇用及び雇用継続において事業主が抱える課題の把握方法及び提案型事業主支援の方法に関する研究|NIVR

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