2025/12/10
【ブライダル業界】アニヴェルセルが実践する丁寧な打ち合わせと結婚式【合理的配慮事例】
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民間企業に義務づけられた合理的配慮の提供。様々な取り組みの共有が、ブライダル業界でも進み始めました。経済産業省が公表した『合理的配慮に関する国内企業における実践事例集』には、視覚障害者や聴覚障害者の挙式や対応に必要な社内体制に関する事例が紹介されています。
障害者の結婚式における合理的配慮の提供では何がポイントなのか、当事者の声やアニヴェルセルの事例をご紹介します。

もくじ
障害者の結婚式の不安「バリアフリーは?」「サポートの事前相談は?」
デジタル障害者手帳「ミライロID」を提供する株式会社ミライロ(以下、ミライロ)の調査によれば、自身の結婚式を挙げたことがある障害者の6割が、結婚式場を探すための情報収集で不便を感じたとのこと。ほかの人の結婚式に参列する場合でも、約4割の障害者が「バリアフリー設備が不明」であることに不安を感じていました。※
「幸せは祝福されると記念日になる。」をコンセプトにウエディング事業やカフェ・レストラン事業を展開するアニヴェルセル株式会社(以下、アニヴェルセル)は、障害のある当事者の結婚式を手がけてきました。現在、表参道や横浜、長野、大阪など全国に10店舗の結婚式場を展開しています。
同社が合理的配慮の提供に取り組み始めたきっかけは、ウエディング事業関連のサービスを展開する中で、障害者やその他の“マイノリティ”とされる人々へのサービスの在り方を考えたこと。全ての顧客の満足につながるよう、当事者の声を聴きながらサービスの品質向上に取り組み、社内における知識・ノウハウの蓄積を進めています。
アニヴェルセルが手がけた結婚式の事例と社内体制整備

アニヴェルセルでは、式を挙げる新郎新婦の想いを丁寧に聴きながら、打ち合わせを進めています。障害者の結婚式では、障害特性に応じた柔軟なサポートだけでなく、「どうすれば新郎新婦や列席者が楽しめるか」という視点も重要です。
結婚式の打ち合わせ・運営における取り組み
アニヴェルセルでの結婚式事例で紹介されたのは、視覚障害(弱視)のある顧客の結婚式と、聴覚障害のある列席者が多い結婚式です。
視覚障害のある顧客の結婚式は、新郎新婦の想いにより「インクルーシブ」をテーマとして「その場にいるゲスト全員が同じ時を同じように楽しめること」を第一に内容が決められました。新郎新婦の友人にも視覚障害や聴覚障害のある人が多いことが、その理由です。
会場の設備面では、会場にトイレが併設されていること、駅から会場まで送迎バスがあることが重要に。いずれも、障害のある列席者の移動という面で便利な設備・サービスです。
また、テーブルの上に飾る花の高さを通常よりも低くし、テーブルクロスの色はロイヤルブルーを選択しました。花の高さを抑えることで新郎新婦や列席者同士の口の動きが見えやすくなり、濃い色のテーブルクロスによって食器やカトラリーを見分けやすくなります。列席者の座席も、各人がサポートを受けやすいように調整しました。
視覚障害(弱視)のある新郎の手元には、隣に座る新婦の表情がわかるよう、Zoomアプリを使って手元のタブレットでいつでも見られるようにしました。新婦のカラードレスも、新郎と一緒に「ロービジョンの人にも楽しんでもらえる」ことを重視。鮮やかながら上品な赤いドレスを選んでいます。
演出でも、聴覚障害のある列席者に配慮した工夫が施されます。会場内に複数のスピーカーを設置し、新郎新婦の移動に合わせて「音を移動」させたのです。これは、音の移動により、視覚障害の列席者にも2人の大まかな位置がわかるという仕掛け。大学研究室の協力を得て実現されました。
聴覚障害のある列席者が多い別の結婚式の事例でも、新郎新婦のアイデアが光っています。それは、新郎新婦が作成した手書きのメニュー説明書。一品ごとに料理のイラストが描かれ、特徴や具材などのアピールポイントが丁寧に書き込まれています。ドリンクメニューも印刷し、指さしでオーダーできるようにしました。
アニヴェルセルでは、通常よりも長い時間をかけて、障害のある当事者の結婚式の打ち合わせを進めます。ご本人や付き添いの人へのヒアリングを重ねながら
- 食事制限に対応した食事の提供
- 個室の案内
- 着脱しやすい衣装の提供(パートナー企業において)
- 施設内のバリアフリー対応
などを行っているとのことです。
合理的配慮のノウハウ蓄積に向けた社内体制
アニヴェルセルでは、手がけた結婚式の事例などを通じてノウハウの蓄積を進めています。情報共有の仕組みも多角的な視点で整備してきました。
例えば、全店が参加する毎週の定例会議では、顧客ごとの対応に関する情報を共有。方針や改善策を検討し、実施につなげています。
各店舗と本部の連携では、店舗のゼネラルマネージャー・支配人・料理長と本部でリアルタイムに情報を共有。対応に工夫が必要な場合は、都度プロジェクトを発足し、個別に対応しています。
結婚式を運営する現場では、担当プロデューサー(プランナー)が障害の内容・程度や式での注意点などをヒアリング。必要に応じて外部の専門機関や同業他社、学校などと連携することもあるそうです。そのうえで、当日に必要な対応をオペレーションスタッフ(シェフ・衣装担当・フラワー担当など)に共有しています。
同社は、「自社だけで考えすぎない」「外部の意見も取り入れる」という方針で、より適切な合理的配慮の提供につながる体制を整えてきました。
さらに、研修や社内表彰制度も、合理的配慮の提供に関するノウハウの共有に役立てています。
例えば、研修では、店舗ごとに車いすユーザーへの対応を学ぶとともに、コンシェルジュ・サービススタッフにはロールプレイング大会でのおもてなし・提案力向上を図ります。「アニヴェルセルアワード」という社内表彰制度では、スタッフの対応好事例を表彰し、社内共有の機会としてきました。
こうした積極的な取り組みが、同社の対応力強化につながっているといいます。
今後は、ノウハウが属人化している現状を打開するためにマニュアル化に向けた施策の推進、手話ができる人員の確保や音声読み上げ機能活用などのDX促進、外部機関・他企業との交流機会の拡大も検討しているそうです。
ブライダル業界における合理的配慮のポイント

ブライダル業界における合理的配慮には、「顧客の幸せな体験」を実現する視点が欠かせません。具体的な配慮内容は顧客の障害特性によって異なりますが、大まかな対応パターンをつかむことで、よりきめ細やかな個別対応をしやすくなるでしょう。
今回は、そうした合理的配慮の提供に役立つ3つの視点から、ポイントをまとめます。
障害特性に応じた対応パターンを知る
1つめのポイントは、障害特性に応じた対応パターンを知ることです。ブライダル業界に限定したものではなく、様々な業界で共有されている一般的な知識から始めるとよいでしょう。
例えば、車いすユーザーの場合、通りやすい通路や使いやすい設備の用意が合理的配慮の提供につながります。
| 車いすユーザーへの合理的配慮の例 | |
| 困り事 | 対応例 |
| 通路が狭く、通りにくい |
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| 階段の昇降ができない |
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| テーブルに車いすのアームが当たる |
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| 車いすではトイレを利用できない |
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| エレベーターのボタンが高い場所にある |
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視覚障害者への対応では、視覚で伝える内容を聴覚で把握できるようにするなどの工夫が有効です。例えば、司会者が新郎新婦の衣装を言葉で伝えたり、どこからどこへ移動しているのかを伝えたりする方法があります。ケーキのデザインや会場の様子なども、自然な流れで言葉にして伝えていくことで、式の盛り上がりを一緒に体感してもらえるでしょう。
聴覚障害者への対応では、第一に手話・筆談を活用できる仕組みが重要です。これには、列席者全員へのアナウンスを司会者が声で伝えるとともに、会場のスクリーンにアナウンスの内容を投影する方法があります。演出に用いる動画に字幕をつけたり、メニュー説明や設備の案内を印刷物・筆談で行ったりするといった工夫も効果的です。
他方、精神障害や発達障害のある人への対応では、特に演出やメニューでの工夫が必要になるかもしれません。
| 精神障害や発達障害のある人への合理的配慮の例 | |
| 困り事 | 対応例 |
| 音・匂い・光がつらい |
|
| 食べられないものがある |
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| 行動にこだわりがある |
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| 見通しがないと不安になる |
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こうしたパターンをもとにしながら、個別の状況に応じた対応へブラッシュアップしていくとよいでしょう。
施設のバリアフリー化と情報発信を進める
2つめのポイントは、施設のバリアフリー化や情報発信です。前項で見たように、身体障害のある顧客や列席者にとって、施設のバリアフリー化は重要なポイントです。
特に車いすユーザーの場合、車いすのまま使える設備や動線が欠かせません。冒頭で紹介したミライロの調査によれば、障害のある当事者が望むものとして回答者の過半数が「多目的トイレ」と「必要なサポートを事前に連絡できる窓口」を挙げました。ほかに、4割弱の回答者が「優先駐車場」の設置を望んでいます。
このような設備・サービスが既に用意されているのであれば、ぜひそれをWebサイトなどで発信しましょう。施設・設備の画像や特徴、打ち合わせや当日に対応可能なサポートの内容、過去の事例などは、障害のある当事者にとって非常に大切な情報なのです。
【バリアフリー・合理的配慮情報の発信例】
| 領域 | 発信する内容の例 |
| 施設・設備 |
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| サービス |
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| 事例紹介 |
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障害のある新郎新婦や列席者が参加する結婚式のあと、顧客やスタッフにヒアリングを行い、「当事者にとって役立つ情報」を確認する取り組みも有効でしょう。
顧客が望む結婚式のイメージを大切にする
そして3つめのポイントは、顧客が望む結婚式のイメージを大切にすることです。
合理的配慮の提供に関して全ての業界に共通する注意点は、「○○障害だから」と決めつけないこと。研修やガイドラインで障害特性のパターンを学ぶと、その知識・ノウハウに当てはめて対応しようと考えることが多くなるかもしれません。しかし、具体的な困り事には個人差があり、できること・できないことも千差万別です。
合理的配慮の提供には、「対話」が欠かせません。ブライダル業界では、事前の打ち合わせ・当日の対応などで、数多くの話し合いを重ねます。こうした機会に、「対話」を通じて具体的な困り事の内容を聞き取り、「これならできる」を探っていく必要があるのです。
ときには「参列者に負担をかけたくない」という理由で、ほかの結婚式でよく採用される演出や段取りをやめることになるケースもあります。一般的な段取りに慣れていると、「本当にやめていいのだろうか」と首を傾げることもあるでしょう。しかし、それをやめることが、顧客の望む幸せな結婚式の実現につながる場合があります。
なお、合理的配慮の提供にあたり費用や人員の面で実現が難しいケースについては、代替案の提示など、実現しやすい方向性を探ることも「対話」に含まれます。時間をかけて検討・調整することを前提に、対話を進めていきましょう。
ブライダル業界の特徴と挑戦に向けた新たな一歩
結婚式は、人生における大切な儀式の1つです。伝統的な結婚式の進め方には一定のパターンがあり、その形式に則ることが儀式として重要な場面もあります。
ただ、障害特性により、そうしたパターンだけでは対応できないことがあるのも現実です。従来の結婚式のイメージと異なる挙式・披露宴が望まれることもあるでしょう。
大切なのは、式を挙げる2人や列席者にとって、どのような体験になるかということ。ブライダル業界は今、全ての顧客の幸せな時間をつくりあげるという前提に立ち返り、新たな一歩を踏み出しています。
【参考】
【画像素材】
buritora / PIXTA(ピクスタ)
moto / PIXTA(ピクスタ)


