2022/07/05
【障害者の在宅ワーク】名刺作成・パンフレット制作などのDTP【職域と事例】
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印刷物のデザインを行う業務のうち、多くの特例子会社や福祉作業所で実施されているのが名刺やパンフレットの作成です。どのようなタスクが在宅ワークで可能なのか、業務遂行にあたって必要になるツールやスキル、障害を持つ在宅ワーカーの取り組み事例などをご紹介します。
もくじ
名刺のデザイン作成、パンフレット制作などのDTPは一部工程で在宅ワーク可能
ビジネスパーソンの必需品である名刺は、その人の所属や肩書き、連絡先、所属企業の雰囲気などを伝える大切なビジネスツール。企業に新しく採用された時だけでなく、配属やポジションが変わった時にも作る必要があるため、継続的に業務が発生しやすい職域です。
一方、企業パンフレットや数ページで構成されるイベント資料などの冊子制作では、頻繁に発生する業務ではないものの制作にかかる作業量が多く、全体の構成だけでなくページごとのレイアウト、伝達すべき情報の取捨選択といったさまざまなノウハウが求められます。
しかし、いずれの業務にも「デザイン」という工程が含まれるのが特徴。名刺のデザインやパンフレットの構成・ページごとのレイアウト作成は、パソコンとソフトウェア、そしてマウスがあれば進められる在宅ワーク可能な業務です。
名刺やパンフレットのデザイン業務に必要なツールやスキル
名刺やパンフレット等のデザインでは、必要なツールや知識がやや異なります。まずはそうした知識やスキル、ツール類についてチェックしましょう。
名刺作成に必要なツールやスキル
名刺のデザイン作成に必要なツールは、パソコン・マウス・名刺デザインが可能なソフトウェアです。
<名刺のデザインができるソフトウェア>
- Adobe Illustrator
- Adobe Photoshop
- Microsoft Wordなどのワープロソフト
社内で簡単に名刺作成を行う、小ロットで作成するという場合はWordのテンプレートを活用してデザインするのもよいでしょう。より社風やその人の雰囲気に合った名刺をデザインするなら、Illustratorなどのデザインに適したソフトウェアを使うのがおすすめです。
1枚のカードに情報を集約させつつ印象の良いデザインにする必要があるため、各ソフトウェアの使い方だけでなく、標準的な名刺の大きさ、配色パターンやデザインパターンと与える印象の関係を知っておきましょう。
パンフレット制作に必要なツールやスキル
パンフレット等の数ページからなる冊子は、DTPソフトを使って制作されるのが基本です。DTPとは「Desktop Publishing」の略で、印刷物のデータをパソコン上で制作することを指します。
代表的なDTPソフトはAdobe InDesignというソフトウェアで、同社のPhotoshopおよびIllustratorもあわせて使われます。
<DTPで使われる代表的なソフトウェア>
- Adobe InDesign:冊子のデザインに利用
- Adobe Ilustrator:図案の作成・加工などに利用
- Adobe Photoshop:写真加工などに利用
InDesignでは複数のページで共通したレイアウトを使える機能や、多くのテキストを掲載するデザインでも快適に動作する点などが魅力です。
冊子の制作に必要なスキルは、まずこうしたソフトウェアを適切な場面で使えるようになること。加えて、カラーモードや印刷に関する知識、ページのレイアウトパターンなども学んでおかなければなりません。
名刺作成や冊子制作に関する全体の業務フロー
次に、デザインを行うまでの流れやデザイン後に印刷して納品するまでの流れを押さえておきましょう。
DTPの業務フローを大きく分けると、「企画→文章・画像等の準備→デザイン・レイアウト制作→入稿→色校正→印刷・納品」という流れで進みます。
パンフレット等の複数ページで構成される印刷物では、ページごとに掲載されている画像や図、細かなレイアウトが異なるため、企画・文章・画像の準備・デザインやレイアウトの制作・確認・修正にそれぞれ多くの時間がかかるでしょう。
名刺作成の場合は企業や部署でデザインパターンが決められていることもあるため、工程は少しシンプルになるかもしれません。
名刺デザインや冊子のデザイン・レイアウトを担う場合、こうした工程のうちデザインやレイアウト、その修正だけに関わる場合もあれば、素材の準備や入稿、色校正まで関わる場合もあります。
名刺作成・冊子制作等の在宅ワーク事例と業務の工夫・配慮
では、実際に名刺作成や冊子の制作等を担っている在宅ワーカーはどのように業務を進めているのでしょうか。今回は障害者の在宅ワーク推進に取り組むNPO法人の事例を2つご紹介します。
NPO法人バーチャル工房やまなしにおける工夫
NPO法人バーチャル工房やまなしは、ICTを活用した重度障害者の在宅ワークの推進および支援を目的に設立されました。在宅ワーカーである障害者と発注者との間に立ち、業務の受発注、進捗管理、納品物のチェック等を担っています。
<バーチャル工房やまなしでの業務フロー>
画像出典:バーチャル工房とは|バーチャル工房やまなし
業務として請け負っている分野は幅広く、データ入力やテープ起こし、音声コード作成などがあります。
バーチャル工房やまなしは名刺作成の実績も豊富です。ユニバーサルデザインに沿ったものになっているのが特徴です。
たとえば点字入りの名刺では、文字やデザインを微調整することで点字と重ならないよう工夫しており、連絡先などの小さな文字もきちんと読めると好評。点字は視覚障害者が1枚ずつ丁寧に書き込んでいます。
音声コード(SP/ユニボイス)をつけた名刺も作成できます。音声コードとは、紙面に書かれている内容をデジタル情報に変換した2次元のデータコードで、専用の機器やアプリで読み込むとコードに記録されているテキストが読み上げられるものです。
バーチャル工房やまなしは受注した内容の名刺・パンフレット・チラシなどの内容に沿って音声コードを作成することが可能で、視覚障害者のワーカーが当事者の立場から作成に携わっています。
【参考】
音声コード(SP/ユニボイス)とは|バーチャル工房やまなし
NPO法人 バーチャル工房やまなし 公式サイト
NPO法人バーチャルメディア工房ぎふにおける工夫・配慮
バーチャルメディア工房ぎふも、障害者の在宅ワーク推進に力を入れているNPO法人です。就労支援事業や人材育成事業、障害者や障害者雇用を進める事業主のサポート、福祉用具等の開発への参加などの事業を展開する中で、就労支援事業では1998年からITを活用した在宅就業に取り組んできました。
在宅ワークとして受注しているのは、Webサイトの構築、各種印刷物の制作、データ入力、ソフトウェア開発、ネットワーク構築などです。競争が激しくなっているIT業界で事業を継続するため、登録している在宅ワーカーのスキルアップを重視してきました。
同時に、障害特性に応じた業務の割り振りや補助具の導入、ライフステージや年齢、特性に合わせた健康管理にも力を入れています。たとえばデザイン業務を担当している在宅ワーカーの方は、一般的なパソコンやプリンター、ペンタブレットを使いながらも、関節の痛みに対応するため首や手首などに装具をつけて業務にあたっているといいます。
<バーチャルメディア工房ぎふでの工夫・配慮>
スキルアップ |
|
業務の効率化 | 各人のレベルや個性に合わせて業務を割り振る |
体調管理 |
|
【参考】
NPO法人バーチャルメディア工房ぎふ 公式サイト
ワーカー紹介 K.F.さん|バーチャルメディア工房ぎふ
平成29年度在宅就業障害者マッチング事例集|厚生労働省
工程分解で在宅ワーク可能なタスクの切り出しを
名刺作成やパンフレット等の制作では、データのやりとりができれば在宅で進められる工程と、実際に物を扱いながら確認・制作する工程があります。
さらに、在宅ワークで取り組める工程の中でも
「このレベルのタスクはAさんに任せよう」
「複雑な判断が必要な工程はBさんに任せよう」
「定型パターンで作業ができる工程はCさんに任せよう」
など、スキルのレベルや特性、個性に合わせて業務を割り振っていくと、全体の効率化にもつながります。
バーチャル工房やまなしの事例のように、視覚障害をもっている方に点字名刺や音声コード付き印刷物の作成の一部業務を任せれば、より品質の高いユニバーサルデザイン対応の名刺・印刷物の制作ができるでしょう。
障害をもつ在宅ワーカーに業務を任せたい方は、スキルアップや相談しやすい環境をつくりながら、これまでの業務をより細かく工程分解し、在宅ワーク可能なタスクの切り出しをしてみてください。