【障害者の在宅ワーク】データ入力(2)業務管理と使用ツール【職域と事例】


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「データ入力」では、正確かつスピーディな入力が求められます。納期を守りながら精度の高い入力を行うには、在宅ワークを行うメンバーのスキルだけでなく事業所スタッフ等による業務管理とコミュニケーション環境の整備が欠かせません。在宅ワークによる「データ入力」で業務管理や連絡・相談等に使われるアプリ・ツールとあわせて解説します。

在宅ワークのための「データ入力」業務管理

「データ入力」では、申込用紙の内容や企業情報、顧客情報、アンケートの回答内容といった指定項目の入力が求められます。業務自体は比較的シンプルといえる職域です。

一方で、正確かつスピーディな入力が重視され、しかも短納期での作業が求められることもあります。「シンプルな業務だからタスクを割り振って納期まで待っていれば納品される」と簡単に考えることはできません。シンプルな業務だからこそ、より精度の高い入力と納期厳守のための業務管理が重要なのです。

「データ入力」の業務管理では、第一に案件や項目ごとの入力ルールを守れるようにすること、障害をもつ在宅ワーカーにとって無理のない勤務スケジュールや作業量・作業内容を見定めてタスクを割り振ることなどが求められます。

具体的なポイントは下の表のようになります。

<データ入力の業務管理のポイント>

 勤務スケジュール
  • 担当メンバーの体力、集中力、通院・服薬、介助状況等に応じた勤務体制の実施
  • 必要に応じて短時間勤務や1〜2時間ごとの小休憩の実施
  • 急な体調不良等による欠勤時のサポート体制の構築(チーム制を導入すると対応しやすい)
 勤怠管理
  • オンライン打刻システムや勤怠管理システムの活用
  • 朝礼の参加状況の確認
 マニュアル作成
  • 在宅ワーク時の注意事項
  • 使用ファイルや接続方法
  • ファイルの共有・納品方法
  • 案件ごとの入力ルール
  • 実際の業務で発生したQ&Aの共有など
 業務の割り当て
  • 担当メンバーの障害特性に適した内容の設定
  • 体力や集中力に応じた作業量の設定
  • 在宅メンバーの進捗が遅れた場合の支援体制の構築(チーム制を導入すると対応しやすい)
 進捗の共有
  • 共有ファイルへの進捗の入力(リーダー等)
  • 業務日報の提出
  • 朝礼・終礼等の実施
 健康管理
  • 産業医等にいつでもオンラインで相談できる体制を構築
  • 業務日報や業務開始時にヘルスチェックを実施
  • 障害特性に合わせた休憩時間の設定
  • 急な体調不良等の連絡方法の周知

業務管理で特に重要なのは、マニュアルの作成、障害特性に応じた業務の割り当て、質問・相談しやすい体制の構築でしょう。

障害特性に応じた業務の割り当ては、

  • 1日にどのくらい作業できるか
  • 入力が困難な記号や文字のタイプ(漢字、数字、英字など)があるか

といった点をまずは確認してみてください。

作業目標やノルマについては、1つの業務を複数のメンバーで担当するチーム制をとり、チーム全体として設定するほうが業務管理をしやすくなるようです。メンバーの誰かが急に欠勤することになっても他のメンバーで作業を補い合うことができますし、調子が悪いときは少なめの作業量で調子がよいときは多く作業するという柔軟性をもたせることもできます。

適切なコミュニケーションでミス防止や体調管理を

出社せずに黙々と入力作業を続けることになる在宅ワークでのデータ入力業務では、他の人のチェックが入りにくくなるためミスをしても気づかなかったり、集中しすぎて体調を崩してしまったりするケースがあります。また、孤独感が強まってやる気が落ちる、障害の状況が悪化するといったこともあるでしょう。

そうしたミスや心身の不調などを予防するには、日頃から仕事上で適切なコミュニケーションをとれることが大切です。

実際に在宅ワークでデータ入力業務を担う事業所では、次のような体制でメンバー同士のコミュニケーションをサポートしています。

<コミュニケーションをとりやすい環境>

 朝礼・終礼等
  • Web会議システムを利用
  • リアルタイムでの会話
 業務上の質問

相談

  • ビジネスチャットやメール等で対応
  • いつでも相談できるよう担当者を配置
 OJTの実施
  • オンラインで実施
  • 一定期間メンター制度を実施し、いつでも何度でも教えてもらえる環境を整備するなど
 面談や研修
  • 年に1〜数回、対面で実施
  • 支援者が在宅ワーカーの自宅を訪問する形や、メンバーが近くの事業所に集まる形などさまざまな実施パターンがある
  • 業務の振り返り、具体的な目標設定、スキルアップのための訓練などを実施
 その他
  • 分かりやすい文章での連絡
  • 雑談タイムを設定してWeb会議システムを用いて実施
  • メンバーの人柄を知る機会の設定

質問・相談などはコピペするだけで使えるテンプレート集を用意しておくと「どんなふうに伝えればいいか分からない」という最初のハードルを下げられるでしょう。在宅ワークを行う方や業務内容などに合わせて、話しやすい仕組みや環境を検討してみてください。

「データ入力」で使われるアプリやツール

データ入力業務で必須となるアプリやツールは、入力する内容や納品形式によって異なります。ただ、多くの場合はワープロソフトや表計算ソフト、データベースを使って入力を行います。

したがって、データ入力業務を行うには以下のようなアプリやツールを導入し、業務を担当するメンバーはそれらを操作できるスキルを身につけておくと作業を進めやすくなるでしょう。

<データ入力で使われるアプリ・ツール>

  • Microsoft Excel(表計算)
  • Microsoft Word(ワープロ)
  • Google スプレッドシート(表計算)
  • Google ドキュメント(ワープロ)
  • Microsoft Access(データベース)

また、データ入力では基本のアプリ・ツール以外に自社で独自開発した入力システムを活用する例も見られます。

たとえば株式会社ディーソルで独自開発された「VE21」は、入力原票を画像データ化して項目ごとに切り分け、全国の在宅ワーカーが同じ項目を連続して入力できるシステムとなっています。入力が大幅に効率化されるとともに、氏名と住所や連絡先等が紐付けられないまま入力できるという点で個人情報保護にも対応できるのが特徴です。

【参考】
障害者支援|株式会社ディーソル

業務管理に使われるアプリやツール

業務管理にもアプリやツールが必要です。利用場面は、業務連絡、メンバー同士のコミュニケーション、支援、勤怠管理などさまざま。代表的なアプリ・ツールには次の4種類があります。

<業務管理に使われるアプリやツール>

  • メール
  • ビジネスチャット
  • Web会議システム
  • オンライン打刻システムや勤怠管理システム

メールは最も基本的な連絡手段でしょう。在宅ワークを実施する非常に多くの企業で使われています。メッセージを送る・返信する・ファイルを共有するという基本的な機能があるため、業務連絡・質問・相談・日報の提出など、さまざまな場面で活躍します。

プロジェクトやグループ単位の連絡を追いやすくするなら、ビジネスチャットが便利です。大きな特徴は、メッセージが送信された時間によって並んで表示され、どのように状況が変化しているか、どの連絡に誰が対応しているかが分かりやすいこと。ツールによってはメッセージに添付する形でファイル共有もできます。

画面共有やよりリアルタイムな連絡が必要な場合は、Web会議システムが役立ちます。通信するデータ量が増えたり一定時間の対応が必要になるので頻繁に実施すると業務が滞る可能性があるものの、文章では伝わりにくいを画像や映像を用いることで伝えやすくなるのが大きなメリットです。

オンライン打刻システムや勤怠管理システムは、勤務開始時刻・終了時刻・休憩時間等を記録するもの。専用ツールを導入すると一定の形式でデータが残るので振り返りや分析がしやすくなりますが、メールやチャットなどで代用しても構いません。勤怠と稼働時間や作業量を比較すれば、その日の体調確認や今後の勤務スケジュール作成の参考にもなります。

業務管理に使えるツール等は、以下の関連記事でも詳しく紹介しています。

(関連記事)
【障害者の在宅ワーク】業務管理に使えるツール3選

コミュニケーションに使われるアプリ・ツールと特徴

コミュニケーションに使われるアプリやツールは、業務管理で使えるアプリ・ツールと基本的には同じです。しかし、障害特性や体調管理などプライバシーに関わる相談では使い方を変える必要があります。

効果的に使うには、以下のような各アプリ・ツールの特徴を考慮しましょう。

<コミュニケーション用アプリ・ツールの特徴>

  • Web会議システム
    • 相手の様子が映像・音声で分かる
    • 機密情報やプライバシーに関わる内容の場合はパスワード設定が必須
    • 高速インターネット回線でないと画像や音声が途切れる
    • 利用プランによっては参加人数や連続利用時間に制限がある
    • 視覚障害や聴覚障害がある方には使いにくい場合がある
    • 相手の顔が見えると緊張しすぎて話せない方もいる
  • ビジネスチャット
    • 相談内容と対応が時系列に並ぶ
    • 多くの場合、1対1のチャットが可能
    • 自動で相談内容等の記録が残る
    • 高速インターネット回線でなくても使いやすい
    • 聴覚障害がある方も使いやすい
    • 視覚障害がある方には使いにくい場合がある
    • 文章入力の手間がある
  • メール
    • 携帯電話、タブレット、パソコンなどほぼ全ての端末で利用可能
    • 1対1の連絡が基本となる
    • 自動で相談内容等の記録が残る
    • 聴覚障害がある方にも使いやすい
    • 文章入力の手間がある
    • コミュニケーションにタイムラグが生じやすい

業務管理やコミュニケーションの取り組み事例

では、実際に在宅ワークでデータ入力業務を手がける事業所では、アプリやツールをどのように使い分けているのでしょうか。

今回は業務に使用するアプリやツールを一部公開している3つの法人の例を中心に見てみましょう。

<特定非営利活動法人 在宅就労支援事業団の場合>

勤怠管理 独自開発「在宅就労管理システム」
データの入力 Microsoft Excel
Microsoft Word
業務連絡

相談等

主にメール

 

<グリービジネスオペレーションズ株式会社の場合>

勤怠管理 オンライン打刻システム
朝礼 Web会議システム
業務連絡

相談等

ビジネスチャット

Web会議システム

定期面談 Web会議システム
その他 必要に応じてメール

 

<富士ソフト企画株式会社の場合>

朝礼 Web会議システム
業務連絡

相談等

メール(進捗報告・業務相談)

ビジネスチャット(質問・相談等)

電話(業務相談)

Web会議システム

研修 Web会議システム

他の事業所の例もあわせると、アプリ・ツールの使い分けには概ね以下の画像のような傾向が見られます。

どのアプリやツールがどのような場面で使えるかは、障害特性によって大きく異なります。誰が参加するのか、参加者がきちんと使えるアプリやツールか、視覚障害や聴覚障害がある方にも伝えられる「プラスα」の手段(文字起こしツールの利用など)はあるかなどを検討しながら選択してください。

コミュニケーションに使える具体的なアプリやサービスについては、以下の関連記事でご紹介しています。

(関連記事)
【障害者の在宅ワーク】在宅ワークに役立つコミュニケーションツール11選

【参考】
特定非営利活動法人 在宅就労支援事業団 公式サイト
グリービジネスオペレーションズ株式会社(令和2年度登録)|チャレンジ ホームオフィス
グリービジネスオペレーションズ株式会社 公式サイト
富士ソフト企画株式会社(令和2年度登録)|チャレンジ ホームオフィス
富士ソフト企画株式会社 公式サイト

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