2020/08/15
障害者就労支援における障害者自立支援機器活用のメリット
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障害者の就労における障害者自立支援機器の活用には大きなメリットがあります。しかし、障害者自立支援機器のマーケットは小さく、なかなか開発・情報共有が進んでいません。こうした問題に取り組む法人のひとつがテクノエイド協会。テクノエイド協会が主催するシーズ・ニーズマッチング交流会は、開発者と利用者が直接意見交換できる貴重な機会です。
今回は、障害者自立支援機器の見つけ方・ニーズの伝え方をご紹介します。
もくじ
障害者自立支援機器とは?
障害者自立支援機器は、障害者の日常生活における活動や仕事、社会参加を支援する重要な役割を果たしています。多く見られるのは、身体障害者の支援やレクリエーション・コミュニケーション支援を目的とした機器。新しい技術に基づいたロボット開発や脳科学の知見を元に開発されたもの、就労支援のために開発されたものもあります。利用者のニーズに応じて開発されるケースが多いのも特徴です。
実際に開発された支援機器を挙げると、たとえば聴覚障害者向けの支援機器「comuoon connect(コミューン コネクト)」があります。comuoon connectは周囲の声を的確に捉え、クリアな音に変換することで聞こえにくさを改善するアンプ。話し手が自由に動き回りながら話しても、その声を拾って聞こえやすくしてくれます。白い卵形で見た目も良いため、医療機関・聴覚特別支援学校・福祉施設・一般家庭と広く利用されています。
視覚障害者のパソコン活用を支援する「JAWS for Windows 日本語版」は、パソコン画面やウィンドウに表示された情報、入力した文字を読み上げるソフトです。webページや文書の読み上げ、文書作成で使用され、視覚に障害があってもインターネット等を利用したさまざまな情報へのアクセス、文書作成が可能です。
コミュニケーションを支援する機器では、「指伝話」が人気。使う人が自由に言葉や文章、絵を登録できるアプリで、指定した言葉や文章を流暢な合成音声で読み上げてくれます。話すことに困難を感じている人の代わりに指定した内容を読み上げてもらうだけでなく、絵や写真と説明を登録して自分専用のマニュアル作成なども行えます。
ただ、障害者自立支援機器は社会全体から見ればマーケットが小さく、なかなか他の商品のような素早い開発ができません。開発されても、テレビ等のマスメディアで大きく取り上げられる機会は少なく、あまり世間に知られていないのが現状です。
障害者雇用や就労支援における障害者自立支援機器活用のメリット
障害者自立支援機器は、障害者が働く際も大きな力を発揮します。
聞こえにくさを抱えて仕事をしている人の場合、同僚や上司が障害のない人と話すような音量・口調で話していると聞き取るのが困難。もし自分のデスクにcomuoon connectがあれば、同僚や情痔が普通に話していても、言っている内容をはっきり聞くことができます。連絡や相談にかかる労力が減るため、より業務に集中しやすくなるでしょう。
視覚障害者の場合、スクリーンリーダーを知らない人からは「パソコン操作ができないから事務仕事は任せられない」と思われがち。しかし、視覚的情報を聴覚や触覚に変換できれば業務を行うことは可能です。「JAWS for Windows 日本語版」は、Microsoft Officeを中心に多くのアプリケーションに対応していて、ネットを使った情報収集も可能。JAWSを導入することで、電子カルテや図書館システム、財務システムなども利用できるようになります。視覚障害者に任せられる業務の幅が広がり、企業の生産性により大きく貢献できるはずです。
また、「指伝話」は障害の違いを超えてコミュニケーションを支援してくれます。「指伝話」には複数のアプリがあるのも特徴です。自己紹介やあいさつなど、よく使うメッセージを登録し、画面をタップすることで自分の代わりに話してくれるアプリ、その場で入力した文章を読み上げてくれるアプリ、読み上げ機能とアラームを一体化させて指定した時間になると登録した言葉を読み上げてくれるアプリなどがあります。特にアラーム機能があるアプリに1日のスケジュールを登録しておけば、他の人の声かけがなくても指伝話が行動を促してくれます。
指伝話には、発話に困難を抱える人々が会議でプレゼンテーションを行ったという大きな実績があります。声でコミュニケーションができなくても、文字を音声に変換すれば会議参加や発言が可能になるんだということを示す好例です。
障害をもつ人々は、「できない」ことを理由に仕事で不当な扱いを受けることも少なくありません。しかし、支援機器の活用によって「こうすればできる」を示せるようになります。障害をもつ人が今まで自分ではできなかったこと・やりにくかったことをできるようになり、職場にもより大きく貢献できるようになるというメリットが、障害者自立支援機器活用にはあるのです。
障害者自立支援機器の開発・普及とテクノエイド協会
障害者自立支援機器の開発・普及を支援する法人に、公益財団法人テクノエイド協会があります。
テクノエイド協会は、福祉用具の調査と開発の推進・情報共有・臨床的評価・技能者育成等を担う法人。情報の共有では各種データベースの提供と改善、技能者育成では福祉用具プランナーの育成や認定補聴器技能者の質的・量的拡充などを進めています。義肢装具士国家試験の指定試験機関でもあります。
調査研究事業では、介護ロボット開発支援などに注力。ニーズを踏まえた製品開発ができるようマッチングの場を設けると共に、介護ロボット活用ノウハウのとりまとめ・提供にも取り組んでいます。
そして、調査研究事業でもう1つ重要なのが「障害者自立支援機器開発促進事業」とシーズ・ニーズマッチング交流会の主催です。
【参考】
公益財団法人テクノエイド協会 公式サイト
テクノエイド協会によるシーズ・ニーズマッチング交流会とは
実際に現場で活用できる障害者自立支援機器を開発するには、使う側と開発者が早い段階で情報を共有し、機能や使い勝手・形状等を検討しなければなりません。使う側(ニーズ)と開発者(シーズ)のマッチングを行うのが、シーズ・ニーズマッチング交流会の目的です。
2019年度の交流会は、大阪・福岡・東京の3会場で行われ、合計約1,000名が来場しました。各会場では、製品・試作機等の展示やデモンストレーション、意見交換等が行われるとともに、基調講演や利用報告、ワークショップ、令和元年度障害者自立支援機器開発促進事業採択企業による成果報告会なども開催しています。
講演や利用報告では、既に製品化された自立支援機器がどのように開発され、利用されているのかを紹介。ワークショップでは、現場からニーズを見つける方法の共有、最新機器の体験、子ども向け支援機器の体験会などが行われました。通常の商店や百貨店ではなかなか見られないような、さまざまな支援機器も並びました。
シーズ・ニーズマッチング交流会開催時期には、交流会に参加しにくい地域(高知・佐賀・北海道)でATAサテライト(意見交換会)も開催。障害者やその家族、支援者、開発・研究機関、福祉機器に詳しい専門家、福祉医療関係者等が参加しています。
ATAサテライトは各地でそれぞれ2回開催され、1回目は、使う側から困りごとや課題、あってほしいシステムを中心に意見交換、2回目は課題解決に向けた機器のイメージや仕様・機能、解決すべきニーズなどの検討が行われます。公式ページではATAサテライトの成果物として各会場でまとめた「支援機器イメージデータ」を公開していますので、ぜひご覧になってみてください。
【参考】
障害者自立支援機器 シーズ・ニーズマッチング事業|テクノエイド協会
障害者自立支援機器はどうやって探せばいい?
最も確実に障害者自立支援機器を探すなら、シーズ・ニーズマッチング交流会に参加するのがベスト。しかし、交流会は年に1度しか開催されず、2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響も懸念されます。そこで、本項ではインターネットを使った障害者自立支援機器の探し方をご紹介しましょう。
まずは、シーズ・ニーズマッチング交流会のパンフレットや資料のチェックから始めましょう。いずれも公式ページにPDFで公開されています。パンフレットからは製品化された機器や開発中の機器の情報が、講演資料などからは実際にどのような支援機器がどうやって使われているかが分かります。
また、テクノエイド協会と高齢・障害・求職者雇用支援機構が提供している障害者等を対象とする支援機器の情報も見てみましょう。特にテクノエイド協会は、「障害者自立支援機器情報システム」と「福祉用具情報システム(TAIS)」という、支援機器等のデータベースを提供しています。
障害者自立支援機器情報システムは、障害者や家族、支援者向けのデータベース。メーカー・分野別・使用場面での検索、フリーワード検索ができます。販売中のすべての支援機器や福祉用具が登録されているわけではありませんが、登録された機器類については問い合わせ先や販売店等が分かるので便利です。
一方、福祉用具情報システム(TAIS)は介護保険担当者や福祉用具相談者、介護支援専門員等による利用を想定して作られたデータベースです。2020年5月現在、約14,000件が登録されています。専門家は「TAISコード」やメーカーで検索をすると速く見つけられるでしょう。一般の利用者は「全ての福祉用具を探す」で大分類・中分類を指定して検索すると探しやすくなります。
GoogleやYahoo! JAPANといった一般の検索エンジンを使う場合は、シーズ・ニーズマッチング交流会公式ページのパンフレットや事業報告書に掲載された商品名やメーカー名で検索。公式ページから製品情報を見つけられる可能性があります。
もし希望に合う製品が見つからない場合は、テクノエイド協会が運営する「福祉用具ニーズ情報収集・提供システム」も見てみましょう。このデータベースでは、同じ悩みを持つ人からの要望やアイデア、新製品情報、イベント開催等のお知らせを見ることができます。もし自分と同じ要望・アイデアがない場合は、要望・アイデアを自分で投稿してみるのもよいでしょう。支援機器を製造しているメーカーや機関が開発を進めてくれるかもしれません。
【参考】
障害者自立支援機器情報システム|テクノエイド協会
福祉用具情報システム(TAIS)|テクノエイド協会
就労支援のページ|高齢・障害・求職者雇用支援機構
福祉用具ニーズ情報収集・提供システム|テクノエイド協会