2020/01/27
障害者枠の賃金が低い理由と収入アップのポイント
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障害者枠の賃金は、なぜ一般枠の賃金より低くなってしまうのでしょうか。
主な原因は4つあります。これらの原因には、障害者の労働時間、支払い形態、職場の規模、勤続年数、最低賃金の減額特例などが関わっています。
前半では障害者枠の給与が低くなる原因について解説し、後半では収入をアップさせるポイントを解説します。
障害者枠の平均月収が低くなる要因
障害者枠で働く労働者の平均月収は一般枠で働く人たちの平均月収より低くなる傾向があります。
給与が低くなる原因はさまざまですが、その中でよく見られる主な原因は4つです。
一般枠の平均月収と障害者枠の平均月収
2018年度において、一般枠で就労する労働者の平均月収は約30万円。
一方、厚生労働省の「障害者雇用実態調査」によれば、障害者枠で就労する労働者の平均月収は、約12万円〜22万円です。全体として見たとき、一般枠より障害者枠のほうが給与が低くなる傾向があります。
これにはいくつかの理由がありますが、主な要因は次の4つです。
- フルタイムで働く人が多くない
- 給与の低い事業所で働いている
- 昇給・昇進がほとんどない
- 最低賃金の減額特例が適用されている
フルタイムで働く人が多くない
「障害者雇用実態調査」で報告されている障害者の平均労働時間は、週所定労働時間30時間以上の人で
身体障害者の場合 149.7時間
知的障害者の場合 139.4時間
精神障害者の場合 138.6時間
発達障害者の場合 146.6時間
です。
一般労働者の平均労働時間は、月あたりに換算して平均166.5時間。障害者の勤務時間の平均はフルタイムで働く場合より短いことが分かります。
【参考】
2019年労働時間等実態調査集計結果┃日本経済団体連合会
平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表します┃厚生労働省
H3 給与の低い事業所で働いている
どのくらいの給与額になるかは企業によって異なりますが、全体の傾向を見ると、常用労働者数100人未満の事業所の平均給与は、100人以上の事業所の平均給与より低くなる傾向があります。
障害者雇用実態調査によれば、障害者の多くが働いているのは100人未満の事業所。しかも30人未満の事業所が最も高い割合を占めているのです。
昇給・昇進がほとんどない
障害者は、その障害特性との関係で、できる仕事が限られるケースが多く、給与の高い職業に就きにくい場合があります。また、障害者の勤続年数が相対的に短いことも昇給・昇進の有無に影響を与えているケースも見られます。
通常、管理職になると給与が大幅にアップしますが、管理職への昇進は勤続年数がある程度長くないと難しいもの
2017年における障害者の定着率を示した調査に「障害者の就業状況等に関する調査研究」がありますが、これによれば障害者が一般企業に就職してから1年後の時点で見た定着率は、
- 身体障害者 60.8%
- 知的障害者 68.0%
- 精神障害者 49.3%
- 発達障害者 71.5%
です。
新卒(大学)の1年目での離職率は11〜12%程度ですから、新卒に比べて障害者の職場定着率は低く、それが昇進や昇給につながりにくい原因となっていることが分かります。
【参考】
障害者の就業状況等に関する調査研究┃独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
新規学卒就職者の離職状況(平成27年3月卒業者の状況)を公表します┃厚生労働省
最低賃金の減額特例が適用されている
労働能力が低い場合や業務内容が簡単な場合は、最低賃金未満の賃金で雇用することが許可されるケースがあります。いわゆる、最低賃金の減額特例です。
障害者の中でも知的障害者の収入は特に低くなる傾向がありますが、その原因の多くが減額特例の適用なのです。
最低賃金未満の時給で雇える理由|最低賃金制度と減額特例許可制度
最低賃金は最低賃金法に基づいて定められたもの。そのため、最低賃金未満で労働者を雇うことは、原則として法律違反です。
それにもかかわらず最低賃金未満で雇われている障害者は少なくないのは、最低賃金制度で認められた減額特例許可制度があるからです。
最低賃金制度には減額特例許可制度がある
最低賃金制度では、地域別最低賃金と特定最低賃金の2種類の最低賃金が設定されています。
たとえば、東京都の地域別最低賃金は1,013円。東京都の事業場で働く全ての労働者と使用者に適用されます。
一方、特定最低賃金は特定の産業の基幹的労働者と使用者に適用されます。東京都の場合は、2019年時点で985円です。
東京都にある事業場の特定の産業については、地域別最低賃金と特定最低賃金の2つが適用されます。こうした場合、高い方の額が最低賃金になります。従って、東京都の職場で雇用されて働く人は全て1,013円が最低賃金となります。
ただし、減額特例許可制度により、賃金を最低賃金未満に減額することができます。
労働能率が相対的に著しく低い人などの雇用機会を狭めないために設けられた制度で、もし許可されれば、当該労働者を最低賃金未満で雇えるのです。
【参考】
最低賃金制度の概要┃厚生労働省
労働能率が職場で最低水準だと減額される可能性がある
実際、どのように賃金が減額されていくのでしょうか。減額特例の許可申請書には、減額する場合の給与の決め方が記されています。
まず、障害のあるAさんを最低賃金未満で雇用しようとする場合、Aさんは「減額対象労働者」になります。
そして、Aさんが他の労働者と比べて労働能率が低いかどうかを見るために、「比較対象労働者」が決められます。
比較対象労働者となる人は、以下の条件を満たす人でなければなりません。
- Aさんと同じ職場で、Aさんと同じような業務を行っている
- 最低賃金以上の賃金が支払われている
- (1)(2)を満たす労働者のうち、最も労働能率が低い
比較対象労働者をBさんとしましょう。
事業主は、AさんとBさんの労働能率を数量的に(たとえば、同じ時間でそれぞれどのくらいの作業ができたか、などで)比較します。
そして、Bさんの労働能率を100としたとき、Aさんの労働能率がいくらになるかを計算します。
もしAさんの労働能率が70だった場合、100―70=30で、Aさんの給与に対して最大30%の減額をすることができます。
最低賃金額以上の賃金で雇われている人の中で最も労働能率が低い人よりも労働能率が低い場合、減額特例が適用される可能性があることが分かります。
障害者枠で収入をアップさせるには
障害者枠で働きながら収入をアップさせようとする場合、基本的には、給与が低くなる要因を減らさなければなりません。具体的には、専門的な知識やスキルを身につける必要があります。
勤続年数が重要な昇格については、とにかく辞めないことが重要。
しかし、無理をして体調を崩してしまっては元も子もありません。まずは知識とスキルの向上で昇給を目指すほうが現実的です。
昇給を狙う以外の方法では、障害年金を受給することも収入アップにつながります。
資格を取って賃金をアップさせる
給与をアップさせる方法の1つに、資格取得があります。企業によっては、資格をとることで資格手当がもらえるからです。
資格手当がどのような形でもらえるのかは会社によって異なります。
一時金としてもらえる場合は、一時的な収入アップにとどまりますが、もし毎月の給与に上乗せされるのであれば、毎月の収入がアップします。
また、新しい知識や技術が身につくので、仕事の幅が広がり、より給与の高い職務に就ける可能性もあるでしょう。
専門的スキルを磨いて労働能率を上げる
給与をアップさせるもう1つの方法は、職務に必要な特定のスキルを磨くことです。スキルを磨けば労働能率も上がり、昇給のチャンスがあるでしょう。
あるいは、現在最低賃金の減額特例の対象となっている場合、その対象から外れることができるかもしれません。
障害年金を受給する
給与をアップさせる以外の方法では、障害年金の受給によって収入を上げる方法もあります。
特定の条件を満たす必要があるため、自分の努力でどうにかなるものではありませんが、もし認められれば生活は少し楽になるでしょう。
たとえば、障害基礎年金で障害の程度が2級と認定されれば、月額約6万5,000円が支給されます(2019年4月時点)。
受給が可能かどうかの審査では、主に以下のことが判断材料になります。
- 障害の原因となった病気や怪我の初診日はいつか
- 障害認定日はいつか
- 障害の程度
- 保険料の納付状況
- 世帯の収入額
書類の提出から審査結果が通知されるまでの目安は3か月なので、もし受給できる可能性が高くても、3か月間は障害年金に頼れないことに注意してください。詳しくは、年金事務所や年金相談センターに問い合わせを。
【参考】
「障害年金ガイド」┃日本年金機構