【相談支援・就労選択支援】どうなる?令和6年度報酬改定の方向性と新設される仕組み


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2023年12月、令和6年度障害福祉サービス等の報酬改定に向けた基本的な方向性が発表されました。大きな方向性は障害者の地域生活移行促進に向けた支援体制の整備ですが、障害のある方ご自身による意思決定の支援、各事業所の業務効率化なども重視されています。また、今後始まる就労選択支援の対象者、実施主体の要件なども示されました。

今回は、相談支援事業や新設される就労選択支援制度に関わる項目をお伝えします。

基本は障害者の意思決定支援と業務効率化

相談支援と就労選択支援において重要となる方向性は、障害者自身の意思決定支援と業務効率化です。また、管理者のテレワークについても、方針が伝えられました。

障害者の意思決定支援を推進

相談支援およびその他の障害福祉サービス事業などの指定基準において、障害のある方ご自身の意思決定を支援することが、今後さらに重視されます。これを受けて、意思決定支援ガイドラインの内容が指定基準に反映されることが発表されました。

個別支援会議においても、やむを得ない事情がある場合を除き、障害者ご本人の参加が原則化されます。支援の方向性、内容等について、ご本人の意向等をていねいに確認しましょう。

管理者のテレワークが可能に

コロナ禍を受け、障害福祉サービス等の事業者でもテレワークが選択肢に入る場面がありました。また、福祉分野での人材不足等が原因で、なかなか柔軟な対応が難しいケースも見られます。

こうした事情から、支援が必要な方へ求められる支援を行えるよう、管理上の支障がなければ管理者のテレワークを認める方向で調整が行われています。

管理者以外の職種については、今後の検討を経て、テレワークを可能とする具体的な考え方を示すとのことです。

各種様式等の簡素化・標準化

地方公共団体および事業所の事務処理の負担を軽減し、業務効率化につなげるため、類型ごとの各種様式等が標準化される見込みです。

今後のスケジュールては、令和5年度中に各種様式の標準様式等を作成、令和6年度以降に標準様式の等の使用を基本原則化するとのこと。具体的な時期については、様式の普及状況を踏まえて検討するとしています。

相談支援事業の方向性

相談支援事業の今後の方向性として大きな要素は、相談支援員に社会福祉士や精神保健福祉士が加えられること、オンライン面談への加算が行われることなどでしょう。課題が大きい離島や過疎地での支援についても、ICT活用による柔軟な取扱いが認められます。

社会福祉士・精神保健福祉士も「相談支援員」に

今回の報酬改定にあわせ、相談支援員の指定基準が見直されます。

見直しの対象となるのは、機能強化型の基本報酬を算定している相談支援事業所。その中で、主任相談支援専門員の指導や助言を受ける体制が確立されている場合に、常勤専従の社会福祉士または精神保健福祉士を支援相談員とすることができるようになります。

こうした支援相談員の業務で想定されているのは、以下の3つの業務です。

  • サービス等利用計画の作成
  • 障害児支援利用計画の原案の作成
  • モニタリング業務

迅速な体制移行ができるよう、これらの業務について現段階から研修等を実施してもよいでしょう。

ICT活用によるオンライン面談等にも加算

感染症流行や人材不足という課題の中、あるいは外出困難な利用者のために、オンライン会議ツールなどで臨機応変に対応してきた事業所が見られます。今回の関係団体ヒアリングにおいて、ICT活用による遠隔での支援を加算対象とするよう要望が出ていました。

12月に発表された方針では、要望にあるICT活用の重要性が認められ、かつ業務効率化という観点からも、オンラインによる面談が加算可能にすることが示されました。適用されるのは、「初回加算及び集中支援加算の要件である利用者の居宅訪問の一部」です。ただし、月1回は対面による訪問を行うことが条件となっています。

さらに、離島や遠隔地など、特別地域加算の対象となっている地域についても、基準や報酬算定におけるICT活用施策について、柔軟性を高める考えです。具体的には、都道府県と市町村が認めた場合、規定よりも柔軟な取扱いが可能となります。それぞれの地域に合わせた支援を、より行いやすくなることが期待されます。

就労選択支援の方向性

新設される就労選択支援制度については、その対象者、実施主体の要件、支給期間などが示されました。

対象者・実施主体の要件と報酬体系

まず、就労選択支援を受けられる対象者は、次の3パターンがあります。ただし開始時期が異なり、最も早いのは令和7年10月以降から始まる就労継続支援B型の利用申請者となる予定です。

【就労選択支援の対象者】

開始時期 対象者
令和7年10月以降 就労継続支援B型の利用申請者

※申請前に原則として就労選択支援を利用

令和9年4月以降 新たに就労継続支援A型の利用を希望する者

就労移行支援における標準利用期間(2年)を超えて利用したい者

※原則として就労選択支援を利用

就労選択支援を実施できるのは、

  • 就労移行支援事業所
  • 就労継続支援事業所
  • 障害者就業・生活支援センター事業の受託法人
  • 自治体が設置する就労支援センター
  • 人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)による障害者職業能力開発訓練事業を行う機関

などです。

その上で、実施主体には障害者の就労支援に一定の経験と実績があり、地域の就労支援で重要な社会的資源、雇用事例などについてきちんと情報提供ができることなどが求められます。

さらに、就労選択支援を行う事業所には、就労選択支援員が配置されなければなりません。就労選択支援員とは、就労選択支援員養成研修を修了した支援員のこと。この養成研修を受講するには、JEEDが令和7年度から始める「基礎的研修」を修了し、かつ就労支援について一定の経験を持っている必要があります。

【就労選択支援員の要件】

  • 「基礎的研修」を修了している
    ※令和9年度末までは経過措置として、現行の就労アセスメントの実施等について一定の経験を持ち、基礎的研修と同様以上の研修を修了した者もOK
  • 就労支援に関して一定の経験がある
  • 「就労選択支援員養成研修」を修了している

なお、就労選択支援自体は、後で述べるように1〜2か月の短期間の支援となります。そのため、個別支援計画の作成は求められず、サービス管理責任者の配置も不要です。就労移行支援事業所や就労継続支援事業所が本サービスを一体的に実施する場合は、就労移行支援等の職員と管理者が、就労選択支援員を兼務することもできます。

就労選択支援の報酬体系は、就労移行支援事業と同じです。サービスの提供日に応じた日額報酬が基本報酬となります。

支給決定期間と中立性の確保

就労選択支援の支給決定期間は、原則として1か月です。もし1か月以上の継続的な作業体験を行う必要がある場合は、2か月とすることもあります。ただし、アセスメントにおける「作業場面等を活用した状況把握」は、原則1か月の支給期間であることから、「2週間以内」が基本とされます。

就労選択支援は、就労移行支援や就労継続支援、その他の障害福祉サービス等と一体的に実施することが可能です。しかし、アセスメントや支援においては、中立性が確保されなければなりません。この点を考慮し、報酬告示や指定基準には、次の内容が規定される予定です。

【就労選択支援の中立性確保】

  • 自法人が運営する就労系障害福祉サービス等へ誘導しない仕組みをつくる
  • 必要以上に就労選択支援サービスを実施しない仕組みをつくる
  • 障害福祉サービス事業等からの利益収受を禁止する
  • 本人へ提供する情報に偏りや誤りがないように仕組みをつくる

以上を踏まえて、就労選択支援は計画相談事業と連携し、障害のある方の就労に向けた取り組みを適切に支援していくものとされています。

就労選択支援のその他のポイント

就労選択支援の利用は、就労継続支援B型の利用申請前、新規に就労継続支援A型の利用を希望する時、就労移行支援を2年を超えて利用したい時が原則となります。

この他、特別支援学校においても、就労選択支援を利用できる見込みです。

【特別支援学校における就労選択支援の実施】

  • 3年生以外の特別支援学校高等部の各学年で実施OK
  • 在学中に複数回実施OK
  • 職場実習のタイミングでも実施OK

また、就労選択支援の実施主体以外が実施した同様のアセスメントについても、作業場面等を活用した状況把握と同様のアセスメントなどを就労選択支援で活用できます。

今後の制度変更に向けて準備を

相談支援員に社会福祉士や精神保健福祉士が追加されること、オンライン面談への加算が行われること、そして就労選択支援が新設されることなど、相談支援や就労選択支援を行おうとする事業所では、適切な支援に向けた仕組みづくりが求められるでしょう。

JEEDで開始される基礎的研修の受講や、要件で指定された研修の受講、環境整備など、今後の事業展開に向けて、必要な体制の再確認と整備を進める必要があります。

報酬改定に向けた具体的な内容は、2024年2月に改定案としてとりまとめられる予定。3月に関係告示の改正などが行われる見込みです。

【参考】
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の基本的な方向性について|厚生労働省
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた検討の進め方(案)|厚生労働省

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