【合理的配慮好事例・第26回】どうする災害発生時?事前のマニュアル作成・環境改善・役割分担を


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災害発生時、従業員の方々はどのように行動すべきか理解していますか。そして、事業所は安全に避難できるよう環境整備されているでしょうか。災害発生時に向けた対策では、実際にその環境や方法で従業員が安全に避難できるかどうかが重要です。今回は、障害者雇用を進める企業における、災害発生時の対応や安全な移動を実現するための施策をご紹介します。

災害に備えた施策では基本知識・行動の習得が第一

地震や台風などで多くの災害が発生する日本。災害発生時、高齢の方や障害のある方など、移動や情報の獲得・把握に困難がある方の場合、早めの避難と他者による避難支援が重要です。これは、障害者を雇用する事業所でも変わりません。

JEEDが公表した「障害者の労働安全衛生対策ケースブック(令和3年度)」には、災害発生時の適切な行動につなげるためにどのような準備や訓練が必要かを紹介する事例が掲載されています。

今回は、その中から基本知識や基本行動につながる3社の施策をご紹介しましょう。

基礎知識と安否確認システムの浸透へ(株式会社ニッセイ・ニュークリエーション)

株式会社ニッセイ・ニュークリエーションでは、災害時に従業員それぞれがどのような対応をとるべきか、十分に理解が進んでいないという課題がありました。

具体的には、

  • 導入している安否確認システムで安否状況を報告できない従業員がいる
  • 災害発生時に適切な避難行動をとれない従業員がいる
  • 災害に関する基礎知識の不足が見られる

といった課題です。

こうした課題の解決に向けて行ったのは、防災訓練の他に「身を守る行動訓練」「安否確認訓練」でした。

行動訓練と安全確認訓練では、

  • 緊急地震速報の理解
  • 身を守る行動
  • 車椅子使用従業員や聴覚障害のある従業員への補助
  • 安否確認システムの定着

をポイントに、年2回の訓練を実施しました。

さらに、「危機管理委員会」が中心となって「災害対策マニュアル」や「災対ブック」も作成・配付。これらのマニュアルや冊子は、災害の基礎知識、基本行動を分かりやすくまとめたものです。イラストなどを用いて行動のイメージを掴みやすいよう工夫されており、災害時に必要となる重要な電話番号などが目立つ色で大きく記載されています。

こうした具体的な課題に対してポイントを押さえた施策の効果は、避難訓練で明らかになりました。対策後の避難訓練では、ほぼ100%の従業員が適切な行動をとれるようになったのです。ヘルメットの着用、机下への避難、周囲の車椅子使用の従業員や聴覚障害のある従業員に対する支援などもスムーズに行われました。

課題のひとつだった災害発生時に用いる安否確認システムについても、全従業員が適切に活用できるようになりました。

安全な動線確保と現場の役割分担(オムロン太陽株式会社)

オムロン太陽株式会社で抱えていた課題は、災害時の動線確保など職場環境の整備や、災害発生時の指揮命令系統などでした。障害のある従業員も含めた全員がスムーズに避難するために、安全な移動と役割分担は不可欠です。

まず職場環境改善として行ったのは、日頃から事業所内の通路を幅1.2mほどとし、車椅子の従業員がスムーズに移動するための動線を確保すること。通路には車椅子のタイヤがパンクしないよう、「部品を通路内に落下させない」「物品の仮置きもしない」というルールを定め、月1度の5Sパトロール活動によって徹底しました。

指揮系統や役割分担については、自衛消防隊として組織されている7班に役割分担を行い、それぞれに班長・副班長等を決めて、役割を確認しました。これによって、災害時に誰に指示を仰ぐか、誰が何をすべきかを明確にしています。

さらに、スムーズな避難できるように「津波発生の有無」「火災発生の有無」等の避難場面をいくつか想定した上で、避難行動のフロー図も作成しました。

こうした施策の結果、年2回実施する避難訓練では効率的な避難ができるようになり、想定される津波到達時間(30分)に近い30分27秒で避難完了できるまでになったとのこと。今後の継続的な訓練で、より素早い避難も可能になりそうです。

電力要らず!蓄光テープがヒヤリハットを解決(株式会社サンキュウ・ウィズ)

株式会社サンキュウ・ウィズでは、従業員が停電時に備品等や設備と衝突する危険があるという課題がありました。特にパソコンやiPhone等の設定を行う作業室には、複数のデスクトップパソコン等の在庫が保管されており、停電時にぶつかってケガをする恐れがあったのです。しかも、椅子や台車など、場所が頻繁に変わる物については、パソコン等の置き場所が決まっている物よりも、ぶつかって転倒する危険性が高くなります。

これを解決するために行ったのが、さまざまな場所や物に蓄光テープを貼るという施策です。蓄光テープは暗くなっても電力なしで光るため、その光を頼りに動線が見えるのです。

  • 机や棚のへりに蓄光テープを貼る
  • 引き戸には開閉方向が分かるよう矢印状に蓄光テープを貼る
  • 壁にかけているヘルメットに蓄光テープを貼って見つけやすくする
  • 頻繁に位置が変わる椅子や台車等にも蓄光テープを貼り、移動時にぶつからないようにする

といった具合に、停電時の安全な移動につながる場所や物の位置を光の形や位置で把握できるようにしました。

停電時は「見える」ということが大きな安心感を与えます。実際に避難訓練でも、蓄光テープによって物の位置や方向が分かることで、従業員全員が混乱なく安全に作業室から避難できるようになりました。

加えて、蓄光テープには「安価で故障がない」「蓄光テープの貼り付けを障害のある従業員の担当業務にできる」という大きなメリットがあります。自ら蓄光テープを貼ること、それを現場で見ることで、日頃の安全に対する意識も高まりました。

災害対策ポイントをもとに避難訓練でチェックを

今回ご紹介した3社の事例だけでも、災害の備えとしてできる施策が多くあることが分かります。まずは、災害や災害時の対応に関する基礎知識やルールづくり、職場環境改善などを行うことが大切。それらの対策をまとめると、下図のようになります。

事業所における災害への備えがどれほど有効かを測るひとつの方法は、定期的に実施する避難訓練でしょう。避難にかかる時間を計測するとともに、安全な動線の確保、車椅子等を利用する従業員への支援、効果的な指揮系統や役割分担がうまくできているかなども、訓練の振り返りでチェックしてみてください。訓練の結果をそれまでの訓練結果と比較することで、より改善が必要な点が見えてくるかもしれません。

【参考】
障害者の労働安全衛生対策ケースブック(令和3年度)|JEED

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