2024/10/29
ニューロダイバーシティとは?職場での推進メリットや企業での活用事例
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「ニューロダイバーシティ」という考え方が、近年多様性の新たな側面として注目されています。この概念は、発達障害や神経の違いをもつ人々を「独自の強みをもつ個人」として捉えることを意味します。
特に、職場におけるニューロダイバーシティの推進は、創造性や問題解決力の向上に寄与し、競争力を高める要素とされています。
本記事では、ニューロダイバーシティの基本的な考え方や職場での推進メリット、さらに活用して成功している企業の事例について詳しく解説します。
もくじ
ニューロダイバーシティとは?
ニューロダイバーシティとは、脳や神経の動きに個々の違いがあることを認め、尊重する考え方です。脳・神経を意味する「Neuro」と、多様性を意味する「Diversity」を合わせた言葉です。
発達障害や学習障害、自閉スペクトラム症などは、単に特定の「障害」ではなく、異なる認知スタイルやスキルセットとして理解されるべきだという視点に基づいています。従来の障害者支援が強調していた「治療」ではなく、多様な認知スタイルや能力を受け入れ、活かすことを目指しています。
ニューロダイバーシティは、特に職場や教育現場で注目されており、多様性を活かすことで、組織全体の創造性や生産性が向上すると期待されています。また、ニューロダイバーシティのアプローチは、より包括的で公平な社会の実現にも貢献しています。
経済産業省による「ニューロダイバーシティ」に関する取り組み
経済産業省は、企業がニューロダイバーシティを経営に取り入れられるよう、さまざまな取り組みを進めています。
特に力を入れているのが、デジタル分野における発達障害者の雇用です。近年では、自閉症やADHDをもつ人々がIT分野未経験者が基礎業界で高い適性を発揮し、企業の成長に寄与する事例が増えています。
経済産業省は、この動向に基づき、企業がニューロダイバーシティを活用するための方法をまとめたレポートを発表。また、ウェビナーの開催を通して、企業に向けた情報発信を行い、職場環境の整備や障害に対する偏見の軽減に向けた啓発活動を進めています。
ニューロダイバーシティの現状
ニューロダイバーシティの現状は、一定の関心が高まりつつあるものの、認知度や理解においてはまだ課題が残されています。
Meltwaterが2024年6月に実施した調査では、日本国内におけるニューロダイバーシティに関連する投稿は約13万8,000件に上り、特に掲示板やX(旧Twitter)で多く言及されています。割合としては、Yahoo!知恵袋・2ちゃんねるなどの掲示板が全体の49.82%を占め、次にXが29.93%を占めるなど、オンライン上では活発に論議されています。
しかしながら、武田薬品が2023年1月に実施した調査によると、ニューロダイバーシティという言葉を知らないと回答したオフィスワーカーが60.5%と多数派で、依然として多くの人にとっては馴染みのない概念であることがわかります。
これらの調査結果から、ニューロダイバーシティを推進するための取り組みは、今後さらに強化されていく必要があると言えます。
ニューロダイバーシティを推進するメリット
職場においてニューロダイバーシティを推進することで期待される主なメリットを3つ紹介します。
- イノベーションの多様化
- 職場環境の改善と包容力の向上
- 雇用の多様化と社会的責任の遂行
イノベーションの多様化
職場にニューロダイバーシティを取り入れることで、組織内に多様な視点がもたらされ、新たなアイデアの創出が期待できます。異なる神経特性をもつ人々は、従来の枠にとらわれない発想や問題解決法を生み出すことに長けており、企業のイノベーションを加速させます。
また、彼らの得意分野を活かしたアプローチが、従来の方法では見落とされていた新しい市場機会や解決策を発見する力になることも。こうした多様な能力が融合することで、チーム全体の創造性が高まり、企業の競争力向上に貢献します。
職場環境の改善と包容力の向上
ニューロダイバーシティを推進することは、職場環境の改善や包容力の向上につながります。
異なる特性をもつ人々が働きやすい環境を整備することによって、すべての従業員が自分の能力を発揮できる職場が実現します。多様なコミュニケーションスタイルや思考法を理解し、お互いに尊重し合うことで、組織全体のチームワークが向上し、個々の意見が反映されやすくなります。
このように、包括的な職場文化が形成されることで、社員のエンゲージメントが向上し、長期的な職場満足度と生産性の向上にもつながります。
雇用の多様化と社会的責任の遂行
ニューロダイバーシティを推進することは、社会的な公平性を実現し、企業が多様な人材を雇用する基盤を築くことにもつながります。
障害の有無にかかわらず、それぞれの特性に合わせた採用プロセスや職場環境を提供することで、より広範な才能を見つけ出し、最大限に活かすことが可能です。企業が多様な人材を雇用することで社会的な責任を果たすと同時に、社員の多様な背景や視点を活かして組織の柔軟性を高めることができます。
これにより、持続可能な成長が促進され、企業の社会的評価も向上します。
ニューロダイバーシティを取り入れる企業の事例
続いて、実際にニューロダイバーシティに取り組んでいる企業の事例を3つ紹介します。
- 武田薬品工業
- アクサ生命
武田薬品工業
武田薬品工業は、2022年に「日本橋ニューロダイバーシティプロジェクト」を発足しました。当プロジェクトは、発達障害を含む脳や神経の多様性を尊重し、インクルーシブな社会を目指す取り組みです。
東京日本橋を拠点に、企業や団体との連携を通じてさまざまな取り組みを積極的に展開し、ニューロダイバーシティの認知拡大を推進しています。
その活動の一環として、武田薬品工業は特設ページの公開や啓発冊子の配布、ワークショップの開催などを実施。ニューロダイバーシティに関する社会の理解を深め、多様性を活かした職場づくりの促進に大きく貢献している事例の一つです。
アクサ生命
アクサ生命は、「インクルージョン&ダイバーシティ」を全社的な経営課題として掲げ、従業員が多様性を尊重し活躍できる環境づくりを推進しています。
具体的には、応募時に性別や顔写真の提出を求めないなど、先進的な取り組みを実施。障害者や外国人、LGBTQ+当事者を含むすべての従業員が差別なく働ける環境整備に力を入れています。
その結果、実際にアクサ生命には障害者を含む多様な人材が多く入社しており、それぞれの能力と個性を発揮して職場で幅広く活躍している実績があります。
また、経営トップのリーダーシップによるトップダウンと、現場の現状・課題を経営軍に伝達するボトムアップの両システムが上手に機能している点も特徴的です。CEOから従業員までが多様性を尊重する職場環境づくりを強く意識することによって、真のインクルージョン&ダイバーシティが実現しています。
Google社は、神経多様性をもつ人々の職場での活躍を支援するために、「Google Cloud 自閉症キャリアプログラム」を立ち上げました。
当プログラムでは、スタンフォード大学の専門家と協力し、自閉症をもつ人々が職場での成功を目指すための支援を提供しています。
Google社は、500人以上のマネージャーや採用担当者を対象に研修を実施し、すべての人にとって公平な採用プロセスを実現するための手法を導入しています。たとえば、合理的な配慮として、面接時間の延長や事前の質問提供などを行い、候補者が公平なチャンスを得られるよう務めています。
まとめ
本記事では、ニューロダイバーシティの概念と職場での推進メリット、さらに先進企業の取り組み事例について紹介しました。
ニューロダイバーシティに取り組むことで、企業は多様な視点をもつ人材を得られるだけでなく、包摂的な職場環境を作り出し、長期的な成長を目指すことができます。これにより、従業員が個々のニーズに合わせて柔軟に働ける環境が整い、新たなアイデアやイノベーションを促進する基盤がつくられます。
企業の持続的成長には、ニューロダイバーシティの理解と実践が今後ますます重要な要素となるでしょう。
※本記事は提供いただいた寄稿記事です。