特例子会社を設けずインクルーシブを推進—三井化学グループの障害者雇用


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障害者雇用推進の1つの手段として設置される特例子会社。障害をもつ社員が働きやすいよう、人材や施設・設備を集約することを目的とするのが一般的です。しかし、三井化学グループでは、あえて特例子会社を設けず、それぞれの配属先でインクルージョンを進めています。

2019年10月にV500へ参加

職場における障害者の活躍推進に取り組む中で、三井化学グループは2019年10月に「The Valuable 500」(以下、V500)への参加を表明しました。V500は2019年1月に世界経済フォーラム年次総会で発足した、障害者の活躍推進に取り組む国際イニシアチブです。

V500への参加にあたって三井化学グループが発表したコミットメントは4つあります。

<三井化学グループのコミットメント>

  • 障害のある社員の全従業員に対する比率を全社目標として定めます。
  • 障害や病気を持つ社員が組織の一員としての実感を持ちつつ、個々の能力を発揮できる職場風土の醸成に取り組みます。
  • 事業活動を通じて、人々が健康的で自立した生活を送るための社会課題の解決を目指します。
  • SNS等を活用し、我々の取り組みを積極的に発信します。

コミットメントの中から、障害や病気をもつ社員が働くための取り組みと、社会貢献に関する取り組みを見てみましょう。

【参考】
三井化学グループ、「The Valuable 500」に加盟|三井化学
The Valuable 500 公式サイト

三井化学グループにおける障害者の活躍推進

三井化学株式会社の障害者雇用率は、2019年で2.3%。障害をもつ社員が組織の一員であるという実感を持ち、スキルを向上させながら生き生きと活躍できる職場づくりを目指しています。そのため、特例子会社ではなく社内の各部署で障害をもつ社員が働いているのが特徴です。


出典:三井化学グループ ESGレポート2020|三井化学

障害をもつ社員の配属・定着支援・制度

まず配属時には、所属する職場の業務内容や職場環境、メンバーを検討し、障害をもつ社員それぞれに合った職場への配属を心がけています。

受け入れる職場では「障害理解教育」を実施。さらに、採用後一定期間を「インキュベーション期間」として、職場環境への適応・業務の習熟支援期間としています。一定の業務に慣れたあとも、障害をもつ社員それぞれの特性に合わせたスキルアップをサポートしているため、自身の成長も感じられる体制となっています。

その後の定着支援では定期的な面談を行い、障害をもつ社員と上司の双方から働く上での悩みや困りごとをヒアリング。面談の内容は職場環境と働き方の改善に反映され、安全に働ける職場づくりが進められてきました。

実際に発達障害をもちながら働く方は、上下・役職を問わず職場の方と話しやすいと語ります。特性上、急な状況の変化に対応するのが得意ではないため、定型的・長期的な観測を行って集計する作業等が担当業務です。

業務量に余裕もあり、落ち着いて作業ができるとのこと。体調がよいときは細かな業務改善を手伝うこともあります。わからないことも聞きやすい雰囲気で、安心して働ける環境のようです。

社内での勉強会や研修を実施

障害をもつ社員が職場で活躍するには、周囲の理解やスキルアップ支援が欠かせません。三井化学グループでは、そうした課題への対応として複数の勉強会や研修を実施しています。

たとえば、さまざまな個性・特性をもっていたり病気の治療を受けたりしながらでも働きやすいよう、組織風土の醸成を目指して「インクルージョン勉強会」を開催。障害や病気を抱える社員が講師となり、自身の障害や経験について語ります。

社外有識者を講師に招いて行う研修では、「発達障害、うつ」や「多様な障害」をテーマにすることも。障害をもつ従業員を対象としたPCスキルや語学スキルの向上を目指す研修もあります。

【参考】
三井化学グループ ESGレポート2020|三井化学

三井化学グループの社会貢献“ちびっとワンコイン”

障害者の社会参加への支援は、社外に向けても行われています。たとえば、従業員の社会活動参加支援です。

その制度の1つ、“従業員の給与や賞与から本人の希望額を控除し、社会的な活動をしている団体への寄付基金を積み立てる”という制度が2007年11月から始まりました。寄付先は、会員有志で構成する「ちびっとワンコイン運営委員会」が審査・決定します。

2021年8月現在、同制度の重点支援分野となっているのは次の4分野です。

<従業員の社会活動参加支援の重点支援活動分野>

  1. 次世代育成・子どもの命を守る活動
  2. 障害者支援、難病患者に資する活動
  3. 医療・災害体制整備に資する活動
  4. 地球環境を守るための活動

2019年10月時点で会員数は733名。2019年度の積立基金は約370万円となり、「認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワーク」や「公益財団法人 日本補助犬協会」などに寄付されました。

三井化学グループの企業グループ理念と主な事業

三井化学グループは社会への貢献を重視し、これまで培ってきた知識や技術を生かした社会課題の解決に取り組んでいます。主力製品には車の部品に使われる樹脂や紙おむつの材料となる伸縮性のある不織布などがあります。

企業グループ理念とコアバリュー

三井化学グループの企業グループ理念は、「地球環境との調和の中で、材料・物質の革新と創出を通して 高品質の製品とサービスを顧客に提供し、もって広く社会に貢献する」こと。社会貢献5項目として、人類福祉の増進・株主への貢献・顧客満足の増大・地域社会への貢献・従業員の幸福と自己実現を定めています。


出典:企業グループ理念・将来像|三井化学

また、コアバリューとして「Challenge(挑戦)」「Diversity(多様性)」「One Team(一致団結)」を定め、特にDiversityでは女性の活躍推進や障害者の活躍推進をはじめとした多様な人材の採用・育成に取り組んできました。

三井化学グループの人権方針においても、人種、出身国、出身地域、社会的出身、出身階級、家系、宗教、障害、年齢、性別、性的指向、性自認、家庭環境、婚姻の有無、組合加入、政治的見解、その他の差異に基づく差別を禁止。社員のキャリア意識や働き方の多様化への対応を進めています。

主な事業

2021年8月現在、三井化学グループの主要事業には「モビリティ事業」「ヘルスケア事業」「フード&パッケージング事業」「基盤素材事業」の4事業を展開。国内に6つの工場と本社を含む4つの販売拠点があります。

モビリティ事業では車に用いられる樹脂を製造しており、特にPPコンパウンドは高いシェアを誇っています。顧客のニーズに合わせて配合を変え、強度を増したり耐衝撃性を高めたりといったカスタマイズも可能です。さらに、他の軟質樹脂より密度が低く軽い、リサイクルが可能といった特徴をもつ「ミラストマー(R)」を開発。車の窓枠、内装、エアバッグカバー、耐油ブーツなどで使用されています。

ヘルスケア事業では、紫外線から可視光線の420nmまでをブロックする「UV+420cut(TM)」というメガネレンズ用材料を開発・提供。世界で初めて伸縮特性のある不織布の開発もしており、紙おむつメーカーに採用されました。

フード&パッケージング事業には、有機合成技術やフォルム加工技術を活用して、食品や医療包装のヒートシール剤、バイオマス由来の材料で環境負荷を低減できる接着剤の硬化剤を開発・提供する他、農産物の安定生産を目的としたハイブリッドライス「みつひかり」の育成などがあります。「みつひかり」は品質・食味にも優れ、業務用米などさまざまな需要に応えられるお米です。

【参考】
会社概要|三井化学

社内の障害理解を進め、さまざまな配属先での活躍へ

特例子会社を設けず、さまざまな配属先で障害をもつ社員が一緒に働くには、同僚や上司が障害に関する知識を適切に学び、基本的なサポート方法を知ることが大切。三井化学グループのように全社的な取り組みを進めれば、障害をもつ社員自身の特性に応じた業務を担当し、スキルアップも図れます。

必要に応じて就労支援事業所などの外部支援機関と連携をとりつつ、社内のインクルージョンを進めていきましょう。

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