自立支援医療制度とは?法律とメリット、対象疾患・新規申請・更新方法


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自立支援医療制度とは、心身の障害の治療について、その自己負担額を軽減する公的な医療制度です。新規申請、更新や変更の申請では、市町村の担当窓口で所定の様式を入手したうえで必要書類をそろえて窓口に提出します。
自立支援医療制度の活用をご検討中の方は、ぜひ本コラムで概要と対象者、各種手続きのポイントをご確認ください。

自立支援医療制度とは?何に使える?

まずは、自立支援医療制度の概要と根拠となる法律、主なメリットをご紹介します。

自立支援医療制度と法律、制度のメリット

自立支援医療制度の目的は、「心身の障害を除去・軽減するための医療」に関して、その医療費の自己負担額を軽減することにあります。障害者自立支援法(現在、障害者総合支援法)によって定められ、2006年4月から実施されてきました。

自立支援医療制度の基本的な仕組みは、

  • 障害のある患者の負担が大きくなりすぎないよう、所得に応じて1カ月あたりの医療費の自己負担額に上限を設定する
  • 本来の自己負担分(医療費の3割など)と自立支援医療制度によって認められた自己負担上限額の差分は、自治体が負担する

というものです。

自己負担額の上限は「1割」が基本ですが、世帯所得が低い場合や18歳未満の患者の場合、あるいは「重度かつ継続」と呼ばれる条件に当てはまる場合は、「2,000円」や「5,000円」「1万円」といった具体的な金額が定められています(詳しくは後述)。

自立支援医療制度のメリットは、何と言っても治療費の自己負担の軽減ができることです。

大きな治療費や長期間にわたる治療の費用は、家計を大きく圧迫します。自立支援医療制度を活用すれば、そうした負担を和らげ、症状の改善や悪化の予防をしやすくなるでしょう。

金銭面での不安が和らぐことで、生活自体も安定させやすくなります。

自立支援医療制度は何に使える?

自立支援医療制度は、指定自立支援医療機関や指定薬局を利用する際に活用できます。

具体的には

  • 指定自立支援医療機関(病院)での診察料
  • 指定自立支援医療機関(薬局)での薬代
  • 指定自立支援医療機関での精神科デイケア
  • 指定自立支援医療機関での手術、リハビリ
  • 指定自立支援医療機関による往診、訪問看護

などです。なお、入院による治療には適用できません。

制度は対象疾患や患者の年齢から、以下の3つに分類されています。

【自立支援医療制度の分類】

分類 概要
精神通 院医療 精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症、精神作用物質による急性中毒、その他の精神疾患(てんかんを含む)のある人で、通院によって精神疾患に関する医療を継続的に必要とする人が対象。
症状がほぼなくなっている人でも、軽快状態を維持して再発予防のために通院が必要な場合は対象となる。
更生 医療 身体障害者福祉法第4条に規定する身体障害のある人(18歳以上)で、身体障害の除去・軽減のための手術等の治療によって、確実に効果が期待できる人。
育成 医療 児童福祉法第4条第2項に規定する障害児(障害に係る医療を行わないときは将来障害を残すと認められる疾患がある児童を含む)で、その身体障害を除去、軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できる人。

 

簡単にいえば、精神疾患の場合は年齢を問わず精神通院医療に、それ以外は、成人であれば更生医療、未成年であれば育成医療に当てはまるということです。

自立支援医療制度を使うのはどんな人?対象疾患と所得区分

「病気の治療で通院しているけど、自分の病気は支給対象になるのだろうか?」と悩む人は多いようです。実際、「この病気なら確実に対象になる」といえるものもあれば、いえないものもあります。

厚生労働省があげる例は、次のような疾患、治療です。これを目安として、指定自立支援医療機関の医師が医学的見地から診断書や意見書を書くことになります。

【通院医療の精神疾患の例】

「重度かつ継続」に該当する精神疾患
  • 症状性を含む器質性精神障害(アルツハイマー病の認知症など)
  • 精神作用物質使用による精神および行動の障害(アルコール依存症、薬物依存症、ギャンブル依存症など)
  • 統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害
  • 気分障害(うつ病や双極性障害)
  • てんかん
それ以外の対象となる精神疾患
  • 神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害(不安障害、強迫性障害、適応障害など)
  • 生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群(摂食障害など)
  • 成人の人格および行動の障害(人格障害、性同一性障害など)
  • 精神遅滞(知的障害)
  • 心理的発達の障害(学習障害、発達障害など)
  • 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害(多動性障害、チック障害など)

 

【更生医療の障害と治療の例】

障害の種類 治療の例
視覚障害
  • 白内障に対する水晶体摘出手術
  • 網膜剝離に対する網膜剝離手術
  • 瞳孔閉鎖に対する虹彩切除術
  • 角膜混濁に対する角膜移植手術
聴覚障害
  • 鼓膜穿孔に対する穿孔閉鎖術
  • 外耳性難聴に対する形成術
言語障害
  • 外傷性または手術後の発音構語障害に対する形成術
  • 唇顎口蓋裂に起因する音声・言語機能障害があり、鼻咽腔閉鎖機能不全に対する手術以外に歯科矯正が必要な者に対する歯科矯正
肢体不自由
  • 関節拘縮や関節硬直に対する形成術、人工関節置換術など
内部障害(心臓)
  • 先天性疾患に対する弁口、心室心房中隔に対する手術
  • 後天性心疾患に対するペースメーカー埋め込み手術
内部障害(肝臓)
  • 肝機能障害に対する肝臓移植術(抗免疫療法を含む)
内部障害(腎臓)
  • 腎臓機能障害に対する人工透析療法、腎臓移植術(抗免疫療法を含む)
内部障害(小腸)
  • 小腸機能障害に対する中心静脈栄養法
内部障害(免疫)
  • HIVによる免疫機能障害に対する抗HIV療法、免疫調整療法など

 

【育成医療の障害と治療の例】

障害の種類 治療の例
視覚障害
  • 白内障、先天性緑内障に対する手術
聴覚障害
  • 先天性耳奇形に対する形成術
言語障害
  • 口蓋裂などに対する形成術
  • 唇顎口蓋裂に起因する音声・言語機能障害があり、鼻咽腔閉鎖機能不全に対する手術以外に歯科矯正が必要な者に対する歯科矯正
肢体不自由
  • 先天性股関節脱臼、脊椎側湾症、くる病(骨軟化症)などに対する関節形成術、関節置換術、義肢装着のための切断端形成術など
内部障害(心臓)
  • 先天性疾患に対する弁口、心室心房中隔に対する手術
  • 後天性心疾患に対するペースメーカー埋め込み手術
内部障害(肝臓)
  • 肝機能障害に対する肝臓移植術(抗免疫療法を含む)
内部障害(腎臓)
  • 腎臓機能障害に対する人工透析療法、腎臓移植術(抗免疫療法を含む)
内部障害(小腸)
  • 小腸機能障害に対する中心静脈栄養法
内部障害(免疫)
  • HIVによる免疫機能障害に対する抗HIV療法、免疫調整療法など

 

以上は、あくまで目安です。対象疾患の詳細や支給対象となるか否かは、市町村の担当窓口や指定自立支援医療機関の医師にお尋ねください。精神通院医療における「重度かつ継続」も、上の表で示した疾患以外に、高額な費用負担が何回も生じている人は対象となり得ます。

なお、更生医療・育成医療における「重度かつ継続」の範囲は、

  • 腎臓機能障害
  • 小腸機能障害
  • 免疫機能障害
  • 心臓機能障害(心臓移植後の抗免疫療法に限る)
  • 肝臓の機能障害(肝臓移植後の抗免疫療法に限る)

となっています。

所得区分と自己負担額の上限

自立支援医療制度を利用した場合の自己負担額は基本的に「1割」です。ただし、生活保護世帯や市町村民税の非課税世帯には、より負担の少ない上限額が設定されています。

また、市町村民税を納めている世帯でも、育成医療や「重度かつ継続」に該当する場合は、やはり具体的な金額で上限額が定められています。

これらの自己負担額の上限をまとめると、下表のようになります。

【自立支援医療制度における自己負担額】

所得区分 市町村民税 年収目安 更生医療・
精神通院医療
育成医療 重度かつ継続
一定所得以上 23万5,000円以上 約833万円以上 (対象外) (対象外) (特例)
2万円
中間所得2 3万3,000円〜
23万5,000円未満
約400〜
833万円未満
総医療費の1割または高額療養費の自己負担限度額 (特例)
1万円
1万円
中間所得1 3万3,000円未満 約290〜
400万円未満
(特例)
5,000円
5,000円
低所得2 非課税 約290万円未満
低所得1を除く
5,000円
低所得1 非課税 本人又は障害児の保護者の年収80万円以下 2,500円
生活保護 0円

「自立支援医療制度の患者負担の基本的な枠組み」(厚生労働省)から作成

上の表で「特例」と記載されている部分は、2027年3月31日まで適用される「経過的特例」という制度によって上限額が定められているものです。そのため、2027年4月1日以降にこの上限額が適用されるか否かは、今後の厚生労働省における検討結果で変わります。

自立支援医療制度のデメリットは?会社にバレる?

自立支援医療制度を利用する場合、「会社にバレるのでは?」「家計が苦しいことが知られてローンの審査が厳しくなるのでは?」などの不安が聞かれます。結論から言えば、利用する側にとって、会社にバレたりローンの審査が厳しくなったりするといったデメリットはありません。

自立支援医療制度の申請に関わるのは、利用したい本人(代理人や家族)と役所、指定自立支援医療機関のみです。勤務している会社は、従業員が自立支援医療制度を利用する流れには一切関わっていません。

「会社の健康保険の記録でバレてしまうかも」という心配も無用です。病気に関する情報は個人情報にあたり、病院側も健康保険組合側も非常に注意して取り扱っているからです。もし会社から問い合わせがあっても、原則として伝えられることはありません。

同様に、住宅や車を購入する際のローンについても、自立支援医療制度利用の有無自体が審査結果に影響を及ぼすことはありません。審査する側が自立支援医療制度に関わる情報にアクセスする方法がないからです。ローンの審査は、あくまで収入や資産、返済能力を中心に行われます。

就職活動でも「疾患があることが不利になるのでは」と感じるかもしれませんが、自分で履歴書などに記載しない限り、面接官が自立支援医療制度の利用の有無を知ることはできません。

よって、利用する本人にとってのデメリットは、ないといえます。

自立支援医療制度の新規申請に必要な書類

さて、いよいよ申請手続きの話に入りましょう。

自立支援医療制度の申請には、必ず市町村の担当窓口へ行く必要があります。本人が行けない場合は代理人を立てなければなりません。郵送に応じてくれる自治体もありますが、まずは窓口へ電話などで連絡する必要があります。

申請に必要な書類は、どの種類の自立支援医療制度を申請するのか、どのタイミングで申請するのかによってやや異なります。今回は、東京都における精神通院医療で新規申請を行うケースを例に見ていきましょう。

新規申請に必要な基本書類は、以下のものです。

【自立支援 医療制度(精神通院医療)の新規申請に必要な書類】

書類 備考
自立支援医療制度(精神通院)支給認定申請書
  • 区市町村の担当窓口で用紙を受け取る
自立支援医療診断書(精神通院)
  • 区市町村の担当窓口で用紙を受け取る
  • 指定自立支援医療機関で精神医療を行う主治医に記入してもらう(有効期限3カ月)
  • 精神障害者手帳を持っている場合は、手帳のコピーでOK
  • 精神障害者手帳の申請と同時に申請する場合は、手帳用の診断書でOK
  • 「重度かつ継続」で申請する場合は、医師の意見書が必要な場合がある
医療保険の加入関係を示す書類
  • 単身世帯の場合は、本人の保険証のコピーや資格確認書など
  • 家族と同居している場合は、家族全員分の保険証のコピーや全員分の資格確認書など
世帯の所得状況などが確認できる書類
  • 生活保護や支援給付を受給している場合は、福祉事務所の証明書・保護決定通知書または支援給付決定通知書のコピーなど
  • 非課税世帯の場合は、非課税証明書・標準負担額減額認定書など
  • それ以外の場合は、区市町村民税の課税証明書
マイナンバーを確認できる本人確認書類
  • マイナンバーカード1枚でOK
  • マイナンバーカードがない場合は、マイナンバーの「通知カード」と、運転免許証や精神障害者手帳でOK
  • 「通知カード」がない場合は、マイナンバーが記載された住民票の写しや住民票記載事項証明書の提示でOK

以上のような窓口で指定された書類をそろえたら、一式を窓口に提出しましょう。
提出された申請書類は、東京都の場合「都立中部総合精神保健福祉センター」へ送られ、そこで支給認定と受給者証の発行が行われます。

受給者証は、区市町村の窓口を通じて利用者に支給されます。月額負担上限額が具体的な金額で設定されている場合は、上限額管理票も渡されるため、受給者証と一緒に保管してください。

申請から交付までは、2か月〜2か月半かかるとされています。精神障害者手帳との同時申請をする場合は、さらに時間を要する可能性がありますので、必要な時期から逆算して早めに申請を済ませましょう。

指定された医療機関を利用する際は、この受給者証(持っていれば上限額管理票)を持って行き、医療機関の窓口に渡してください。

更新・引っ越し・病院変更などで必要な手続き

自立支援医療受給者証の有効期間は、1年間です。そのため、利用を継続するには、毎年更新申請が必要となります。

ほかにも、引っ越しなどによる住所変更、病院変更、薬局変更、あるいは就職などによる保険証の変更がある場合は、区市町村の窓口で手続きが必要です。更新申請は、期限の3カ月前から可能ですので、更新期間に入ったらなるべく早めに申請しましょう。

なお、こうした手続きの必要書類は、手続きの内容によって異なりますので注意してください。手続きに必要な用紙は、やはり窓口で受け取る必要があります。

例として、神奈川県相模原市における精神通院医療の各種手続きをご紹介します。

【各種手続きの概要と必要書類】

手続きの種類 必要書類の例
更新申請
  • 自立支援医療費(精神通院医療)支給認定申請書
  • 自立支援医療診断書(精神通院医療用)…2年に1回
  • 医療保険の加入状況がわかるもの
  • 所得の確認ができる書類
  • 今持っている自立支援医療受給者証
  • マイナンバーを確認できる本人確認書類
保険証 の変更
  • 変更のための申請書
  • 医療保険の加入状況がわかるもの
  • 今持っている自立支援医療受給者証
  • マイナンバーを確認できる本人確認書類
病院や薬局の変 
  • 変更のための申請書
  • 今持っている自立支援医療受給者証
  • 新しい病院や薬局の名称と所在地がわかるもの
  • マイナンバーを確認できる本人確認書類
市町村外からの引っ越しによる住所変更など
  • 新しい住所の担当窓口での転入申請
  • 現在の自立支援医療受給者証
  • 変更届(利用する医療機関や保険証に変更がある場合)
  • 新しい医療機関の名称と所在地がわかるもの(利用する医療機関に変更がある場合)
  • 医療保険の加入状況がわかるもの(医療保険の内容に変更がある場合)
  • マイナンバーを確認できる本人確認書類

上の例は、相模原市における基本的な必要書類です。詳しくは、お住まいの区市町村の担当窓口でご確認ください。

安定した生活に向けて自立支援医療制度の活用を

病気の治療で金銭的負担が大きい場合、お金の心配から無理な働き方をしたり、病気を放置して悪化させたりする例が少なくありません。

自立支援医療制度は、条件に当てはまれば治療にかかる自己負担額を軽減できます。病気の治療には、多くの費用と根気が必要なもの。その負担を和らげるために、公的な支援制度の活用をぜひ検討してみてください。

上手に活用しながら、自分のペースで安定した生活と社会参加の土台を築いていきましょう。

【参考】
自立支援医療|厚生労働省
自立支援医療|東京都
健康・医療・衛生 よくある質問|相模原市

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