2021/12/09
知的障害をもつ社員の生産性が向上、在宅勤務制度導入も—花王グループの障害者雇用
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ドラッグストアに行くと必ず目にする「アタック」や「クイックルワイパー」といった花王グループの商品。花王グループはESG経営や知的障害者の積極雇用でも知られています。2019年には新たなESG戦略を策定し、The Valuable 500にも参加しました。
今回は、花王グループでどのような障害者雇用が行われているのか見ていきましょう。
国際的評価が高い花王のESG経営、2019年から新たな戦略へ
花王株式会社(以下、花王)のESG戦略は世界的に高い評価を受けています。
ESGとは、企業の経営における3つの観点「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」のこと。環境問題への対応や人権を重視した経営、透明性のあるガバナンスを重視するという考え方です。
優れた取り組みを行う企業はESG関連のさまざまな指標で高く評価され、社内外から信頼を得られるとともに、より投資を受けやすくなるというメリットもあります。
花王のESGを意識した経営は国際的に評価が高く、たとえば以下のような指標に毎年連続して選定されてきました。
<花王のESG関連指標での選定実績(一部)>
指標名 | 選定実績 |
DJSI World DJSI Asia Pacific |
2014年以降連続して選定 |
FTSE4Good Global Index | 2008年から連続して選定 |
Ethibel Sustainability Index (ESI) Excellence Global | 2007年以降連続して選定 |
Euronext Vigeo Eiris World 120 Index | 2017年以降連続して選定 |
こうした中で、花王は2019年4月に新たなESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」(キレイライフスタイルプラン)を策定。ビジョン・2030年までの3つのコミットメント・重点取り組みテーマである19のアクションで構成される戦略です。
また、その19個の重点取り組みテーマのうち「ユニバーサル プロダクト デザイン」「人権の尊重」「受容性と多様性のある職場」「人財開発」を推進するものとして、国際イニシアチブである「The Valuable 500」にも参加しました。
The Valuable 500への参加にあたり、花王が発表したコミットメントは以下のようになっています。
<花王のThe Valuable 500におけるコミットメント>(「花王の方針))
- ビジネス・社会貢献
- より多くのお客さまにとってわかりやすく使いやすいユニバーサルデザインの製品やサービス展開を進める
- 障害のある方が、分け隔てなく快適な生活を営めるように、情報のバリアフリーをはじめ、バリアフリーという考え方の理解と共有を図る活動を推進する
- 雇用
- 「障がいのある人もない人も共に働き、共に生きる社会をめざして障がいのある社員も働きやすく、また、働きがいのある職場環境をつくる」という基本方針
- 障害者雇用の拡大と障害をもつ社員の活躍推進に努める
では、花王グループでは具体的にどのような障害者雇用に取り組んでいるのでしょうか?
花王の特例子会社「花王ピオニー」では知的障害者を積極雇用
花王グループには、2005年に設立された特例子会社「花王ピオニー株式会社」(以下、花王ピオニー)があります。
花王ピオニーは2018年度の東京都「障害者雇用エクセレントカンパニー賞」を受賞したことでも知られる会社。100種類を超える製品の箱詰め・検査・梱包を障害者のみで行う生産ラインを実現したことが評価されています。
花王ピオニーでは知的障害者、重度知的障害者を積極採用してきました。当初は他のラインの半分程度の生産量を目標にしていたものの、1年も経たないうちに障害のない社員と同等の生産量を実現。今では、平均で1日に約1万個、単品生産では5万個という実績もあるといいます。
花王ピオニーの代表取締役社長・荒井一雄さんは、2013年のインタビューで「作業特性×人員配置×チームワークの方程式」が重要であることを強調。「個人の能力を見極めて、得意な作業に配置すること、一人ひとりがお互いの作業を配慮して仕事を進めることで、生産性が飛躍的に上がる」と述べました。
2017年にオフィスサポート部門も立ち上げ、同社での従業員数は障害のある社員57名を含む73名となっています(2021年1月時点)。
花王におけるD&I啓発活動と社内制度
花王の障害者雇用は花王ピオニーだけではありません。
グループ会社での障害者雇用も進んでおり、日本における障害者雇用率は2020年6月時点で、日本花王グループ全体で2.61%、花王株式会社で2.71%(当時の法定雇用率は2.2%)です。
障害者雇用の推進と定着にあたり、花王グループではさまざまな取り組みを行ってきました。
毎年の「障がい者理解促進月間」と2020年「Diversity推進ミーティング」
まず社内の啓発活動としてあげられるものに、毎年9月の「障がい者理解促進月間」があります。
9月は全国でも「障害者雇用支援月間」となっていますが、特に花王グループでは関連情報を共有するとともにイントラネットのニュースレター配信などを実施。障害の理解促進に向けたセミナーや知的障害がある社員との合同研修会も開催しています。
さらに、2020年には「Inclusion推進計画」を策定。花王のD&I推進部が推進主体と取り組みを進めています。
特に2020年は、大テーマ「D&I 視点の人材開発(採用、評価、教育、登用等)」のもとに、障害のある社員と女性社員にフォーカスした「Diversity推進ミーティング」を開催。花王各部門や国内グループ会社の人事責任者・キャリアコーディネーターと全16回の個別セッションをとおして、意見交換を行いました。
今後は「Diversity推進ミーティング」をD&I推進部と各組織との間の定期的な意見交換の場とし、連携を強化していく予定です。
障害者雇用の理解促進や職場環境改善にICTツールを活用
コロナ禍の影響で集合研修が難しくなったことをきっかけに、オンライン会議ツールを活用した啓発活動も進めてきました。
障害をテーマとしたセミナーでは基礎知識の習得と理解促進を目的とし、小テーマごとに5〜7分程度の短い動画を配信。スキマ時間に視聴できる、分かりやすいといった点が社員から評価されています。
さらに、「障がい者雇用ガイドブック」「障がい理解シート」といった各種ガイドラインやハンドブックの情報により簡単にアクセスできるよう、D&Iポータルサイトの全面的リニューアルも実施しました。
聴覚での情報把握が困難な従業員に配慮した音声文字化ソフト「UDトーク」も導入済みです。
障害者雇用推進と職場定着のための社内制度
啓発活動とともに、働きやすい職場の実現にも務めています。
全国の拠点には相談窓口となる「障がい者サポーター」を配置し、毎年1回「障がい者サポーターミーティング」を開催。サポーターのスキルアップと体制強化を進めてきました。
障害をもつ社員に対しても毎年アンケートを実施して障害の状況や職場で困っていることについて確認。アンケート結果に基づき、必要に応じて社内関係者と連携し解決を支援しています。
勤務制度では、フレックスタイム制や時間単位休暇などを活用できます。
<花王の勤務制度(一部)>
フレックスタイム制 | l 事由は問わない
l 一部交替・シフト勤務者を除く全社員に適用 l フレキシブルタイム(7時〜20時)、精算期間1か月、コアタイムなし |
時間単位休暇 | l 年間5日分を上限とする年次有給休暇を時間単位で取得可能
l 利用に際しての事由は問わない |
私傷病特別休暇 | l 自分の私傷病で利用できる特別休暇
l 原則として8日以上の休業を要する場合に利用可能 l 年間40日または20日付与 |
また、2020年のコロナ禍以降、事務系の業務を担うなどの一部の社員は在宅勤務もできるようになりました。
花王グループの企業理念と主な事業
洗剤、化粧品、ヘアケア用品など、花王グループの商品は私たちの日常の一部です。花王グループは2021年1月に一部事業再編を行い、目下ESGを意識した経営・事業の展開に注力しています。
花王グループの企業理念「花王ウェイ」
花王グループの企業理念は「花王ウェイ」です。花王ウェイには「使命」「ビジョン」「基本となる価値観」「行動原理」が含まれます。
「使命」は、「消費者・顧客の立場にたって、心こめた“よきモノづくり”を行い、世界の人々の喜びと満足のある豊かな生活文化を実現するとともに、社会のサステナビリティ(持続可能性)に貢献すること」です。暮らしに役立つ商品と工業用製品の両方において、価値ある商品とブランドを提供するとしています。
「基本となる価値観」では3つの大きな項目を設定。全社員が創造性と力を結集して「よきモノづくり」を続けること、常に商品と仕事の改善・革新を進めていくこと、組織ならびに個人として敬意・公正・誠実・勤勉を大切にし、法と倫理を遵守し、社会的責任を遂行することを掲げています。
また、花王グループは2009年度に発表したコーポレートスローガンを「きれいを こころに 未来に」に改訂しました。これには、「地球をきれいに保つこと、危害をきれいに消し去り生命を守ること、皆と笑顔でくらせるきれいな生活に貢献することで、人々のこころ豊かな未来に貢献していく」という思いが込められています。
主な事業
花王グループは大きな分類として「コンシューマープロダクツ事業」と「ケミカル事業」を展開しています。コンシューマープロダクツ事業は2021年1月に、「ハイジーン&リビングケア事業」「ヘルス&ビューティケア事業」「ライフケア事業」「化粧品事業」に再編されました。
2020年度の売上構成比で最も大きな割合を占めたのがハイジーン&リビングケア事業(36.4%)。次に大きな割合となったのはヘルス&ビューティケア事業(26.2%)です。
ハイジーン&リビングケア事業では、ファブリックケア製品、ホームケア製品、サニタリー製品を提供。たとえば「アタック」「ハミング」「キュキュット」といった洗剤や消臭剤の「リセッシュ」、掃除用品の「クイックルワイパー」などがあります。
一方、ヘルス&ビューティケア事業で開発・提供するのはスキンケア製品、ヘアケア製品、パーソナルヘルス製品です。コロナ禍で大活躍している「ビオレ」シリーズをはじめ、歯磨き粉の「ピュアオーラ」、入浴剤の「バブ」、疲れた目や首肩などを温める「めぐりズム」といった人気商品があります。
花王グループの商品はすでに多くの人に評価されています。一方で、中期経営計画「K25」では「未来の命を守る」ことを軸として、新事業の創造や新しい付加価値の提供、人事制度の改革、DXなどにも力を入れていくとしました。
「K25」における具体的な目標としては、
- 二酸化炭素の発生抑制
- 発生した二酸化炭素を触媒技術を用いて原料に転換し、製造に活用
- 感染症対策・予防領域の強化
- 生活者の身体情報から変化を予測し、最も適したソリューションを提供する新たな事業の創造
- 付加価値の再定義と構造改革やDXへの積極的な投資で事業体質を転換
- 挑戦を推奨する組織文化の形成
- 専門性の高い多様な人財が最大限能力を発揮できる土壌づくり
- あらゆるデータへのアクセシビリティ向上とフレキシブルワークの推進
などが設定されました。
近年は企業による環境負荷軽減施策や人権問題への対応を求められることが多いもの。花王グループでは、コンシューマープロダクツ事業の原材料開発も行うケミカル事業において、特に「ESG視点でのよきモノづくり」に取り組んでいます。
【参考】
花王、障がい者の活躍推進に取り組む国際イニシアチブ「The Valuable 500」に賛同|花王
Kao Corporation|The Valuable 500
花王サステナビリティ データブック 2021|花王
障がい者雇用事例/おおつかがゆく!|FVPコーポレートサイト
統合レポート/マニュアルレポート|花王