アビリンピック過去問題|第40回全国(2020)家具・木工


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全国アビリンピックの競技種目「家具」と「木工」では、支給された木材などを用いて指定された作品を製作します。2020年度は昨年度と同じ内容が出題され、ハイレベルな戦いとなりました。それぞれの評価ポイントや課題概要をご紹介します。

2020年度の「家具」「木工」は課題に変更なし、ハイレベルな戦いに

アビリンピック競技種目である「家具」と「木工」は、いずれも支給される木材を使って作品を製作する競技です。「家具」では花台を、「木工」では蓋付き木箱を製作。原則として毎年ほぼ同じ課題内容となっており、作品の質がレベルアップしていく傾向があります。

2020年度大会でも、例年同様の課題が出題されました。「家具」では加工精度がより上がり、4名中3名が時間内に完成。「木工」では効率よく作業を進める選手が多く参加し、14名全ての選手が時間内に作品を完成させました。

「家具」の制限時間・評価ポイント

競技種目「家具」の競技課題は、花台の製作です。特に脚の部分が重要で、正面から見て左右が平行になり、側面から見ると前脚が下側に向かって広がる台形の形状になっていることが特徴。歪みなく正確に前脚の角度を付けられるかどうかがポイントです。

制限時間は、標準時間が5時間30分。標準時間以内に完成しない場合は6時間で打ち切られ、標準時間をオーバーした分が減点されるシステムとなっています。

「家具」の評価ポイントは、

  1. 板と板の接合がきちんとできているか
  2. 角材と角材の接合がきちんとできているか
  3. 4本の脚が傾いたりねじれたりしていないか
  4. 作業手順は適切か
  5. 安全に作業できているか

など。製作中にミスが生じた場合は材料の再支給を受けられるものの、その分減点されますので、十分気をつけて作業を進めましょう。

今大会の講評では、より精度を高めるためのポイントが伝えられました。

  • 墨付け時の現寸図を活用する
  • 接着・組立時の圧締は、端金を必要以上に圧締しすぎない
  • 端金は当て木を併用して矩やねじれを矯正できることも考慮する

など、課題製作に即したアドバイスとなっています。

受賞者は、金賞1名、努力賞1名の合計2名。金賞受賞者は、普段はあまり使わないのこぎりでまっすぐ木材を切ることから練習を重ね、毎年選手たちが苦労する5枚接ぎも何度も練習して精度を高めたとのことです。

2020年度「家具」の変更点

競技種目「家具」の課題内容は例年と同様の内容で実施されました。ただし、課題の注意事項、選手が持参するもの、会場に用意される設備等に若干の追加事項が見られます。

全体の注意事項においては、競技時間内に作品を完成させるよう明記されました。特に、時間管理を行う、昼休憩を接着硬化時間として活用するなど、具体的な助言が記載されています。さらに、「埋め木等は、行わない」という条件も追加されました。

選手が持参するものでは、平かんなと長台かんなの寸法が「65mm程度」と指定されました。平行クランプはこれまで注釈がなかったものの、今回は「Fクランプも可」となっています。その他、「打ちあて」とともに「当て木」が追加され、熱中症対策として「飲料」の持参も追加されました。

会場で用意される設備等については、感染予防対策として、角のみ盤や卓上ボール盤を使用する際の消毒液、ペーパータオル、ゴミ箱が追加されています。

「家具」の課題概要

競技種目「家具」では、支給される材料を使って「花台」を製作します。

接着硬化時間に昼休みを当てることを考えると、午前中のうちに組み立て・接着まで進める必要があるでしょう。そのため、午後の時間は仕上げ作業が中心となります。作品が完成したら、原寸図と一緒に提出してください。

製作にあたっての仕様・手順は、以下のとおりです。

<花台製作の仕様・手順>

項目 内容
原寸図の作成 最初に脚部側面図を描く
甲板1と甲板2の接合 5枚組み接ぎ(上端留め)
前後の脚と幕板の接合 小根付きほぞ接ぎ
前後の脚と貫の接合 二方胴付き
左右の脚と幕板の接合 前後とも、だぼ接合
脚貫とつなぎ貫の接合 片胴付きほぞ
甲板と脚部の取り付け 木ねじ締め。木ねじの下穴加工には卓上ボール盤または電動ドリルを使用
仮組みの検査 甲板1と甲板2、前後の脚と幕板(側)、前後の脚と貫の仮組み調整が終わったら、検査を受ける。その後、組み立て・接着に進む
仕上げ かんな仕上げ(サンドペーパーの使用不可)
各部材の面取り 基本は糸面。図面に指示がある場合は、それに従う

選手が持参するものや支給材料は、以下のようになっています。

<選手が持参するもの>※詳細な条件は公式の過去問題を参照

両刃のこぎり ものさし 端金
胴付のこぎり さしがね 平行クランプ
ほぞびきのこぎり ノギス ドリル刃(だぼ穴用)
平(手)かんな 直角定規(スコヤ) ドリル刃(木ねじ下穴用)
小かんな 自由定規 ドライバー
きわかんな 挽き当て定規 木だぼ(φ10mm)
長台かんな 留定規 角のみ盤用治具
追(大)入れのみ 白書き といし
向待ちのみ 筋けびき 油つぼ
突きのみ(薄のみ) ほぞ(のみ)けびき 直角木口台
かき出しのみ 長さおけびき 打ちあて、当て木
鉛筆・消しゴム 玄のう のりべら
座布団、毛布、敷布等 作業服、作業帽、作業靴 防護眼鏡(防じん用)
飲料

 

<会場で用意される材料>

品名 数量
甲板1 1
甲板2 1
前脚 2
後脚 2
幕板(側) 2
幕板(前) 1
幕板(後) 1
脚貫 2
つなぎ貫 1
原寸図作成板 1
木ねじ 8
接着剤 若干

選手が持参する道具類は、リストにあるもの以外の持ち込みはできません。規格やサイズなど、事前に発表される「競技課題A」に細かく指定されていますので、準備や練習の際に異なる道具を選ばないよう気をつけてください。

競技中に道具類を他の選手と貸し借りすることもできないため、当日は忘れ物がないか十分に確認して持っていきましょう。

なお、事前に自分で書いたメモや参考書等も、競技中に参照することはできません。スマートフォンなどの通信機器も使用不可ですので、作業手順等は自分の頭の中にしっかり入れていく必要があります。

大会当日は、支給材料の個数や寸法に間違いがないか、競技開始前に選手が自分で確認することも重要です。競技開始後に材料の再支給を求めると減点になってしまうため、競技課題の内容と同じものが支給されているか、十分にチェックしましょう。

支給材料以外のもので用意される設備等は、以下のとおりです。

<会場で用意される設備等>

立式作業台 マグネットベース 草ほうき
座式作業台 隙間ゲージ ちりとり
摺り台 手元照明 ウエス
のこびき台 コンセント 荒神箒
角のみ盤 折りたたみ椅子 ボンド洗い用おけ
電動ドリル 刷毛 消毒液
卓上ボール盤 バケツ ペーパータオル
機械側置 プラスチック・パレット ゴミ箱

これら設備等のうち、卓上ボール盤、角のみ盤、電動ドリルを使用する際は、必ず持参した防護眼鏡を着用しなければなりません。また、卓上ボール盤や角のみ盤は、会場にいる競技委員の指示に従って使うルールとなっています。

「木工」の制限時間・評価ポイント

「木工」は、知的障害者のみが参加できる競技種目の1つ。支給された材料を用いて、蓋付き木箱を製作します。

「家具」同様、毎年同じ内容で出題されるため、競技レベルは年々アップ。加工精度や出来栄えとともに作業時間も重要となっています。

「木工」の制限時間は、標準時間が5時間、打ち切り時間が6時間です。標準時間をオーバーした分は減点対象となります。今大会では、9:00に開始し、昼休憩を挟んで最大16:00までの時間で実施されました。

「木工」での評価ポイントは

  1. 部材の長さは正確か
  2. 正確に加工できているか
  3. 直角に組み立てられているか
  4. 仕上がりは美しいか
  5. 制限時間内に完成させられたか
  6. 安全に作業できているか

などとなっています。

全体として高レベルの戦いとなった2020年度は、全体の仕上がりの美しさや三枚組の胴付の付き具合などの細かい部分における出来の差がポイントでした。入賞者は、金賞1名、銀賞1名、銅賞3名です。

「木工」の課題概要

競技種目「木工」の課題「蓋付き木箱」は、支給された材料を図面にある寸法に従って切り、組み立てて製作します。

効率的に作業を進められるよう、競技課題Aに記載された仕様をよく確認し、何度も練習を重ねましょう。

<「蓋付き木箱」製作上の仕様>

項目 内容
使用可能な工具 「使用工具一覧表」に記載されたもののみ
箱部材の長さ決め 選手が自分で行う
三枚組接ぎのダボ埋め用の穴あけ 選手が卓上ボール盤を使って行う
底板部分の段欠き 競技委員がハンドルータを使って行う。角さらいは選手が行う
面取り 基本は糸面。図面で指示されている部分は、指示に従う
組み立て 天蓋枠留の組み立て、天蓋裏桟取り付け、箱部分の三枚組接ぎの組み立て、ダボ埋め込みには、接着剤を使う
蓋の組み立て 平紐を使って行う

<選手が持参するもの>※詳細な条件は公式の過去問題を参照

両刃のこぎり 留定規 打ち当て
胴付のこぎり 挽き当て定規 端金
ほぞびきのこぎり 白書き きり(手もみ)
平(手)かんな 筋けびき 鉛筆・消しゴム
切り面かんな ものさし のりべら
追(大)入れのみ 直角定規(スコヤ) 玄のう
突きのみ 直角木口台 留木口台
釘締め 釘抜き 座布団

<会場で用意される設備等>

立式作業台 平紐 電気スタンド
座式作業台 ウエスまたはタオル 折りたたみ椅子
摺り台 接着剤用の刷毛 ハンドルータ
F型クランプ 接着剤洗い用おけ 卓上ボール盤
面取り用ジグ バケツ 移動集塵機

今大会で金賞を受賞した選手も、何度も製作工程を練習し、大会前には手順などのイメージトレーニングも行ったとのこと。どのような手順で製作すると効率がよいのか、どのようなやり方なら正確な寸法で作れるのかといった細かい工夫が最終的な仕上がりに大きく影響してきます。

より効率よく美しい仕上がりにするための技術や手順を再確認しつつ、自分に合った進め方を工夫してみましょう。

【参考】
アビリンピック 公式サイト
全国障害者技能競技大会(全国アビリンピック)|JEED

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