2022/08/23
アビリンピック過去問題|第40回全国(2020)機械CAD・建築CAD
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ビリンピック競技種目には、CADシステムを使いこなす技能を競う「機械CAD」と「建築CAD」があります。2020年度全国大会の「機械CAD」では3次元CADを使って「ロボットハンド」の図面を作成、「建築CAD」では2次元CADを用いて「鉄筋コンクリート造3階建てビル」の図面を作成する課題でした。
もくじ
2020年度「機械CAD」は「ロボットハンド」を出題
アビリンピック競技種目「機械CAD」は、3次元CADを用いて指定された機械の図面を作成する競技です。2020年度の全国アビリンピックでは「ロボットハンド」の部品図と組立図、立体分解図などが競技課題として出題されました。
前大会からの変更点は、課題の対象となる機械がスターリングエンジンからロボットハンドになったことや、CADシステムが新しいバージョンになったことなど。アセンブリ作業の後に作成する組立図において、特定の2つの部品を直角にした位置からシリンダを20mmストロークした図を想像線で描くという指示も追加されています。
今大会には8名の選手が参加し、金賞1名、銀賞1名、銅賞1名という結果になりました。講評では前大会より全体的に完成度が上がったと評価され、参加選手それぞれがスキルアップして臨んでいることがうかがえます。
「機械CAD」の制限時間・評価ポイント
「機械CAD」の制限時間は、休憩時間を入れて3時間10分です。前半1時間30分、後半1時間30分に分けて実施されます。今大会では午前9時30分から競技が始まり、12時40分に終了しました。
「機械CAD」には主に5つの評価ポイントがあります。
<「機械CAD」の評価ポイント>
- 指示事項をきちんと把握しているか
- 課題図面を正しく読図し、図形が描けているか
- 設計で意図された事項の寸法記入法、幾何公差、表面性状などを規格に沿って記入しているか
- 課題となっている機械の機能と構造を理解してモデリングできているか
- 時間内に正確な図面を完成させているか
きちんとルールに従った図が描けていても、時間内に完成させられなければ得点するのは困難です。そのため、CADの機能を使いながら効率よく作図できているかが最大のポイントになります。
「機械CAD」の課題概要と条件
今大会の「機械CAD」では、空気圧シリンダで駆動するロボットハンドが出題されました。前大会より部品点数は少ないものの、モデリングの正確さが問われる内容です。毎年、競技前日には選手により会場下見が行われ、競技本番で使用するさまざまな設定や機器の動作確認が行われています。
選手の会場下見から大会当日の流れ
「機械CAD」では、競技前日に選手が会場下見を行います。下見では競技当日に使うCAD機器の確認を行う他、線種や文字、表面性状、幾何公差等に関する図示記号の登録・確認作業も行うため、必ず参加しましょう。機器の動作確認やテスト印刷のため、輪郭線や中心マーク、任意の図形を作成する時間もあります。
登録する図記号や線種等の設定は、事前に作成してUSBメモリ等で持ち込み、CAD機器に登録することも可能です。
ただし、解答図に必要な表題欄や部品欄は、競技当日に配布される課題図から写し取ることとされていますので、輪郭線、中心マーク、三角法の記号以外のものは前日下見の中で削除しておかなければなりません。
当日の課題の概要やルール等は、事前に公開される「競技課題A」に記載されています。会場下見の前にも、しっかり確認しておきましょう。
作図にあたって使用するシステムとルール
2020年度大会で使用されたCADシステムや設備等は以下のとおりです。
<会場に用意されるシステムや設備等>
項目 | 規格等 |
CADシステム | nventor 2020
または Solidworks 2019-2020 |
PDFファイル作成ソフト | Adobe Acrobat
選手がパソコンを持参する場合は事前にインストールを済ませ、図面を印刷できるか確認すること |
カラープリンタ
プリンタドライバ |
A3印刷ができるもの |
印刷用紙 | A3(420mm×297mm) |
パソコンデスク・椅子 | − |
脇机 | 700mm×700mm程度 |
電気スタンド | − |
USBメモリ | フォーマット済み |
CADシステムについては、前大会からバージョンが変更されています。2つのCADシステムから事前に1つを選択し、大会当日にそれを使用するという点に変更はありません。
製図の規格は日本産業規格(JIS)を基本に、課題に示されたものに従うこととなっています。
<製図の規格等>
項目 | 規格等 |
全体に共通 | 最新の日本産業規格(JIS)および課題に示す規格に従う |
JIS B 0401-1
およびJIS B 0401-2 |
JIS B 0401-1:1998
およびJIS B 0401-2:1998 を適用する |
解答図の大きさ等 | A3の大きさ
長手方向を左右方向とする 四周をそれぞれ10mmあけて輪郭線を引き、四辺に中心マークを入れる |
また、競技は以下のルールで進められます。スマートフォン等の電子機器は使用不可、工具用の貸し借り禁止などの他に、作図データの提出方法、印刷出力などに関するルールも含まれていますので、見落としがないよう、競技前だけでなく練習の段階から、しっかり確認しておきましょう。
<競技のルール>
項目 | 内容 |
スマートフォン、携帯電話等の電子機器 | 競技スペースでは電源を切る |
競技で使用する機器 | 競技委員の指示があるまで触れない |
競技課題文・課題図の配布 | 競技当日に配布され、競技終了後に回収 |
使用工具 | 「使用工具等一覧表」で指定されたもの以外の使用不可
競技中の貸し借り禁止 |
作図データの保存 | 競技当日に配布されるUSBメモリに保存する
競技で使用するコンピュータのデスクトップ上にも保存する これ以外の場所への保存禁止 競技終了後、すべての作図データをUSBメモリに保存する時間が設けられる |
競技中の印刷出力 | 1回まで可能
黙って手を上げ、競技委員の指示に従う |
時間内に解答図が完成し競技を終了する場合 | 黙って手を上げ、競技委員の指示に従う |
選手が競技会場に持ち込める使用工具等は、以下のとおりです。
<選手が当日会場に持参できるもの>
スケール | 筆記用具(鉛筆・シャープペンシル・消しゴム等) |
分度器 | 製図用テンプレート |
三角定規 | マーカ類 |
ディバイダ | 粘着テープ |
電卓 | 補助入力デバイス(多機能マウス、トラックボール等) |
補助入力デバイス等でドライバのインストールが必要な場合は、ドライバファイルも持参する必要があります。
当日課題の手順概要
競技当日に課題に取り組む手順は、「競技課題A」で事前に確認可能です。大きく分けて3つの手順があります。
1つめは、部品と組立のモデリングです。ロボットハンドの課題に示された部品と組立のモデリング作業を行い、その機能を考慮しつつ拘束等の設定を行います。必要に応じて構成部品のプロパティ内容も変更しなければなりません。
2つめは、部品図と組立図の作図です。課題図にない部分は、スケールを使って測定したり他から類推して作図したりする必要があります。表題欄や部品欄、注記も指示に従って記入しましょう。
2つめの手順関するその他の指示には、以下のようなものがあります。
<部品図と組立図の作図に関する指示>
項目 | 規格等 |
断面 | 切り口にハッチング等を施さなくてよい |
相貫線および隠れ線 | 必要と思われる部分を作図する |
半径の寸法および面取りの寸法 | 図形に記入し、注記などで一括指示する方法は使わない |
寸法の許容限界 | 「公差域クラスの記号(寸法公差記号)」「寸法許容差」または「許容限界寸法」のいずれかによって記入する
普通交差は不要 |
寸法、寸法許容限界、公差域クラスの記号 | そのままの値を解答図に用いる |
対称図形 | 指示のない場合は中心線から半分だけを描く
破断線等による図の省略をしない |
ねじ | 課題図と同じように描く |
表面性状に関する指示 | 表面性状の図示記号と表面粗さのパラメータ及びその数値によって表す
課題に指示された場所に、大部分が同じ表面性状を一括して示し、そのうしろのカッコ内に他の表面性状があることを示す 他の表面性状は図形に指示する 角隅の丸みおよび角の45°の面取りは表面性状の図示不要 |
最後は、組立図と軸測投影法による立体分解図の作成です。特に立体分解図は、指示された図の向きで組立手順を意識して作成しなければなりません。また、分解した構成部品を均等に配置し、連絡線(分解ライン)を追加して部品間の関係を示し、各部品への呼び出し線(引出線)を作成して照合番号を追加する必要もあります。
当日の競技会場の様子は、以下の公式動画で視聴可能です。どのような環境で選手たちが課題に取り組んでいるのか、一度確認してみてください。
2020年度「建築CAD」は「「鉄筋コンクリート造3階建てビル」を出題
アビリンピック競技種目「建築CAD」は、建築汎用2次元CADシステムを用いて指定された図面を作成する競技です。2020年度大会では「鉄筋コンクリート造3階建てビルの図面(サービス付き高齢者住宅)」が出題されました。
前大会から配布される図面が増えるとともに、使用できるCADシステムのうちJW_CADがVersion8.10bから8.21aに変更されています。また、課題で作成する図面がこれまでの1枚から2枚に増え、それに伴って競技中のテストプリンタ出力の可能枚数が提出図面出力も含めて6枚まで可能となりました。
今大会の参加選手は7名。課題内容が難化したことで、受賞者は銅賞2名のみという結果でした。
「建築CAD」の制限時間・評価ポイント
建築CAD」の制限時間は、3時間30分です。途中の休憩時間はなく、2020年度大会では13時から16時30分とい時間帯で実施されました。
「建築CAD」の評価ポイントは、読図の正確性や建築CADを使うスキル、効率性などです。今大会では読図力と作業効率が特に重要でした。
<「建築CAD」の評価ポイント>
- 建築と製図規則の知識があるか
- きちんと読図できているか
- 複数の資料内容を1枚の図面にまとめられるか
- 建築CADの機能を生かして効率的に作業を進められるか
講評では、読むべき図面が多くなっても「図面全体を詳細かつ的確に把握して図面を描き始めること」「作図作業に入る前に効率的な作図プロセスを十分にイメージ」することが大切であるとしています。
その際、
- コピー元となる室空間の完成度を上げて作り込む
- 可能であれば、コピーや反転コピーを駆使しながら描く
- コピー等を使えない箇所は、躯体を大まかに作って建具を配置した後に建具を手がかりに躯体を整えて描く
などの具体的なアドバイスもありました。
「建築CAD」の課題概要と条件
2020年度全国大会での課題は「鉄筋コンクリート造3階建てビルの図面(サービス付き高齢者住宅)」です。
これまでは1枚の図面作成のみでしたが、今大会では2枚の図面作成が課せられました。線の量が増える、建具や階段等のデジタルデータを利用して作図効率を上げるなど、全体的に前回より難易度が高くなっています。
選手の会場下見から大会当日の流れ
「建築CAD」でも、機械CADと同じように競技本番前日に選手による会場下見が行われます。
下見で行う具体的なことは、図面枠指示書を用いた図面枠の作成、システムの動作確認、CADシステムのレイヤー、線種、寸法、ツールバー、文字、環境などの設定です。競技本番で使用する建具表、建築設備リスト等の図形ファイルを確認することになりますが、それらを持ち帰ることはできません。
また、競技本番だけでなく下見の際にも、競技課題や主催者から許可されたもの以外は持ち込めないため、「競技課題A」に記載されている内容を十分確認してください。
会場側で用紙されるもの以外の器具等を競技で使用する場合は、基本的には会場下見までに選手自身が接続を行い、主催者の確認を受けるルールとなっています。
作図にあたって使用するシステムとルール
今大会の「建築CAD」では、使用するシステムの1つJW_CADのバージョンが8.10bから8.21aに変更されました。また、作成する図面が2枚になったことから、支給されるA3プリンタ用紙も前大会の2倍である6枚に増えています。
これ以外のシステムや競技を進める上でのルールは、前大会と同様です。
<会場に用意されるシステムや設備等>
項目 | 規格等 |
CADシステム | AutoCAD 2018
または JW_CAD Version 8.21a |
カラープリンタ | A3印刷ができるもの |
印刷用紙 | A3(420mm×297mm)6枚 |
OAデスク・椅子 | − |
脇机 | − |
スタンド照明 | 卓上タイプ |
時計 | − |
外部記憶装置 | 以下の図形ファイルが保存されている
・建具表 ・建築設備リスト ・内部階段及び非常階段詳細図 |
図面表現については、原則としてISOに従います。ただ、国内では入手困難であることから、競技本番では以下の図面表現の規格等に従って作図を進めることとなっています。
<図面表現の規格等>
項目 | 規格等 |
JIS Z8312 | 線の基本原則 |
JIS Z8321 | 製図−表示の一般原則−
CADに用いる線 |
JIS Z8313-0 | 製図−文字−
第0部:通則 |
JIS Z8317 | 製図−寸法記入方法−
一般原則、定義、記入方法及び特殊な指示方法 |
JIS A0101 | 土木製図通則
6. 線、10. 図形の表し方のみ従う ただし、線の太さの組み合わせの0.25の行に記載されている線の太さの組み合わせを用いる 方位表示、設備機器等の線の太さは、図形記号の太さを用いる |
JIS A0150 | 建築製図通則
12.3、13.2.9〜13.2.10.1、13.3.3、13.5のみに従う |
提出図面の縮尺 | 縮尺1:100 |
図面枠右下の記載事項 | 以下の事項を図面枠右下の欄に記入する
・競技者番号 ・氏名 文字の高さ:4mm |
上記以外に「競技課題A」「競技課題B」で個別に指示された規格等がある場合は、それらに従って作成を進めましょう。
競技上のルールは、以下のとおりです。
<競技のルール>
項目 | 内容 |
競技中のテストプリント出力 | 提出図面の出力も含め6枚まで |
競技課題Bの配布と回収 | 競技開始時に配布し、競技終了時に全て回収する |
指示されたもの以外の情報の登録 | 図形、文字など主催者から許可されたもの以外の情報を事前にCADシステムに登録することは禁止 |
選手による持ち込み | 競技開始時に配布される競技課題、許可を受けた機器、使用工具等一覧表の「選手が持参するもの」以外は持ち込み禁止 |
AutoCAD | クラシックモードは使用不可
コマンドのカスタマイズ不可 |
JW_CAD | 初期設定の状態から建築1・2、設備1・2、電気1・2、建具平面A・B・C・Dの図形は削除するため使えない |
機器、データ類の貸し借り | 競技中は禁止 |
競技の終了 | 時間内に競技を終了する場合、競技委員に申し出る |
選手が競技会場に持ち込める使用工具等は、以下のとおりだ。
<選手が当日会場に持参できるもの>
スケール | 筆記用具(鉛筆・シャープペンシル・マーカ等) |
電卓 |
当日課題の概要とルール
競技当日は、開始時に配布される複数の図面や情報を読み取りながら、「鉄筋コンクリート造3階建てビルの図面」の建築基本設計図(1階平面図、2・3階平面図、東立面図、断面図)を作図します。
このうち、東立面図については、競技課題Bに描かれていないため、自分でさまざまな情報をもとに作図しなければなりません。
作図のルールや提出方法は、以下のとおりです。
<作図のルールと提出方法>
項目 | 内容 |
提出図面 | A3用紙にプリンタ出力したもの2枚 |
提出データの保存 | プリンタ出力したものと同じものをデスクトップ上に保存する |
図面レイアウト | 競技で配布される建築基本設計図と同様のレイアウトにする |
東立面図 | 適宜判断して空欄に作図する
その際、次の要素を記述する ・建物の躯体 ・建具の見えかがり ・通り芯と寸法 ・GLラインと▼GL記号 ・図面名と縮尺 |
階段の作図 | 内部階段及び非常階段詳細図を見て作図する |
図面の先の太さ | 太線:0.5mm
中線:0.25mm 細線:0.13mm |
文字の高さ | 図面名:5mm
室名・通り番号・FL:3.5mm 寸法・建具番号:2.5mm |
「建築CAD」でも、当日のハイライトが公式動画で公開されています。全体の雰囲気や機器の配置等、練習の環境づくりにおいても参考になるでしょう。
【参考】
アビリンピック 公式サイト
全国障害者技能競技大会(全国アビリンピック)|JEED