2022/04/21
アビリンピック過去問題|第39回全国(2019)ネイル施術
本ページはプロモーションが含まれています
この数年、多くの場所で目にするようになったネイルサロンですが、サロンでの施術に従事する障害者の方も増えているようです。実は、アビリンピック競技種目は時代の流れとともに変化しています。競技種目「ネイル施術」も例外ではありません。「ネイル施術」は、2018年全国大会でデモンストレーション競技に採用され、2019年全国大会からは正式に競技種目となりました。
もくじ
競技種目「ネイル施術」の概要
アビリンピック競技種目「ネイル施術」は、2019年大会に新しく競技に加わりました。ネイル施術の正しい知識と技術が問われるとともに、全国大会ではネイルチップを使って独創的な作品の制作が求められます。
身体障害者・知的障害者・精神障害者が参加可能で、2019年大会には6名の選手がエントリーしました。
「ネイル施術」には2つの課題があります。課題1は「ベーシックマニキュア」で、前半がキューティクルケア、後半がカラーリング。課題2は「ネイルチップアート」です。提示されたテーマに合わせてネイルデザインを施し、独創的で華やかなネイルアートを作成します。
「ネイル施術」で持参するもの・会場で用意されるもの
「ネイル施術」では、メモやデッサン画、参考書などの資料の持込は一切認められていません。
持ち込めるのは、事務局から認められている以下のものが基本。他にも、施術に必要と思われるもので禁止されていないものであれば、持ち込むことができます。使用する製品や機器のメーカー等は問われません。
<「ネイル施術」で選手が持参するもの>
- 消毒用容器(スプレーボトルなど)
- ネイルコットン・コットン容器
- ウェットステリライザー(消毒用タンブラーなど)
- メンダポンプ
- ナチュラルベースコート
- トップコート
- ポリッシュカラー(マット赤)
- ネイルプッシャー(メタルプッシャー)
- キューティクルニッパー
- エメリーボード(爪の状態に合ったグリット)
- シャイナー(必要に応じて)
- ウッドスティック
- バッファー
- ネイルケア用ガーゼ
- ダストブラシ
- トレーケース(全ての用具を入れるためのもの)
- ブラシ立て(ファイルスタンド)
- フィンガーボール
- ペーパータオル
- 白無地タオル(作業エリア用)
- チップスタンド(5個組)
- その他、施術に必要なもの
全国大会の「ネイル施術」では、会場側でモデルを用意してもらえるため選手が自分で連れていく必要はありません。本番に持参する予定のものは会場下見の際に確認がありますので、必ずチェックを受けましょう。
ネイル施術で使用する機材等には、会場に準備してあるものもあります。
<「ネイル施術」の競技会場で用意されるもの>
- 作業台・椅子・電気スタンド
- 完成作品保管・展示用長机
- 長机用テーブルクロス
- ゴミ袋(小)
- 消毒用エタノール
- ポリッシュリムーバー
- キューティクルリムーバー
- ネイルチップサイズ
- テーブルシート
- 水(お湯の温度調節用)
- 電気ポット(全体で1台)
会場で用意されているものに不具合などが見られた場合は、すぐに競技スタッフに知らせてください。
ネイル施術」の制限時間と評価ポイント
「ネイル施術」の制限時間は、合計140分です。「ネイルケア」「カラ—リング」「ネイルチップアート」で、それぞれ制限時間が設定されています。
「ネイル施術」全体で共通する評価ポイントは、衛生的に作業できていることと、道具・材料の扱いが適切であること、制限時間内に施術や制作を完了することです。ただし、課題ごとの評価ポイントは細かく設定されていますので、じっくり確認しつつ練習しましょう。
制限時間
「ネイル施術」の制限時間で特に気をつけるべきことは、課題1の中で2つの制限時間があることと、選手からの申し出があるか制限時間になったら競技が終了すること。作品が完成して提出の準備ができたら、忘れずに競技スタッフに申し出てください。
<「ネイル施術」の制限時間>
- 課題1「ベーシックマニキュア」 計50分
- 前半「キューティクルケア」 30分
- 後半「カラーリング」 20分
- 課題2「ネイルチップアート」 90分
2019年大会では13:30〜16:30で、審査や準備等も含めて合計3時間で実施されました。
評価ポイント
課題1の「ネイルケア」と「カラーリング」はモデルへの施術をもって作品提出となり、課題2の「ネイルチップアート」では、指定の場所に設置することで提出となります。
審査での評価ポイントは、以下のとおりです。
<「ネイルケア」の評価ポイント>
- 衛生的に施術を行っている
- 器具・材料を正しく使用している
- フリーエッジの削りあとがなめらかで、削り残しやダストがない
- ルーススキンが除去されている
- ささくれや甘皮がきれいに処理されている
- 10本のフリーエッジの長さと形のバランスがいい
- 作業を全て時間内に終了させている
<「カラーリング」の評価ポイント>
- 衛生的に施術を行っている
- エッジの塗り残しがない
- キューティクルラインが空きすぎずなめらかである
- サイドの塗り残しがない
- 表面に色むらや刷毛あとがない
- ツヤがある
- 皮膚にカラー類がついていない
- 時間内にトップまで塗られている
<「ネイルチップアート」の評価ポイント>
- 一枚のチップの仕上がりにアートデザインが50%以上施されている
- 爪につけられるアート作品である
- 立体的なパーツをその場で作成し、爪に装着してもよい
- 効果的であれば、ストーン、ホログラム、ラメを使用してもよい
- 必要に応じて最後にトップコートでコーティングを行っている
- テーマに合ったデザインである
- オリジナル作品であり、デザイン性に優れている
- デザインテクニックに優れている(色彩、ペイントテクニックなど)
- 全体のバランスが適切である
- 道具や材料について、適切な管理と使用ができている
- 衛生的に作業している
- 時間内に完成させている
次項で紹介する課題の概要と照らし合わせながら、どのように作業を進めていくか検討するとよいでしょう。
「ネイル施術」の課題概要
課題1では会場側で用意されたモデルを使い、課題2では会場側で用意されたネイルチップを使って競技を行います。
競技の準備等については細かい規定があるため、事前に公開される「課題A」をよく確認してください。
課題1「ベーシックマニキュア」
課題1「ベーシックマニキュア」では、会場側で用意されたモデルに対してネイルケア(キューティクルケア)とカラーリングを施します。
モデルの爪の状態は、次のようになっています。
- ネイルカラーなどが何もついていない(ナチュラルネイルの状態)
- 何も塗布していない
- 爪の長さ:手のひら側から見て1mm以上5mm程度まで
- 形を整えられる長さがある
- 1週間以上お手入れがされていない
以上のようなモデルの爪に、30分でネイルケアを、次の20分でカラーリングを施しましょう。ネイルケアとカラーリングの間には、10分ほどの審査時間が設けられます。
ネイルケアとカラーリングで求められる作業は以下のとおりです。
<ネイルケアの概要>(制限時間 30分)
- 消毒液を含ませたコットンを使い、施術者の手指を消毒する
- 別のコットンに消毒液を含ませ、モデルの手指を消毒する
- エメリーボードでフリーエッジの長さと形を整える(10本分)
- キューティクルリムーバーを塗布し、フィンガーボールに入れる
- プッシャーでキューティクルをプッシュアップする
- ガーゼとキューティクルニッパーで、ルーススキン、ささくれを除去する
- 機材・材料を全て片付ける
- ペーパータオルを交換する
<カラーリングの概要>(制限時間 20分)
- カラーはポリッシュカラーのマット赤を使用
- 爪の表面、フリーエッジの裏の油分を除去する
- 爪のエッジと表面にベースを塗る
- 夢のエッジと表面にカラーを塗る(2回)
- 爪のエッジと表面にトップを塗る
- 仕上がり後のキューティクルオイルの塗布は不可
基本的な手順や使用する道具・材料、注意事項などは、事前公開の「課題A」に詳しく記載されているので、大会前に確認することができます。
課題2「ネイルチップアート」
課題2では、会場で支給されるネイルチップ5本にネイルアートを施します。
制限時間は90分。作品テーマとネイルチップの大きさは事前公開の「課題A」に参考として記載されますので、よく確認しながらデザインを考えましょう。
ただし、デザインのメモやデッサン画、資料を事前に作成して会場に持ち込むことはできません。市販のネイルシール等も使用禁止です。
大会前に自分で何度も練習し、メモや資料がなくても完成させられるようにしておくとよいでしょう。
2019年大会でのテーマ、条件等は以下のようになっています。
<ネイルチップアートの概要>
- テーマ:「花」
- ネイルチップ5本にネイルアートを施す
- 5本全体で1つのテーマを表現する
- 使用するチップを加工する(形を整えるなど)
- チップをチップスタンドに装着する
- チップのファイリングスタイルは自由
- ベースはポリッシュを使用
- アート部分はポリッシュ、アクリル絵の具を使用
- 効果的であればラメ・ラインストーン・スタッズなどを使用してもよい
- ネイルケースに入る大きさで制作する(9cm×13.5cm×2.5cm)
- トップコートを塗って仕上げる
モデルの爪や手への施術でなくても、衛生面や安全性に気をつけながら作業を進めることが大切です。
「ネイル施術」での注意点
ここで述べる注意点は、違反すると減点となる恐れが高いことです。衛生的かつ安全に施術を進めるためにも、練習の段階から気をつけて取り組んでください。
テーブルセッティングは競技開始前に終わらせる
テーブルセッティングは競技時間に含まれないため、競技開始前までに確実に準備を終了させましょう。
器具や材料は競技開始前に全てトレー内に準備し、その中にセッティングしなければなりません。作業中に器具や材料をカバンから出すと減点となってしまいます。
モデルにケガがある場合は必ずスタッフに知らせる
競技開始前や審査中にモデルの爪に触ることも禁止されています。
もしモデルに出血が生じた場合は、近くにいる競技スタッフに知らせて指示に従い、手指を消毒してから施術を再開しましょう。
準備中や審査中のときはモデルの爪や手に触れない
モデルの爪や手に触れてよいのは、競技開始から競技終了の間だけと考えてください。特に、競技開始前の事前審査中と競技終了後の審査中は決してモデルの爪や手に触れてはいけません。
落とした器具・材料は拾って破棄する、消毒する
もし器具や材料を落としてしまった場合は、そのままにせず必ず拾いましょう。
拾った器具や材料は、破棄できるものであれば破棄してください。破棄できないものは、消毒液で消毒してからセッティング、使用しなければなりません。
落ちたものを放置したり、拾ったものをそのまま使ったりすると、衛生面や安全性などの点で大きく減点される可能性があります。
市販のネイルシールや3Dパーツは使用禁止
課題2「ネイルチップアート」は、選手の技術とともにデザインの独創性を問う課題です。そのため、市販のネイルシールや3Dパーツを競技で使用することはできません。他者の権利(著作権など)を侵害するようなデザインも認められません。
ネイルアートに立体的なデザインを使いたい場合は、選手自身が競技中に立体的なパーツを制作して使いましょう。
全国アビリンピックと地方アビリンピックの違い
全国アビリンピックで「ネイル施術」が正式な競技種目として採用される前に、すでに地方アビリンピックで正式な種目となっていた地域があります。たとえば東京アビリンピックです。
ただ、東京アビリンピックでは全国大会での課題1に相当する内容を基本として競技課題が設定されており、これまでのところネイルアートは含まれていません。
今後の地方アビリンピックの「ネイル施術」でネイルアートが加えられる可能性はありますが、まずはベーシックマニキュアの技術を確実に磨くことで、全国大会出場への道が開けるでしょう。
東京アビリンピックの「ネイル施術」課題内容については、次の関連記事をご覧ください。
(関連記事)
アビリンピック過去問題|第17回東京(2018)ネイル施術