就労継続支援は儲かる?虚偽の実績記録票で加算算定


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近年、安易な就労継続支援事業所の開設が不正受給問題につながり、利用者にも大きな不利益をもたらしています。「就労継続支援は儲かる」と言いはやすビジネスモデルの弊害です。

今回は、就労継続支援A型事業所・B型事業所の問題事例と当該ビジネスモデルの“収益”につながる考え方の特徴を解説します。

(イメージ画像とロゴ) 就労継続支援は「儲かる」? 虚偽の実績記録票で加算算定する問題事例

就労継続支援A型・B型事業所における問題・不正受給の報道

就労継続支援事業所で見られる問題事例の図解 詳細は、以下本文

最近、就労継続支援事業所による給付費の不正受給や突然の閉鎖といった問題を目にすることが多くなりました。大阪のA型事業所で一般就労とA型事業所利用の切り替えを何度も繰り返して問題視される報道に不快な思いをされた方もいるでしょう。

インターネットで簡単に検索するだけでも、次のような問題事例の報道記事が見つかります。

【就労継続支援A型事業所における問題事例】

  • 事業所側の都合により、始業から2時間で「仕事がない」と帰らされ、給与も減額される*1
  • 障害特性に基づいた就労に関する配慮がなく、作業支援も一切ない*1
  • 開所から半年足らずで閉鎖が決まり、開所の目途も立っていないB型事業所への“移籍”を迫る*2
  • 利用者に自宅待機分の休業手当や有給休暇の賃金を支払わない*3
  • A型事業所と一般就労の切り替えを繰り返し、給付費を過大受給の疑いがかかっている*4

【就労継続支援B型事業所における問題事例】

  • 職員の給料や利用者の工賃が未払いのまま事業所を閉鎖し、代表者は音信不通状態になっている*5
  • 営業していない日にサービスの提供を行ったり、廃業したはずの店舗・事業所から業務を請け負って作業を行ったりしたとして虚偽の記録票などを作成し、自治体に過剰な給付費の請求を行う(計約8,300万円の返還請求・指定取消処分)*6
  • 実際は実施していない支援サービスを実施したと偽り、基本給付や多様な加算を不正に請求する(計約3,500万円の返還命令・指定取消処分)*7
  • 「登録すれば1万5千円あげる」などと知人らを勧誘し、実態のない利用者数を申請する(元職員逮捕)*8

誠実な支援を行っている就労継続支援事業所から見れば、障害者支援の「基本」を理解していない有り様に目を疑いたくなるかもしれません。これらの事業所が開設される背景には、「就労継続支援事業は儲かる」といった利益目的の起業があります。

「就労継続支援事業は儲かる」ビジネスモデルの特徴

なぜ「就労継続支援事業は儲かる」という言い方ができるのでしょうか。これには、障害福祉サービスの特徴である収益構造が関係しています。

「儲かる」と考える事業者が注目するのは、自治体に申請して受給する給付費。もう1つの収入源である生産活動収入を増やす施策も実施しますが、それよりも給付費において「いかに多く加算を取るか」がポイントであると考えているようです。

就労継続支援事業所における不正のパターンの例 詳細は、以下本文

就労継続支援の「儲かる」ビジネスモデル

A型事業所の場合、収益には自治体に申請して受給する給付費(基本報酬)と、利用者が業務を行うことで得る生産活動収入があります。

生産活動収入は利用者の賃金に直結する収入。他社からの業務委託や自社製品の製造・販売などによって増やす方法が一般的です。前項で紹介した「仕事がない」という問題事例は、「事業所側で利用者の賃金につながる仕事を用意できていない」ことを意味します。

生産活動収入で収益を上げるには、一般的な民間企業と同様、事業の展開と営業が欠かせません。ただ、A型事業所の利用者は、障害や難病により長時間の労働が難しいケースが多く、体力・得意分野に合わせた業務や環境の調整を行ったうえで働きます。1日あたりの労働時間は一般企業より短いという傾向もあります。

生産活動収入の向上には高い質の支援が求められますが、それでもすぐに結果を出せるものではありません。そこで注目されるのが、給付費の増額です。

給付費は、利用者の定員(定員区分)と職員の配置人数(人員配置区分)、労働時間・生産活動・働き方・支援の質といった実態を踏まえた評価(評価点・スコア)によって決まる金額と、追加的な支援の内容によって決まる金額があります。後者を「加算」と呼びます。

利益追求の側面から特に注目されている加算は、「初期加算」や「就労移行支援体制加算」です。きちんと支援をしている就労継続支援事業所で多く算定されている「欠席時対応加算」も、不正の温床となっています。

【就労継続支援ビジネスが注目する加算例】

  • 初期加算……新規利用者が30日間の間に算定できる加算。新規利用者が増えるほど初期加算の金額も増える
  • 就労移行支援体制加算……利用者が就労継続支援事業所から一般の企業に就職したうえで、6か月以上勤務を継続すると翌年度に算定できる加算。加算額が大きい
  • 欠席時対応加算……利用予定日だった日に利用者が欠席する際に、事業所から状況確認や相談援助を行った場合に算定できる加算

このような加算を使いながら、就労継続支援ビジネスでは利益向上を目指します。具体的にどのような手段で給付費の金額を増やそうとしているのか、下表にまとめました。

【問題事例における行為等】

項目 問題事例
利用者数
  • 利用者数を水増しして申請する
人員配置区分
  • 職員数を水増しして申請する
利用日・利用時間
  • 利用していない日・時間帯を利用したと偽って申請する
  • 事業所に利用者は来ているが、「仕事」とはいえないような作業をさせる(植物の水やりや事業主のSNSアカウントフォロー作業など)
初期加算
  • 新規利用者を入れるため、短い期間で既存利用者に自己都合での退職を迫る
  • 次から次へと新規利用者を入れ、支援をしないまま放置する
就労移行支援体制加算
  • A型事業所を運営する法人の別会社(一般企業)への就職とA型事業所の利用を6か月ごとに切り替えて、同一利用者につき複数回の加算を申請する
欠席時対応加算
  • 利用者に連絡をしていないのに加算を申請する
  • 連絡の対応記録を残していない状態で加算を申請する
  • あらかじめ把握していた欠席日について加算を申請する
  • 台風・積雪など、事業所自体が閉まっているのに加算を申請する
その他
  • 実際は提供していないサービスについて、提供したと偽って申請する

欠席時対応加算に関しては、「要件を誤解して算定してしまっていた」という例もあるでしょう。しかし、それ以外の加算では、意図的に虚偽の申請をするなど、本来の趣旨を無視した手法で利用者への支援を軽視する例が発生しています。

B型事業所における問題事例も、A型事業所の例とほぼ同様です。ただ、B型事業所はA型事業所とは違い、利用者との雇用契約を結びません。そのため、利用者には最低賃金法が適用されない「工賃」が支払われます。「時給数百円でも法的には問題がない」というものです。

こうした事情から、「B型事業所は儲かる」とするアピールには、次のような表現が使われます。

「国からの給付金で運営」
「債権回収リスクが低い」
「収益性・安定性が高い」
「大規模な設備投資が不要」
「加算をしっかり取得すれば収益を確保できる」

生産活動収入による利用者の工賃向上や作業を通じたスキル向上の視点は少なく、事業所を運営する法人が利益を得る発想が中心であることがわかります。

たとえ利用者の工賃額に言及していたとしても、「最低でも月1万円以上」など低水準。厚生労働省の発表によれば、令和5年度におけるB型事業所の全国平均工賃は、月額2万3,053円。それでも最低賃金水準には届いておらず、障害年金の受給額を考慮しても、自立した生活はできません。*9

厚生労働省でも、「特段の知識等がなくとも事業所の運営は可能であり、高収益が実現できる」等の謳い文句により、指定希望者に安易な事業所の開設を勧める等の不適切な行為を行っている者がいる」と問題視しています。*10

施設外就労の不適切な活用

さらに注目されるのが「施設外就労」です。

施設外就労の加算制度は2021年度の報酬改定で廃止されましたが、一定の要件を満たすことで、施設外で就労する利用者について、施設内(本事業所)で就労する利用者と同様に基本報酬の算定ができることになりました。

しかも、施設外就労に出ている間は、その出ている人数だけ新たに利用者を入れることも可能。最大で定員の2倍の利用者数について基本報酬を算定できるということです。

ところが、施設外就労の要件を満たさないまま、報酬を申請するケースが複数見られます。

【施設外就労に関する問題事例】

  • 職員が施設外就労の利用者に同行していないのに、算定していた
  • 業務を発注した企業の施設(施設外)で就労する必要があるのに、就労継続支援事業所の中(施設内)で業務をしていた

施設外就労については、最大限に活用すれば「利用者数を定員の2倍にできる」というメリットが強調されます。人数を増やせば、それだけ職員の数も必要ですが、そうした人数と支援の質のバランスの難しさは、「儲かる」ビジネスモデルにおいてはほぼ言及されません。

厚生労働省が就労継続支援事業にかかるガイドラインを発表

以上のような問題を放置すれば、就労継続支援事業所を利用する当事者に大きな不利益が発生するとともに、増え続ける社会保障費に本来不要な支出を発生させ続けることになります。適切な支援を行う事業所を守るためにも、何らかの手を打たなければなりません。

厚生労働省は、2025年11月に「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン」を公表。指定権者である自治体に向けて、支援の質が低い事業所や不正を行う事業所を見極めるためのポイントをまとめました。

法人理念や障害福祉サービスの提供に欠かせない様々な知識の有無、地域ニーズの把握や関係機関との連携など、「就労継続支援で簡単に儲かる」と考える事業所には“面倒”となる項目を一つずつチェックされることが、きちんと支援を行っている就労継続支援事業所の生き残りには不可欠です。

障害福祉サービス等の報酬改定で苦しい状況ではありますが、各制度の本来の趣旨を踏まえた支援を続けていきましょう。

【参考】
*1 藤田和恵「労働者を搾取する「A型事業所」のあきれた実態 労基署も機能しない、まさに「貧困ビジネス」」|東洋経済ONLINE
*2 藤田和恵「障害者支援「A型事業所」からB型に流す悪質手口 「個人の連絡先の交換は禁止」という規則が横行」|東洋経済ONLINE
*3 市川亨「障害者の働く場がオープン半年で「閉鎖します」。400人が解雇や退職、運営は同じ会社のグループだった」|47NEWS
*4 鈴木彪将「利用者の「就労切り替え」繰り返し過大受給か…元利用者「仕事内容同じ」「何の指示もなし」」|読売新聞オンライン
*5 伊藤悟・浅野真・山田暢史「県内3カ所の福祉事業所、工賃未払いか 閉鎖後、代表と連絡取れず」|朝日新聞
*6 京都市の障害者就労支援施設が給付費を不正請求か 計8300万円返還請求、事業者指定取り消しへ|京都新聞DIGITAL
*7 就労支援サービス、実施せずに3000回も不正請求――「悪質性高い」鹿児島市、加算額含め3500万円を返還命令 障害福祉の指定取り消し|南日本新聞デジタル
*8 障害者就労給付金を詐取 詐欺容疑で施設元職員2人を逮捕 兵庫県警|産経新聞
*9 平均工賃(賃金)月額の実績について|厚生労働省
*10 厚生労働省「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドラインについて」p.4

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